特別編
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第8話 帰郷の森
群衆に囲まれたイリスは、ようやく訪れた静けさの中に戸惑っていた。
赦しと安堵の波が広がり、歓声があちこちから上がる。
人々の顔に灯る光、それは確かに理解と感謝の色だった。
けれど、その中心でスネイプだけは、まるで違う世界に立っていた。
彼の表情は曇り、誰かが近づくたびに鬱陶しそうに眉をひそめる。
そのくせ、イリスが少しでも離れようとすれば、無言で手を伸ばして引き寄せた。
群衆の中で、彼女を守るように。まるで手放すことを拒むかのように。
その姿に、イリスは胸の奥が温かくなるのを感じた。
彼の不器用な優しさが、こんなにも心強いとは思わなかった。
だが、その安堵は一瞬で打ち砕かれた。
「魔法省だ!!」
鋭い声が響き渡る。
笑い声が止まり、空気が張りつめる。
皆の視線が、一斉に正門の方を向いた。
黒い外套を翻し、数人の魔法省の職員が広場に入ってくる。
その中央の男が杖を掲げ、声を張り上げた。
「セブルス・スネイプ、エルフのイリス!
お前たちを連行する!
理由は分かるな!」
イリスの体がびくりと震える。
胸の奥が冷たく締め付けられる。
スネイプは彼女の動揺を察したのか、そっと肩を引き寄せ、囁いた。
「イリス、怯える必要は無い。」
低く、確かな声だった。
その一言が、荒れた空気の中で唯一の支えとなる。
二人はゆっくりと群衆をかき分け、前へ進み出る。
彼の手の温もりが、恐怖に染まりそうな心を繋ぎ止めた。
そのとき、ハリーが叫んだ。
「2人は何も悪くない!
僕が証人としてついて行きます。
証拠だってある!」
その声が広場を震わせる。
次第に、生徒たちの間からも声が上がった。
「連れていくな!」
ひとつ、またひとつ。
まるで春の芽吹きのように、声が広がっていく。
魔法省の職員たちは互いに顔を見合わせ、やがて肩をすくめるように言った。
「わかった。わかった!
だが、規則は規則だ。
お前たちを今から裁判にかけることになっている。
そこでいくらでも証人として話を聞こう。」
その言葉で、広場の緊張がわずかに緩む。
スネイプとイリスは顔を見合わせ、無言のまま頷いた。
抵抗することなく、腕を捕まれ、姿くらましの光が2人を包む。
───
重く冷たい空気が満ちる法廷。
イリスとスネイプは並んで立っていた。
無数の視線が突き刺さる中、イリスは手を強く握りしめる。
スネイプの肩が隣にあることだけが、心を保つ拠り所だった。
ハリーの証言、
そして、スネイプが彼に託した記憶――。
それらが提示された時、会場に息を呑む音が広がった。
真実が、ようやく世界に届いたのだ。
判決が下る。
「両名、無罪放免。」
イリスの肩から力が抜け、静かに息を吐いた。
目尻に溢れた涙が、頬をすべり落ちる。
スネイプはその横顔を一瞥し、わずかに視線を逸らした。
その後、イリスとハリーは先に解放され、ホグワーツの正門前へと送り返された。
灰色の空の下、冷たい風が二人の髪を揺らす。
しばらく無言が続いた後、イリスが口を開く。
「私は1度故郷に帰るわ。
今、帰らないといけない気がする。
だから、セブルスに伝えてくれる?
直ぐに戻ると。」
ハリーは驚いたように彼女を見つめ、それからゆっくりと頷いた。
「……わかったよ。必ず伝える。」
イリスは微かに笑った。
その笑みは、長い夜を越えてようやく訪れた朝の光のようだった。
次の瞬間、彼女の姿が風とともに消える。
白い髪が一筋、陽光の中に溶けていった。
───
数日後。
長い旅路の果てに、イリスは故郷の森へ戻った。
深い緑がどこまでも広がり、空気は柔らかく澄んでいる。
葉の一枚一枚が光を宿し、風に揺らめくたびに銀の粒子が舞う。
エルフの里の入り口には、すでに多くの同胞たちが集まっていた。
静かな微笑みと穏やかな声で迎えられ、イリスは胸の奥にこみ上げる温かさを感じる。
家族が駆け寄ってきた。
少し背の伸びた妹、やつれた母、そして、普段は凛々しい父の潤んだ瞳。
イリスは走り寄り、その胸に飛び込む。
言葉にならない安堵が、静かな涙となって頬を伝う。
家族の手が、優しく背中を撫でた。
しばらくして、イリスは顔を上げる。
目の前に広がる故郷の森が、以前よりも眩しく見えた。
かつて、この地にいた頃。
“長”という運命は、彼女にとって重すぎる枷だった。
与えられた宿命に納得できず、逃げ出したいと何度も思った。
けれど、人間の世界で過ごした日々が、彼女を少しずつ変えていった。
愛を知り、痛みを知り、赦すことを学んだ。
そして気づいた。
それら全てを持ち帰ることこそ、森をより良くする力になるのだと。
自分が“なぜ長になるのか”を問い続けてきた日々。
答えは、今、胸の中で静かに形を成していた。
それは新しい風をこの森に吹かせるため。
人と森を繋ぐための準備が、ようやく整ったということ。
イリスはゆっくりと歩き出した。
森の奥、長が待つ大樹のもとへ。
その瞳にはもう、迷いはなかった。
群衆に囲まれたイリスは、ようやく訪れた静けさの中に戸惑っていた。
赦しと安堵の波が広がり、歓声があちこちから上がる。
人々の顔に灯る光、それは確かに理解と感謝の色だった。
けれど、その中心でスネイプだけは、まるで違う世界に立っていた。
彼の表情は曇り、誰かが近づくたびに鬱陶しそうに眉をひそめる。
そのくせ、イリスが少しでも離れようとすれば、無言で手を伸ばして引き寄せた。
群衆の中で、彼女を守るように。まるで手放すことを拒むかのように。
その姿に、イリスは胸の奥が温かくなるのを感じた。
彼の不器用な優しさが、こんなにも心強いとは思わなかった。
だが、その安堵は一瞬で打ち砕かれた。
「魔法省だ!!」
鋭い声が響き渡る。
笑い声が止まり、空気が張りつめる。
皆の視線が、一斉に正門の方を向いた。
黒い外套を翻し、数人の魔法省の職員が広場に入ってくる。
その中央の男が杖を掲げ、声を張り上げた。
「セブルス・スネイプ、エルフのイリス!
