特別編
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第5話 黎明の誓い
まぶたの裏を、淡い光が照らしていた。
イリスはゆっくりと目を開ける。
白んだ空の向こうで、黄金の光が湖を撫でていた。
夜は静かに終わりを告げようとしている。
頬に感じたのは、柔らかな温もり。
耳に届いたのは、穏やかな鼓動の音。
──あたたかい。
イリスははっとして体を起こす。
目の前に映るのは、ゆるやかに上下する胸。
「……セブルス……?」
その名を呼ぶと同時に、彼のまぶたがかすかに動く。
黒い瞳がゆっくりと開き、イリスを映した。
「イリス……。」
その声が、現実のすべてを確かなものに変えた。
イリスは堪えきれず、彼に抱きついた。
「セブルス!」
首元に顔を埋めると、かすかに薬草の匂いがした。
嗅ぎなれた愛おしい香り。
震える声が溢れる。
「あぁ、セブルス……愛してる! 愛してる!
あなたが生きていることが、どんなに幸せか……!」
嗚咽が混じる声の中で、涙が頬を伝い、スネイプの首筋を濡らす。
彼の手がゆっくりと背を撫でた。
その仕草が、夢でも幻でもないことを教えてくれる。
イリスは自然と胸元のネックレスへ手を伸ばした。
けれど、そこにあるはずの赤い石はなかった。
鎖だけが、冷たく指に触れた。
「……石が、ない……。」
目を伏せた瞬間、スネイプが静かに言った。
「どうやら、お前に渡したその石が、お前を、そして我輩を守ったようだ。」
イリスは息を呑む。
途切れた記憶の奥で、あの瞬間の光景が蘇る。
砕ける音。
温かなものが自分を包み、体に染み込んでいく感覚。
「……そう。
せっかく、あなたからもらったのに……ごめんなさい。
そして、ありがとう。
あなたのおかげで、私たちは生きてる。」
イリスは微笑みながらも、瞳が滲んだ。
スネイプが息をつき、彼女をそっと引き寄せた。
「イリス……、いくら我輩が願ったとはいえ、
あまりにも無茶をしすぎだ。」
声が震えていた。
「……二人とも死んでいたらどうするのだ。
仮に成功しても、我輩だけが生きる可能性もあったのだぞ。
イリスのいない世界は――愛する者がいない世界は、どれほど残酷か……。
それを、二度も経験させるつもりだったのか……。」
イリスはその胸の中で息を呑んだ。
スネイプの言葉が、心に鋭く刺さる。
彼を救いたい一心だった。
けれど、それは彼を再び孤独へ突き落とす選択でもあった。
あまりにも軽率だったと、胸の奥が痛んだ。
「セブルス……ごめんなさい。
私、なにも考えてなくて……。」
「……もうよい。よいのだ、イリス。
こうして二人、生きている。」
スネイプは彼女の頬を撫で、目を細めた。
その声に、優しい疲労が滲んでいた。
イリスは顔を上げ、彼を見つめる。
互いの瞳が、朝の光を映して重なった。
どちらからともなく、そっと顔が近づく。
スネイプの指がイリスの頬をなぞり、唇が触れた。
触れるたび、確かめ合うように、何度も。
それは約束を交わすような口付けだった。
しばらくして、突然離れたところから大きな歓声が上がった。
二人が顔を離して外を見ると、朝日が完全に昇っていた。
光が小屋の隙間から差し込み、二人の影を金に染めていく。
「……ようやく終わったようだ。」
スネイプが呟く。
「良かった……セブルス。
これで安心して生きていけるのね。
あなたも、私も。」
イリスが微笑む。
けれどスネイプの顔はすぐに曇った。
「あぁ、そうだ。
……だが、我輩は死喰い人として裁かれるやもしれん。」
イリスはしばし考え込み、やがて何かを思いついたように顔を上げた。
「もし捕まりそうなら、私の故郷に来て。
あなたが捕まるなら、私も一緒に捕まるわ。
もう、離れるなんて嫌。」
悪戯っぽく笑うイリスの顔を、スネイプは複雑な表情で見つめる。
彼はいまだ背負う罪の重さから逃れられずにいるのだと確信した。
イリスは彼の手を取り、両手で包んだ。
「セブルス。
あなたは過去の罪を背負って、あなたに託された使命を果たしたの。
もう、解放されていい頃よ。
あなたがこれから生きることが、過去のあなたと、
あなたの幸せを願った人への償いになると思うの。」
静かで真剣な声。
その言葉が、スネイプの胸の奥で長く凍っていた何かを溶かしていく。
眉間の皺がゆるみ、
長い夜の帳が静かに解けていくようだった。
「……逃げることは嫌いだ。
だが、お前をまた失うくらいなら、どんな烙印も背負おう。
イリス、お前と生きるためならばな……。」
スネイプはそう言って、彼女の頬から耳へ指をなぞる。
尖った耳をそっと撫でながら、低く囁いた。
「イリス、愛している。」
その言葉が朝の光に溶けた。
小屋の外では鳥が鳴き、湖面が金色に輝いていた。
二人は静かに微笑み合い、
新しい朝の中で、“生きる”という約束を交わした。
まぶたの裏を、淡い光が照らしていた。
イリスはゆっくりと目を開ける。
白んだ空の向こうで、黄金の光が湖を撫でていた。
夜は静かに終わりを告げようとしている。
頬に感じたのは、柔らかな温もり。
耳に届いたのは、穏やかな鼓動の音。
──あたたかい。
イリスははっとして体を起こす。
目の前に映るのは、ゆるやかに上下する胸。
「……セブルス……?」
その名を呼ぶと同時に、彼のまぶたがかすかに動く。
黒い瞳がゆっくりと開き、イリスを映した。
「イリス……。」
その声が、現実のすべてを確かなものに変えた。
イリスは堪えきれず、彼に抱きついた。
「セブルス!」
首元に顔を埋めると、かすかに薬草の匂いがした。
嗅ぎなれた愛おしい香り。
震える声が溢れる。
「あぁ、セブルス……愛してる! 愛してる!
