第6章 死の秘宝2
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第1話 静寂の中の兆し
朝の光が、石造りの部屋に柔らかく差し込んでいた。
窓辺のカーテンが風に揺れ、微かな光の粒が空気に漂う。
机に向かうスネイプの背中は静かだった。
羽根ペンの音だけが、部屋の呼吸のように響く。
イリスはその傍らでカップを両手に包みながら、彼の横顔を見つめていた。
言葉は要らなかった。
沈黙の中に満ちるのは、不思議な安心だった。
彼がそこにいるだけで、胸の奥が温かく満たされていく。
──この静けさが永遠に続くことはない。
それでも、今だけは信じていたかった。
スネイプが書類を閉じる音が響く。
そして立ち上がると、イリスの背に手を伸ばした。
長い髪を指でまとめ、後ろでそっと結わえる。
「また呼ばれたら、無理はするな。」
「セブルスもよ?」
短いやり取りに、かすかな微笑みが混じった。
スネイプは報告書を手に取り、最後にもう一度イリスを見た。
何かを確かめるように頷き、静かに部屋を後にした。
───
夜。
呼び出されたイリスが戻ってきたのは、月が高く昇った頃だった。
衣を脱ぎかけたその肩に、まだ紅い痕が残っている。
スネイプは何も言わず、布を手に取り、彼女の肌を拭った。
薬草の香りがわずかに広がる。
「あなたの顔を見ていると、不思議と怖くなくなるの。」
イリスが微笑む。
スネイプは視線を逸らし、深く息をついた。
「……そうか。それならばもうよい。」
彼の言葉は低く、けれどどこか安堵を含んでいた。
イリスは彼の手の動きを見つめながら、そっと自分の指を重ねた。
互いの肌が触れた瞬間、温もりが鮮明になる。
その温かさが、生きているという確信のように胸に広がった。
そして、スネイプの表情にほんの一瞬、柔らかな安らぎが浮かぶ。
イリスはその微笑みを見て、自分だけが救われたのではないのだと悟った。
彼もまた、少しずつ光に触れているのだと。
───
季節は流れ、5月を越えた頃。
風の匂いが変わった。
空気の奥に、かすかな軋みが混じる。
イリスは窓辺で立ち止まり、ゆっくりと息を吐いた。
最近、少し体が重い。
朝起きても眠気が抜けず、胸の奥にわずかなむかつきを覚える。
香草の匂いに敏感になり、以前は好きだった果実の甘さを受け付けなくなっていた。
「少し疲れているのかしら……」
小さく呟きながら、イリスは指先でこめかみを押さえた。
体が変わりつつあるのを、どこかで感じていた。
長い夜と緊張が積み重なっていたため仕方の無いことなのだろう。
けれどその朝、これまでとは違う感覚で胸の奥で何かがざわめいた。
世界のどこかで、何かが崩れ落ちるような感覚。
そして冷たい痛みが静かに広がる。
大地の脈動が微かに乱れ、風が息を止める。
生命の流れにひとつ、黒い濁りが混ざった。
ヴォルデモートの乱れた魔法の気配。
それは、確かに近づいていた。
スネイプも同じ瞬間に顔を上げた。
机の上のインク壺が震え、羽根ペンが止まる。
二人の視線が交錯する。
「……始まるな。」
「ええ……。」
その言葉に、部屋の空気がわずかに重く沈んだ。
外の光が一瞬、翳る。
遠くで雷鳴のような音が響く。
空が震え、窓の外の世界が色を変えた。
イリスは胸の前で指を組み、静かに呟いた。
「これが世界の夜明けになればいいけれど……」
スネイプがその横顔を見つめる。
目の奥に、決意と祈りが宿っていた。
「ああ。二人で生きるためにな。」
イリスは微笑んだ。
その一瞬、時が止まったような静寂が訪れる。
だが、窓の外では世界が確かに動き始めていた。
風がざわめき、見えない歯車が音を立てる。
