第3章 不死鳥の騎士団
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第10話 交錯する記憶
呆然とするスネイプの腕の中のイリスは大粒の涙を零しながらも声を上げず、ただ震える肩を小さく揺らしていた。冷たい肌の感触が余計に痛々しく、スネイプは言葉を失っていた。
そのとき、鋭い声が部屋に響く。
「なんだよこれ……こんな……!」
ハリーだった。 混乱と恐怖がないまぜになった声色。あの小僧も、同じものを見たのだと悟る。
イリスの過去、彼女が耐え忍んできた残酷な記憶を。まだ思春期の生徒が背負うにはあまりにも重すぎる。混乱し、呼吸が乱れているのも無理はなかった。
しかし、今優先すべきは彼ではない。腕の中で泣き続けるイリスをどうにかするのが先だ。そう判断し、スネイプは彼女を抱え立ち上がろうとした。
だが、その一瞬を突くように光が走った。
「レジリメンス!」
混乱の極みにあったハリーが、反射的に放ってしまったのだ。
避ける暇などなかった。強烈な力が頭を貫き、意識がぐらつく。
──視界が弾け、闇が割れる。
狭い家の中。湿った壁紙、荒れ果てた台所。
痩せ過ぎの少年が、椅子に縮こまり父の怒声を聞いている、母の泣き声がそれに重なる。
少年――スネイプは小さく拳を握りしめ、ただその場に耐えていた。
そんな生活でも居場所があった。 それはふわふわの赤毛で緑の瞳をした無邪気な少女、リリーとの時間だった。
次の瞬間、場面は一気にホグワーツへ。暗い髪を垂らし、孤独に歩くスリザリン生。蔑むような声と笑い声が背を追う。
その中で唯一差し伸べられた温かな声。
「セブルス」
振り向けば、陽だまりのような笑顔。リリーだった。彼女と語らう時間だけが救いであり、唯一の光だった。
時が進み、 スリザリンとグリフィンドールの距離は広がり、言葉が交わらなくなる。
ついには最悪の瞬間――彼の口から飛び出した“あの言葉”。リリーの瞳が凍りつき、永遠に修復できない溝が刻まれた。
そして味方が居なくなったスネイプは、グリフィンドールのひとつのグループからいじめを繰り返し受けていた。
ジェームズ・ポッターを筆頭にブラックやルーピンが笑いながら過去の自分を中へ浮かばせる。
「スニベルスのパンツ見たいやついるー?」
ジェームズは嘲笑いながらそう言い、みなを扇動した。
そして皆の前で屈辱をうけた瞬間。
───
荒い呼吸が戻ってきた。
現実に引きずり戻されたスネイプは汗ばむ手で額を拭い、呻くように立ち上がる。
視線を合わせることはできない。だが、隣には濡れた紅い瞳があった。イリスもまた、記憶を見てしまったのだ。
「もう訓練はこれきりだ。」
これ以上は耐えられなかった。
スネイプはハリーへ冷たくそう告げると彼女の腕を乱暴に掴み、そのまま部屋を出る。ハリーの存在も見ようとしない。息を荒く吐きながら、ただ彼女を引きずるようにして廊下を歩いた。
背後で残されたハリーは膝に手をつき、しばらく呆然としていた。
「なんなんだよ……父さんが……イリスも……」
混乱の中で吐き出す声は震え、理解の及ばぬ真実に押し潰されそうになっていた。
───
泣きながら腕を引かれるイリス。
心を抉られるような自分の記憶を見られたこと、その恥と恐怖が胸を占めていた。
だが自分と同じように人間に苦しめられたスネイプの境遇にも胸を痛め、彼の心に入り込んだ異性がいることにも胸を締め付けられたのだった。
お互い何も言葉を交わさない。
ただただ歩く。彼の手に込められた強すぎる力が、感情の乱れを雄弁に物語っていた。
やがて部屋に着くと、スネイプはイリスを中に押し込むようにして扉を閉めた。
重い音が廊下に響く。続いて隣室の扉が乱雑に閉まる音。
