第3章 不死鳥の騎士団
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第7話 形なき光
必要の部屋は、白銀の光で満ちていた。 生徒たちは次々と杖を振り、「エクスペクト・パトローナム!」の声を響かせる。
ロンの杖先からはぼんやりとした煙。
ハーマイオニーの足元には、小動物の輪郭が淡く現れる。
チョウの守護霊は白鳥の形をとり、羽ばたくたびに部屋の空気が澄んでいく。
ジニーやルーナもそれぞれの光を呼び出し、部屋の熱気は希望に包まれた。
──ほとんどの生徒が成功を収めていた。
イリスも杖を構え、紅い瞳を細める。
「エクスペクト・パトローナム」
だが杖先に灯る光は細く揺らめき、すぐに消えてしまった。
(……浮かばない。強い幸せ、なんて)
エルフの生き方は常に静かで冷静だ。「これが幸せ」という強烈な記憶を思い描くことができない。
仲間たちの笑い声が遠くに感じられ、胸に冷たい影が広がる。
だがふと――あの夜の光景がよみがえった。 傷だらけの手を支え、膝をついて薬を塗ってくれた男。 冷たいはずの掌から伝わった確かな温もり。
その瞬間、杖先から淡い霧が溢れ出た。 輪郭を持たず漂う光。だがその揺らめきは神々しささえ感じさせ、生徒たちの瞳を奪った。
「わぁ……」
「綺麗……」
周りは息を呑み、賞賛の眼差しを向ける。 だが、イリスはただ困惑していた。
(……形が、ない。これは――まだ、私が“人間の幸せ”を受け入れきれていない証…?)
ハーマイオニーが一歩近づき、優しく微笑んだ。
「すごく綺麗だったわ」
「でも、形がない……。私はまだ……」
「そんなに気にしないで。まだ定まっていないだけよ。むしろ、あの光はとても可能性に満ちているように見えたわ」
「……ありがとう」
イリスはハーマイオニーの気遣いに感謝する。けれど胸の奥には、得体の知れぬざわめきが残っていた。
───
その夜。 イリスは眠れず、冷たい空気を求めて廊下へ出た。 吹き抜けの石造りの回廊でベンチに腰掛け、月明かりを仰ぐ。 指先に残る霧の感触を思い出す。
(……私は、何を求めているのだろう)
「夜風は冷えるのぅ」
背後から柔らかな声がした。 振り向けば、青い瞳の老人――ダンブルドアが立っていた。 長い髭を揺らしながら、目尻に笑みを浮かべている。
「眠れぬのじゃな、イリス。……温かいものでも飲もうかのう」
その声音は、まるで孫に語りかける祖父のように穏やかだった。 イリスは促されるまま、校長室へ足を運んだ。
──暖炉の炎がはぜ、湯気の立つカップが前に置かれる。 そしてダンブルドアは好奇心に満ちた瞳でイリスを見つめた。
「どうやら最近、生徒たちが内密に魔法を練習しておるそうじゃな。……イリスもその一員じゃろう?」
「……それは……」
イリスに緊張が走る。秘密が露見してしまった、と。 だが、ダンブルドアは眉を下げ、にこやかに続けた。
「心配はいらぬ。わしは全て承知しておる。 むしろ、この状況に屈せず立ち上がった生徒たちを誇りに思っておるのじゃ」
安心したイリスは、胸の奥に溜め込んでいた想いを小さく吐き出した。
「……私、魔法を学ぶのが楽しいんです。皆と一緒にいるのも嬉しい。異質な私を受け入れてくれて……」
「ふむ」
ダンブルドアは目を細め、ゆったりと頷いた。
「一人で学ぶことも尊いが……仲間と学ぶことはさらに深い。 そのことを理解した君を、わしは嬉しく思うておる」
──その声に、イリスの胸の奥がじんわりと温かくなる。
そこへ、扉が開いた。 マクゴナガルに連れられて、汗だくのハリーが飛び込んでくる。
「ヴォルデモートが……ロンの父さんを!」
一瞬で空気が張り詰め、ダンブルドアの表情が硬くなる。 彼はすぐに立ち上がり、絵画を通じて伝令を飛ばした。
ハリーは声を荒げ、時が止まったようにダンブルドアも一瞬固まるが、はそれに応じず、次の手を進める。
緊張が走る中、黒衣の影――スネイプが現れる。 ダンブルドアはその方へ向き直り、低く告げた。
「セブルス。時間の猶予はなさそうじゃ。……ハリーに閉心術を。そして、イリスにも。二人を守らねばならん」
スネイプの瞳が一瞬揺れ、イリスを射抜く。 その奥に隠しきれない感情が灯っていた。
