第1章 アズカバンの囚人
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第18話 満ちゆく月
ホグワーツの空気はどこかざわついていた。 最近、ハリーが透明マントでホグズミードへ抜け出したという噂が広がり、生徒たちの関心はその話題で持ちきりだった。 イリスは、不思議でならなかった。 「彼は規則を破ったはずなのに、誰も本気で責めていない……」 エルフの世界では、掟を破れば必ず正される。だがここでは、勇気や無鉄砲さが賞賛に変わる。かと思えば、厳しく責め立てることもある。人間社会の曖昧さが、また理解できぬ溝として胸に残った。
夕食を終えたイリスは調べ物をするために図書館を訪れていた。 静かな空間。ランプの光に照らされた分厚い本。人狼の絵が書かれている ページをめくる手は進むが、心はどこか上の空だった。昨日から続く胸の熱さ。自分の中で渦巻く感情に、まだ名を与えられずにいる。 時間を確認すると既に消灯時間を回っていた。イリスは慌てて本を戻し図書室を出た。
そんな時、背後から穏やかな声が響いた。
「……こんな時間に、本を探していたのかい?」
振り返ると、ルーピンが立っていた。 顔色が悪い。額にうっすらと汗がにじんでいる。
「……夜に出歩かない方がいい。特に君は……危険を引き寄せやすいようだ」
イリスは小さく瞬きをした。その声音が妙に胸に刺さる。
優しい言葉だった。けれど、そこには別の意図がある気がしてならなかった。 ――やはり、この人が。スネイプが疑っている人物なのか? 淡く漂う匂いの中に、あの黒い犬と似たものを確かに感じ取った。
イリスは小さく礼をして、急ぎ足で教室を後にした。 二人きりになるのは、得策ではないと感じたからだ。
廊下はしんと静まり返り、 胸の奥に居心地の悪さが広がり、足早に歩を進める。
「……何をしていた?」
冷たい声。角を曲がると同時に聞こえた声。そこにはスネイプがいた。 闇に溶けるような黒衣、鋭い眼差し。
「ルーピンと……話していたな」
「……え、なんで?」
「お忘れですかな?夜のホグワーツはよく声が響くということを。」
スネイプはため息を着く。
「我輩が話したからと言って、ミスイリスが調べ動く必要は無いのだ。この件は我輩が対処する。無用な危険に足を踏み入れるな。」
冷たく突き放すように言う。しかし、突き放してる割には優しく、巻き込みたくないという気持ちがイリスには見えていた。
そこへ、別の足音。 背後からルーピンが現れる。 互いに目を合わせた瞬間、空気が張り詰めた。
「……セブルス、何か勘違いしているようだが人に危害を加えるつもりはない」
スネイプが言ったように夜のホグワーツはよく声が通る為かルーピンには筒抜けの会話だったようだ。 ルーピンの声は柔らかいが、どこか切迫している。
スネイプは鼻で笑った。
「危害を加える気がなくとも、危険そのものを抱えているのは事実だ。……近づくな」
低い声に、守ろうとする意志が滲んでいた。 ルーピンは言葉を飲み込み、静かに視線を落とす。 その背を見送ったスネイプは、わずかに息を吐いて、イリスへ視線を戻した。
「……余計なことは考えるな。早く部屋に戻れ」
そう言って背を翻した。
ひとり部屋に戻って来たイリスは、胸に手を当てた。 熱い。どうしてこんなにも、彼の言葉ひとつで揺れるのだろう。 その意味をまだ理解できず、ただ立ち尽くす。
ふと窓の外に目をやると、夜空に大きな月が浮かんでいた。 まだ満ちきってはいない。けれど、確実に膨らみを増している。
――満月は近い。
ホグワーツの空気はどこかざわついていた。 最近、ハリーが透明マントでホグズミードへ抜け出したという噂が広がり、生徒たちの関心はその話題で持ちきりだった。 イリスは、不思議でならなかった。 「彼は規則を破ったはずなのに、誰も本気で責めていない……」 エルフの世界では、掟を破れば必ず正される。だがここでは、勇気や無鉄砲さが賞賛に変わる。かと思えば、厳しく責め立てることもある。人間社会の曖昧さが、また理解できぬ溝として胸に残った。
夕食を終えたイリスは調べ物をするために図書館を訪れていた。 静かな空間。ランプの光に照らされた分厚い本。人狼の絵が書かれている ページをめくる手は進むが、心はどこか上の空だった。昨日から続く胸の熱さ。自分の中で渦巻く感情に、まだ名を与えられずにいる。 時間を確認すると既に消灯時間を回っていた。イリスは慌てて本を戻し図書室を出た。
そんな時、背後から穏やかな声が響いた。
「……こんな時間に、本を探していたのかい?」
振り返ると、ルーピンが立っていた。 顔色が悪い。額にうっすらと汗がにじんでいる。
「……夜に出歩かない方がいい。特に君は……危険を引き寄せやすいようだ」
イリスは小さく瞬きをした。その声音が妙に胸に刺さる。
優しい言葉だった。けれど、そこには別の意図がある気がしてならなかった。 ――やはり、この人が。スネイプが疑っている人物なのか? 淡く漂う匂いの中に、あの黒い犬と似たものを確かに感じ取った。
イリスは小さく礼をして、急ぎ足で教室を後にした。 二人きりになるのは、得策ではないと感じたからだ。
廊下はしんと静まり返り、 胸の奥に居心地の悪さが広がり、足早に歩を進める。
「……何をしていた?」
冷たい声。角を曲がると同時に聞こえた声。そこにはスネイプがいた。 闇に溶けるような黒衣、鋭い眼差し。
「ルーピンと……話していたな」
「……え、なんで?」
「お忘れですかな?夜のホグワーツはよく声が響くということを。」
スネイプはため息を着く。
「我輩が話したからと言って、ミスイリスが調べ動く必要は無いのだ。この件は我輩が対処する。無用な危険に足を踏み入れるな。」
冷たく突き放すように言う。しかし、突き放してる割には優しく、巻き込みたくないという気持ちがイリスには見えていた。
そこへ、別の足音。 背後からルーピンが現れる。 互いに目を合わせた瞬間、空気が張り詰めた。
「……セブルス、何か勘違いしているようだが人に危害を加えるつもりはない」
スネイプが言ったように夜のホグワーツはよく声が通る為かルーピンには筒抜けの会話だったようだ。 ルーピンの声は柔らかいが、どこか切迫している。
スネイプは鼻で笑った。
「危害を加える気がなくとも、危険そのものを抱えているのは事実だ。……近づくな」
低い声に、守ろうとする意志が滲んでいた。 ルーピンは言葉を飲み込み、静かに視線を落とす。 その背を見送ったスネイプは、わずかに息を吐いて、イリスへ視線を戻した。
「……余計なことは考えるな。早く部屋に戻れ」
そう言って背を翻した。
ひとり部屋に戻って来たイリスは、胸に手を当てた。 熱い。どうしてこんなにも、彼の言葉ひとつで揺れるのだろう。 その意味をまだ理解できず、ただ立ち尽くす。
ふと窓の外に目をやると、夜空に大きな月が浮かんでいた。 まだ満ちきってはいない。けれど、確実に膨らみを増している。
――満月は近い。