残されたイリスは扉の前で立ち尽くし、涙を伝わせながら、その背中に宿る痛みを想像して胸を締めつけられていた。
呆然とするスネイプの腕の中のイリスは大粒の涙を零しながらも声を上げず、ただ震える肩を小さく揺らしていた。冷たい肌の感触が余計に痛々しく、スネイプは言葉を失っていた。
そのとき、鋭い声が部屋に響く。
「なんだよこれ……こんな……!」
ハリーだった。 混乱と恐怖がないまぜになった声色。あの小僧も、同じものを見たのだと悟る。
イリスの過去、彼女が耐え忍んできた残酷な記憶を。まだ思春期の生徒が背負うにはあまりにも重すぎる。混乱し、呼吸が乱れているのも無理はなかった。
しかし、今優先すべきは彼ではない。腕の中で泣き続けるイリスをどうにかするのが先だ。そう判断し、スネイプは彼女を抱え立ち上がろうとした。
だが、その一瞬を突くように光が走った。
「レジリメンス!」
混乱の極みにあったハリーが、反射的に放ってしまったのだ。
避ける暇などなかった。強烈な力が頭を貫き、意識がぐらつく。
──視界が弾け、闇が割れる。
狭い家の中。湿った壁紙、荒れ果てた台所。
痩せ過ぎの少年が、椅子に縮こまり父の怒声を聞いている、母の泣き声がそれに重なる。
少年――スネイプは小さく拳を握りしめ、ただその場に耐えていた。
そんな生活でも居場所があった。 それはふわふわの赤毛で緑の瞳をした無邪気な少女、リリーとの時間だった。
次の瞬間、場面は一気にホグワーツへ。暗い髪を垂らし、孤独に歩くスリザリン生。蔑むような声と笑い声が背を追う。
その中で唯一差し伸べられた温かな声。
「セブルス」
振り向けば、陽だまりのような笑顔。リリーだった。彼女と語らう時間だけが救いであり、唯一の光だった。
時が進み、 スリザリンとグリフィンドールの距離は広がり、言葉が交わらなくなる。
ついには最悪の瞬間――彼の口から飛び出した“あの言葉”。リリーの瞳が凍りつき、永遠に修復できない溝が刻まれた。
そして味方が居なくなったスネイプは、グリフィンドールのひとつのグループからいじめを繰り返し受けていた。
ジェームズ・ポッターを筆頭にブラックやルーピンが笑いながら過去の自分を中へ浮かばせる。
「スニベルスのパンツ見たいやついるー?」
ジェームズは嘲笑いながらそう言い、みなを扇動した。
そして皆の前で屈辱をうけた瞬間。
───
荒い呼吸が戻ってきた。
現実に引きずり戻されたスネイプは汗ばむ手で額を拭い、呻くように立ち上がる。
視線を合わせることはできない。だが、隣には濡れた紅い瞳があった。イリスもまた、記憶を見てしまったのだ。
「もう訓練はこれきりだ。」
これ以上は耐えられなかった。
スネイプはハリーへ冷たくそう告げると彼女の腕を乱暴に掴み、そのまま部屋を出る。ハリーの存在も見ようとしない。息を荒く吐きながら、ただ彼女を引きずるようにして廊下を歩いた。
背後で残されたハリーは膝に手をつき、しばらく呆然としていた。
「なんなんだよ……父さんが……イリスも……」
混乱の中で吐き出す声は震え、理解の及ばぬ真実に押し潰されそうになっていた。
───
泣きながら腕を引かれるイリス。
心を抉られるような自分の記憶を見られたこと、その恥と恐怖が胸を占めていた。
だが自分と同じように人間に苦しめられたスネイプの境遇にも胸を痛め、彼の心に入り込んだ異性がいることにも胸を締め付けられたのだった。
お互い何も言葉を交わさない。
ただただ歩く。彼の手に込められた強すぎる力が、感情の乱れを雄弁に物語っていた。
やがて部屋に着くと、スネイプはイリスを中に押し込むようにして扉を閉めた。
重い音が廊下に響く。続いて隣室の扉が乱雑に閉まる音。
残されたイリスは扉の前で立ち尽くし、涙を伝わせながら、その背中に宿る痛みを想像して胸を締めつけられていた。
