特別編
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第4話 暁の脈動
イリスは力が抜け、スネイプの胸に倒れ込んだ。
体の奥で何かが燃え尽きていく。
けれど、その胸の中には確かに温もりがあった。
失われかけていた命の熱が、静かに彼女を包む。
薄れゆく意識の中で、イリスは彼の顔を見つめた。
その頬の輪郭、血に濡れた唇、閉じた瞳。
もう一度、その瞳に映りたいと願った。
一緒に……生きたかった……。
その想いが最後の灯のように揺れた時、
胸の赤い石がひときわ強く光を放ち、
乾いた音を立てて砕け散った。
瞬間、砕けた欠片が宙を舞い、
まるで星屑のように二人の周りを巡った。
石の中に眠っていた魔力が、
イリスの身体に、そしてスネイプへと流れ込む。
再び、光が宿った。
それは温かく、柔らかく、涙のような光だった。
イリスは目を開こうとしたが、
倦怠感が意識を深い闇へと引きずり込んでいく。
頬を撫でた風が、まるで“もういい”と告げているようだった。
───
光が静かに消えた。
だが、二人とも目を覚まさなかった。
ハリーたちは息を詰め、ただ立ち尽くしていた。
何が起きたのか分からない。
静寂の中で、ハーマイオニーが最初に動いた。
「イリス!イリス!」
焦った声が響く。
ハーマイオニーは駆け寄り、イリスの肩を揺する。
その顔には生気がなく、呼びかけにも反応しない。
「一体……何が起きたんだ……」
ロンの声は低く震えていた。
「分からない。」
ハリーが答えた。
スネイプの記憶を収めた小瓶を握りしめながら、
その視線はただ二人の方を向いていた。
空気が重く沈む。
その時、ハーマイオニーが小さく息を呑んだ。
「ハリー!スネイプの指が……動いたわ!」
ハリーとロンが駆け寄る。
見れば、スネイプの唇がわずかに動き、
胸がゆっくりと上下していた。
首の傷は塞がり、血痕だけが残されている。
頬にわずかな血色が戻り、
途切れていた呼吸が、静かに再び流れ始めていた。
「もしかして……イリス、自分の命と引き換えに……」
ロンの呟きに、三人は凍りついた。
「じゃあ、イリスは……」
言葉が続かない。
静寂が三人を包み、
夜の湖の音だけが遠くで響いた。
だが、その沈黙を破る声があった。
「……まだ、居たのか。
……もう行け。」
それは、スネイプの声だった。
掠れ、息を切らしながらも、確かに生きた声。
「でも、イリスが!」
ハーマイオニーが涙を滲ませながら叫ぶ。
「さっさと行け……こいつは……我輩が……。」
荒い息を吐きながらも、
スネイプの瞳は鋭く、迷いがなかった。
その圧に押され、三人は静かに頷くと、
小屋を後にした。
───
意識が戻った瞬間、
空気の重さと血の味がスネイプを迎えた。
胸の奥に鈍い痛みが残っている。
生きている。
その実感が遅れてやってくる。
身体はまだ動かず、
視界の端には白い髪が見えた。
イリスが、自分の胸の上に倒れていた。
「……イリス。」
呼びかける。
返事はない。
その瞬間ハリーたちの言葉が、記憶の奥から蘇る。
“自分の命と引き換えにスネイプを……”
その言葉に、胸の奥がざわめいた。
まさか……。
震える手で、イリスの背へ触れる。
温かい。
そして微かに、呼吸をしていた。
その瞬間、息がこぼれた。
張り詰めていた緊張が一気に解けていく。
「……生きている。」
囁きが滲む。
スネイプはイリスの髪を撫でながら、
その柔らかさに指を沈めた。
まるでそれが確かな“現実”であることを確かめるように。
スネイプはふと視線を落とした。
イリスの傍らに、赤く輝く欠片が散っていた。
震える指でひとつを拾い上げる。
それは、月光を受けてかすかに光を返していた。
だが、もうそこには魔力の気配はない。
イリスに渡した、守りの石だったもの。
本来は、彼女を危険から守るためのものだった。
スネイプは小さく息を吐き、欠片を見つめる。
「……お前は、最後まで役目を違えなかったのだな。」
静かな声が漏れる。
あの石は、彼女の命を守るために魔力を解き放った。
同時に、彼女の願いを受けて、己にも力を貸した。
結果として、自分は生かされた。
イリスの命を危険に晒して。
「……結局、我輩の魔法は我輩自身を救ったというわけか。」
その呟きには、苦笑とも嗤いともつかぬ響きが混じる。
自己保身のような、醜いほどの皮肉。
守るために与えた力が、意図せぬ形で自身を救った。
スネイプはゆっくりと目を閉じ、欠片を掌の中で握りしめる。
