第6章 死の秘宝2
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第2話 終焉の息吹
その日、死喰い人全員が呼び集められた。
イリスがその声を聞き駆けつけた時、すでに数人の死喰い人が床に転がっていた。
動く気配はない。
冷たい石畳の上で、彼らの体はヴォルデモートの足に踏みつけられていた。
残された者たちは息を潜め、目だけで互いを見合っている。
その空気は、血よりも重く淀んでいた。
「イリス……遅いではないか。」
ヴォルデモートの声が低く響く。
「お前でなければ殺していたところだ。」
その視線が突き刺さる。
蛇のように冷たい瞳に射抜かれ、イリスは静かに膝をついた。
「我らはホグワーツへ向かう。
光を砕き、魔法界を我が手に戻すのだ。」
言葉が放たれた瞬間、空気が裂けた。
死喰い人たちが次々と黒い煙に変わり、空間から消えていく。
イリスもそれに続こうとしたが、その背を鋭い声が止めた。
「待て。」
振り向いた瞬間、杖の先が閃いた。
イリスの手首が裂かれ、熱い痛みが弾ける。
イリスは息を呑み、思わず後ずさった。
しかしヴォルデモートは荒々しく腕を掴み上げ、傷口から滴り落ちる血をその唇へと寄せた。
冷たい感触。
吸われるたびに、力が抜けるような不快感が全身を身震いさせる。
やがてヴォルデモートは満足げに彼女を突き放した。
「力が戻ってくる。もうあいつらは終わりだ。」
乾いた声が笑う。
そして次の瞬間、その姿は霧のように消えた。
イリスは裂けた手首を押さえながら立ち尽くしていた。
そこへスネイプが歩み寄る。
その瞳は一瞥で全てを見抜いていた。
「傷を強く押さえていろ。」
短く告げると、彼はイリスの肩を支えた。
その手のひらがひどく温かい。
次の瞬間、二人の体は黒い煙となり、闇の空を切り裂いて飛び立った。
───
ホグワーツの敷地の外に降り立った時、そこには闇の軍勢が広がっていた。
巨人の影、無数の死喰い人。
夜の空気が押し潰されるように重く沈んでいる。
そのとき、イリスの頭の奥に声が響いた。
「ハリー・ポッターを差し出せば、お前たちの命は助けてやろう。
ハリー・ポッターを差し出せ……差し出せ……。」
その声はヴォルデモートのものだった。
杖を喉に当て、空へ向けて放たれている。
だが、ホグワーツは沈黙を貫いた。
苛立ったヴォルデモートが杖を掲げる。
死喰い人たちの呪文が一斉に放たれるが、城を覆う防護の魔法に弾かれ、光は散った。
「もうよい。……我が手で終わらせる。」
彼は静かに言い、杖を構える。
イリスはその杖を見て息を詰めた。
それは、ダンブルドアが生前使っていた杖。
あの墓を掘り返したというのか。
なんという死者への冒涜か。
吐き気が込み上げる。
だが怒りを見せるわけにはいかない。
感情を見せれば、全てが終わる。
イリスは唇を噛み、血の味を感じながら心を沈めた。
ヴォルデモートの杖先から、眩い緑の閃光が放たれた。
それは稲妻のように走り、ホグワーツの結界とぶつかる。
光が軋み、空が震える。
しかし結界は持ちこたえていた。
ヴォルデモートはさらに力を出したのか、放たれる魔力量が増していた。
その魔力に圧倒され、呆然としばらくぶつかり合う力を見つめていたイリスの耳に悲鳴が届いた。
その方向へ顔を向けるが、そこにいるのはヴォルデモートだけだった。
悲鳴をあげる存在は見当たらない。
だが、彼の手に握られた杖から放たれる魔力に乱れが生じ始めていた。
そして光が途切れる。
ヴォルデモートの魔法が止むと同時に、結界は燃え残った紙のように崩れ落ち、空に溶けていく。
イリスはその光景を見つめながら、思わず息を呑んだ。
これが、帝王の力。
たった一人の力で、城の守りを砕く。
なぜこの男が“闇の帝王”と呼ばれるのか。
その理由を骨の奥で理解する。
恐れとともに、奇妙な哀しみが胸をかすめる。
人であることを捨てて得た力。
それでも、彼はまだ人間でいたかったのではないか。
この力の前では、私の祈りなど……砂の粒のように儚い
そう感じ心が震えた。
だが、それでもイリスは未来を掴むために動かなければならない。
この男を裏切る──それは、神に背くような行為にも思えた。
───
結界が完全に崩れ落ちた瞬間、闇の軍勢が動き出した。
地を蹴る音、閃光、叫び。
イリスはその渦の中でスネイプの外套の裾を掴み、見上げた。
「イリス。我輩は生徒たちの避難経路を見てくる。
お前はポッターたちと合流しておけ。」
「わ、私も一緒に──」
「いらぬ。我輩一人の方が動きやすい。
お前は攻撃する振りをしながら合流していろ。」
その声は冷たく静かだった。
イリスは不安に駆られ、裾を掴む手に力を込める。
「セブルス……どうして私を見てくれないの。
一体、今、何を考えているの。」
スネイプは振り返ることなく小さく息を吐いた。
言葉は出なかった。
そしてそのまま背を向け、歩き出す。
イリスはその背を追った。
けれど、距離はすぐに開いていく。
またしても、手を伸ばしても届かない背中……。
その姿が、胸の奥を締めつけた。
