第3章 不死鳥の騎士団
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第16話 戦う覚悟と喪失
黒い煙が天井から降り注いだ。 それはただの煙ではなく、意思を持った闇そのものだった。イリスが杖を構えるより早く、冷たい手のように絡みつき、腕を掴み上げた。身体が宙に引きずり上げられ、息が詰まる。
「やめて!」
他の仲間も同じように捕らえられ、抵抗もできぬまま杖を突きつけられていた。ロン、ハーマイオニー、ジニー、ネビル、ルーナ……皆が恐怖に顔を強張らせている。
黒い煙が地面に降り立つと、その中から仮面をつけた死喰い人たちが現れた。闇が形を持つように、冷酷な気配が広がる。
その中央に立ったのは、金髪の男。
ルシウスはゆっくりと歩み寄り、囁くように言った。
「予言を寄越せ、ポッター」
「渡しちゃだめ!」 ハーマイオニーの叫びが響く。
だが、ハリーの目には仲間の姿が映っていた。自分以外の全員が捕らえられ、命を握られている。その重さが肩にのしかかる。震える手で、彼は予言を差し出した。
ルシウスがそれを受け取った瞬間――。
「私の息子に近づくな!」
鋭い声と共に姿くらましの音がした。 現れたのはシリウスだった。彼は迷いなくルシウスの頬を殴りつけ、予言の玉が宙に揺れる。
次の瞬間、白い煙がなだれ込む。 死喰い人を吹き飛ばすように現れたのは、不死鳥の騎士団だった。
「今だ!」
仲間を拘束していた力が解け、一同は自由を取り戻す。
イリスは初めて見る白い煙の魔法に驚いたが、シリウスの姿とハリーの安堵の表情を見て、味方だと直感した。胸の奥に、小さな希望が灯る。
──戦いが始まった。
火花が四方で弾け、叫び声と呪文が交錯する。 騎士団の魔法は鋭く、死喰い人と互角に渡り合っている。ロンたちはひとまず岩陰に押しやられ、守られていた。
イリスはその光景を見つめ、息を詰めた。 これまでずっと「守る」ことに徹してきた。人を傷つけることは、してはならないことだと心に言い聞かせてきた。 だが、今目の前にあるのは、人と人の戦い。 敵を無力化しなければ仲間は死ぬ。守りだけでは勝てない。
「……やるしかない」
自分に言い聞かせるように呟き、杖を強く握った。
死喰い人の呪文が飛んでくる。 イリスは障壁を張りながら反撃を決意する。だが、まだ迷いがあるのかイリスが放った魔法は相手を吹き飛ばすだけで、致命傷を与えるものではなかった。
相手は長年闇の魔法を極めた手練。数年しか学んでいない自分が遠慮してどうするのか。 その瞬間イリスの腕に呪文が当たり骨が折れる音がした。
死の冷気が背筋を這い上がった。
──自分も殺される。
胸の奥が凍りつくような恐怖。 今まで考えたこともなかった。「命を奪う」ことと「奪われる」ことが、こんなにも近いのだと。
「生き延びたい……みんなを死なせたくない……!」
恐怖を押し殺し、イリスは大地に魔力を叩き込んだ。
轟音と共に地面が揺れ、敵も味方も一瞬体勢を崩す。仲間の悲鳴が聞こえ、胸が痛む。だがもう躊躇えなかった。
土が渦を巻き、蟻地獄のように死喰い人を飲み込む。 複数人が胸まで埋まり、身動きできなくなる。息を荒げながらも、イリスはそれで止めた。殺すのではなく、無力化するために。
残るは二人。シリウスとハリーが協力している。戦況は優勢に見えた。
だが、イリスは違和感を覚えた。 あんなに存在感があった死喰い人がいない。確かにそこにいるはずの気配がない。
「……ベラトリックス」
彼女の存在が見えない。 全神経を研ぎ澄まし、粒子の流れを追う。闇の端、狂気を孕んだ魔力の波。それは真上にあった。
そしてそこへ視線を移すと黒い煙が地面へ向かってき降りてきていた。
「見つけた……!」
すぐに着地するであろう場所へ杖を振り下ろす。 しかし、僅かに遅かった。
「アバダ・ケダブラ!」
緑の閃光が奔る。イリスの呪文はベラトリックスを壁に叩きつけたが、死の呪文は既に放たれていた。
その光が直撃したのは
──シリウス。
彼の瞳から光が消え、そして静かに、アーチの薄幕へと吸い込まれていった。
確かに時間は動いているのに時が止まったようだった。
「シリウス!!」
ハリーの叫びが響く。 ルーピンが涙を流しながら必死に押さえる。ハリーは振りほどこうと暴れ、悲しみに叫び声を枯らす。
全てがスローモーションにみえる。
確かに音を立てて折れた肩は痛いはずなのに今は何も感じない。
イリスの手足は震え杖を落とさぬようにぎるのがやっとだった。
シリウスが数秒前まで立っていた場所を見つめただ呆然と震える足で立ち尽くすしかなかった。
もっと早く気づいていれば。
もっと早く粒子を探り当てていれば。
最初から甘さを捨てて戦えていたなら。
ハリーの唯一の家族を失わせずに済んだのに。
「……ごめんなさい」
言葉はハリーの悲しみの声、皆のすすり泣く声にかき消され誰の耳にも届かない。
