特別編
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第3話 光の代償
扉を開けた瞬間、冷たい空気が頬を打った。
血の匂いが夜気とともに流れ込み、胸の奥を掻きむしる。
壁に持たれるようにして、床へ崩れた男の影。
首元から流れ出た血が、床の上で黒く光を滲ませている。
光を失いかけた瞳が、わずかに月を映していた。
「……セブルス!」
イリスが叫び、駆け寄ろうとしたその時。
「来るな……」
かすかな声が空気を震わせた。
息の合間に混じる血の泡。
それでも、その声には確かな芯があった。
イリスの背後からハリーたちが入ってくる。
小屋の中に流れる空気の重さに言葉を失い、ただ立ち尽くした。
その瞬間、スネイプが血を吐くように息を吸い、低く絞り出した。
「……ポッター……。」
イリスは悟った。
彼はまだ自分ではなく“世界”を見ている。
使命を手放していない。
ハリーが駆け寄り、震える手でスネイプの首を押さえる。
温もりが指先に逃げていくのを感じながら、ハリーは必死に叫ぶ。
イリスはその背を見つめながら、ただ息を呑んだ。
スネイプがやり残したものを、今まさに終わらせようとしている。
「……とれ。これを、取れ……」
震える指が示す目から、銀の雫がこぼれ落ちる。
ハリーが小瓶を差し出し、それを受け止めた。
「僕を見てくれ……」
掠れた声。
血に濡れた唇がわずかに震える。
スネイプの視線が、ハリーの瞳を捉えた。
「あぁ……リリーと同じ目をしている。」
呟きは風のように細く、夜気に溶けた。
その瞳の奥に、かつての想い人の面影を見たのだろう。
スネイプは視線を前に戻し、苦しげに手を伸ばした。
「イリス……」
その名を呼ぶ声が震え、消えそうな命の炎を灯す。
イリスは駆け寄り、彼の顔を胸に抱きかかえた。
彼の手がゆっくりと動き、イリスの腕に触れる。
その瞬間、彼の体温が確かに伝わってくる。
だが、その鼓動は弱く、今にも消えてしまいそうだった。
「セブルスっ!」
イリスの声が震える。
もう少し早くたどり着けていれば。
彼をひとりにしなければ。
後悔が波のように押し寄せて、胸を締めつける。
「イリス、すまない……」
途切れ途切れの声が、唇の端で震えた。
「我輩は……お前と……出来ぬ約束を……。
イリス、できることなら……お前と……。」
その言葉が途切れた。
イリスに触れていた手が、力なく落ちる。
「いや!!セブルス!!
お願い、私を見て!セブルス!」
叫びが小屋に響く。
まだあなたを救えていない。
あなたが幸せになる瞬間を見届けていない。
愛していると伝えられていない。
まだ、一緒に生きる未来を諦めたくない。
イリスはスネイプを強く抱きしめ、泣き叫んだ。
ハリーたちは息を殺し、ただその光景を見守ることしかできなかった。
───
イリスはスネイプの胸に顔を埋めた。
まだ温かい。
けれど、鼓動はもう聞こえない。
それでも、微かな魔力が身体の奥で震えているのを感じた。
魂が、まだここにいる。
普通なら、鼓動が止まれば魂も共に旅立つ。
だが、彼はまだ逝っていない。
死を拒むように、この場所に留まっている。
「セブルス……まだここにいるのね。
約束……したものね。」
イリスは涙を拭い、静かに息を整えた。
胸の奥で彼の言葉が蘇る。
途切れた言葉の先で彼は願った。
“生きたい”と。
イリスは思い出した。
かつて故郷で学んだ、命を繋ぐ禁忌の術を。
膨大な魔力と引き換えに、魂を肉体へ戻す魔法。
自然に反すると分かっていた。
それでも、彼が生きる可能性がある手段を捨てる訳には行かなかった。
イリスは深く息を吐き、心を静める。
自然の気配に神経を研ぎ澄まし、己の魔力を自然に溶かす。
あらゆる音が遠ざかり、湖の静寂が胸の中に流れ込んだ。
そして徐々に自然の息吹が頭に流れ込み始める。
「どうか、この光を消さないで。
……この命を繋いでください。」
祈る声が、空気に染みていく。
その瞬間、イリスの体に熱が走った。
大地からの力が、下から込み上げるように体に流れ込む。
風が肌を撫でる度にその魔力の欠片をイリスへ与える。
湖の水が大きな波を起こし、イリスとスネイプへと飛びかかり、魔力を置いては引いてを繰り返す。
体の全てが沸騰するような熱がイリスを支配する。
イリスはスネイプの胸に手を当て、自身の魔力を流し込んだ。
青白い光が二人の間で爆ぜ、強く輝きを増していく。
小屋の中が閃光に包まれ、夜が昼に変わったようだった。
「セブルス、私の愛を受け取って。
……愛してる。」
イリスは静かに唇を重ねた。
その接触とともに、体から魔力が急速に吸い取られていく。
同時に、彼の身体に熱が戻ってくるのを感じた。
どうか、魔力よ足りて。
自然よ、彼を助けて。
「愛してる……。
私の光よ……どうか息を吹き返して。」
力が抜け、視界が滲む。
体の奥が裂けるように痛みが走る。
体から魔力が零れ落ち、光も弱まっていく。
イリスの意識が薄れはじめる。
あと少し。あと少しで届くはず。
けれど、全身の力が抜け、イリスの身体は傾いだ。
