第1章 アズカバンの囚人
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第22話 重なる背中
意識が戻ると同時に、頭の奥に鈍い痛みが広がっていた。 瞼を持ち上げると視界が滲み、荒い呼吸が耳の奥で反響する。
――我輩を、あの小僧が吹き飛ばした。
思い出した瞬間、胸の奥に屈辱と怒りがせり上がった。 無様に意識を失うなど、決してあってはならないことだ。
しかし、その感情をかき消すように夜を裂く咆哮が響く。 その瞬間走り出していた。
そして、外へ出るとシリウスとルーピンの姿はなく獰猛な獣が姿を現す。
――人狼。
生徒たちは硬直していた。 ハリーも、ハーマイオニーも、そしてイリスも、恐怖に縫いとめられたかのように動けない。
その光景を見た瞬間、スネイプの身体は勝手に前へ出ていた。 守らねばならない。
生徒を――そしてイリスを。
再び、何も出来ずに大切なものを失うわけにはいかなかった。 リリーを守れなかったあの日の絶望を、繰り返してはならない。
杖を構えたが、爪は速すぎた。 閃光のような痛みが走り、腕から腹、そして太腿を斜めに切り裂かれる。 鮮血が飛び散り、膝が崩れ落ちる。
あまりにも鋭い痛みで、思うように動けない。
このままでは、生徒たちが――彼女が、目の前で喰い殺される。
また、守れないのか。
その瞬間、遠くから人狼の仲間の声がした。やつはその方向へと走り去る。
危機が過ぎ去ったことが分かったスネイプは意識がゆっくりと遠のく。
しかし声が耳に届いた。
「先生!」
必死に自分を呼ぶ声。泣きそうな、震える声。
白い光が視界の端に差し込んだ。温かさを伴った魔力が、裂かれた肉を縫うように流れ込む。 止まらぬはずの血が収まり、焼けつくような痛みが和らいでいく。
――馬鹿な。“エピスキー”など、本来は小さな傷にしか効かぬはず。 なぜこれほどまでに……
滲む視界の中、白い髪と赤い瞳の少女が必死に自分を見つめていた。 その真剣な眼差しに、胸の奥が強く揺れる。
我輩が……守られるなど。
否定したかった。冷徹であろうとする自分にとって、それは屈辱であるはずだ。 けれど、胸の奥に広がっていたのは安堵に近い温かさだった。 この感覚を、何と呼べばよいのか分からない。
──いや、分かりたくない
ふらつきながら立ち上がろうとすると、肩を支える力を感じた。 イリスが必死に支えている。
しかしまだロン・ウィーズリーがいる。
スネイプは立ち上がるとイリスの肩を借りるだけにし、イリスがロンをしっかり支えられるようにした。
まだ細く小さな背中で2人を支え歩くイリスの姿にかつての記憶が不意に蘇る。
理不尽な嘲笑の中で、ただひとり自分を庇ってくれた赤毛の少女――リリー。 あの時の温もりと、今肩を支える力が、重なって見えた。
動揺を悟られぬように、冷たさで覆い隠す。 言葉を紡ぐ声は、いつもの調子を装っていた。
「……お前も、たまには役に立つのだな」
それが感謝の言葉であると、自分自身すら素直には認められなかった。 だが心の奥底では、少女の力がこれからどのように目覚めていくのか――考えずにはいられなかった。
意識が戻ると同時に、頭の奥に鈍い痛みが広がっていた。 瞼を持ち上げると視界が滲み、荒い呼吸が耳の奥で反響する。
――我輩を、あの小僧が吹き飛ばした。
思い出した瞬間、胸の奥に屈辱と怒りがせり上がった。 無様に意識を失うなど、決してあってはならないことだ。
しかし、その感情をかき消すように夜を裂く咆哮が響く。 その瞬間走り出していた。
そして、外へ出るとシリウスとルーピンの姿はなく獰猛な獣が姿を現す。
――人狼。
生徒たちは硬直していた。 ハリーも、ハーマイオニーも、そしてイリスも、恐怖に縫いとめられたかのように動けない。
その光景を見た瞬間、スネイプの身体は勝手に前へ出ていた。 守らねばならない。
生徒を――そしてイリスを。
再び、何も出来ずに大切なものを失うわけにはいかなかった。 リリーを守れなかったあの日の絶望を、繰り返してはならない。
杖を構えたが、爪は速すぎた。 閃光のような痛みが走り、腕から腹、そして太腿を斜めに切り裂かれる。 鮮血が飛び散り、膝が崩れ落ちる。
あまりにも鋭い痛みで、思うように動けない。
このままでは、生徒たちが――彼女が、目の前で喰い殺される。
また、守れないのか。
その瞬間、遠くから人狼の仲間の声がした。やつはその方向へと走り去る。
危機が過ぎ去ったことが分かったスネイプは意識がゆっくりと遠のく。
しかし声が耳に届いた。
「先生!」
必死に自分を呼ぶ声。泣きそうな、震える声。
白い光が視界の端に差し込んだ。温かさを伴った魔力が、裂かれた肉を縫うように流れ込む。 止まらぬはずの血が収まり、焼けつくような痛みが和らいでいく。
――馬鹿な。“エピスキー”など、本来は小さな傷にしか効かぬはず。 なぜこれほどまでに……
滲む視界の中、白い髪と赤い瞳の少女が必死に自分を見つめていた。 その真剣な眼差しに、胸の奥が強く揺れる。
我輩が……守られるなど。
否定したかった。冷徹であろうとする自分にとって、それは屈辱であるはずだ。 けれど、胸の奥に広がっていたのは安堵に近い温かさだった。 この感覚を、何と呼べばよいのか分からない。
──いや、分かりたくない
ふらつきながら立ち上がろうとすると、肩を支える力を感じた。 イリスが必死に支えている。
しかしまだロン・ウィーズリーがいる。
スネイプは立ち上がるとイリスの肩を借りるだけにし、イリスがロンをしっかり支えられるようにした。
まだ細く小さな背中で2人を支え歩くイリスの姿にかつての記憶が不意に蘇る。
理不尽な嘲笑の中で、ただひとり自分を庇ってくれた赤毛の少女――リリー。 あの時の温もりと、今肩を支える力が、重なって見えた。
動揺を悟られぬように、冷たさで覆い隠す。 言葉を紡ぐ声は、いつもの調子を装っていた。
「……お前も、たまには役に立つのだな」
それが感謝の言葉であると、自分自身すら素直には認められなかった。 だが心の奥底では、少女の力がこれからどのように目覚めていくのか――考えずにはいられなかった。
