第3章 不死鳥の騎士団
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第9話 過去。
スネイプが放った光が反射し、己に迫った刹那、イリスが身を投げ出した。
軽い衝撃。腕の中に崩れ落ちた彼女の体は驚くほど冷たく、そして脆かった。
「……!」
言葉を発する間もなく、鋭い流れが意識を貫いた。
視界が揺らぎ、焼けるような光景が押し寄せてくる。
──森。
すぐに目に入ったのはアルビノで、耳がとがった赤子
──イリスが走る母親に抱かれ泣き叫んでいた。
周囲では炎が木々を呑み込み、同胞の悲鳴と至る所に飛び散った血が重なる。人間の刃が次々と振り下ろされ、命が倒れていく。
白い靄に覆われ、場面が移り変わる。
幼いイリスが、痩せ細ったエルフたちと共に飢えに耐えている。凍える夜、震える小さな肩。
森は焼け、植物も動物も激減している。
そんな状況でもエルフ達は誰一人として人間への憎悪を口にすることなく、人間の手が届かぬよう様々な術を施し、静かに森を、自分たちを守っていた。
やがて時が過ぎ、森は豊かさを取り戻す。
青々と茂る木々の中で、成長したイリスが仲間と共に穏やかに暮らしている。そこに長老であろう者がイリスに手招きした。
「アルビノのエルフは最も高貴な存在。やがて森の長となり、皆を導く宿命を背負うのだ。つまりイリスお主は……」
背に重い言葉を受け、イリスは微かに俯いた。喜びよりも、逃れられぬ重さを知る者の影がその横顔に落ちていた。
──場面は再び揺れる。
妹を抱えて波間を必死に泳ぐイリス。魔法を使おうとしているが何も起こらない。前へ泳ぐも波が荒ぶりほとんど進めない。それでもなんとか妹を岸へ押し出すと同時に力尽き自らは濁流に呑まれた。
広大な海。
ひとり漂う日々。寒さと飢えに晒されながらも、潜って魚を捕らえ、僅かな魔法で海水を飲水へ変え、命を繋いでいる。
(……こんな環境でも生き延びたのか)
思わず奥歯を噛みしめるスネイプ。
───
暗転し次に見えてきたのは……
鎖に繋がれたイリス。
陸に着き人間に捕らえられたのだろう。
そして行先はスネイプも見知った見世物小屋。
群衆の嘲笑、荒い息遣い、殴打されても瞬時に癒える身体を利用され、玩具のように弄ばれ、飢えた獣のような視線を浴び続ける日々。
そんな日々が幾度も繰り返され そこに現れたのは自身がよくしる存在ヴォルデモートだった。
彼は繰り返し訪れ、荒々しく彼女を支配した。冷たい声で囁く。
「アルビノのエルフ……特別な血脈。その力は、我がものとなるべきだ」
囁く男の目には異様な執着心が宿っていた。
そして恐怖に震えるイリス。
その姿に、憎悪がスネイプの胸を灼いた。
同時になぜ、あの男がイリスへ執着するのかを理解してしまったのだった。
───
視界が揺らぎ場面は変わる。
再び様々な男からの視線を浴びるイリス。そんな中差し伸べられた手が現れる。 黒衣を纏った男。
スネイプ……自分自身だった。
全てを諦め疲れきった顔を上げ、紅い瞳がその手を見つめる。そして戸惑うイリスの手を強引に引く自分自身。
檻から救い出した日。
不器用なやり取り。
ホグワーツで過ごす温かな日常。
ユールボールで共に踊った夜の記憶。
罰則で過度に傷つけられたイリスの手に薬を塗った夜。
ぎこちなくも確かに交わした時間の数々が温かい雰囲気とともに流れていく。
スネイプは自分がこんなにもイリスの中で幸せな時間として記憶されていることに戸惑った。
これまで自分の気持ちに恐れて身勝手に逃げた自身の浅はかさで胸の奥が鋭く締めつけられる。
────
だが再び闇が覆う。 ヴォルデモートの姿。
「共に来い」
「ここでは生きにくいだろう。俺様の下ではそのような事は感じないはずだ。」
脅迫と甘言が交錯し、イリスの瞳が怯えに揺れる。
その記憶が鋭くスネイプの胸を抉った。
そして――視界は断ち切られる。
────
「見ないで!!!」
イリスの声とともにスネイプは現実に引き戻された。
腕の中でイリスは瞳に大粒の涙を浮かべ、力なく身を委ねている。
「……っ」
声が震えた。
ただの記憶ではなかった。
魂そのものを覗かされたようだった。
イリスはよくいる奴隷という可哀想な境遇だと軽くとらえていた。
しかしこれほどまでに大きな重荷を、残酷な過去をひとりで背負っていたとは思いもしなかった。
人を恨まず、人と共に生きることを受けいれ必死に過去を乗り越えようと生きている凜々しい存在が、なぜ自分を…スネイプという卑屈で臆病で、死した女への未練を断ち切れぬ男を、こんなにも信頼し、幸せの糧としているなんて……あまりにも滑稽ではないか。
胸の奥で抑えきれぬ衝撃と、答えのない問いが渦を巻いた。