掌に残る赤い光が、まるで血のように滲んで見えた。
「……すまない、イリス。」
かすれた声でそう呟く。
お前の姿を見た時、生きたいと願ってしまった。
共に生きる未来を想像してしまった。
無理だと分かっていたのに、交わした約束を果たしたいと願ってしまった。
だからお前に縋ってしまったんだ。
そしてイリス、お前はそれを受け入れてしまった。
全ては我輩の愚かな死に際の願いが悪かった。
我輩がイリスを命の危機に直面させてしまったのだ。
スネイプは自責の念に苦しんだ。
そして痛む心を落ち着けるように、イリスの体をそっと抱き寄せる。
ローブの襟を広げ、包み込むように覆う。
「我輩なぞ、捨ておけばよかったものを……。」
苦い言葉が零れる。
スネイプは唇を噛みしめ、俯いた。
息が震えた。
心の奥で、どうしようもない嫌悪が渦を巻き離れない。
「……我輩は、どうしようもない男だ。」
吐き出すように呟く。
イリス、お前が生きていない世界で一人残されたら我輩は、どうすれば良いのだ。
今回のことは奇跡だった。
だからもう…。
「…もう二度と、こんな真似はしないでくれ。」
震える声は夜に消えていく。
だが、腕の中の温もりが、スネイプの冷たい胸の奥を溶かしていく。
命を懸けてまで自分を思ってくれた。
その想いが、痛みのように心に染み込んでいく。
初めてだった。
誰かが自分のために、命を懸けてくれたのは。
その愛の重さが、どうしようもなく胸を満たしていく。
「……なぜ、そこまで我輩を……。」
声が震え、喉が詰まった。
己が“愛される価値がない”と信じていた。
だが、イリスはその全てを否定した。
命を懸けて、“あなたは生きるべき人だ”と証明してくれたのだ。
そして、堰が切れた。
熱がこみ上げ、視界が滲む。
抑えても抑えても、頬を伝うものが止められない。
静かな夜の中、いくつもの涙がイリスの髪に落ち、淡い光を映す。
それは悔恨ではなかった。
赦しを受けた男の涙だった。
スネイプは震える手でイリスの頬を撫で、
その唇にかすかな笑みを浮かべた。
スネイプの腕の中ではイリスの胸が、
わずかに上下している。
小さくとも確かに、生きようとする鼓動が伝わる。
スネイプはその音に耳を澄ませながら、
静かに目を閉じた。
月光が優しく二人の上に静かに降り注ぐ。
まるで、互いの願いがひとつになった証のように。
イリスは力が抜け、スネイプの胸に倒れ込んだ。
体の奥で何かが燃え尽きていく。
けれど、その胸の中には確かに温もりがあった。
失われかけていた命の熱が、静かに彼女を包む。
薄れゆく意識の中で、イリスは彼の顔を見つめた。
その頬の輪郭、血に濡れた唇、閉じた瞳。
もう一度、その瞳に映りたいと願った。
一緒に……生きたかった……。
その想いが最後の灯のように揺れた時、
胸の赤い石がひときわ強く光を放ち、
乾いた音を立てて砕け散った。
瞬間、砕けた欠片が宙を舞い、
まるで星屑のように二人の周りを巡った。
石の中に眠っていた魔力が、
イリスの身体に、そしてスネイプへと流れ込む。
再び、光が宿った。
それは温かく、柔らかく、涙のような光だった。
イリスは目を開こうとしたが、
倦怠感が意識を深い闇へと引きずり込んでいく。
頬を撫でた風が、まるで“もういい”と告げているようだった。
───
光が静かに消えた。
だが、二人とも目を覚まさなかった。
ハリーたちは息を詰め、ただ立ち尽くしていた。
何が起きたのか分からない。
静寂の中で、ハーマイオニーが最初に動いた。
「イリス!イリス!」
焦った声が響く。
ハーマイオニーは駆け寄り、イリスの肩を揺する。
その顔には生気がなく、呼びかけにも反応しない。
「一体……何が起きたんだ……」
ロンの声は低く震えていた。
「分からない。」
ハリーが答えた。
スネイプの記憶を収めた小瓶を握りしめながら、
その視線はただ二人の方を向いていた。
空気が重く沈む。
その時、ハーマイオニーが小さく息を呑んだ。
「ハリー!スネイプの指が……動いたわ!」
ハリーとロンが駆け寄る。
見れば、スネイプの唇がわずかに動き、
胸がゆっくりと上下していた。
首の傷は塞がり、血痕だけが残されている。
頬にわずかな血色が戻り、
途切れていた呼吸が、静かに再び流れ始めていた。
「もしかして……イリス、自分の命と引き換えに……」
ロンの呟きに、三人は凍りついた。
「じゃあ、イリスは……」
言葉が続かない。
静寂が三人を包み、
夜の湖の音だけが遠くで響いた。
だが、その沈黙を破る声があった。
「……まだ、居たのか。
……もう行け。」
