第6章 死の秘宝2
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第8話 夜明けの祈り
闇がまだ、世界を覆っていた。
ホグワーツの塔は崩れ、石の粉が空に舞う。
焼け焦げた匂いが肺を刺し、風のない夜が血のように重く沈んでいた。
イリスは剣戟と呪文の轟く中庭を見下ろし、深く息を吸った。
彼女は静かに地に触れた。
そこにはまだ“生きようとする鼓動”があった。
「……お願いします。もう少し力を貸して。」
呟きとともに、土の中で根が目を覚ます。
石畳の隙間を裂き、太い木の根がうねりを上げて伸びる。
それは倒れた生徒の体を包み込み、敵の呪文を遮る壁となった。
根に触れた者の頬には、わずかに温もりが戻っていく。
「助かった……!」
近くにいた少年が、涙に濡れた顔で息をついた。
「早く立って。戦えるなら戦って。
怪我してるなら退きなさい。」
イリスの声は静かだった。
その声音が、不思議と人々の心を奮い立たせる。
呪文の閃光が幾重にも交差し、夜空を裂く。
ホグワーツの庭では、死喰い人と教師、生徒たちが入り乱れていた。
マクゴナガルが防御の陣を張り、スラグホーンが後方で援護の魔法を放つ。
ハーマイオニーとロンも生徒たちを導きながら、仲間の負傷者をかばっていた。
イリスは戦場の中央で両手を広げ、風を感じる。
その間も呪文が飛んできていた。
だが、彼の残した赤い石がそれを防いでいた。
空気の層が歪み、魔法の熱と煙が渦を巻く。
「……風が怯えている。」
彼女は目を閉じ、風に語りかけるように囁いた。
「大丈夫、私はここにいる。
お願い。力を貸して。
この世界を、まだ終わらせたくないの。」
次の瞬間、風の向きが変わる。
イリスの支持するままに風は走る。
炎の魔法がそれに乗って広がり、死喰い人の列を押し返した。
生徒の放つ光の矢が勢いを増し、闇の陣営を貫いていく。
マクゴナガルが振り向き、わずかに目を見張った。
「……これがエルフの力なのですね。」
イリスは頷き、微笑んだ。
「ええ。でも今は、私も人間の仲間です。」
その言葉に、彼女の口元がわずかに緩む。
ほんの僅かな温かな時間だった。
だが、闇の陣営は休ませてはくれなかった。
次の瞬間には地の底から、低くうねるような咆哮が響いた。
巨人族が突進してくる。
イリスは咄嗟に地面へ手を突き立てた。
「退いて!」
次の瞬間、地が裂け、木の根が巨人の足を絡め取った。
彼らの動きが止まった隙に、フリットウィックが高らかに詠唱を叫び、
紅い閃光が夜を裂いた。
巨人たちは呻き声を上げ、背後へと崩れ落ちる。
そして巨人が倒れた後に見えた空をみて、イリスは息を呑んだ。
遠く、校舎の外で異様な光がぶつかり合っている。
緑と赤。
あの光は……。
「ハリー……!」
空の裂け目で、二つの影が絡み合っていた。
黒い煙と白い煙が、夜空の中で取っ組み合うように渦を巻く。
人の形などもう見えない。
けれど、確かにそこでは“二つの魂”が争っていた。
───
「今だ、ロングボトム!」
誰かが叫ぶ声がし、イリスはチラリと目を向ける。
そこには地を這う大きな蛇──。
常にヴォルデモートの傍に鎮座していた大蛇、ナギニがいた。
ロンを狙い飛びかかっている光景が広がっていた。
その時、ネビルの手に握られたグリフィンドールの剣が紅い光を放った。
一閃。
銀の軌跡が空を裂き、蛇の首が地に落ちた。
それと同時に世界の空気が変わった。
イリスは蝕まれていた魂の解放を感じた。
その瞬間、ようやく全ての分霊箱が消えたのだと確信した。
───
ナギニの首が落ちた時、空の渦が一気に解けた。
黒と白の煙が地上へと落ち、玄関広場で二つの影が向かい合う。
ハリー・ポッターと、ヴォルデモート。
