第1章 アズカバンの囚人
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第23話 和解
翌朝の医務室。 薬草と薬瓶の匂いが満ちたその部屋で、マダム・ポンフリーの声が鋭く響いた。
「まだ包帯も取れていないんですから、ベッドに戻りなさい!」
その前に立つのはスネイプだった。 黒いローブをぴたりと着込み、外見には隙ひとつ見せていない。だが彼がまだ深い傷を負っていることは、ポンフリーの言葉から明らかだった。
「……授業を放置しては、生徒たちがどうなるか分かっているだろう。魔法薬学室には既に課題が山積みだ。我輩の仕事を、誰が代わりに出来る?」
ポンフリーは腰に手を当て、声を荒げる。
「仕事より命の方が大事です! それが分からないんですか、セブルス!」
スネイプは一歩も引かず、冷たい目を細める。
「生きているからこそ、仕事があるのだ。邪魔をするなミス・ポンフリー。」
言い合う二人の間に、医務室の扉が開いた。 そこに立っていたのはイリスだった。
「……お前もか」
スネイプは眉をひそめ、面倒そうに吐き捨てる。
イリスは口を開きかけたが、何も言えず立ち尽くした。 結局その日、スネイプはポンフリーの制止も聞かず仕事へ戻っていった。
───
あれから数週間
夕刻になると、イリスは必ず魔法薬学室を訪れるようになった。
「……傷は、もう大丈夫なのですか?」
毎日のように同じ問いを繰り返す。
「いちいち人の邪魔をするのが得意らしいな」
スネイプは皮肉を返し、うんざりしたように眉を寄せる。だがその声の端に、微かな柔らかさが混じるのをイリスは感じていた。 彼が完全に拒絶しているわけではないことが、分かる。
2人は夕方、決まった時間に顔を合わせることが日常になりつつあった。
───
ロンも治療を終え、ベッドから解放されていた。足を引きずりながらも笑顔を浮かべ、談笑できるほどに回復している。
「この前は……疑って悪かったよ」
ロンがぎこちなく言葉を落とすと、ハーマイオニーも頷いた。
「私たちも誤解してたわ」
「いいえ。……もう気にしていない」
イリスは淡々と答えたが、その胸の奥では小さな安堵が広がっていた。
話の流れで、ハリーがふと思い出したように切り出す。
「そうだ。シリウスから伝言を預かってるんだ」
三人の視線が一斉に集まる。
ハリーは少し複雑な顔で口を開いた。
「“あの時はすまない。脅すだけのつもりが、珍しいエルフの君が攻撃を避けるものだから、面白くてついやりすぎてしまったよ。悪いね”……だってさ」
イリスは小さく眉を寄せ、低く呟いた。
「……あれは、本気で殺す目つきだった」
その真剣な声に、三人は一瞬きょとんとし――次の瞬間、吹き出した。
「シリウスってば〜!」
「ほんと、悪ふざけがすぎるよな!」
「はは……」
人間たちは笑い飛ばすことで恐怖や緊張を軽くしてしまう。 その様子にイリスは小首を傾げた。自分にはまだ理解できない文化だが、笑い合う空気が不思議と心地よかった。
笑いが収まった頃、ハーマイオニーが急に真顔になった。
「ねぇ、イリス……あなたって、何歳なの?」
ロンも「確かに!」と身を乗り出す。ハリーも興味津々の顔だ。
イリスは少し考え、逆に問い返した。
「……今は、西暦で何年?」
「1994年よ」
ハーマイオニーが即答する。
イリスは静かに頷き、淡々と告げた。
「ならば……私は、今年でたぶん1100歳くらいになる」
「ええーーっ!? 1100歳!?」
三人の声が重なり、部屋中に響き渡る。
「信じられない……」
ハーマイオニーが目を丸くする。
「見た目は俺たちと同じくらいなのに!」
とハリー。
「長生きすぎる……」
とロン。
イリスは淡々と首を傾げる。
「エルフでは普通のこと。……たぶん、人間に換算すると20代くらいだと思う」
「20代!?」
「1100年生きてて、まだ!?」
また三人の大げさな声が上がり、外の廊下にまで響いた。
こうしてイリスの年齢は、一気にホグワーツ中に知れ渡ることとなった。
その夜、窓の外では雲間から覗いた月が校舎を照らしていた。 イリスは静かに空を見上げ、胸の内で小さく呟いた。
