第2章 炎のゴブレット
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第1話 理解できぬ名誉
夏が過ぎ、ホグワーツに新しい学期が訪れた。 大広間には星空を映す天井と、燭台の灯りが黄金色に瞬いている。皿の上には料理が山と盛られ、生徒たちは笑い、囁き、ざわめいていた。
だがその熱気には、いつもとは違うものが混じっていた。 ――今年、ホグワーツで「トリウィザード・トーナメント」が開かれる。 誰もがその噂に胸を高鳴らせ、期待と好奇で落ち着きを失っていた。
イリスは長卓の隅に座り、その空気を冷静に眺めていた。 命を削るような競技を、なぜ人間は望むのだろう。 エルフの世界には「危険を娯楽に変える文化」など存在しない。その違いに、胸の奥で冷たい戸惑いが広がる。
やがて、立ち上がったのはダンブルドアだった。 白い髭を撫でながら、静かに、しかし朗々と声を響かせる。
「今年、我がホグワーツでは――トリウィザード・トーナメントが開催される」
瞬間、大広間は歓声に包まれた。 異国の学校、選ばれし勇者たち、そして名誉の戦い。生徒たちの瞳が熱に燃える。
「三つの学校から一人ずつ代表が選ばれ、危険な試練に挑むこととなる。年齢制限が設けられているのは、命を守るためじゃ」
言葉に、再び歓声。 だがイリスの胸には理解できない疑念が残った。 名誉のために死地へ赴く……それが人間の誇りなのか。
卓を挟んで向かい側、スネイプの低い声が小さく聞こえた。
「……危険な催しを……馬鹿げている」
その横顔は影を落としていたが、イリスは思わず目を向けてしまう。彼だけは、この熱狂に与していないのだと。
やがて夕食が終わり、大広間がざわめきに満ちる。 だがそのざわめきの一部は、明らかにイリスに向けられていた。
「エルフなら絶対に強いはずだ」 「年齢制限って、人間にしか効かないんじゃないか?」 「きっとゴブレットに選ばれるぞ」
赤い瞳が好奇と恐怖を集める。 イリスは視線を受け流しながらも、不快な気配を拭い去ることはできなかった。
――もう注目されるのはごめんだ。 絶対に、この競技には関わらない。
そう胸の奥で強く決意した。
───
その夜。
自室のベッドに横たわり、石造りの天井を見つめる。
耳の奥にはまだ、生徒たちの歓声が残っていた。
なぜ――命を危険にさらしてまで、競技を望むのだろう。
エルフの世界では、命は森そのものと繋がり、大切に護るべきものだった。
危うい状況を避け、静かに知識を積み重ねていくことこそ、叡智とされる。
それなのに人間は、自らの命を削る行為を「名誉」と呼ぶ。
その価値観がイリスには理解できなかった。
「……分からない」
小さく呟いた言葉が闇に溶ける。
胸の奥に重い疑問を抱えたまま、イリスは静かに眠りへと沈んでいった。
夏が過ぎ、ホグワーツに新しい学期が訪れた。 大広間には星空を映す天井と、燭台の灯りが黄金色に瞬いている。皿の上には料理が山と盛られ、生徒たちは笑い、囁き、ざわめいていた。
だがその熱気には、いつもとは違うものが混じっていた。 ――今年、ホグワーツで「トリウィザード・トーナメント」が開かれる。 誰もがその噂に胸を高鳴らせ、期待と好奇で落ち着きを失っていた。
イリスは長卓の隅に座り、その空気を冷静に眺めていた。 命を削るような競技を、なぜ人間は望むのだろう。 エルフの世界には「危険を娯楽に変える文化」など存在しない。その違いに、胸の奥で冷たい戸惑いが広がる。
やがて、立ち上がったのはダンブルドアだった。 白い髭を撫でながら、静かに、しかし朗々と声を響かせる。
「今年、我がホグワーツでは――トリウィザード・トーナメントが開催される」
瞬間、大広間は歓声に包まれた。 異国の学校、選ばれし勇者たち、そして名誉の戦い。生徒たちの瞳が熱に燃える。
「三つの学校から一人ずつ代表が選ばれ、危険な試練に挑むこととなる。年齢制限が設けられているのは、命を守るためじゃ」
言葉に、再び歓声。 だがイリスの胸には理解できない疑念が残った。 名誉のために死地へ赴く……それが人間の誇りなのか。
卓を挟んで向かい側、スネイプの低い声が小さく聞こえた。
「……危険な催しを……馬鹿げている」
その横顔は影を落としていたが、イリスは思わず目を向けてしまう。彼だけは、この熱狂に与していないのだと。
やがて夕食が終わり、大広間がざわめきに満ちる。 だがそのざわめきの一部は、明らかにイリスに向けられていた。
「エルフなら絶対に強いはずだ」 「年齢制限って、人間にしか効かないんじゃないか?」 「きっとゴブレットに選ばれるぞ」
赤い瞳が好奇と恐怖を集める。 イリスは視線を受け流しながらも、不快な気配を拭い去ることはできなかった。
――もう注目されるのはごめんだ。 絶対に、この競技には関わらない。
そう胸の奥で強く決意した。
───
その夜。
自室のベッドに横たわり、石造りの天井を見つめる。
耳の奥にはまだ、生徒たちの歓声が残っていた。
なぜ――命を危険にさらしてまで、競技を望むのだろう。
エルフの世界では、命は森そのものと繋がり、大切に護るべきものだった。
危うい状況を避け、静かに知識を積み重ねていくことこそ、叡智とされる。
それなのに人間は、自らの命を削る行為を「名誉」と呼ぶ。
その価値観がイリスには理解できなかった。
「……分からない」
小さく呟いた言葉が闇に溶ける。
胸の奥に重い疑問を抱えたまま、イリスは静かに眠りへと沈んでいった。
