第6章 死の秘宝2
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第9話 灯を託す
ダンブルドアを殺したあの夜から、すでに分かっていた。
我輩は長くは生きられぬと。
闇の時代が終わる時、裏切り者として処刑される。
…あるいは、忠実な下僕として殺される。
いずれにせよ、どちらの名で呼ばれようと終わりに変わりはない。
だからこそ、離れたかった。
突き放さねばならなかった。
それが、唯一お前を守る手段だと信じていた。
なのに、あのエルフは諦めてくれなかった。
どれほど言葉で傷つけても、目を背けなかった。
その頑なな優しさが、胸を裂くほど嬉しく、同時に耐え難く苦しかった。
我輩は長く空虚の中にいた。
愛という名のものを信じたことなど、一度もなかった。
だが、お前の手が我輩の頬に触れたとき、
その静けさの中に確かに“赦し”を見た。
イリス。
お前の存在が、我輩にとってどれほどの光だったか。
あの夜、互いにすべてをさらけ出したとき、
我輩の心は初めて軽くなった。
過去の罪を消すことはできぬが、
それでも、お前に触れた瞬間、我輩は生きていてよかったと思えた。
愛することが罪ではないのだと、
お前が証明してくれた。
その瞬間、我輩は未来を夢見てしまった。
愚かにも──お前と生きる明日を。
闇が終われば、共にホグワーツを去ろう。
人目を避け、誰にも知られぬ森に身を隠そう。
薬草を育て、炎を焚き、お前の声を聞きながら夜を越えよう。
それだけでよかった。
だが、それは叶わぬ夢だ。
分かっている。
約束は守れない。
分かっていたはずなのに、心が勝手に願ってしまった。
その小さな希望が、どれほどお前を傷つけることになるのかも知らずに。
だからこそ、我輩は決めた。
命が尽きるその瞬間まで、お前とお前の未来を守ると。
懐から、ひとつの小さな箱を取り出す。
中には銀鎖に包まれた赤い石。
任務の途中、偶然この石を見つけたとき、
真っ先にお前の瞳が浮かんだ。
それは血の色ではなく、夜明けの色に近い紅だった。
我輩がいなくなった後、お前がこの石を見つめるたびに、
ほんの少しでも心が温まるようにと願った。
───
イリスが安らかに眠っている。
その寝息が、静かな部屋にかすかに響く。
我輩は椅子を引き寄せ、そっと腰を下ろした。
白い髪が頬にかかっている。
指先でそれをすくい、尖った耳の後ろへと掛けた。
まるで壊れもののように、慎重に。
その寝顔を見ていると、胸の奥が温かくなる。
こんな感情を抱く日が来るとは思わなかった。
我輩はそっとネックレスを取り出し、杖をかざす。
石が淡く脈を打った。
短い祈りを、静かに紡ぐ。
「……どうか、この灯が、お前を導くように。」
その声は風にも届かぬほど微かだった。
だが、確かに魔法は宿った。
ネックレスを懐に戻し、立ち上がる。
扉の前で一度だけ振り返る。
穏やかな寝顔。
その頬に小さく笑みが浮かんでいる。
夢の中でも我輩の名を呼んでいるのだろうか。
「……イリス。」
声に出すと、胸が締めつけられた。
唇に触れたその名が、痛いほどに愛しかった。
───
最終決戦の日。
空気は既に死を孕んでいた。
ホグワーツの上を、黒い雲が重く垂れ込める。
ダンブルドアから託された情報をハリーに伝えることができれば、
闇は終わる。
それが我輩の最後の使命。
イリス、お前は何かを察していたのだろう。
「一緒に行く」と言い出したお前に、
我輩は平静を装い、冷たく突き放した。
嘘は慣れている。
だがその瞬間、胸が裂かれるように痛んだ。
お前の瞳に滲んだ光が、
心を貫いた。
我輩はそれでも、笑おうとした。
せめて最後にお前を泣かせぬように。
そして懐から、あの赤い石のネックレスを取り出した。
「……これは、お前に。」
我輩はイリスの首にそれを掛ける。
白い肌に赤い石が触れ、静かな光を返す。
まるでお前のために生まれた宝石のようだった。
「……似合う。」
それだけしか言えなかった。
もっと伝えたい言葉がいくつもあったのに、
口にした瞬間、崩れてしまいそうで。
お前だけは、生き延びてくれ。
その想いを抱いて、イリスを強く抱きしめた。
震える肩に手を添え、静かに唇を重ねる。
その一瞬の温もりに、すべてを託した。
愛している──
そう言葉にすれば、すべてが壊れる気がした。
だから、言わなかった。
ただ抱きしめ、祈った。
この灯が、どうかお前を守るように。
───
そして我輩は、最後の戦場へ向かった。
もう振り返らなかった。
振り返れば、二度と歩けなくなると思ったからだ。
だが、風が吹いた。
かすかに甘い香りを運ぶ、森の風だった。
まるで、お前が呼んでいるようだった。
我輩は目を閉じ、
ただその名を心の奥でそっと呼んだ。