スネイプはただ、腕の中のイリスを見下ろし、言葉を失っていた。
スネイプが放った光が反射し、己に迫った刹那、イリスが身を投げ出した。
軽い衝撃。腕の中に崩れ落ちた彼女の体は驚くほど冷たく、そして脆かった。
「……!」
言葉を発する間もなく、鋭い流れが意識を貫いた。
視界が揺らぎ、焼けるような光景が押し寄せてくる。
──森。
すぐに目に入ったのはアルビノで、耳がとがった赤子
──イリスが走る母親に抱かれ泣き叫んでいた。
周囲では炎が木々を呑み込み、同胞の悲鳴と至る所に飛び散った血が重なる。人間の刃が次々と振り下ろされ、命が倒れていく。
白い靄に覆われ、場面が移り変わる。
幼いイリスが、痩せ細ったエルフたちと共に飢えに耐えている。凍える夜、震える小さな肩。
森は焼け、植物も動物も激減している。
そんな状況でもエルフ達は誰一人として人間への憎悪を口にすることなく、人間の手が届かぬよう様々な術を施し、静かに森を、自分たちを守っていた。
やがて時が過ぎ、森は豊かさを取り戻す。
青々と茂る木々の中で、成長したイリスが仲間と共に穏やかに暮らしている。そこに長老であろう者がイリスに手招きした。
「アルビノのエルフは最も高貴な存在。やがて森の長となり、皆を導く宿命を背負うのだ。つまりイリスお主は……」
背に重い言葉を受け、イリスは微かに俯いた。喜びよりも、逃れられぬ重さを知る者の影がその横顔に落ちていた。
──場面は再び揺れる。
妹を抱えて波間を必死に泳ぐイリス。魔法を使おうとしているが何も起こらない。前へ泳ぐも波が荒ぶりほとんど進めない。それでもなんとか妹を岸へ押し出すと同時に力尽き自らは濁流に呑まれた。
広大な海。
ひとり漂う日々。寒さと飢えに晒されながらも、潜って魚を捕らえ、僅かな魔法で海水を飲水へ変え、命を繋いでいる。
(……こんな環境でも生き延びたのか)
思わず奥歯を噛みしめるスネイプ。
───
暗転し次に見えてきたのは……
鎖に繋がれたイリス。
陸に着き人間に捕らえられたのだろう。
そして行先はスネイプも見知った見世物小屋。
群衆の嘲笑、荒い息遣い、殴打されても瞬時に癒える身体を利用され、玩具のように弄ばれ、飢えた獣のような視線を浴び続ける日々。
そんな日々が幾度も繰り返され そこに現れたのは自身がよくしる存在ヴォルデモートだった。
彼は繰り返し訪れ、荒々しく彼女を支配した。冷たい声で囁く。
「アルビノのエルフ……特別な血脈。その力は、我がものとなるべきだ」
囁く男の目には異様な執着心が宿っていた。
そして恐怖に震えるイリス。
その姿に、憎悪がスネイプの胸を灼いた。
同時になぜ、あの男がイリスへ執着するのかを理解してしまったのだった。
───
視界が揺らぎ場面は変わる。
再び様々な男からの視線を浴びるイリス。そんな中差し伸べられた手が現れる。 黒衣を纏った男。
スネイプ……自分自身だった。
全てを諦め疲れきった顔を上げ、紅い瞳がその手を見つめる。そして戸惑うイリスの手を強引に引く自分自身。
檻から救い出した日。
不器用なやり取り。
ホグワーツで過ごす温かな日常。
ユールボールで共に踊った夜の記憶。
罰則で過度に傷つけられたイリスの手に薬を塗った夜。
ぎこちなくも確かに交わした時間の数々が温かい雰囲気とともに流れていく。
スネイプは自分がこんなにもイリスの中で幸せな時間として記憶されていることに戸惑った。
これまで自分の気持ちに恐れて身勝手に逃げた自身の浅はかさで胸の奥が鋭く締めつけられる。
────
だが再び闇が覆う。 ヴォルデモートの姿。
「共に来い」
「ここでは生きにくいだろう。俺様の下ではそのような事は感じないはずだ。」
脅迫と甘言が交錯し、イリスの瞳が怯えに揺れる。
その記憶が鋭くスネイプの胸を抉った。
そして――視界は断ち切られる。
────
「見ないで!!!」
イリスの声とともにスネイプは現実に引き戻された。
腕の中でイリスは瞳に大粒の涙を浮かべ、力なく身を委ねている。
「……っ」
声が震えた。
ただの記憶ではなかった。
魂そのものを覗かされたようだった。
イリスはよくいる奴隷という可哀想な境遇だと軽くとらえていた。
しかしこれほどまでに大きな重荷を、残酷な過去をひとりで背負っていたとは思いもしなかった。
人を恨まず、人と共に生きることを受けいれ必死に過去を乗り越えようと生きている凜々しい存在が、なぜ自分を…スネイプという卑屈で臆病で、死した女への未練を断ち切れぬ男を、こんなにも信頼し、幸せの糧としているなんて……あまりにも滑稽ではないか。
胸の奥で抑えきれぬ衝撃と、答えのない問いが渦を巻いた。
スネイプはただ、腕の中のイリスを見下ろし、言葉を失っていた。
