第6章 死の秘宝2
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第5話 受け継がれる灯
スネイプを弔ったあと、イリスたちは静まり返った森を抜け、再びホグワーツを目指していた。
先ほどまで耳を裂いていた魔法の轟音は消え、代わりに焦げた土の匂いだけが漂っている。
道すがら、ハーマイオニーが口を開いた。
「エルフは……あんなふうに弔うのね。
神秘的で、でもすごく、温かかったわ。」
ハーマイオニーの声には涙が混じっていた。
ハリーもロンも静かに頷く。
「ありがとう。
……それで、あなたたちはこれからどうするの?」
イリスが問いかけると、ハリーは懐から小さな瓶を取り出した。
中には淡い銀色の液体が揺れている。
「スネイプがくれたんだ。
記憶を。……これで全てが分かるはずなんだ。」
ハリーの声は、決意と恐れが混ざった響きをしていた。
その瓶の中の光を見つめながら、イリスは彼の言葉を思い出す。
──ポッターは、死なねばならぬ。
その声が耳の奥でよみがえる。
一瞬、胸の奥に冷たい痛みが走った。
分霊箱をすべて破壊しなければ、ヴォルデモートは何度でも蘇る。
あの男から魔法界を守るには、ハリーの死が必要不可欠。
まだ年端もいかない少年が、その運命を背負わされるなんて。
イリスは拳を強く握りしめた。
「イリス……?」
ハリーが心配そうに見つめていた。
その瞳は、まっすぐで、どこまでも透き通っている。
彼の中に宿る光が、スネイプのそれとは正反対に、あまりにもまぶしく思えた。
「ハリー。早く行って。
彼があなたに伝えたかったことを…...、
その目で確かめて。」
それが精一杯だった。
ハリーは静かに頷き、階段を上がっていった。
───
ハリーが去ったあと、残されたハーマイオニー、ロンの二人は階段に腰を下ろした。
外では風が唸り、遠くで崩れた瓦礫の音がかすかに響く。
それでも、今この場所だけが嘘のように静かだった
イリスは窓辺へ向かった。
曇ったガラスの外には、黒い煙がまだ漂っている。
しかし、その隙間からわずかに夜明けの光が差し込んでいた。
その光を見つめながら、イリスは思い出していた。
──人は死を恐れる。
大切な者を奪われ、二度と戻らぬ。
全てを失ってもなお、生き続ける方が残酷なのだ。
スネイプが、かつてそう言っていた。
彼があの日、愛する人の死を目の当たりにしたとき、どんな気持ちだったのだろう。
エルフの自分には、あの人間の痛みを、あの深さを完全に理解することなど出来はしない。
愛した者を自らの過去で殺め、その罪を抱え続ける。
それは永遠の命よりも、はるかに長い罰だった。
そしてなぜそこまで己を責め続けるのか、以前は理解できなかった。
けれど今なら少しわかる。
“別れを果たせなかった痛み”が、どれほど残酷なものか。
もう一度抱きしめれば、もう一言かければという後悔が、
津波のように押し寄せ、心を押し潰していく。
死は終わりではなく、残された者に永遠の問いを突きつける。
それが“愛”という名の鎖なのだ。
死は怖くない。けれど──
「残された者」として生き続ける苦しみが、これほど痛いとは思わなかった。
イリスは窓枠に触れ、冷たい石の感触を確かめる。
「……セブルス。」
その名を呼ぶだけで胸が熱くなった。
「あなたの愛は呪いじゃなかった。
あなたはただ、愛の痛みを抱いて生きてきたのね。
今なら、少しだけわかるの。
愛することは、終わりのない祈りなのね……。」
夜風がイリスの髪を揺らした。
死とは終わりではなく、形を変えた愛の在り処なのかもしれない。
スネイプは愛によって縛られ、そして愛によって解き放たれた。
その姿は、彼がかつて恐れていた“死”そのものを超えたのだろう。
イリスは目を閉じ、唇を震わせながら小さく呟いた。
「セブルス……あなたが教えてくれた“愛”は、
まだ私の中で、生きているわ。」
───
数十分ほど経った頃…。
階段の上で足音が響いた。
ハーマイオニーとロンが振り返る。
