第2章 炎のゴブレット
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第12話 水底に囚われる者
ホグワーツに再び平穏が訪れたかのように思えた数日後。 しかし、落ち着かない気配を連れてきた人物がいた。
――リタ・スキーター。
これまで捕まらないようにひっそりと逃げ回っていたイリス。 それもここまでだ。とうとう捕まってしまったのだから。
───
「まぁ、ついに捕まえたわね」
大広間を出たところで、不意に腕を取られた。振り向けば、派手な緑のローブに毒々しい爪先。眼鏡の奥の瞳がいやらしく光っている。
「“人間社会に紛れ込んだエルフ代表”。あなたの記事が出れば読者は大喜びよ。愛と涙、禁断の恋まで……面白おかしい見出しが並ぶわね」
イリスは身を強張らせた。
「やめてください。そんな話はしていません」
「まぁまぁ、謙遜しちゃって。ほら、“不思議な力でズルをした?”、“教授に庇われる赤き瞳の妖精”……どれも素敵な記事になるわ」
にやにやと迫るリタ。イリスは後ずさる。
その時。
「……十分だ」
冷たい声が割って入った。 黒衣の裾を翻し、スネイプが現れる。
「授業を妨げ、生徒を追い回すとは。さぞ立派な記者魂だな」
「まぁ! あなたが守っているのね?」
リタは目を輝かせる。
「“冷酷な教授にだけ心を許すエルフ代表”……いい見出しになるわ」
「消えろ」
スネイプの低い声に、空気が凍りついた。リタは肩をすくめ、名残惜しげに羽ペンを走らせながら去っていった。
残されたイリスは、胸を強く打たれていた。 (……また庇ってくれた?) ユールボールの夜から続く奇妙な感情が再び芽をもたげ、鼓動が速くなる。
───
数日後。ホグワーツ中を騒がせる記事が出回った。
『ホグワーツの赤き瞳の妖精、疑惑の代表者!』 『冷酷な教授に守られる影――不自然な選出の裏に何が?』
イリスは目を伏せ、記事を握りしめた。インタビューなど一言も受けていないのに。
「やっぱり教授に気に入られてるんだろ?」 「特別扱いされてるから選ばれたんじゃないのか?」
生徒たちの皮肉が突き刺さる。今度はスネイプの名前まで口にされるようになり、彼女の孤立はさらに深まった。
だがイリスは、冷めた瞳で考えていた。
──人間は思いやりや共感、他者の痛みに寄り添う力を持つ。 だが同時に、嘘や噂に流され、集団で理不尽を許してしまう愚かさも抱いている。
悠久の時を生きる種族だからこそ、彼女は思い返す。母や長老の言葉。
「数に頼る人間が自然を破壊したのは必然。だが彼らにも優しさはあった」
過去を憎むのではなく、今の人間を見つめる。 スネイプが庇った姿。ハリーやハーマイオニーの支え。確かに“癒す者”もここにいるのだ。
───
そして第2課題の日が近づく。
「水底から大切なものを取り返せ」
――金の卵の謎が明かされ、代表者たちが湖の前に集う。
イリスはスネイプ先生へ頼み込み制服をスカートからズボン姿に整えていた。ジャージという発想はなくとも、水中で動きやすい服をと考えた結果だった。
胸の奥で小さな期待が膨らむ。
(……私にとって“大切なもの”とは何なのか)
合図が鳴り、他の代表たちが次々と飛び込む。 イリスは一人、足を止めた。背中に囁きが飛ぶ。
「怖いのか?」
「出遅れたな」
それでも、ゆっくりと杖を構えた。
「……プロテゴ」
周囲に空気の層が展開しイリスを包む。そして静かに水面へ飛び込んだ。 泡が弾け、身体を包む膜が呼吸を保つ。
観客席がざわめく。
「防御魔法で水中を……?」
「そんな方法が……」
だがイリスは気にせず、深い闇へと潜っていった。 心の奥に浮かぶのは、ひとつの問い。
――“私にとって、本当に大切なものは何なのか”