ヴォルデモートは最期の分霊箱が破壊されたことで、激しい苦痛を感じているのか、険しい表情を浮かべていた。
「終わりだ、トム。」
少年の声が、奇妙なほど静かに響いた。
ヴォルデモートの口角が吊り上がる。
「終わるのは貴様だ、小僧。」
二人の杖先が同時に閃いた。
緑と赤の光がぶつかり合い、
世界が、音を失う。
しかし、少しずつハリーの光がヴォルデモートの光を押していく。
閃光がほどけ、緑が逆流していく。
そして光はヴォルデモートに帰っていった。
ヴォルデモートの杖がその手を離れ落ちていく。
ヴォルデモートの身体が震え灰のように崩れ始める。
そしてその姿が完全に消え落ちた時、
風が巻き上がり、その欠片を夜空へ運んだ。
その風には血と煙の匂いが混じっていたが、次第にそれは草の匂いへと変わっていった。
イリスは、その光景をただ見つめていた。
怒りでも、歓喜でもなく、静かな祈りのように。
「あなたもまた愛を知ることのなかった哀れな魂。
けれど、あなたの終わりが、誰かの夜を照らす光に変わりますように……。」
呟いた声は風に溶けた。
そして、静寂が訪れた。
焼けた塔の隙間から、かすかに白い光が差し込む。
森の向こう──スネイプの眠るあの木々の方角から、
夜明けの光が昇ってきていた。
イリスは掌を胸に当てる。
そこには、赤い石のネックレス。
その石がわずかに脈を打ち、朝の光を返す。
「……終わったのね、セブルス。
あなたの願った世界は、ここにあるわ。」
風が頬を撫でた。
森の方角から吹き抜けるそれは、まるで彼の手のように優しかった。
イリスは目を閉じ、
静かにその光の方角へ顔を上げた。
歓声が上がる。
泣き声と笑い声が混ざり合い、
誰かが倒れた仲間を抱きしめ、誰かが空を仰いでいた。
朝が、完全に昇った。
煙に満ちた空を金色が満たし、
大地が新しい息を吸い込む。
木々がざわめき、葉の隙間から朝日が降り注ぐ。
それはまるで、スネイプの魂が
夜を越え、朝を呼び寄せたようだった。
闇がまだ、世界を覆っていた。
ホグワーツの塔は崩れ、石の粉が空に舞う。
焼け焦げた匂いが肺を刺し、風のない夜が血のように重く沈んでいた。
イリスは剣戟と呪文の轟く中庭を見下ろし、深く息を吸った。
彼女は静かに地に触れた。
そこにはまだ“生きようとする鼓動”があった。
「……お願いします。もう少し力を貸して。」
呟きとともに、土の中で根が目を覚ます。
石畳の隙間を裂き、太い木の根がうねりを上げて伸びる。
それは倒れた生徒の体を包み込み、敵の呪文を遮る壁となった。
根に触れた者の頬には、わずかに温もりが戻っていく。
「助かった……!」
近くにいた少年が、涙に濡れた顔で息をついた。
「早く立って。戦えるなら戦って。
怪我してるなら退きなさい。」
イリスの声は静かだった。
その声音が、不思議と人々の心を奮い立たせる。
呪文の閃光が幾重にも交差し、夜空を裂く。
ホグワーツの庭では、死喰い人と教師、生徒たちが入り乱れていた。
マクゴナガルが防御の陣を張り、スラグホーンが後方で援護の魔法を放つ。
ハーマイオニーとロンも生徒たちを導きながら、仲間の負傷者をかばっていた。
イリスは戦場の中央で両手を広げ、風を感じる。
その間も呪文が飛んできていた。
だが、彼の残した赤い石がそれを防いでいた。
空気の層が歪み、魔法の熱と煙が渦を巻く。
「……風が怯えている。」
彼女は目を閉じ、風に語りかけるように囁いた。
「大丈夫、私はここにいる。
お願い。力を貸して。
この世界を、まだ終わらせたくないの。」
次の瞬間、風の向きが変わる。
イリスの支持するままに風は走る。
炎の魔法がそれに乗って広がり、死喰い人の列を押し返した。
生徒の放つ光の矢が勢いを増し、闇の陣営を貫いていく。
マクゴナガルが振り向き、わずかに目を見張った。
