第2章 炎のゴブレット
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第17話 復活する闇
体が乱暴に振り回され、空間そのものが裂けていく感覚に飲み込まれた。
イリスは必死に杯を握り締めたまま、目を開けることもできない。光が千々に砕け、耳を劈く轟音が鼓膜を突き破りそうだった。
──そして、次の瞬間。
硬い地面に叩きつけられる。肺から空気が吐き出され、胸が苦しい。
荒い息を吐きながら顔を上げると、そこは見知らぬ墓地だった。夜気は重く、湿った土の匂いが鼻を刺す。石造りの墓標が無数に並び、背筋に粟が立つほどの死の気配が漂っていた。
「ここ……は……?」
ハリーもセドリックも息を切らしながら立ち上がる。
すると奥の建物から、何かを抱いた小柄な男が姿を現した。
確かにその風貌に見覚えがあった。
──暴れ柳の家で見た、ピーター・ペティグリューだ。
その正体を理解した瞬間、掠れた声が夜を裂いた。
「殺せ」
「アバダ・ケダブラ!」
緑の閃光が走り、セドリックは声を上げる暇もなく、その場に崩れ落ちた。
「……っ!」
イリスは動けなかった。目の前で、命が光のように消えていく。
なぜ?
どうして?
奪う理由も告げられず、抗う間も与えられず、ただ一瞬で。
頭の奥が真っ白になり、足が地面に縫い付けられたように震えた。
「セドリック!!」
ハリーの悲痛な叫びが夜に響く。だが返る声はない。
──
「捕えろ」
次の命令で、影が襲い掛かってきた。イリスもハリーも呪文で弾き飛ばされ、強烈な束縛が身体を絡め取った。
ハリーは墓石に押し付けられ、イリスは枯れかけた芝生に縫い付けられる。
動かそうとするたび、鎖のような魔力が食い込み、息さえ苦しい。
ピーターは死神像の前に据えられた大釜へ近づいた。
「血を……捧げろ」
その声に従い、ナイフがハリーへ向けられる。
ハリーの腕に刃が走り、赤が滴り落ちる。
大釜はぐつぐつと泡立ち、異様な黒煙を上げた。
その中に次々と投げ込まれる──骨、血、肉。
魔力の粒子が乱れ、周囲の空気が軋んだ。自然の理をねじ伏せる、強引で醜悪な術式。イリスは思わず吐き気を覚えた。
──そして最後にピーターが抱いていた何かを乱雑に入れる。
黒い煙の中から、一つの人影が立ち上がる。毛髪はなく、鼻もない、爬虫類のような顔。
これが、魔法界が最も恐れた存在
──ヴォルデモート。
復活したその魔法使いは、まずハリーに目を向けて興奮したように声を張り上げた。
だがすぐに、イリスを見て口角を吊り上げた。
「……ほう。これはこれは」
ゆっくりと歩み寄り、その瞳がいやらしく輝く。
「こんなところにいたのか、イリス」
馴れ馴れしい声音に、イリスは困惑を隠せない。
「足繁く通った俺様を忘れたのか? あんなに沢山“可愛がった”ではないか」
心臓が凍り付いた。
──思い出した。
かつて見世物小屋に囚われていた日々。
多額の金を払い、何度も通ってきた男がいた。
フードを深く被り、部屋を暗くして決して顔を見せなかった。だが、一度だけ見たことがある。その顔――。
(……同じ……この顔……!)
血の気が引く。震えが止まらない。
「お前は人間の檻に閉じ込められ、虐げられていた。だが、お前の力は人間のものではない。居場所を与えてやれるのは、この俺様だ」
甘美で残酷な声が響く。
「人間どもなどに縋るな。俺様と来い、イリス」
体の奥から冷たさが這い上がり、喉が塞がる。答えられない。
「彼女を巻き込むな!」
ハリーの声が鋭く割り込んだ。縛られてなお、必死に叫ぶその瞳は、イリスを守ろうとしていた。
ヴォルデモートは嗤い、ピーターの腕に刻まれた闇の印に杖を当てる。厚い雲が空を覆い、死喰い人たちが次々と現れて円陣を組む。
やがてヴォルデモートは、強制的にハリーを解放し、決闘を始めた。
呪文と呪文がぶつかり合い、空気が爆ぜる。
「アバダ・ケダブラ!」
「エクスペリアームス!」
二つの呪文が繋がり、杖と杖の間に光の奔流が走る。
──呪文逆出現効果、プリオリ・インカンターテム、直前呪文だ。
イリスは縛られたまま必死に目を凝らした。
兄弟杖……二人の間にある繋がりを、敏感に感じ取っていた。
やがて光の中に、亡霊のような姿が浮かぶ。
大人の男女――そしてセドリック。
(……彼らは、私たちのために時間を稼いでいる……!)