イリスもまた、そっと顔を上げた。
ハリーが戻ってきた。
その表情は、静かな絶望を湛えていた。
「スネイプは……守っていたんだ。
ずっと僕を……そして、僕の母さんを。」
声がかすれ、途切れ途切れになる。
イリスは何も言わず、ただ見つめた。
「なんで僕だけ分霊箱の声が聞こえたか、
なんで僕だけが、やつの中を見たのか……
ずっと感じてたなんで僕だけがって……。
それは僕の中に、やつの魂が入り込んだからだ。
だから僕は──死ななきゃ、終わらない。」
ハーマイオニーが顔を覆った。
「いやよ、ハリー! そんなの、間違ってる!」
「でも、行かなきゃ終わらない。
これが……僕の運命なんだ。」
ロンも息を呑み、ただ俯いた。
イリスは一歩、彼に近づいた。
小さな少年が、恐怖を抱えながらも前へ進もうとしている。
その姿に、かつてスネイプが見せた“覚悟”の影が重なった。
「ハリー……大丈夫。
あなたは、あなたのままでいい。
きっと彼も、あなたを誇りに思ってるわ。
あなたの光は必ず闇を焼き尽くす。
そう信じてるわ。」
ハリーの瞳が揺れる。
イリスは、かつてスネイプがしたように、恐れを抱いた少年を静かに抱きしめた。
胸元の赤い石がわずかに温度を帯び、心臓の鼓動に寄り添う。
その温もりが、まるで“彼”の手のように背を支えている気がした。
「……ハリー。あなたと出会えてよかった。」
小さな声だったが、確かに届いた。
ハリーも、短く頷いた。
ハーマイオニーとロンもその輪に加わり、三人が静かに抱き合う。
そして、ハリーはそっと腕をほどいた。
一歩。
また一歩。
彼は一人で歩き出す。
その背中には恐れよりも、静かな決意が宿っていた。
イリスはその姿を見送りながら、胸の前で手を組む。
瞼を閉じ、かすかな祈りを捧げた。
──どうか、この命が終わりのためではなく、
始まりの光となりますように。
そして、ハリーの姿が小さくなっていく。
その背を照らすのは、戦場の彼方で揺れる炎の光。
それはまるで、スネイプから託された“愛の灯”が、
次の命へ受け継がれていくようだった。
スネイプを弔ったあと、イリスたちは静まり返った森を抜け、再びホグワーツを目指していた。
先ほどまで耳を裂いていた魔法の轟音は消え、代わりに焦げた土の匂いだけが漂っている。
道すがら、ハーマイオニーが口を開いた。
「エルフは……あんなふうに弔うのね。
神秘的で、でもすごく、温かかったわ。」
ハーマイオニーの声には涙が混じっていた。
ハリーもロンも静かに頷く。
「ありがとう。
……それで、あなたたちはこれからどうするの?」
イリスが問いかけると、ハリーは懐から小さな瓶を取り出した。
中には淡い銀色の液体が揺れている。
「スネイプがくれたんだ。
記憶を。……これで全てが分かるはずなんだ。」
ハリーの声は、決意と恐れが混ざった響きをしていた。
その瓶の中の光を見つめながら、イリスは彼の言葉を思い出す。
──ポッターは、死なねばならぬ。
その声が耳の奥でよみがえる。
一瞬、胸の奥に冷たい痛みが走った。
分霊箱をすべて破壊しなければ、ヴォルデモートは何度でも蘇る。
あの男から魔法界を守るには、ハリーの死が必要不可欠。
まだ年端もいかない少年が、その運命を背負わされるなんて。
イリスは拳を強く握りしめた。
「イリス……?」
ハリーが心配そうに見つめていた。
その瞳は、まっすぐで、どこまでも透き通っている。
彼の中に宿る光が、スネイプのそれとは正反対に、あまりにもまぶしく思えた。
「ハリー。早く行って。
彼があなたに伝えたかったことを…...、
その目で確かめて。」
それが精一杯だった。
ハリーは静かに頷き、階段を上がっていった。
───
ハリーが去ったあと、残されたハーマイオニー、ロンの二人は階段に腰を下ろした。
外では風が唸り、遠くで崩れた瓦礫の音がかすかに響く。
それでも、今この場所だけが嘘のように静かだった
イリスは窓辺へ向かった。
曇ったガラスの外には、黒い煙がまだ漂っている。
