第3章 不死鳥の騎士団
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第13話 真実と醜態
フクロウ試験の日がやってきた。
大広間には長いテーブルが消え、代わりに整然と机が並べられ、生徒たちが一斉に筆を走らせていた。
紙の擦れる音、羽根ペンのかすかな鳴き。
イリスは問題に向かいながらも、胸の奥に小さなざわめきを抱えていた。
──あれからスネイプとは、一度も顔を合わせていない。
隣室なのに。会おうと思えば会えるのに、扉を叩く勇気が出なかった。
スネイプが自分の言葉をどう受け止めたのか、確信が持てないからだ。 あの夜のことは、彼にとってあまりにも深い傷に触れることだった。
理解してもらえたかもしれない。だが、日が浅すぎる。彼自身もまだ心の整理をしているはずだ。 もし理解されていなかったとしても、彼の心を楽にしたいと願ったのは結局自分のエゴに過ぎない。そう思うと、胸に重さが残った。
羽根ペンを握る指先に力がこもる。
そのとき、轟音が響いた。
大広間の外から、何度も爆ぜるような音。試験官が振り返り、生徒たちもざわめく。
恐る恐る扉を開いたアンブリッジの目に飛び込んできたのは、眩い光と炸裂する花火の奔流だった。 色とりどりの火花が壁を這い、掲示されていた数々の規則を次々に粉々に砕いていく。
「やった!」
「すごい!」
歓声が巻き起こる。 ウィーズリーの双子がほうきにまたがり、笑いながら大広間を飛び抜ける。
空に「W」の文字が煌々と燃え上がり、生徒たちの心を一気に解き放った。
熱気の渦の中で、ハリーが力尽きたように尻もちをつく。
イリスはその姿を目にし、駆け寄ろうとしたが、ロン、ハーマイオニーが駆けよりハリーを連れてどこかへ向かうのを見送った。
その後を追うように花火に髪を焦がされ、衣服を煤で汚したアンブリッジが、半狂乱の形相で廊下を駆け抜けていった。
その直後、ドラコと取り巻きがイリスの腕を掴む。
「なっ……!」
反応する間もなく、力任せに引きずられていった。
───
辿り着いたのはアンブリッジの書斎だった。
椅子に縛りつけられたハリー、その奥にロンとハーマイオニーが居た。
さらに遅れてジニー、ネビル、ルーナも次々と連れてこられ、部屋の空気は一層重苦しくなる。
アンブリッジは机を乱暴に叩き、甲高い声を響かせた。
「ダンブルドアに会いに行こうとしたのね?!」
「違う!」
ハリーは即座に答える。
その瞬間、アンブリッジの手が閃いた。 乾いた音と共に平手打ちがハリーの頬を打ち据える。
「嘘を言うんじゃありません!」
生徒たちの間に息を呑む音が走る。
教師の威厳はそこになく、恐怖に縋る人間の醜さだけが露わになっていた。
イリスはそんなアンブリッジを冷静に見つめる。
扉が開き、黒衣の裾を翻したスネイプが早足で入ってきた。
「お呼びですかな」
一瞬だけ、イリスと視線が交わる。
その刹那、胸がぎゅっと締めつけられる。
あの夜以来のせっしょくだった。
イリスはスネイプから顔を背けられるのを覚悟していた。
だが、スネイプの瞳は確かにイリスを捉えた。ほんの僅かに歪んだ表情の奥に、言葉にはならない揺らぎがあった。
それを感じ取った瞬間、イリスの心臓は早鐘を打つ。
しかし次の瞬間には、彼の視線はするりとアンブリッジへ移り、いつもの冷徹な仮面が戻っていた。
「ええ。すぐに答えを聞き出さねばならぬのです。抵抗しようとも。真実薬は?」
アンブリッジの声は焦りで震えていた。
スネイプは肩を竦め、冷たく答える。
「校長が生徒に全て使われました。チョウ・チャンに使ったあれが最後です」
その言葉に、生徒たちは一斉に目を見交わした。
裏切りではなかった。
あれは強制だったのだ。
ジニーの目が揺れ、ネビルが息を詰め、ルーナでさえ表情を陰らせた。
イリスも胸の奥に冷たいものを感じていた。
いくら教師とはいえ、ここまで手荒な方法を取っていたとは。
恐怖を操り、支配に縋るその姿に、改めてアンブリッジという人間の醜悪さを見た気がした。
スネイプはハリーを冷めた目で一瞥し、皮肉を吐いた。
「もっとも、ポッターに毒薬を飲ませたいのであれば……お気持ちはよく分かりますが。役には立てません」
吐き捨てるように言い、ローブを翻す。
去ろうとしたその時───。
「パッドフットが捕まった!あの人に、あれが隠された場所で!」
ハリーの叫びが部屋に響いた。 その声に生徒たちが凍りつく。
スネイプの瞳がかすかに光り、呼吸が一瞬だけ乱れる。