イリスもまた、不意に告げられたその言葉に息を呑んだ。 事態の重さをまだ呑み込めずに――。
必要の部屋は、白銀の光で満ちていた。 生徒たちは次々と杖を振り、「エクスペクト・パトローナム!」の声を響かせる。
ロンの杖先からはぼんやりとした煙。
ハーマイオニーの足元には、小動物の輪郭が淡く現れる。
チョウの守護霊は白鳥の形をとり、羽ばたくたびに部屋の空気が澄んでいく。
ジニーやルーナもそれぞれの光を呼び出し、部屋の熱気は希望に包まれた。
──ほとんどの生徒が成功を収めていた。
イリスも杖を構え、紅い瞳を細める。
「エクスペクト・パトローナム」
だが杖先に灯る光は細く揺らめき、すぐに消えてしまった。
(……浮かばない。強い幸せ、なんて)
エルフの生き方は常に静かで冷静だ。「これが幸せ」という強烈な記憶を思い描くことができない。
仲間たちの笑い声が遠くに感じられ、胸に冷たい影が広がる。
だがふと――あの夜の光景がよみがえった。 傷だらけの手を支え、膝をついて薬を塗ってくれた男。 冷たいはずの掌から伝わった確かな温もり。
その瞬間、杖先から淡い霧が溢れ出た。 輪郭を持たず漂う光。だがその揺らめきは神々しささえ感じさせ、生徒たちの瞳を奪った。
「わぁ……」
「綺麗……」
周りは息を呑み、賞賛の眼差しを向ける。 だが、イリスはただ困惑していた。
(……形が、ない。これは――まだ、私が“人間の幸せ”を受け入れきれていない証…?)
ハーマイオニーが一歩近づき、優しく微笑んだ。
「すごく綺麗だったわ」
「でも、形がない……。私はまだ……」
「そんなに気にしないで。まだ定まっていないだけよ。むしろ、あの光はとても可能性に満ちているように見えたわ」
「……ありがとう」
イリスはハーマイオニーの気遣いに感謝する。けれど胸の奥には、得体の知れぬざわめきが残っていた。
───
その夜。 イリスは眠れず、冷たい空気を求めて廊下へ出た。 吹き抜けの石造りの回廊でベンチに腰掛け、月明かりを仰ぐ。 指先に残る霧の感触を思い出す。
(……私は、何を求めているのだろう)
「夜風は冷えるのぅ」
背後から柔らかな声がした。 振り向けば、青い瞳の老人――ダンブルドアが立っていた。 長い髭を揺らしながら、目尻に笑みを浮かべている。
「眠れぬのじゃな、イリス。……温かいものでも飲もうかのう」
その声音は、まるで孫に語りかける祖父のように穏やかだった。 イリスは促されるまま、校長室へ足を運んだ。
──暖炉の炎がはぜ、湯気の立つカップが前に置かれる。 そしてダンブルドアは好奇心に満ちた瞳でイリスを見つめた。
「どうやら最近、生徒たちが内密に魔法を練習しておるそうじゃな。……イリスもその一員じゃろう?」
「……それは……」
イリスに緊張が走る。秘密が露見してしまった、と。 だが、ダンブルドアは眉を下げ、にこやかに続けた。
「心配はいらぬ。わしは全て承知しておる。 むしろ、この状況に屈せず立ち上がった生徒たちを誇りに思っておるのじゃ」
安心したイリスは、胸の奥に溜め込んでいた想いを小さく吐き出した。
「……私、魔法を学ぶのが楽しいんです。皆と一緒にいるのも嬉しい。異質な私を受け入れてくれて……」
「ふむ」
ダンブルドアは目を細め、ゆったりと頷いた。
「一人で学ぶことも尊いが……仲間と学ぶことはさらに深い。 そのことを理解した君を、わしは嬉しく思うておる」
──その声に、イリスの胸の奥がじんわりと温かくなる。
そこへ、扉が開いた。 マクゴナガルに連れられて、汗だくのハリーが飛び込んでくる。
「ヴォルデモートが……ロンの父さんを!」
一瞬で空気が張り詰め、ダンブルドアの表情が硬くなる。 彼はすぐに立ち上がり、絵画を通じて伝令を飛ばした。
ハリーは声を荒げ、時が止まったようにダンブルドアも一瞬固まるが、はそれに応じず、次の手を進める。
緊張が走る中、黒衣の影――スネイプが現れる。 ダンブルドアはその方へ向き直り、低く告げた。
「セブルス。時間の猶予はなさそうじゃ。……ハリーに閉心術を。そして、イリスにも。二人を守らねばならん」
スネイプの瞳が一瞬揺れ、イリスを射抜く。 その奥に隠しきれない感情が灯っていた。
イリスもまた、不意に告げられたその言葉に息を呑んだ。 事態の重さをまだ呑み込めずに――。