しかし、その隙間からわずかに夜明けの光が差し込んでいた。
その光を見つめながら、イリスは思い出していた。
──人は死を恐れる。
大切な者を奪われ、二度と戻らぬ。
全てを失ってもなお、生き続ける方が残酷なのだ。
スネイプが、かつてそう言っていた。
彼があの日、愛する人の死を目の当たりにしたとき、どんな気持ちだったのだろう。
エルフの自分には、あの人間の痛みを、あの深さを完全に理解することなど出来はしない。
愛した者を自らの過去で殺め、その罪を抱え続ける。
それは永遠の命よりも、はるかに長い罰だった。
そしてなぜそこまで己を責め続けるのか、以前は理解できなかった。
けれど今なら少しわかる。
“別れを果たせなかった痛み”が、どれほど残酷なものか。
もう一度抱きしめれば、もう一言かければという後悔が、
津波のように押し寄せ、心を押し潰していく。
死は終わりではなく、残された者に永遠の問いを突きつける。
それが“愛”という名の鎖なのだ。
死は怖くない。けれど──
「残された者」として生き続ける苦しみが、これほど痛いとは思わなかった。
イリスは窓枠に触れ、冷たい石の感触を確かめる。
「……セブルス。」
その名を呼ぶだけで胸が熱くなった。
「あなたの愛は呪いじゃなかった。
あなたはただ、愛の痛みを抱いて生きてきたのね。
今なら、少しだけわかるの。
愛することは、終わりのない祈りなのね……。」
夜風がイリスの髪を揺らした。
死とは終わりではなく、形を変えた愛の在り処なのかもしれない。
スネイプは愛によって縛られ、そして愛によって解き放たれた。
その姿は、彼がかつて恐れていた“死”そのものを超えたのだろう。
イリスは目を閉じ、唇を震わせながら小さく呟いた。
「セブルス……あなたが教えてくれた“愛”は、
まだ私の中で、生きているわ。」
───
数十分ほど経った頃…。
階段の上で足音が響いた。
ハーマイオニーとロンが振り返る。
イリスもまた、そっと顔を上げた。
ハリーが戻ってきた。
その表情は、静かな絶望を湛えていた。
「スネイプは……守っていたんだ。
ずっと僕を……そして、僕の母さんを。」
声がかすれ、途切れ途切れになる。
イリスは何も言わず、ただ見つめた。
「なんで僕だけ分霊箱の声が聞こえたか、
なんで僕だけが、やつの中を見たのか……
ずっと感じてたなんで僕だけがって……。
それは僕の中に、やつの魂が入り込んだからだ。
だから僕は──死ななきゃ、終わらない。」
ハーマイオニーが顔を覆った。
「いやよ、ハリー! そんなの、間違ってる!」
「でも、行かなきゃ終わらない。
これが……僕の運命なんだ。」
ロンも息を呑み、ただ俯いた。
イリスは一歩、彼に近づいた。
小さな少年が、恐怖を抱えながらも前へ進もうとしている。
その姿に、かつてスネイプが見せた“覚悟”の影が重なった。
「ハリー……大丈夫。
あなたは、あなたのままでいい。
きっと彼も、あなたを誇りに思ってるわ。
あなたの光は必ず闇を焼き尽くす。
そう信じてるわ。」
ハリーの瞳が揺れる。
イリスは、かつてスネイプがしたように、恐れを抱いた少年を静かに抱きしめた。
胸元の赤い石がわずかに温度を帯び、心臓の鼓動に寄り添う。
その温もりが、まるで“彼”の手のように背を支えている気がした。
「……ハリー。あなたと出会えてよかった。」
小さな声だったが、確かに届いた。
ハリーも、短く頷いた。
ハーマイオニーとロンもその輪に加わり、三人が静かに抱き合う。
そして、ハリーはそっと腕をほどいた。
一歩。
また一歩。
彼は一人で歩き出す。
その背中には恐れよりも、静かな決意が宿っていた。
イリスはその姿を見送りながら、胸の前で手を組む。
瞼を閉じ、かすかな祈りを捧げた。
──どうか、この命が終わりのためではなく、
始まりの光となりますように。
そして、ハリーの姿が小さくなっていく。
その背を照らすのは、戦場の彼方で揺れる炎の光。
それはまるで、スネイプから託された“愛の灯”が、
次の命へ受け継がれていくようだった。