お前たちを連行する!
理由は分かるな!」
イリスの体がびくりと震える。
胸の奥が冷たく締め付けられる。
スネイプは彼女の動揺を察したのか、そっと肩を引き寄せ、囁いた。
「イリス、怯える必要は無い。」
低く、確かな声だった。
その一言が、荒れた空気の中で唯一の支えとなる。
二人はゆっくりと群衆をかき分け、前へ進み出る。
彼の手の温もりが、恐怖に染まりそうな心を繋ぎ止めた。
そのとき、ハリーが叫んだ。
「2人は何も悪くない!
僕が証人としてついて行きます。
証拠だってある!」
その声が広場を震わせる。
次第に、生徒たちの間からも声が上がった。
「連れていくな!」
ひとつ、またひとつ。
まるで春の芽吹きのように、声が広がっていく。
魔法省の職員たちは互いに顔を見合わせ、やがて肩をすくめるように言った。
「わかった。わかった!
だが、規則は規則だ。
お前たちを今から裁判にかけることになっている。
そこでいくらでも証人として話を聞こう。」
その言葉で、広場の緊張がわずかに緩む。
スネイプとイリスは顔を見合わせ、無言のまま頷いた。
抵抗することなく、腕を捕まれ、姿くらましの光が2人を包む。
───
重く冷たい空気が満ちる法廷。
イリスとスネイプは並んで立っていた。
無数の視線が突き刺さる中、イリスは手を強く握りしめる。
スネイプの肩が隣にあることだけが、心を保つ拠り所だった。
ハリーの証言、
そして、スネイプが彼に託した記憶――。
それらが提示された時、会場に息を呑む音が広がった。
真実が、ようやく世界に届いたのだ。
判決が下る。
「両名、無罪放免。」
イリスの肩から力が抜け、静かに息を吐いた。
目尻に溢れた涙が、頬をすべり落ちる。
スネイプはその横顔を一瞥し、わずかに視線を逸らした。
その後、イリスとハリーは先に解放され、ホグワーツの正門前へと送り返された。
灰色の空の下、冷たい風が二人の髪を揺らす。
しばらく無言が続いた後、イリスが口を開く。
「私は1度故郷に帰るわ。
今、帰らないといけない気がする。
だから、セブルスに伝えてくれる?
直ぐに戻ると。」
ハリーは驚いたように彼女を見つめ、それからゆっくりと頷いた。
「……わかったよ。必ず伝える。」
イリスは微かに笑った。
その笑みは、長い夜を越えてようやく訪れた朝の光のようだった。
次の瞬間、彼女の姿が風とともに消える。
白い髪が一筋、陽光の中に溶けていった。
───
数日後。
長い旅路の果てに、イリスは故郷の森へ戻った。
深い緑がどこまでも広がり、空気は柔らかく澄んでいる。
葉の一枚一枚が光を宿し、風に揺らめくたびに銀の粒子が舞う。
エルフの里の入り口には、すでに多くの同胞たちが集まっていた。
静かな微笑みと穏やかな声で迎えられ、イリスは胸の奥にこみ上げる温かさを感じる。
家族が駆け寄ってきた。
少し背の伸びた妹、やつれた母、そして、普段は凛々しい父の潤んだ瞳。
イリスは走り寄り、その胸に飛び込む。
言葉にならない安堵が、静かな涙となって頬を伝う。
家族の手が、優しく背中を撫でた。
しばらくして、イリスは顔を上げる。
目の前に広がる故郷の森が、以前よりも眩しく見えた。
かつて、この地にいた頃。
“長”という運命は、彼女にとって重すぎる枷だった。
与えられた宿命に納得できず、逃げ出したいと何度も思った。
けれど、人間の世界で過ごした日々が、彼女を少しずつ変えていった。
愛を知り、痛みを知り、赦すことを学んだ。
そして気づいた。
それら全てを持ち帰ることこそ、森をより良くする力になるのだと。
自分が“なぜ長になるのか”を問い続けてきた日々。
答えは、今、胸の中で静かに形を成していた。
それは新しい風をこの森に吹かせるため。
人と森を繋ぐための準備が、ようやく整ったということ。
イリスはゆっくりと歩き出した。
森の奥、長が待つ大樹のもとへ。
その瞳にはもう、迷いはなかった。