それは、スネイプの声だった。
掠れ、息を切らしながらも、確かに生きた声。
「でも、イリスが!」
ハーマイオニーが涙を滲ませながら叫ぶ。
「さっさと行け……こいつは……我輩が……。」
荒い息を吐きながらも、
スネイプの瞳は鋭く、迷いがなかった。
その圧に押され、三人は静かに頷くと、
小屋を後にした。
───
意識が戻った瞬間、
空気の重さと血の味がスネイプを迎えた。
胸の奥に鈍い痛みが残っている。
生きている。
その実感が遅れてやってくる。
身体はまだ動かず、
視界の端には白い髪が見えた。
イリスが、自分の胸の上に倒れていた。
「……イリス。」
呼びかける。
返事はない。
その瞬間ハリーたちの言葉が、記憶の奥から蘇る。
“自分の命と引き換えにスネイプを……”
その言葉に、胸の奥がざわめいた。
まさか……。
震える手で、イリスの背へ触れる。
温かい。
そして微かに、呼吸をしていた。
その瞬間、息がこぼれた。
張り詰めていた緊張が一気に解けていく。
「……生きている。」
囁きが滲む。
スネイプはイリスの髪を撫でながら、
その柔らかさに指を沈めた。
まるでそれが確かな“現実”であることを確かめるように。
スネイプはふと視線を落とした。
イリスの傍らに、赤く輝く欠片が散っていた。
震える指でひとつを拾い上げる。
それは、月光を受けてかすかに光を返していた。
だが、もうそこには魔力の気配はない。
イリスに渡した、守りの石だったもの。
本来は、彼女を危険から守るためのものだった。
スネイプは小さく息を吐き、欠片を見つめる。
「……お前は、最後まで役目を違えなかったのだな。」
静かな声が漏れる。
あの石は、彼女の命を守るために魔力を解き放った。
同時に、彼女の願いを受けて、己にも力を貸した。
結果として、自分は生かされた。
イリスの命を危険に晒して。
「……結局、我輩の魔法は我輩自身を救ったというわけか。」
その呟きには、苦笑とも嗤いともつかぬ響きが混じる。
自己保身のような、醜いほどの皮肉。
守るために与えた力が、意図せぬ形で自身を救った。
スネイプはゆっくりと目を閉じ、欠片を掌の中で握りしめる。
掌に残る赤い光が、まるで血のように滲んで見えた。
「……すまない、イリス。」
かすれた声でそう呟く。
お前の姿を見た時、生きたいと願ってしまった。
共に生きる未来を想像してしまった。
無理だと分かっていたのに、交わした約束を果たしたいと願ってしまった。
だからお前に縋ってしまったんだ。
そしてイリス、お前はそれを受け入れてしまった。
全ては我輩の愚かな死に際の願いが悪かった。
我輩がイリスを命の危機に直面させてしまったのだ。
スネイプは自責の念に苦しんだ。
そして痛む心を落ち着けるように、イリスの体をそっと抱き寄せる。
ローブの襟を広げ、包み込むように覆う。
「我輩なぞ、捨ておけばよかったものを……。」
苦い言葉が零れる。
スネイプは唇を噛みしめ、俯いた。
息が震えた。
心の奥で、どうしようもない嫌悪が渦を巻き離れない。
「……我輩は、どうしようもない男だ。」
吐き出すように呟く。
イリス、お前が生きていない世界で一人残されたら我輩は、どうすれば良いのだ。
今回のことは奇跡だった。
だからもう…。
「…もう二度と、こんな真似はしないでくれ。」
震える声は夜に消えていく。
だが、腕の中の温もりが、スネイプの冷たい胸の奥を溶かしていく。
命を懸けてまで自分を思ってくれた。
その想いが、痛みのように心に染み込んでいく。
初めてだった。
誰かが自分のために、命を懸けてくれたのは。
その愛の重さが、どうしようもなく胸を満たしていく。
「……なぜ、そこまで我輩を……。」
声が震え、喉が詰まった。
己が“愛される価値がない”と信じていた。
だが、イリスはその全てを否定した。
命を懸けて、“あなたは生きるべき人だ”と証明してくれたのだ。
そして、堰が切れた。
熱がこみ上げ、視界が滲む。
抑えても抑えても、頬を伝うものが止められない。
静かな夜の中、いくつもの涙がイリスの髪に落ち、淡い光を映す。
それは悔恨ではなかった。
赦しを受けた男の涙だった。
スネイプは震える手でイリスの頬を撫で、
その唇にかすかな笑みを浮かべた。
スネイプの腕の中ではイリスの胸が、
わずかに上下している。
小さくとも確かに、生きようとする鼓動が伝わる。
スネイプはその音に耳を澄ませながら、
静かに目を閉じた。
月光が優しく二人の上に静かに降り注ぐ。
まるで、互いの願いがひとつになった証のように。