その日、再び闇が息をし始めた。
そして運命は、静かに軋みを上げた。
朝の光が、石造りの部屋に柔らかく差し込んでいた。
窓辺のカーテンが風に揺れ、微かな光の粒が空気に漂う。
机に向かうスネイプの背中は静かだった。
羽根ペンの音だけが、部屋の呼吸のように響く。
イリスはその傍らでカップを両手に包みながら、彼の横顔を見つめていた。
言葉は要らなかった。
沈黙の中に満ちるのは、不思議な安心だった。
彼がそこにいるだけで、胸の奥が温かく満たされていく。
──この静けさが永遠に続くことはない。
それでも、今だけは信じていたかった。
スネイプが書類を閉じる音が響く。
そして立ち上がると、イリスの背に手を伸ばした。
長い髪を指でまとめ、後ろでそっと結わえる。
「また呼ばれたら、無理はするな。」
「セブルスもよ?」
短いやり取りに、かすかな微笑みが混じった。
スネイプは報告書を手に取り、最後にもう一度イリスを見た。
何かを確かめるように頷き、静かに部屋を後にした。
───
夜。
呼び出されたイリスが戻ってきたのは、月が高く昇った頃だった。
衣を脱ぎかけたその肩に、まだ紅い痕が残っている。
スネイプは何も言わず、布を手に取り、彼女の肌を拭った。
薬草の香りがわずかに広がる。
「あなたの顔を見ていると、不思議と怖くなくなるの。」
イリスが微笑む。
スネイプは視線を逸らし、深く息をついた。
「……そうか。それならばもうよい。」
彼の言葉は低く、けれどどこか安堵を含んでいた。
イリスは彼の手の動きを見つめながら、そっと自分の指を重ねた。
互いの肌が触れた瞬間、温もりが鮮明になる。
その温かさが、生きているという確信のように胸に広がった。
そして、スネイプの表情にほんの一瞬、柔らかな安らぎが浮かぶ。
イリスはその微笑みを見て、自分だけが救われたのではないのだと悟った。
彼もまた、少しずつ光に触れているのだと。
───
季節は流れ、5月を越えた頃。
風の匂いが変わった。
空気の奥に、かすかな軋みが混じる。
イリスは窓辺で立ち止まり、ゆっくりと息を吐いた。
最近、少し体が重い。
朝起きても眠気が抜けず、胸の奥にわずかなむかつきを覚える。
香草の匂いに敏感になり、以前は好きだった果実の甘さを受け付けなくなっていた。
「少し疲れているのかしら……」
小さく呟きながら、イリスは指先でこめかみを押さえた。
体が変わりつつあるのを、どこかで感じていた。
長い夜と緊張が積み重なっていたため仕方の無いことなのだろう。
けれどその朝、これまでとは違う感覚で胸の奥で何かがざわめいた。
世界のどこかで、何かが崩れ落ちるような感覚。
そして冷たい痛みが静かに広がる。
大地の脈動が微かに乱れ、風が息を止める。
生命の流れにひとつ、黒い濁りが混ざった。
ヴォルデモートの乱れた魔法の気配。
それは、確かに近づいていた。
スネイプも同じ瞬間に顔を上げた。
机の上のインク壺が震え、羽根ペンが止まる。
二人の視線が交錯する。
「……始まるな。」
「ええ……。」
その言葉に、部屋の空気がわずかに重く沈んだ。
外の光が一瞬、翳る。
遠くで雷鳴のような音が響く。
空が震え、窓の外の世界が色を変えた。
イリスは胸の前で指を組み、静かに呟いた。
「これが世界の夜明けになればいいけれど……」
スネイプがその横顔を見つめる。
目の奥に、決意と祈りが宿っていた。
「ああ。二人で生きるためにな。」
イリスは微笑んだ。
その一瞬、時が止まったような静寂が訪れる。
だが、窓の外では世界が確かに動き始めていた。
風がざわめき、見えない歯車が音を立てる。
その日、再び闇が息をし始めた。
そして運命は、静かに軋みを上げた。
