第1章 アズカバンの囚人
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第20話 暴かれる真実
暴れ柳の根元で、黒犬がロンの足を咥えて引きずり込んでいく。 ハリーとハーマイオニーは枝に阻まれ、近づくことができない。
イリスは息を呑み、咄嗟に伸ばした手でロンの手を掴んだ。 引き込まれる力に逆らえず、そのまま二人まとめて穴の中へと落ちていく。
――暗い通路。冷たい土の匂いに包まれ、ずるずると奥へと運ばれる。 やがて辿り着いたのは、朽ちた家具の散らばる屋敷の一室だった。
ロンは呻きながら床に転がる。 イリスはすぐに駆け寄り、その体を支える。足は不自然に折れ曲がり、立ち上がれそうにない。
──これではすぐに逃げられない。
そう思った時、影の中から再びあの黒犬が姿を現した。 黄色く光る眼が二人を睨みつけ――やがて輪郭が揺らぎ、痩せこけた男の姿に変わる。
シリウス・ブラック。
その名を知らずとも、あの夜の光景が頭をよぎる。 ファットレディを切り裂いたあの時――思わず唾を飲み込む音が、沈黙に響いた。
シリウスは赤い瞳のイリスを見つけ、薄く笑う。
「……ほぅ。やはり“人”ではないのだな」
イリスは無意識に、傷ついたロンを庇うように前へ立った。
だがシリウスは襲い掛かっては来ない。 飢えた獣のような鋭さの奥に、好奇心を帯びた視線を光らせていた。
そこへ――階段を駆け下りる音。 ハリーとハーマイオニーが飛び込んでくる。
「ロン!」
「大丈夫!?」
ハリーはすぐにシリウスへ突進した。 怒りに駆られた瞳。杖を構えるより早く体が動いていた。
シリウスはその勢いをいなし、床に押さえつける。 ハーマイオニーが悲鳴を上げ、イリスは息を飲んだ。
だがハリーは押さえつけられたまま、声を荒らげる。
「……お前が父さんと母さんを殺したのは知ってるんだ!」
「違う! 裏切ったのは俺ではない!」
「嘘だ!」
ハリーが叫ぶ。怒りに震える声。 そのとき、別の声が割り込んだ。
「……ハリー。彼の言葉は事実だ」
振り向くと、入口にルーピンが立っていた。 額に汗を滲ませ、苦しげな表情。それでも迷いなくシリウスの側に歩み寄る。
「リーマス……!」
シリウスの声は、旧友を呼ぶ響きに満ちていた。 そして二人は力強く抱擁を交わす。
ハリーもハーマイオニーも、そしてイリスも息を呑む。 どうしてルーピンがシリウスを庇うのか。 事実はひとつのはずなのに、人間はこうして“真実”をねじ曲げる……その不条理にイリスは困惑した。
ルーピンは低く続ける。
「長い間待っていた……やっと君の言葉を聞ける時が来たんだな」
「そうだ。裏切ったのは、あいつだ」
シリウスの声に憎悪がにじむ。ハリーに向けられた指は――ロンの腕に抱えられている鼠を指していた。
その瞬間、低い声が背後から響いた。
「……見つけたぞ」
杖を構えた黒衣の男、スネイプだった。 髪は乱れ、呼吸は荒い。それでも目には執念が燃えていた。
「復讐は密より甘い…。
お前を捕まえるのをどれほど待ち望んだことか……。」
ぞっとするほど冷たい声音。 そしてシリウス、ルーピンとの間に割って入り、さりげなくイリスたちを背後に庇う。
「囚人ブラック、そして裏切り者ルーピン。この場で捕らえて、ディメンターに差し出してやろう…」
イリスは胸を強く締めつけられるような感覚に包まれる。 守るように立つその背に、また名の知らぬ熱が広がっていった。
「エクスペリアームス!」
鋭い声と共に閃光。スネイプは弾き飛ばされ、崩れかけのベッドに倒れ込んだ。 動かぬその姿を見て、イリスの胸の熱は一気に冷め、困惑だけが残る。
振り返ると杖を握っていたのはハリーだった。
唯一の守り手をなぜ……? 理解できぬまま、ハリーの声が響く。
「どういうことなのか、説明してくれ!」
シリウスは瞳を輝かせ、叫ぶように言った。
「裏切ったのは――ピーター・ペティグリューだ!」
半信半疑のハリーを前に、シリウスは痺れを切らす。 ロンの腕に抱えられていたスキャバーズを強引に奪い取る。
「離せ! こいつはただの鼠だ!」
ロンが叫ぶが、ルーピンとシリウスは力を合わせ、逃げ出そうとするスキャバーズに呪文を放った。
閃光の中で、小さな体が膨張していく。 骨が軋む音、肉が伸び、やがて哀れな中年男の姿に変わった。
――ピーター・ペティグリュー。
ロンもハリーも、信じられないという顔で彼を見つめる。 ハーマイオニーが小さく悲鳴を上げ、イリスも息を呑んだ。
やがて真実が次々と明かされた。
どうやら本当にシリウスは無実で、このピーター・ペティグリューが全て行ったことであったのだ。
そうして皆は屋敷を出ることになる。 ピーターを逃がさぬよう拘束したまま外に出ると、日は完全に沈んでいた。
青白い月明かりが一同を照らす。 ようやく一息ついた、その時――
「あ……ぁ……」