イリスの唇から零れ落ちた謝罪はもう何も取り返せないことを静かに告げていた
黒い煙が天井から降り注いだ。 それはただの煙ではなく、意思を持った闇そのものだった。イリスが杖を構えるより早く、冷たい手のように絡みつき、腕を掴み上げた。身体が宙に引きずり上げられ、息が詰まる。
「やめて!」
他の仲間も同じように捕らえられ、抵抗もできぬまま杖を突きつけられていた。ロン、ハーマイオニー、ジニー、ネビル、ルーナ……皆が恐怖に顔を強張らせている。
黒い煙が地面に降り立つと、その中から仮面をつけた死喰い人たちが現れた。闇が形を持つように、冷酷な気配が広がる。
その中央に立ったのは、金髪の男。
ルシウスはゆっくりと歩み寄り、囁くように言った。
「予言を寄越せ、ポッター」
「渡しちゃだめ!」 ハーマイオニーの叫びが響く。
だが、ハリーの目には仲間の姿が映っていた。自分以外の全員が捕らえられ、命を握られている。その重さが肩にのしかかる。震える手で、彼は予言を差し出した。
ルシウスがそれを受け取った瞬間――。
「私の息子に近づくな!」
鋭い声と共に姿くらましの音がした。 現れたのはシリウスだった。彼は迷いなくルシウスの頬を殴りつけ、予言の玉が宙に揺れる。
次の瞬間、白い煙がなだれ込む。 死喰い人を吹き飛ばすように現れたのは、不死鳥の騎士団だった。
「今だ!」
仲間を拘束していた力が解け、一同は自由を取り戻す。
イリスは初めて見る白い煙の魔法に驚いたが、シリウスの姿とハリーの安堵の表情を見て、味方だと直感した。胸の奥に、小さな希望が灯る。
──戦いが始まった。
火花が四方で弾け、叫び声と呪文が交錯する。 騎士団の魔法は鋭く、死喰い人と互角に渡り合っている。ロンたちはひとまず岩陰に押しやられ、守られていた。
イリスはその光景を見つめ、息を詰めた。 これまでずっと「守る」ことに徹してきた。人を傷つけることは、してはならないことだと心に言い聞かせてきた。 だが、今目の前にあるのは、人と人の戦い。 敵を無力化しなければ仲間は死ぬ。守りだけでは勝てない。
「……やるしかない」
自分に言い聞かせるように呟き、杖を強く握った。
死喰い人の呪文が飛んでくる。 イリスは障壁を張りながら反撃を決意する。だが、まだ迷いがあるのかイリスが放った魔法は相手を吹き飛ばすだけで、致命傷を与えるものではなかった。
相手は長年闇の魔法を極めた手練。数年しか学んでいない自分が遠慮してどうするのか。 その瞬間イリスの腕に呪文が当たり骨が折れる音がした。
死の冷気が背筋を這い上がった。
──自分も殺される。
胸の奥が凍りつくような恐怖。 今まで考えたこともなかった。「命を奪う」ことと「奪われる」ことが、こんなにも近いのだと。
「生き延びたい……みんなを死なせたくない……!」
恐怖を押し殺し、イリスは大地に魔力を叩き込んだ。
轟音と共に地面が揺れ、敵も味方も一瞬体勢を崩す。仲間の悲鳴が聞こえ、胸が痛む。だがもう躊躇えなかった。
土が渦を巻き、蟻地獄のように死喰い人を飲み込む。 複数人が胸まで埋まり、身動きできなくなる。息を荒げながらも、イリスはそれで止めた。殺すのではなく、無力化するために。
残るは二人。シリウスとハリーが協力している。戦況は優勢に見えた。
だが、イリスは違和感を覚えた。 あんなに存在感があった死喰い人がいない。確かにそこにいるはずの気配がない。
「……ベラトリックス」
彼女の存在が見えない。 全神経を研ぎ澄まし、粒子の流れを追う。闇の端、狂気を孕んだ魔力の波。それは真上にあった。
そしてそこへ視線を移すと黒い煙が地面へ向かってき降りてきていた。
「見つけた……!」
すぐに着地するであろう場所へ杖を振り下ろす。 しかし、僅かに遅かった。
「アバダ・ケダブラ!」
緑の閃光が奔る。イリスの呪文はベラトリックスを壁に叩きつけたが、死の呪文は既に放たれていた。
その光が直撃したのは
──シリウス。
彼の瞳から光が消え、そして静かに、アーチの薄幕へと吸い込まれていった。
確かに時間は動いているのに時が止まったようだった。
「シリウス!!」
ハリーの叫びが響く。 ルーピンが涙を流しながら必死に押さえる。ハリーは振りほどこうと暴れ、悲しみに叫び声を枯らす。
全てがスローモーションにみえる。
確かに音を立てて折れた肩は痛いはずなのに今は何も感じない。
イリスの手足は震え杖を落とさぬようにぎるのがやっとだった。
シリウスが数秒前まで立っていた場所を見つめただ呆然と震える足で立ち尽くすしかなかった。
もっと早く気づいていれば。
もっと早く粒子を探り当てていれば。
最初から甘さを捨てて戦えていたなら。
ハリーの唯一の家族を失わせずに済んだのに。
「……ごめんなさい」
言葉はハリーの悲しみの声、皆のすすり泣く声にかき消され誰の耳にも届かない。
イリスの唇から零れ落ちた謝罪はもう何も取り返せないことを静かに告げていた
