第1章 アズカバンの囚人
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第21話 満月の爪痕
月明かりに照らされ、ルーピンの体が震えていた。 苦しげな呻き声が夜気を震わせる。額に滲む汗、引き攣る表情。
イリスは自然と一歩退いた。 ――これはただの病ではない。 直感が告げる。
「ハリー、ハーマイオニー、ロン、あとお前も……下がれ!」
シリウスが鋭く叫ぶ。緊迫した声。
次の瞬間、骨の軋む音が響いた。 衣服が裂け、背骨が異様に盛り上がり、毛が逆立つ。 指先は鉤爪に変わり、口からは鋭い牙が覗いた。
そこにいたのは、もう“教師”ルーピンではなかった。 巨大な狼――人狼だった。
「……人間が……人ではないものに……本当だったの……?」
イリスは小さく呟いた。 エルフの世界にはこのような生物は存在しない。 その異様な光景に、胸の奥が冷たく強張る。
人狼の咆哮が屋敷を揺らした。
シリウスは即座に黒犬へと姿を変える。 次の瞬間、二つの獣が激しくぶつかり合った。 牙と爪が交錯する。
凄まじい衝突の末、黒犬の体が吹き飛ばされ、崖へ落ちていく。
「シリウス!」
ハリーの叫びが虚しく響く。
その瞬間――
「……ッ!」
暴れ柳の根元から走り出てきた黒衣の影。 スネイプだった。
乱れた髪を振り払いながら、咄嗟に杖を構える。 そしてイリスと子どもたちを、ぐいと腕で押し戻すように庇い、その前に立ち塞がった。
だが次の瞬間、唸り声と共に人狼の鉤爪が振り下ろされる。
「――ッ!」
鋭い閃光が走ったかのように、爪痕がスネイプの腕、腹、太腿を斜めに裂いた。 鮮血が飛び散り、彼の体が床に崩れ落ちる。
「先生……!」
イリスの視界が真っ白になった。胸が締め付けられ、思考が追いつかない。
その時、遠くから長い遠吠えが響いた。 ルーピンは耳を震わせ、目を爛々と光らせると、方向を変えて走り去っていった。
ハリーとハーマイオニーはこちらを振り返る。後を追いたいのだろう…。
イリスはすかさず言った。
「行って!」
そうして残されたのは血を流すスネイプ。
イリスは慌てて駆け寄り、その体を支えた。 傷口は深く、息も荒い。
「動かないで……私が、何とかする」
イリスは両手をかざし、必死に呪文を唱える。
「エピスキー!」
青白い光が傷口に染み込み、血が止まっていく。 完全には塞がらないが、それでも歩ける程度には回復した。
スネイプは痛みからか険しい顔をしているが、イリスの魔法をみて一瞬目を見開いた。
「……僕のことも、忘れないで……」
情けない声が背後から聞こえる。 振り返れば、ロンが変な方向に曲がった足を抱え、青ざめた顔でこちらを見ていた。
「……もちろん覚えてるよ。でも、それは私じゃどうしようもない…。頑張って立てる?」
イリスはロンの肩を取り、立たせる。 もう片方の肩では、まだふらつくスネイプに肩を貸し支える。
三人でよろめきながら校舎を目指した。 その胸に広がるのは
「守られた」熱と、
「自分が助けることができた」という自信
やがて校舎の灯りが見えてきた。 その時、スネイプが息を絞り出すように呟いた。
「……たまには……役に立つものだな」
それは、感謝の言葉。 イリスの胸は熱を帯び、言葉にならずにただ彼の横顔を見つめた。
「誤解してたよ……ごめん。これからは仲良くするよ」
ロンが、照れ隠しのように呟いた。 イリスは思わず、フフッと小さく笑った。
夜空の満月は、ちょうど厚い雲に隠れようとしていた。
月明かりに照らされ、ルーピンの体が震えていた。 苦しげな呻き声が夜気を震わせる。額に滲む汗、引き攣る表情。
イリスは自然と一歩退いた。 ――これはただの病ではない。 直感が告げる。
「ハリー、ハーマイオニー、ロン、あとお前も……下がれ!」
シリウスが鋭く叫ぶ。緊迫した声。
次の瞬間、骨の軋む音が響いた。 衣服が裂け、背骨が異様に盛り上がり、毛が逆立つ。 指先は鉤爪に変わり、口からは鋭い牙が覗いた。
そこにいたのは、もう“教師”ルーピンではなかった。 巨大な狼――人狼だった。
「……人間が……人ではないものに……本当だったの……?」
イリスは小さく呟いた。 エルフの世界にはこのような生物は存在しない。 その異様な光景に、胸の奥が冷たく強張る。
人狼の咆哮が屋敷を揺らした。
シリウスは即座に黒犬へと姿を変える。 次の瞬間、二つの獣が激しくぶつかり合った。 牙と爪が交錯する。
凄まじい衝突の末、黒犬の体が吹き飛ばされ、崖へ落ちていく。
「シリウス!」
ハリーの叫びが虚しく響く。
その瞬間――
「……ッ!」
暴れ柳の根元から走り出てきた黒衣の影。 スネイプだった。
乱れた髪を振り払いながら、咄嗟に杖を構える。 そしてイリスと子どもたちを、ぐいと腕で押し戻すように庇い、その前に立ち塞がった。
だが次の瞬間、唸り声と共に人狼の鉤爪が振り下ろされる。
「――ッ!」
鋭い閃光が走ったかのように、爪痕がスネイプの腕、腹、太腿を斜めに裂いた。 鮮血が飛び散り、彼の体が床に崩れ落ちる。
「先生……!」
イリスの視界が真っ白になった。胸が締め付けられ、思考が追いつかない。
その時、遠くから長い遠吠えが響いた。 ルーピンは耳を震わせ、目を爛々と光らせると、方向を変えて走り去っていった。
ハリーとハーマイオニーはこちらを振り返る。後を追いたいのだろう…。
イリスはすかさず言った。
「行って!」
そうして残されたのは血を流すスネイプ。
イリスは慌てて駆け寄り、その体を支えた。 傷口は深く、息も荒い。
「動かないで……私が、何とかする」
イリスは両手をかざし、必死に呪文を唱える。
「エピスキー!」
青白い光が傷口に染み込み、血が止まっていく。 完全には塞がらないが、それでも歩ける程度には回復した。
スネイプは痛みからか険しい顔をしているが、イリスの魔法をみて一瞬目を見開いた。
「……僕のことも、忘れないで……」
情けない声が背後から聞こえる。 振り返れば、ロンが変な方向に曲がった足を抱え、青ざめた顔でこちらを見ていた。
「……もちろん覚えてるよ。でも、それは私じゃどうしようもない…。頑張って立てる?」
イリスはロンの肩を取り、立たせる。 もう片方の肩では、まだふらつくスネイプに肩を貸し支える。
三人でよろめきながら校舎を目指した。 その胸に広がるのは
「守られた」熱と、
「自分が助けることができた」という自信
やがて校舎の灯りが見えてきた。 その時、スネイプが息を絞り出すように呟いた。
「……たまには……役に立つものだな」
それは、感謝の言葉。 イリスの胸は熱を帯び、言葉にならずにただ彼の横顔を見つめた。
「誤解してたよ……ごめん。これからは仲良くするよ」
ロンが、照れ隠しのように呟いた。 イリスは思わず、フフッと小さく笑った。
夜空の満月は、ちょうど厚い雲に隠れようとしていた。