「……やはり人間は、不思議だ」
翌朝の医務室。 薬草と薬瓶の匂いが満ちたその部屋で、マダム・ポンフリーの声が鋭く響いた。
「まだ包帯も取れていないんですから、ベッドに戻りなさい!」
その前に立つのはスネイプだった。 黒いローブをぴたりと着込み、外見には隙ひとつ見せていない。だが彼がまだ深い傷を負っていることは、ポンフリーの言葉から明らかだった。
「……授業を放置しては、生徒たちがどうなるか分かっているだろう。魔法薬学室には既に課題が山積みだ。我輩の仕事を、誰が代わりに出来る?」
ポンフリーは腰に手を当て、声を荒げる。
「仕事より命の方が大事です! それが分からないんですか、セブルス!」
スネイプは一歩も引かず、冷たい目を細める。
「生きているからこそ、仕事があるのだ。邪魔をするなミス・ポンフリー。」
言い合う二人の間に、医務室の扉が開いた。 そこに立っていたのはイリスだった。
「……お前もか」
スネイプは眉をひそめ、面倒そうに吐き捨てる。
イリスは口を開きかけたが、何も言えず立ち尽くした。 結局その日、スネイプはポンフリーの制止も聞かず仕事へ戻っていった。
───
あれから数週間
夕刻になると、イリスは必ず魔法薬学室を訪れるようになった。
「……傷は、もう大丈夫なのですか?」
毎日のように同じ問いを繰り返す。
「いちいち人の邪魔をするのが得意らしいな」
スネイプは皮肉を返し、うんざりしたように眉を寄せる。だがその声の端に、微かな柔らかさが混じるのをイリスは感じていた。 彼が完全に拒絶しているわけではないことが、分かる。
2人は夕方、決まった時間に顔を合わせることが日常になりつつあった。
───
ロンも治療を終え、ベッドから解放されていた。足を引きずりながらも笑顔を浮かべ、談笑できるほどに回復している。
「この前は……疑って悪かったよ」
ロンがぎこちなく言葉を落とすと、ハーマイオニーも頷いた。
「私たちも誤解してたわ」
「いいえ。……もう気にしていない」
イリスは淡々と答えたが、その胸の奥では小さな安堵が広がっていた。
話の流れで、ハリーがふと思い出したように切り出す。
「そうだ。シリウスから伝言を預かってるんだ」
三人の視線が一斉に集まる。
ハリーは少し複雑な顔で口を開いた。
「“あの時はすまない。脅すだけのつもりが、珍しいエルフの君が攻撃を避けるものだから、面白くてついやりすぎてしまったよ。悪いね”……だってさ」
イリスは小さく眉を寄せ、低く呟いた。
「……あれは、本気で殺す目つきだった」
その真剣な声に、三人は一瞬きょとんとし――次の瞬間、吹き出した。
「シリウスってば〜!」
「ほんと、悪ふざけがすぎるよな!」
「はは……」
人間たちは笑い飛ばすことで恐怖や緊張を軽くしてしまう。 その様子にイリスは小首を傾げた。自分にはまだ理解できない文化だが、笑い合う空気が不思議と心地よかった。
笑いが収まった頃、ハーマイオニーが急に真顔になった。
「ねぇ、イリス……あなたって、何歳なの?」
ロンも「確かに!」と身を乗り出す。ハリーも興味津々の顔だ。
イリスは少し考え、逆に問い返した。
「……今は、西暦で何年?」
「1994年よ」
ハーマイオニーが即答する。
イリスは静かに頷き、淡々と告げた。
「ならば……私は、今年でたぶん1100歳くらいになる」
「ええーーっ!? 1100歳!?」
三人の声が重なり、部屋中に響き渡る。
「信じられない……」
ハーマイオニーが目を丸くする。
「見た目は俺たちと同じくらいなのに!」
とハリー。
「長生きすぎる……」
とロン。
イリスは淡々と首を傾げる。
「エルフでは普通のこと。……たぶん、人間に換算すると20代くらいだと思う」
「20代!?」
「1100年生きてて、まだ!?」
また三人の大げさな声が上がり、外の廊下にまで響いた。
こうしてイリスの年齢は、一気にホグワーツ中に知れ渡ることとなった。
その夜、窓の外では雲間から覗いた月が校舎を照らしていた。 イリスは静かに空を見上げ、胸の内で小さく呟いた。
「……やはり人間は、不思議だ」