風が唸り、空が暗く沈む。
闇の中で、運命の歯車が音を立てて動き始めた。
その日、死喰い人全員が呼び集められた。
イリスがその声を聞き駆けつけた時、すでに数人の死喰い人が床に転がっていた。
動く気配はない。
冷たい石畳の上で、彼らの体はヴォルデモートの足に踏みつけられていた。
残された者たちは息を潜め、目だけで互いを見合っている。
その空気は、血よりも重く淀んでいた。
「イリス……遅いではないか。」
ヴォルデモートの声が低く響く。
「お前でなければ殺していたところだ。」
その視線が突き刺さる。
蛇のように冷たい瞳に射抜かれ、イリスは静かに膝をついた。
「我らはホグワーツへ向かう。
光を砕き、魔法界を我が手に戻すのだ。」
言葉が放たれた瞬間、空気が裂けた。
死喰い人たちが次々と黒い煙に変わり、空間から消えていく。
イリスもそれに続こうとしたが、その背を鋭い声が止めた。
「待て。」
振り向いた瞬間、杖の先が閃いた。
イリスの手首が裂かれ、熱い痛みが弾ける。
イリスは息を呑み、思わず後ずさった。
しかしヴォルデモートは荒々しく腕を掴み上げ、傷口から滴り落ちる血をその唇へと寄せた。
冷たい感触。
吸われるたびに、力が抜けるような不快感が全身を身震いさせる。
やがてヴォルデモートは満足げに彼女を突き放した。
「力が戻ってくる。もうあいつらは終わりだ。」
乾いた声が笑う。
そして次の瞬間、その姿は霧のように消えた。
イリスは裂けた手首を押さえながら立ち尽くしていた。
そこへスネイプが歩み寄る。
その瞳は一瞥で全てを見抜いていた。
「傷を強く押さえていろ。」
短く告げると、彼はイリスの肩を支えた。
その手のひらがひどく温かい。
次の瞬間、二人の体は黒い煙となり、闇の空を切り裂いて飛び立った。
───
ホグワーツの敷地の外に降り立った時、そこには闇の軍勢が広がっていた。
巨人の影、無数の死喰い人。
夜の空気が押し潰されるように重く沈んでいる。
そのとき、イリスの頭の奥に声が響いた。
「ハリー・ポッターを差し出せば、お前たちの命は助けてやろう。
ハリー・ポッターを差し出せ……差し出せ……。」
その声はヴォルデモートのものだった。
杖を喉に当て、空へ向けて放たれている。
だが、ホグワーツは沈黙を貫いた。
苛立ったヴォルデモートが杖を掲げる。
死喰い人たちの呪文が一斉に放たれるが、城を覆う防護の魔法に弾かれ、光は散った。
「もうよい。……我が手で終わらせる。」
彼は静かに言い、杖を構える。
イリスはその杖を見て息を詰めた。
それは、ダンブルドアが生前使っていた杖。
あの墓を掘り返したというのか。
なんという死者への冒涜か。
吐き気が込み上げる。
だが怒りを見せるわけにはいかない。
感情を見せれば、全てが終わる。
イリスは唇を噛み、血の味を感じながら心を沈めた。
ヴォルデモートの杖先から、眩い緑の閃光が放たれた。
それは稲妻のように走り、ホグワーツの結界とぶつかる。
光が軋み、空が震える。
しかし結界は持ちこたえていた。
ヴォルデモートはさらに力を出したのか、放たれる魔力量が増していた。
その魔力に圧倒され、呆然としばらくぶつかり合う力を見つめていたイリスの耳に悲鳴が届いた。
その方向へ顔を向けるが、そこにいるのはヴォルデモートだけだった。
悲鳴をあげる存在は見当たらない。
だが、彼の手に握られた杖から放たれる魔力に乱れが生じ始めていた。
そして光が途切れる。
ヴォルデモートの魔法が止むと同時に、結界は燃え残った紙のように崩れ落ち、空に溶けていく。
イリスはその光景を見つめながら、思わず息を呑んだ。
これが、帝王の力。
たった一人の力で、城の守りを砕く。
なぜこの男が“闇の帝王”と呼ばれるのか。
その理由を骨の奥で理解する。
恐れとともに、奇妙な哀しみが胸をかすめる。
人であることを捨てて得た力。
それでも、彼はまだ人間でいたかったのではないか。
この力の前では、私の祈りなど……砂の粒のように儚い
そう感じ心が震えた。
だが、それでもイリスは未来を掴むために動かなければならない。
この男を裏切る──それは、神に背くような行為にも思えた。
───
結界が完全に崩れ落ちた瞬間、闇の軍勢が動き出した。
地を蹴る音、閃光、叫び。
イリスはその渦の中でスネイプの外套の裾を掴み、見上げた。
「イリス。我輩は生徒たちの避難経路を見てくる。
お前はポッターたちと合流しておけ。」
「わ、私も一緒に──」
「いらぬ。我輩一人の方が動きやすい。
お前は攻撃する振りをしながら合流していろ。」
その声は冷たく静かだった。
イリスは不安に駆られ、裾を掴む手に力を込める。
「セブルス……どうして私を見てくれないの。
一体、今、何を考えているの。」
スネイプは振り返ることなく小さく息を吐いた。
言葉は出なかった。
そしてそのまま背を向け、歩き出す。
イリスはその背を追った。
けれど、距離はすぐに開いていく。
またしても、手を伸ばしても届かない背中……。
その姿が、胸の奥を締めつけた。
風が唸り、空が暗く沈む。
闇の中で、運命の歯車が音を立てて動き始めた。