その答えを探すように、彼女は歌声の響く湖の底へと泳ぎ進んでいった。
ホグワーツに再び平穏が訪れたかのように思えた数日後。 しかし、落ち着かない気配を連れてきた人物がいた。
――リタ・スキーター。
これまで捕まらないようにひっそりと逃げ回っていたイリス。 それもここまでだ。とうとう捕まってしまったのだから。
───
「まぁ、ついに捕まえたわね」
大広間を出たところで、不意に腕を取られた。振り向けば、派手な緑のローブに毒々しい爪先。眼鏡の奥の瞳がいやらしく光っている。
「“人間社会に紛れ込んだエルフ代表”。あなたの記事が出れば読者は大喜びよ。愛と涙、禁断の恋まで……面白おかしい見出しが並ぶわね」
イリスは身を強張らせた。
「やめてください。そんな話はしていません」
「まぁまぁ、謙遜しちゃって。ほら、“不思議な力でズルをした?”、“教授に庇われる赤き瞳の妖精”……どれも素敵な記事になるわ」
にやにやと迫るリタ。イリスは後ずさる。
その時。
「……十分だ」
冷たい声が割って入った。 黒衣の裾を翻し、スネイプが現れる。
「授業を妨げ、生徒を追い回すとは。さぞ立派な記者魂だな」
「まぁ! あなたが守っているのね?」
リタは目を輝かせる。
「“冷酷な教授にだけ心を許すエルフ代表”……いい見出しになるわ」
「消えろ」
スネイプの低い声に、空気が凍りついた。リタは肩をすくめ、名残惜しげに羽ペンを走らせながら去っていった。
残されたイリスは、胸を強く打たれていた。 (……また庇ってくれた?) ユールボールの夜から続く奇妙な感情が再び芽をもたげ、鼓動が速くなる。
───
数日後。ホグワーツ中を騒がせる記事が出回った。
『ホグワーツの赤き瞳の妖精、疑惑の代表者!』 『冷酷な教授に守られる影――不自然な選出の裏に何が?』
イリスは目を伏せ、記事を握りしめた。インタビューなど一言も受けていないのに。
「やっぱり教授に気に入られてるんだろ?」 「特別扱いされてるから選ばれたんじゃないのか?」
生徒たちの皮肉が突き刺さる。今度はスネイプの名前まで口にされるようになり、彼女の孤立はさらに深まった。
だがイリスは、冷めた瞳で考えていた。
──人間は思いやりや共感、他者の痛みに寄り添う力を持つ。 だが同時に、嘘や噂に流され、集団で理不尽を許してしまう愚かさも抱いている。
悠久の時を生きる種族だからこそ、彼女は思い返す。母や長老の言葉。
「数に頼る人間が自然を破壊したのは必然。だが彼らにも優しさはあった」
過去を憎むのではなく、今の人間を見つめる。 スネイプが庇った姿。ハリーやハーマイオニーの支え。確かに“癒す者”もここにいるのだ。
───
そして第2課題の日が近づく。
「水底から大切なものを取り返せ」
――金の卵の謎が明かされ、代表者たちが湖の前に集う。
イリスはスネイプ先生へ頼み込み制服をスカートからズボン姿に整えていた。ジャージという発想はなくとも、水中で動きやすい服をと考えた結果だった。
胸の奥で小さな期待が膨らむ。
(……私にとって“大切なもの”とは何なのか)
合図が鳴り、他の代表たちが次々と飛び込む。 イリスは一人、足を止めた。背中に囁きが飛ぶ。
「怖いのか?」
「出遅れたな」
それでも、ゆっくりと杖を構えた。
「……プロテゴ」
周囲に空気の層が展開しイリスを包む。そして静かに水面へ飛び込んだ。 泡が弾け、身体を包む膜が呼吸を保つ。
観客席がざわめく。
「防御魔法で水中を……?」
「そんな方法が……」
だがイリスは気にせず、深い闇へと潜っていった。 心の奥に浮かぶのは、ひとつの問い。
――“私にとって、本当に大切なものは何なのか”
その答えを探すように、彼女は歌声の響く湖の底へと泳ぎ進んでいった。