うめき声がする。視線を向けると、ルーピンが月を仰ぎ、体を痙攣させていた。
満月が、夜空に昇っていた。
暴れ柳の根元で、黒犬がロンの足を咥えて引きずり込んでいく。 ハリーとハーマイオニーは枝に阻まれ、近づくことができない。
イリスは息を呑み、咄嗟に伸ばした手でロンの手を掴んだ。 引き込まれる力に逆らえず、そのまま二人まとめて穴の中へと落ちていく。
――暗い通路。冷たい土の匂いに包まれ、ずるずると奥へと運ばれる。 やがて辿り着いたのは、朽ちた家具の散らばる屋敷の一室だった。
ロンは呻きながら床に転がる。 イリスはすぐに駆け寄り、その体を支える。足は不自然に折れ曲がり、立ち上がれそうにない。
──これではすぐに逃げられない。
そう思った時、影の中から再びあの黒犬が姿を現した。 黄色く光る眼が二人を睨みつけ――やがて輪郭が揺らぎ、痩せこけた男の姿に変わる。
シリウス・ブラック。
その名を知らずとも、あの夜の光景が頭をよぎる。 ファットレディを切り裂いたあの時――思わず唾を飲み込む音が、沈黙に響いた。
シリウスは赤い瞳のイリスを見つけ、薄く笑う。
「……ほぅ。やはり“人”ではないのだな」
イリスは無意識に、傷ついたロンを庇うように前へ立った。
だがシリウスは襲い掛かっては来ない。 飢えた獣のような鋭さの奥に、好奇心を帯びた視線を光らせていた。
そこへ――階段を駆け下りる音。 ハリーとハーマイオニーが飛び込んでくる。
「ロン!」
「大丈夫!?」
ハリーはすぐにシリウスへ突進した。 怒りに駆られた瞳。杖を構えるより早く体が動いていた。
シリウスはその勢いをいなし、床に押さえつける。 ハーマイオニーが悲鳴を上げ、イリスは息を飲んだ。
だがハリーは押さえつけられたまま、声を荒らげる。
「……お前が父さんと母さんを殺したのは知ってるんだ!」
「違う! 裏切ったのは俺ではない!」
「嘘だ!」
ハリーが叫ぶ。怒りに震える声。 そのとき、別の声が割り込んだ。
「……ハリー。彼の言葉は事実だ」
振り向くと、入口にルーピンが立っていた。 額に汗を滲ませ、苦しげな表情。それでも迷いなくシリウスの側に歩み寄る。
「リーマス……!」
シリウスの声は、旧友を呼ぶ響きに満ちていた。 そして二人は力強く抱擁を交わす。
ハリーもハーマイオニーも、そしてイリスも息を呑む。 どうしてルーピンがシリウスを庇うのか。 事実はひとつのはずなのに、人間はこうして“真実”をねじ曲げる……その不条理にイリスは困惑した。
ルーピンは低く続ける。
「長い間待っていた……やっと君の言葉を聞ける時が来たんだな」
「そうだ。裏切ったのは、あいつだ」
シリウスの声に憎悪がにじむ。ハリーに向けられた指は――ロンの腕に抱えられている鼠を指していた。
その瞬間、低い声が背後から響いた。
「……見つけたぞ」
杖を構えた黒衣の男、スネイプだった。 髪は乱れ、呼吸は荒い。それでも目には執念が燃えていた。
「復讐は密より甘い…。
お前を捕まえるのをどれほど待ち望んだことか……。」
ぞっとするほど冷たい声音。 そしてシリウス、ルーピンとの間に割って入り、さりげなくイリスたちを背後に庇う。
「囚人ブラック、そして裏切り者ルーピン。この場で捕らえて、ディメンターに差し出してやろう…」
イリスは胸を強く締めつけられるような感覚に包まれる。 守るように立つその背に、また名の知らぬ熱が広がっていった。
「エクスペリアームス!」
鋭い声と共に閃光。スネイプは弾き飛ばされ、崩れかけのベッドに倒れ込んだ。 動かぬその姿を見て、イリスの胸の熱は一気に冷め、困惑だけが残る。
振り返ると杖を握っていたのはハリーだった。
唯一の守り手をなぜ……? 理解できぬまま、ハリーの声が響く。
「どういうことなのか、説明してくれ!」
シリウスは瞳を輝かせ、叫ぶように言った。
「裏切ったのは――ピーター・ペティグリューだ!」
半信半疑のハリーを前に、シリウスは痺れを切らす。 ロンの腕に抱えられていたスキャバーズを強引に奪い取る。
「離せ! こいつはただの鼠だ!」
ロンが叫ぶが、ルーピンとシリウスは力を合わせ、逃げ出そうとするスキャバーズに呪文を放った。
閃光の中で、小さな体が膨張していく。 骨が軋む音、肉が伸び、やがて哀れな中年男の姿に変わった。
――ピーター・ペティグリュー。
ロンもハリーも、信じられないという顔で彼を見つめる。 ハーマイオニーが小さく悲鳴を上げ、イリスも息を呑んだ。
やがて真実が次々と明かされた。
どうやら本当にシリウスは無実で、このピーター・ペティグリューが全て行ったことであったのだ。
そうして皆は屋敷を出ることになる。 ピーターを逃がさぬよう拘束したまま外に出ると、日は完全に沈んでいた。
青白い月明かりが一同を照らす。 ようやく一息ついた、その時――
「あ……ぁ……」
うめき声がする。視線を向けると、ルーピンが月を仰ぎ、体を痙攣させていた。
満月が、夜空に昇っていた。