「……これがエルフの力なのですね。」
イリスは頷き、微笑んだ。
「ええ。でも今は、私も人間の仲間です。」
その言葉に、彼女の口元がわずかに緩む。
ほんの僅かな温かな時間だった。
だが、闇の陣営は休ませてはくれなかった。
次の瞬間には地の底から、低くうねるような咆哮が響いた。
巨人族が突進してくる。
イリスは咄嗟に地面へ手を突き立てた。
「退いて!」
次の瞬間、地が裂け、木の根が巨人の足を絡め取った。
彼らの動きが止まった隙に、フリットウィックが高らかに詠唱を叫び、
紅い閃光が夜を裂いた。
巨人たちは呻き声を上げ、背後へと崩れ落ちる。
そして巨人が倒れた後に見えた空をみて、イリスは息を呑んだ。
遠く、校舎の外で異様な光がぶつかり合っている。
緑と赤。
あの光は……。
「ハリー……!」
空の裂け目で、二つの影が絡み合っていた。
黒い煙と白い煙が、夜空の中で取っ組み合うように渦を巻く。
人の形などもう見えない。
けれど、確かにそこでは“二つの魂”が争っていた。
───
「今だ、ロングボトム!」
誰かが叫ぶ声がし、イリスはチラリと目を向ける。
そこには地を這う大きな蛇──。
常にヴォルデモートの傍に鎮座していた大蛇、ナギニがいた。
ロンを狙い飛びかかっている光景が広がっていた。
その時、ネビルの手に握られたグリフィンドールの剣が紅い光を放った。
一閃。
銀の軌跡が空を裂き、蛇の首が地に落ちた。
それと同時に世界の空気が変わった。
イリスは蝕まれていた魂の解放を感じた。
その瞬間、ようやく全ての分霊箱が消えたのだと確信した。
───
ナギニの首が落ちた時、空の渦が一気に解けた。
黒と白の煙が地上へと落ち、玄関広場で二つの影が向かい合う。
ハリー・ポッターと、ヴォルデモート。
ヴォルデモートは最期の分霊箱が破壊されたことで、激しい苦痛を感じているのか、険しい表情を浮かべていた。
「終わりだ、トム。」
少年の声が、奇妙なほど静かに響いた。
ヴォルデモートの口角が吊り上がる。
「終わるのは貴様だ、小僧。」
二人の杖先が同時に閃いた。
緑と赤の光がぶつかり合い、
世界が、音を失う。
しかし、少しずつハリーの光がヴォルデモートの光を押していく。
閃光がほどけ、緑が逆流していく。
そして光はヴォルデモートに帰っていった。
ヴォルデモートの杖がその手を離れ落ちていく。
ヴォルデモートの身体が震え灰のように崩れ始める。
そしてその姿が完全に消え落ちた時、
風が巻き上がり、その欠片を夜空へ運んだ。
その風には血と煙の匂いが混じっていたが、次第にそれは草の匂いへと変わっていった。
イリスは、その光景をただ見つめていた。
怒りでも、歓喜でもなく、静かな祈りのように。
「あなたもまた愛を知ることのなかった哀れな魂。
けれど、あなたの終わりが、誰かの夜を照らす光に変わりますように……。」
呟いた声は風に溶けた。
そして、静寂が訪れた。
焼けた塔の隙間から、かすかに白い光が差し込む。
森の向こう──スネイプの眠るあの木々の方角から、
夜明けの光が昇ってきていた。
イリスは掌を胸に当てる。
そこには、赤い石のネックレス。
その石がわずかに脈を打ち、朝の光を返す。
「……終わったのね、セブルス。
あなたの願った世界は、ここにあるわ。」
風が頬を撫でた。
森の方角から吹き抜けるそれは、まるで彼の手のように優しかった。
イリスは目を閉じ、
静かにその光の方角へ顔を上げた。
歓声が上がる。
泣き声と笑い声が混ざり合い、
誰かが倒れた仲間を抱きしめ、誰かが空を仰いでいた。
朝が、完全に昇った。
煙に満ちた空を金色が満たし、
大地が新しい息を吸い込む。
木々がざわめき、葉の隙間から朝日が降り注ぐ。
それはまるで、スネイプの魂が
夜を越え、朝を呼び寄せたようだった。