光が静かに消え、彼女はそのままスネイプの胸の上に倒れ込んだ。
扉を開けた瞬間、冷たい空気が頬を打った。
血の匂いが夜気とともに流れ込み、胸の奥を掻きむしる。
壁に持たれるようにして、床へ崩れた男の影。
首元から流れ出た血が、床の上で黒く光を滲ませている。
光を失いかけた瞳が、わずかに月を映していた。
「……セブルス!」
イリスが叫び、駆け寄ろうとしたその時。
「来るな……」
かすかな声が空気を震わせた。
息の合間に混じる血の泡。
それでも、その声には確かな芯があった。
イリスの背後からハリーたちが入ってくる。
小屋の中に流れる空気の重さに言葉を失い、ただ立ち尽くした。
その瞬間、スネイプが血を吐くように息を吸い、低く絞り出した。
「……ポッター……。」
イリスは悟った。
彼はまだ自分ではなく“世界”を見ている。
使命を手放していない。
ハリーが駆け寄り、震える手でスネイプの首を押さえる。
温もりが指先に逃げていくのを感じながら、ハリーは必死に叫ぶ。
イリスはその背を見つめながら、ただ息を呑んだ。
スネイプがやり残したものを、今まさに終わらせようとしている。
「……とれ。これを、取れ……」
震える指が示す目から、銀の雫がこぼれ落ちる。
ハリーが小瓶を差し出し、それを受け止めた。
「僕を見てくれ……」
掠れた声。
血に濡れた唇がわずかに震える。
スネイプの視線が、ハリーの瞳を捉えた。
「あぁ……リリーと同じ目をしている。」
呟きは風のように細く、夜気に溶けた。
その瞳の奥に、かつての想い人の面影を見たのだろう。
スネイプは視線を前に戻し、苦しげに手を伸ばした。
「イリス……」
その名を呼ぶ声が震え、消えそうな命の炎を灯す。
イリスは駆け寄り、彼の顔を胸に抱きかかえた。
彼の手がゆっくりと動き、イリスの腕に触れる。
その瞬間、彼の体温が確かに伝わってくる。
だが、その鼓動は弱く、今にも消えてしまいそうだった。
「セブルスっ!」
イリスの声が震える。
もう少し早くたどり着けていれば。
彼をひとりにしなければ。
後悔が波のように押し寄せて、胸を締めつける。
「イリス、すまない……」
途切れ途切れの声が、唇の端で震えた。
「我輩は……お前と……出来ぬ約束を……。
イリス、できることなら……お前と……。」
その言葉が途切れた。
イリスに触れていた手が、力なく落ちる。
「いや!!セブルス!!
お願い、私を見て!セブルス!」
叫びが小屋に響く。
まだあなたを救えていない。
あなたが幸せになる瞬間を見届けていない。
愛していると伝えられていない。
まだ、一緒に生きる未来を諦めたくない。
イリスはスネイプを強く抱きしめ、泣き叫んだ。
ハリーたちは息を殺し、ただその光景を見守ることしかできなかった。
───
イリスはスネイプの胸に顔を埋めた。
まだ温かい。
けれど、鼓動はもう聞こえない。
それでも、微かな魔力が身体の奥で震えているのを感じた。
魂が、まだここにいる。
普通なら、鼓動が止まれば魂も共に旅立つ。
だが、彼はまだ逝っていない。
死を拒むように、この場所に留まっている。
「セブルス……まだここにいるのね。
約束……したものね。」
イリスは涙を拭い、静かに息を整えた。
胸の奥で彼の言葉が蘇る。
途切れた言葉の先で彼は願った。
“生きたい”と。
イリスは思い出した。
かつて故郷で学んだ、命を繋ぐ禁忌の術を。
膨大な魔力と引き換えに、魂を肉体へ戻す魔法。
自然に反すると分かっていた。
それでも、彼が生きる可能性がある手段を捨てる訳には行かなかった。
イリスは深く息を吐き、心を静める。
自然の気配に神経を研ぎ澄まし、己の魔力を自然に溶かす。
あらゆる音が遠ざかり、湖の静寂が胸の中に流れ込んだ。
そして徐々に自然の息吹が頭に流れ込み始める。
「どうか、この光を消さないで。
……この命を繋いでください。」
祈る声が、空気に染みていく。
その瞬間、イリスの体に熱が走った。
大地からの力が、下から込み上げるように体に流れ込む。
風が肌を撫でる度にその魔力の欠片をイリスへ与える。
湖の水が大きな波を起こし、イリスとスネイプへと飛びかかり、魔力を置いては引いてを繰り返す。
体の全てが沸騰するような熱がイリスを支配する。
イリスはスネイプの胸に手を当て、自身の魔力を流し込んだ。
青白い光が二人の間で爆ぜ、強く輝きを増していく。
小屋の中が閃光に包まれ、夜が昼に変わったようだった。
「セブルス、私の愛を受け取って。
……愛してる。」
イリスは静かに唇を重ねた。
その接触とともに、体から魔力が急速に吸い取られていく。
同時に、彼の身体に熱が戻ってくるのを感じた。
どうか、魔力よ足りて。
自然よ、彼を助けて。
「愛してる……。
私の光よ……どうか息を吹き返して。」
力が抜け、視界が滲む。
体の奥が裂けるように痛みが走る。
体から魔力が零れ落ち、光も弱まっていく。
イリスの意識が薄れはじめる。
あと少し。あと少しで届くはず。
けれど、全身の力が抜け、イリスの身体は傾いだ。
光が静かに消え、彼女はそのままスネイプの胸の上に倒れ込んだ。
