特別編
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第2話 壁を隔てた先
イリスは、すぐにでも小屋へ飛び込みたかった。
扉を開け、スネイプの顔を見たかった。
その声を、確かめたかった。
けれど、小屋の中から聞こえてくる声は穏やかで、
まるで静かな対話のようだった。
その静けさがかえって不気味で、誰も動けなかった。
木壁の隙間から、月光が細く差し込む。
その先に、重なり合う二つの影。
息を潜めると、冷たく響く声が耳に触れた。
「……この杖は、言うことを聞かぬ。」
冷たく乾いた声。
空気がひとつ震え、イリスの背筋に粟が立つ。
ヴォルデモートの声だった。
その声を聞くだけで血が凍るようだった。
そして、もうひとつの声がそれに応じる。
「……その杖は、あなた様にだけ……」
スネイプだった。
低く、落ち着いた声。
恐れの色はなく、ただ静けさだけがあった。
その静けさが、まるで覚悟そのもののように伝わってくる。
木壁に掌を当てる。
冷たい木目の向こうから、微かな振動が伝わった。
空気そのものが、言葉の刃で切り裂かれていく。
「お前は賢い男だ……」
「……ダンブルドアを……。」
途切れる声の中で、その名を聞いた瞬間、
イリスの胸の奥で赤い石が熱を放った。
静かに脈打つように、まるで怒りか悲しみを感じ取るように。
石の奥に、スネイプの気配が微かに揺れている。
「何を……話しているの……?」
呟いた声は自分でも驚くほど掠れていた。
恐怖と焦りが入り混じり、身体の芯が冷えていく。
イリスは途切れた声を聞き取ろうと、壁に耳を寄せた。
目を閉じ、息を止める。
風が止み、湖の水音さえ消える。
世界が息を潜めている。
「我が君──」
その声が途切れた。
次の瞬間、壁の向こうで何かが激しくぶつかる音。
空気が震え、イリスの心臓も跳ねた。
何が起きたのかわからない。
時間が凍りついたようだった。
だが、刹那の吐息───
それが彼のものだと分かった。
「……セブルス……?」
その名を呼ぶ声は、風に溶けて消えた。
脳裏に焼き付くのは、あの低い息づかい。
間違いない、彼が攻撃された。
イリスは反射的に立ち上がった。
だが、次の瞬間、誰かの手が彼女の服を掴んだ。
ハリーとハーマイオニーだった。
ハリーは蒼ざめた顔で首を振る。
ハーマイオニーは唇を噛み、涙をこらえていた。
二人の目が語っていた。
行くな、今はまだ。と。
「でも……!」
イリスの声が震えた。
体中の血が逆流する。
それでも、彼らの手が離れなかった。
その時壁の向こうで、再び何かがぶつかる音。
一度、二度、三度。
鈍い音が、まるで心臓を叩くように響く。
ガラス越しの月明かりが赤く染まった。
飛び散った液体が光を歪める。
息を呑む間もなく、冷ややかな気配がすっと消えた。
音が、風が、すべて止んだ。
イリスはその場に立ち尽くした。
世界から音が失われ、鼓動の音だけが耳に残る。
それが彼の血なら──。
その思いが胸を貫いた瞬間、
身体が勝手に動いた。
イリスは乱れた呼吸のまま、小屋の扉へと駆け寄った。
手が震え、扉を押し開ける音が夜を裂く。
「セブルス!」
叫んだ声が、凍てつく空気の中に溶けていった。
イリスは、すぐにでも小屋へ飛び込みたかった。
扉を開け、スネイプの顔を見たかった。
その声を、確かめたかった。
けれど、小屋の中から聞こえてくる声は穏やかで、
まるで静かな対話のようだった。
その静けさがかえって不気味で、誰も動けなかった。
木壁の隙間から、月光が細く差し込む。
その先に、重なり合う二つの影。
息を潜めると、冷たく響く声が耳に触れた。
「……この杖は、言うことを聞かぬ。」
冷たく乾いた声。
空気がひとつ震え、イリスの背筋に粟が立つ。
ヴォルデモートの声だった。
その声を聞くだけで血が凍るようだった。
そして、もうひとつの声がそれに応じる。
「……その杖は、あなた様にだけ……」
スネイプだった。
低く、落ち着いた声。
恐れの色はなく、ただ静けさだけがあった。
その静けさが、まるで覚悟そのもののように伝わってくる。
木壁に掌を当てる。
冷たい木目の向こうから、微かな振動が伝わった。
空気そのものが、言葉の刃で切り裂かれていく。
「お前は賢い男だ……」
「……ダンブルドアを……。」
途切れる声の中で、その名を聞いた瞬間、
イリスの胸の奥で赤い石が熱を放った。
静かに脈打つように、まるで怒りか悲しみを感じ取るように。
石の奥に、スネイプの気配が微かに揺れている。
「何を……話しているの……?」
呟いた声は自分でも驚くほど掠れていた。
恐怖と焦りが入り混じり、身体の芯が冷えていく。
イリスは途切れた声を聞き取ろうと、壁に耳を寄せた。
目を閉じ、息を止める。
風が止み、湖の水音さえ消える。
世界が息を潜めている。
「我が君──」
その声が途切れた。
次の瞬間、壁の向こうで何かが激しくぶつかる音。
空気が震え、イリスの心臓も跳ねた。
何が起きたのかわからない。
時間が凍りついたようだった。
だが、刹那の吐息───
それが彼のものだと分かった。
「……セブルス……?」
その名を呼ぶ声は、風に溶けて消えた。
脳裏に焼き付くのは、あの低い息づかい。
間違いない、彼が攻撃された。
イリスは反射的に立ち上がった。
だが、次の瞬間、誰かの手が彼女の服を掴んだ。
ハリーとハーマイオニーだった。
ハリーは蒼ざめた顔で首を振る。
ハーマイオニーは唇を噛み、涙をこらえていた。
二人の目が語っていた。
行くな、今はまだ。と。
「でも……!」
イリスの声が震えた。
体中の血が逆流する。
それでも、彼らの手が離れなかった。
その時壁の向こうで、再び何かがぶつかる音。
一度、二度、三度。
鈍い音が、まるで心臓を叩くように響く。
ガラス越しの月明かりが赤く染まった。
飛び散った液体が光を歪める。
息を呑む間もなく、冷ややかな気配がすっと消えた。
音が、風が、すべて止んだ。
イリスはその場に立ち尽くした。
世界から音が失われ、鼓動の音だけが耳に残る。
それが彼の血なら──。
その思いが胸を貫いた瞬間、
身体が勝手に動いた。
イリスは乱れた呼吸のまま、小屋の扉へと駆け寄った。
手が震え、扉を押し開ける音が夜を裂く。
「セブルス!」
叫んだ声が、凍てつく空気の中に溶けていった。