あなたが生きていることが、どんなに幸せか……!」
嗚咽が混じる声の中で、涙が頬を伝い、スネイプの首筋を濡らす。
彼の手がゆっくりと背を撫でた。
その仕草が、夢でも幻でもないことを教えてくれる。
イリスは自然と胸元のネックレスへ手を伸ばした。
けれど、そこにあるはずの赤い石はなかった。
鎖だけが、冷たく指に触れた。
「……石が、ない……。」
目を伏せた瞬間、スネイプが静かに言った。
「どうやら、お前に渡したその石が、お前を、そして我輩を守ったようだ。」
イリスは息を呑む。
途切れた記憶の奥で、あの瞬間の光景が蘇る。
砕ける音。
温かなものが自分を包み、体に染み込んでいく感覚。
「……そう。
せっかく、あなたからもらったのに……ごめんなさい。
そして、ありがとう。
あなたのおかげで、私たちは生きてる。」
イリスは微笑みながらも、瞳が滲んだ。
スネイプが息をつき、彼女をそっと引き寄せた。
「イリス……、いくら我輩が願ったとはいえ、
あまりにも無茶をしすぎだ。」
声が震えていた。
「……二人とも死んでいたらどうするのだ。
仮に成功しても、我輩だけが生きる可能性もあったのだぞ。
イリスのいない世界は――愛する者がいない世界は、どれほど残酷か……。
それを、二度も経験させるつもりだったのか……。」
イリスはその胸の中で息を呑んだ。
スネイプの言葉が、心に鋭く刺さる。
彼を救いたい一心だった。
けれど、それは彼を再び孤独へ突き落とす選択でもあった。
あまりにも軽率だったと、胸の奥が痛んだ。
「セブルス……ごめんなさい。
私、なにも考えてなくて……。」
「……もうよい。よいのだ、イリス。
こうして二人、生きている。」
スネイプは彼女の頬を撫で、目を細めた。
その声に、優しい疲労が滲んでいた。
イリスは顔を上げ、彼を見つめる。
互いの瞳が、朝の光を映して重なった。
どちらからともなく、そっと顔が近づく。
スネイプの指がイリスの頬をなぞり、唇が触れた。
触れるたび、確かめ合うように、何度も。
それは約束を交わすような口付けだった。
しばらくして、突然離れたところから大きな歓声が上がった。
二人が顔を離して外を見ると、朝日が完全に昇っていた。
光が小屋の隙間から差し込み、二人の影を金に染めていく。
「……ようやく終わったようだ。」
スネイプが呟く。
「良かった……セブルス。
これで安心して生きていけるのね。
あなたも、私も。」
イリスが微笑む。
けれどスネイプの顔はすぐに曇った。
「あぁ、そうだ。
……だが、我輩は死喰い人として裁かれるやもしれん。」
イリスはしばし考え込み、やがて何かを思いついたように顔を上げた。
「もし捕まりそうなら、私の故郷に来て。
あなたが捕まるなら、私も一緒に捕まるわ。
もう、離れるなんて嫌。」
悪戯っぽく笑うイリスの顔を、スネイプは複雑な表情で見つめる。
彼はいまだ背負う罪の重さから逃れられずにいるのだと確信した。
イリスは彼の手を取り、両手で包んだ。
「セブルス。
あなたは過去の罪を背負って、あなたに託された使命を果たしたの。
もう、解放されていい頃よ。
あなたがこれから生きることが、過去のあなたと、
あなたの幸せを願った人への償いになると思うの。」
静かで真剣な声。
その言葉が、スネイプの胸の奥で長く凍っていた何かを溶かしていく。
眉間の皺がゆるみ、
長い夜の帳が静かに解けていくようだった。
「……逃げることは嫌いだ。
だが、お前をまた失うくらいなら、どんな烙印も背負おう。
イリス、お前と生きるためならばな……。」
スネイプはそう言って、彼女の頬から耳へ指をなぞる。
尖った耳をそっと撫でながら、低く囁いた。
「イリス、愛している。」
その言葉が朝の光に溶けた。
小屋の外では鳥が鳴き、湖面が金色に輝いていた。
二人は静かに微笑み合い、
新しい朝の中で、“生きる”という約束を交わした。