しかし彼は振り返らず、静かに歩を進め、そのまま扉を出て行った。
張り詰めた空気だけが、取り残されていた。
フクロウ試験の日がやってきた。
大広間には長いテーブルが消え、代わりに整然と机が並べられ、生徒たちが一斉に筆を走らせていた。
紙の擦れる音、羽根ペンのかすかな鳴き。
イリスは問題に向かいながらも、胸の奥に小さなざわめきを抱えていた。
──あれからスネイプとは、一度も顔を合わせていない。
隣室なのに。会おうと思えば会えるのに、扉を叩く勇気が出なかった。
スネイプが自分の言葉をどう受け止めたのか、確信が持てないからだ。 あの夜のことは、彼にとってあまりにも深い傷に触れることだった。
理解してもらえたかもしれない。だが、日が浅すぎる。彼自身もまだ心の整理をしているはずだ。 もし理解されていなかったとしても、彼の心を楽にしたいと願ったのは結局自分のエゴに過ぎない。そう思うと、胸に重さが残った。
羽根ペンを握る指先に力がこもる。
そのとき、轟音が響いた。
大広間の外から、何度も爆ぜるような音。試験官が振り返り、生徒たちもざわめく。
恐る恐る扉を開いたアンブリッジの目に飛び込んできたのは、眩い光と炸裂する花火の奔流だった。 色とりどりの火花が壁を這い、掲示されていた数々の規則を次々に粉々に砕いていく。
「やった!」
「すごい!」
歓声が巻き起こる。 ウィーズリーの双子がほうきにまたがり、笑いながら大広間を飛び抜ける。
空に「W」の文字が煌々と燃え上がり、生徒たちの心を一気に解き放った。
熱気の渦の中で、ハリーが力尽きたように尻もちをつく。
イリスはその姿を目にし、駆け寄ろうとしたが、ロン、ハーマイオニーが駆けよりハリーを連れてどこかへ向かうのを見送った。
その後を追うように花火に髪を焦がされ、衣服を煤で汚したアンブリッジが、半狂乱の形相で廊下を駆け抜けていった。
その直後、ドラコと取り巻きがイリスの腕を掴む。
「なっ……!」
反応する間もなく、力任せに引きずられていった。
───
辿り着いたのはアンブリッジの書斎だった。
椅子に縛りつけられたハリー、その奥にロンとハーマイオニーが居た。
さらに遅れてジニー、ネビル、ルーナも次々と連れてこられ、部屋の空気は一層重苦しくなる。
アンブリッジは机を乱暴に叩き、甲高い声を響かせた。
「ダンブルドアに会いに行こうとしたのね?!」
「違う!」
ハリーは即座に答える。
その瞬間、アンブリッジの手が閃いた。 乾いた音と共に平手打ちがハリーの頬を打ち据える。
「嘘を言うんじゃありません!」
生徒たちの間に息を呑む音が走る。
教師の威厳はそこになく、恐怖に縋る人間の醜さだけが露わになっていた。
イリスはそんなアンブリッジを冷静に見つめる。
扉が開き、黒衣の裾を翻したスネイプが早足で入ってきた。
「お呼びですかな」
一瞬だけ、イリスと視線が交わる。
その刹那、胸がぎゅっと締めつけられる。
あの夜以来のせっしょくだった。
イリスはスネイプから顔を背けられるのを覚悟していた。
だが、スネイプの瞳は確かにイリスを捉えた。ほんの僅かに歪んだ表情の奥に、言葉にはならない揺らぎがあった。
それを感じ取った瞬間、イリスの心臓は早鐘を打つ。
しかし次の瞬間には、彼の視線はするりとアンブリッジへ移り、いつもの冷徹な仮面が戻っていた。
「ええ。すぐに答えを聞き出さねばならぬのです。抵抗しようとも。真実薬は?」
アンブリッジの声は焦りで震えていた。
スネイプは肩を竦め、冷たく答える。
「校長が生徒に全て使われました。チョウ・チャンに使ったあれが最後です」
その言葉に、生徒たちは一斉に目を見交わした。
裏切りではなかった。
あれは強制だったのだ。
ジニーの目が揺れ、ネビルが息を詰め、ルーナでさえ表情を陰らせた。
イリスも胸の奥に冷たいものを感じていた。
いくら教師とはいえ、ここまで手荒な方法を取っていたとは。
恐怖を操り、支配に縋るその姿に、改めてアンブリッジという人間の醜悪さを見た気がした。
スネイプはハリーを冷めた目で一瞥し、皮肉を吐いた。
「もっとも、ポッターに毒薬を飲ませたいのであれば……お気持ちはよく分かりますが。役には立てません」
吐き捨てるように言い、ローブを翻す。
去ろうとしたその時───。
「パッドフットが捕まった!あの人に、あれが隠された場所で!」
ハリーの叫びが部屋に響いた。 その声に生徒たちが凍りつく。
スネイプの瞳がかすかに光り、呼吸が一瞬だけ乱れる。
しかし彼は振り返らず、静かに歩を進め、そのまま扉を出て行った。
張り詰めた空気だけが、取り残されていた。