見えない鎖に締め付けられながらも震える腕でセドリックの亡骸に縋った。
──逃げなければ、ここで全てが終わる。
「イリス! ポートキーに!」
ハリーの叫びが夜を裂いた。
イリスは最後の力を振り絞り、彼へ手を伸ばす。
その手をハリーが掴み、優勝杯を呼び寄せる。
轟音とともに光が弾け、世界が再び裏返った。
白銀の髪が宙に散り、紅い瞳が大きく見開かれる。
──墓場の光景は闇に溶け、彼らは再び引きずり込まれていった。
体が乱暴に振り回され、空間そのものが裂けていく感覚に飲み込まれた。
イリスは必死に杯を握り締めたまま、目を開けることもできない。光が千々に砕け、耳を劈く轟音が鼓膜を突き破りそうだった。
──そして、次の瞬間。
硬い地面に叩きつけられる。肺から空気が吐き出され、胸が苦しい。
荒い息を吐きながら顔を上げると、そこは見知らぬ墓地だった。夜気は重く、湿った土の匂いが鼻を刺す。石造りの墓標が無数に並び、背筋に粟が立つほどの死の気配が漂っていた。
「ここ……は……?」
ハリーもセドリックも息を切らしながら立ち上がる。
すると奥の建物から、何かを抱いた小柄な男が姿を現した。
確かにその風貌に見覚えがあった。
──暴れ柳の家で見た、ピーター・ペティグリューだ。
その正体を理解した瞬間、掠れた声が夜を裂いた。
「殺せ」
「アバダ・ケダブラ!」
緑の閃光が走り、セドリックは声を上げる暇もなく、その場に崩れ落ちた。
「……っ!」
イリスは動けなかった。目の前で、命が光のように消えていく。
なぜ?
どうして?
奪う理由も告げられず、抗う間も与えられず、ただ一瞬で。
頭の奥が真っ白になり、足が地面に縫い付けられたように震えた。
「セドリック!!」
ハリーの悲痛な叫びが夜に響く。だが返る声はない。
──
「捕えろ」
次の命令で、影が襲い掛かってきた。イリスもハリーも呪文で弾き飛ばされ、強烈な束縛が身体を絡め取った。
ハリーは墓石に押し付けられ、イリスは枯れかけた芝生に縫い付けられる。
動かそうとするたび、鎖のような魔力が食い込み、息さえ苦しい。
ピーターは死神像の前に据えられた大釜へ近づいた。
「血を……捧げろ」
その声に従い、ナイフがハリーへ向けられる。
ハリーの腕に刃が走り、赤が滴り落ちる。
大釜はぐつぐつと泡立ち、異様な黒煙を上げた。
その中に次々と投げ込まれる──骨、血、肉。
魔力の粒子が乱れ、周囲の空気が軋んだ。自然の理をねじ伏せる、強引で醜悪な術式。イリスは思わず吐き気を覚えた。
──そして最後にピーターが抱いていた何かを乱雑に入れる。
黒い煙の中から、一つの人影が立ち上がる。毛髪はなく、鼻もない、爬虫類のような顔。
これが、魔法界が最も恐れた存在
──ヴォルデモート。
復活したその魔法使いは、まずハリーに目を向けて興奮したように声を張り上げた。
だがすぐに、イリスを見て口角を吊り上げた。
「……ほう。これはこれは」
ゆっくりと歩み寄り、その瞳がいやらしく輝く。
「こんなところにいたのか、イリス」
馴れ馴れしい声音に、イリスは困惑を隠せない。
「足繁く通った俺様を忘れたのか? あんなに沢山“可愛がった”ではないか」
心臓が凍り付いた。
──思い出した。
かつて見世物小屋に囚われていた日々。
多額の金を払い、何度も通ってきた男がいた。
フードを深く被り、部屋を暗くして決して顔を見せなかった。だが、一度だけ見たことがある。その顔――。
(……同じ……この顔……!)
血の気が引く。震えが止まらない。
「お前は人間の檻に閉じ込められ、虐げられていた。だが、お前の力は人間のものではない。居場所を与えてやれるのは、この俺様だ」
甘美で残酷な声が響く。
「人間どもなどに縋るな。俺様と来い、イリス」
体の奥から冷たさが這い上がり、喉が塞がる。答えられない。
「彼女を巻き込むな!」
ハリーの声が鋭く割り込んだ。縛られてなお、必死に叫ぶその瞳は、イリスを守ろうとしていた。
ヴォルデモートは嗤い、ピーターの腕に刻まれた闇の印に杖を当てる。厚い雲が空を覆い、死喰い人たちが次々と現れて円陣を組む。
やがてヴォルデモートは、強制的にハリーを解放し、決闘を始めた。
呪文と呪文がぶつかり合い、空気が爆ぜる。
「アバダ・ケダブラ!」
「エクスペリアームス!」
二つの呪文が繋がり、杖と杖の間に光の奔流が走る。
──呪文逆出現効果、プリオリ・インカンターテム、直前呪文だ。
イリスは縛られたまま必死に目を凝らした。
兄弟杖……二人の間にある繋がりを、敏感に感じ取っていた。
やがて光の中に、亡霊のような姿が浮かぶ。
大人の男女――そしてセドリック。
(……彼らは、私たちのために時間を稼いでいる……!)
見えない鎖に締め付けられながらも震える腕でセドリックの亡骸に縋った。
──逃げなければ、ここで全てが終わる。
「イリス! ポートキーに!」
ハリーの叫びが夜を裂いた。
イリスは最後の力を振り絞り、彼へ手を伸ばす。
その手をハリーが掴み、優勝杯を呼び寄せる。
轟音とともに光が弾け、世界が再び裏返った。
白銀の髪が宙に散り、紅い瞳が大きく見開かれる。
──墓場の光景は闇に溶け、彼らは再び引きずり込まれていった。
