第2章 炎のゴブレット
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第20話 涙なき誓い
医務室で目を覚ましたとき、イリスの胸の奥はまだ冷たかった。 瞼を閉じれば、セドリックが崩れ落ちる瞬間が焼き付いて離れない。 それでも涙は出ない。胸の奥に空いた空洞が痛いのに、人間のように泣くことはできなかった。
(……どうして。どうして人は、人を殺せるの……?)
答えは見つからないまま、マクゴナガルが迎えに来る。
「……さあ、式へ行きましょう」
その声に導かれ、イリスは足を重く動かした。
───
大広間は静寂に包まれていた。 正面には白い花に囲まれた棺。集まった生徒と教師たちのすすり泣く声が、石造りの壁に響いている。
壇上に立ったダンブルドアが深く頭を下げ、静かな声で語りかけた。
「セドリック・ディゴリーは、勇敢で、正直で、優しい心を持った生徒じゃった。彼を失ったことは、我々すべてにとって大きな痛みじゃ。どうか皆、この仲間を忘れないでほしい。」
その言葉に、生徒たちは涙を流した。肩を震わせ、互いに寄り添い、声を殺して泣き続ける。
イリスはただ立ち尽くしていた。胸の奥には冷たい穴が空いたまま、涙は一滴も流れない。
(……私には、こんなふうに泣けない。人間のように、悲しみを表現出来るほど強い気持ちが持てない)
周囲の視線が刺さる。
「冷たいんじゃないか」
「本当は何か知ってるんじゃないのか」
「自作自演だったりして…」
ヒソヒソとした声が聞こえるたび、胸が軋んだ。
けれど否定の言葉は喉に詰まり、ただ静かに瞳を伏せるしかできなかった。
───
式の後、校庭で閉会式が執り行われた。 いつもなら華やかに彩られるはずの場は、重苦しい空気に沈んでいた。
ダンブルドアは多くを語らず、ただ大会の終了を告げると、生徒たちを見渡し、降壇した。
イリスはその姿を見ながら、胸の内に小さく誓った。
(……逃げてはいけない。私は、見た。闇が復活した瞬間を。だからこそ――立ち向かわなければ)
───
午後の陽光が傾き始めたころ、校庭に再び人々のざわめきが広がった。
ダームストラングの船が湖へ戻り、波間に沈む。
ボーバトンの馬車がゆるやかに空へ舞い上がる。
別れの時間だった。
その中で、フラーが足早にイリスへ歩み寄った。
「イリス。……もう一度、ありがとう。あの湖で、妹を守ろうとしてくれたこと、私を救ったこと」
彼女の青い瞳は真剣で、感謝に満ちていた。
イリスは首を横に振る。
「本当に救ったのはハリーよ」
「でも、最初に手を差し伸べたのはあなた」
フラーは柔らかく笑い、妹のいる馬車へと戻っていった。
──馬車が夕空に消えていくのを見送る。 白銀の髪を風に揺らしながら、イリスはひとり、校庭に立ち尽くした。
胸の中にはまだ、理解できない「死」の衝撃と、人間にはなれない自分への違和感。
けれど同時に――あの時、迷わず誰かを守ろうとした自分が確かにいた。
(……私は檻には戻らない。もう、逃げたりはしない)
紅の瞳に夕日が映り込み、静かな決意が燃えていた。 こうして、波乱のトライウィザード・トーナメントは幕を閉じた。
医務室で目を覚ましたとき、イリスの胸の奥はまだ冷たかった。 瞼を閉じれば、セドリックが崩れ落ちる瞬間が焼き付いて離れない。 それでも涙は出ない。胸の奥に空いた空洞が痛いのに、人間のように泣くことはできなかった。
(……どうして。どうして人は、人を殺せるの……?)
答えは見つからないまま、マクゴナガルが迎えに来る。
「……さあ、式へ行きましょう」
その声に導かれ、イリスは足を重く動かした。
───
大広間は静寂に包まれていた。 正面には白い花に囲まれた棺。集まった生徒と教師たちのすすり泣く声が、石造りの壁に響いている。
壇上に立ったダンブルドアが深く頭を下げ、静かな声で語りかけた。
「セドリック・ディゴリーは、勇敢で、正直で、優しい心を持った生徒じゃった。彼を失ったことは、我々すべてにとって大きな痛みじゃ。どうか皆、この仲間を忘れないでほしい。」
その言葉に、生徒たちは涙を流した。肩を震わせ、互いに寄り添い、声を殺して泣き続ける。
イリスはただ立ち尽くしていた。胸の奥には冷たい穴が空いたまま、涙は一滴も流れない。
(……私には、こんなふうに泣けない。人間のように、悲しみを表現出来るほど強い気持ちが持てない)
周囲の視線が刺さる。
「冷たいんじゃないか」
「本当は何か知ってるんじゃないのか」
「自作自演だったりして…」
ヒソヒソとした声が聞こえるたび、胸が軋んだ。
けれど否定の言葉は喉に詰まり、ただ静かに瞳を伏せるしかできなかった。
───
式の後、校庭で閉会式が執り行われた。 いつもなら華やかに彩られるはずの場は、重苦しい空気に沈んでいた。
ダンブルドアは多くを語らず、ただ大会の終了を告げると、生徒たちを見渡し、降壇した。
イリスはその姿を見ながら、胸の内に小さく誓った。
(……逃げてはいけない。私は、見た。闇が復活した瞬間を。だからこそ――立ち向かわなければ)
───
午後の陽光が傾き始めたころ、校庭に再び人々のざわめきが広がった。
ダームストラングの船が湖へ戻り、波間に沈む。
ボーバトンの馬車がゆるやかに空へ舞い上がる。
別れの時間だった。
その中で、フラーが足早にイリスへ歩み寄った。
「イリス。……もう一度、ありがとう。あの湖で、妹を守ろうとしてくれたこと、私を救ったこと」
彼女の青い瞳は真剣で、感謝に満ちていた。
イリスは首を横に振る。
「本当に救ったのはハリーよ」
「でも、最初に手を差し伸べたのはあなた」
フラーは柔らかく笑い、妹のいる馬車へと戻っていった。
──馬車が夕空に消えていくのを見送る。 白銀の髪を風に揺らしながら、イリスはひとり、校庭に立ち尽くした。
胸の中にはまだ、理解できない「死」の衝撃と、人間にはなれない自分への違和感。
けれど同時に――あの時、迷わず誰かを守ろうとした自分が確かにいた。
(……私は檻には戻らない。もう、逃げたりはしない)
紅の瞳に夕日が映り込み、静かな決意が燃えていた。 こうして、波乱のトライウィザード・トーナメントは幕を閉じた。