──イリス。
闇の中でも、確かに灯があった。
それが、お前だった。
ダンブルドアを殺したあの夜から、すでに分かっていた。
我輩は長くは生きられぬと。
闇の時代が終わる時、裏切り者として処刑される。
…あるいは、忠実な下僕として殺される。
いずれにせよ、どちらの名で呼ばれようと終わりに変わりはない。
だからこそ、離れたかった。
突き放さねばならなかった。
それが、唯一お前を守る手段だと信じていた。
なのに、あのエルフは諦めてくれなかった。
どれほど言葉で傷つけても、目を背けなかった。
その頑なな優しさが、胸を裂くほど嬉しく、同時に耐え難く苦しかった。
我輩は長く空虚の中にいた。
愛という名のものを信じたことなど、一度もなかった。
だが、お前の手が我輩の頬に触れたとき、
その静けさの中に確かに“赦し”を見た。
イリス。
お前の存在が、我輩にとってどれほどの光だったか。
あの夜、互いにすべてをさらけ出したとき、
我輩の心は初めて軽くなった。
過去の罪を消すことはできぬが、
それでも、お前に触れた瞬間、我輩は生きていてよかったと思えた。
愛することが罪ではないのだと、
お前が証明してくれた。
その瞬間、我輩は未来を夢見てしまった。
愚かにも──お前と生きる明日を。
闇が終われば、共にホグワーツを去ろう。
人目を避け、誰にも知られぬ森に身を隠そう。
薬草を育て、炎を焚き、お前の声を聞きながら夜を越えよう。
それだけでよかった。
だが、それは叶わぬ夢だ。
分かっている。
約束は守れない。
分かっていたはずなのに、心が勝手に願ってしまった。
その小さな希望が、どれほどお前を傷つけることになるのかも知らずに。
だからこそ、我輩は決めた。
命が尽きるその瞬間まで、お前とお前の未来を守ると。
懐から、ひとつの小さな箱を取り出す。
中には銀鎖に包まれた赤い石。
任務の途中、偶然この石を見つけたとき、
真っ先にお前の瞳が浮かんだ。
それは血の色ではなく、夜明けの色に近い紅だった。
我輩がいなくなった後、お前がこの石を見つめるたびに、
ほんの少しでも心が温まるようにと願った。
───
イリスが安らかに眠っている。
その寝息が、静かな部屋にかすかに響く。
我輩は椅子を引き寄せ、そっと腰を下ろした。
白い髪が頬にかかっている。
指先でそれをすくい、尖った耳の後ろへと掛けた。
まるで壊れもののように、慎重に。
その寝顔を見ていると、胸の奥が温かくなる。
こんな感情を抱く日が来るとは思わなかった。
我輩はそっとネックレスを取り出し、杖をかざす。
石が淡く脈を打った。
短い祈りを、静かに紡ぐ。
「……どうか、この灯が、お前を導くように。」
その声は風にも届かぬほど微かだった。
だが、確かに魔法は宿った。
ネックレスを懐に戻し、立ち上がる。
扉の前で一度だけ振り返る。
穏やかな寝顔。
その頬に小さく笑みが浮かんでいる。
夢の中でも我輩の名を呼んでいるのだろうか。
「……イリス。」
声に出すと、胸が締めつけられた。
唇に触れたその名が、痛いほどに愛しかった。
───
最終決戦の日。
空気は既に死を孕んでいた。
ホグワーツの上を、黒い雲が重く垂れ込める。
ダンブルドアから託された情報をハリーに伝えることができれば、
闇は終わる。
それが我輩の最後の使命。
イリス、お前は何かを察していたのだろう。
「一緒に行く」と言い出したお前に、
我輩は平静を装い、冷たく突き放した。
嘘は慣れている。
だがその瞬間、胸が裂かれるように痛んだ。
お前の瞳に滲んだ光が、
心を貫いた。
我輩はそれでも、笑おうとした。
せめて最後にお前を泣かせぬように。
そして懐から、あの赤い石のネックレスを取り出した。
「……これは、お前に。」
我輩はイリスの首にそれを掛ける。
白い肌に赤い石が触れ、静かな光を返す。
まるでお前のために生まれた宝石のようだった。
「……似合う。」
それだけしか言えなかった。
もっと伝えたい言葉がいくつもあったのに、
口にした瞬間、崩れてしまいそうで。
お前だけは、生き延びてくれ。
その想いを抱いて、イリスを強く抱きしめた。
震える肩に手を添え、静かに唇を重ねる。
その一瞬の温もりに、すべてを託した。
愛している──
そう言葉にすれば、すべてが壊れる気がした。
だから、言わなかった。
ただ抱きしめ、祈った。
この灯が、どうかお前を守るように。
───
そして我輩は、最後の戦場へ向かった。
もう振り返らなかった。
振り返れば、二度と歩けなくなると思ったからだ。
だが、風が吹いた。
かすかに甘い香りを運ぶ、森の風だった。
まるで、お前が呼んでいるようだった。
我輩は目を閉じ、
ただその名を心の奥でそっと呼んだ。
──イリス。
闇の中でも、確かに灯があった。
それが、お前だった。
