第5章 死の秘宝
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第29話 再生の朝
イリスはスネイプの腕の中で静かに目を閉じていた。
耳を澄ますと、彼の胸の奥から穏やかな鼓動が響いている。
その音は、夜の名残を溶かすように、静かで、確かなリズムを刻んでいた。
スネイプの指が白い髪を梳く。
指先が触れるたび、イリスの心は小さく揺れ、確かにここに在ると告げていた。
その手の動きが、まるで「まだ壊れていない」と確かめてくれているようで、涙が込み上げた。
闇の帝王に奪われた夜のことを、イリスは今も鮮明に覚えている。
その指は冷たく、命を奪うように肌をなぞり、
その声は支配を囁く呪文のようだった。
触れられるたびに、心が削がれていく感覚。
自分の体が誰のものでもなくなっていく恐怖。
それが終わったあと、自分の中に残ったのは「生」ではなく「空洞」だけだった。
あの時、イリスは理解した。
「奪われる」という行為は、決して生きていることを証明するものではない。
それは死に続けることだったのだ。
それに対してスネイプの手は奪わなかった。
求めるのではなく、確かめるように触れた。
一つひとつの指先が「ここにいていい」と教えてくれるようだった。
触れるたび、体の奥に残っていた冷たさが、じわりと溶けていく。
涙が零れた。
けれど、それは痛みではなかった。
スネイプの声が、息が、体温が、
自分の存在を認めてくれているの証のように全身を満たしていく。
これが、奪われることと、与えられることの違い。
イリスはその瞬間、ようやく理解した。
人間が肉体を求めるのは、ただ欲望のためではない。
心の奥で、必要もされているのかと確かめたいからだ。
彼と触れ合うたびに、それが痛いほど分かった。
───
スネイプの喉が小さく鳴る音がした。
イリスは顔を上げ、その横顔を見つめる。
白み始めた空が、彼の頬を淡く照らしている。
その表情は安堵と苦悩のあわいに揺れていて、
それが彼らしいと、少し笑みが零れた。
けれど、もし彼が後悔しているなら。
もしこれを間違いだと感じているなら。
それが怖かった。
だから、イリスはかすれた声で囁いた。
「……ねぇ、セブルス。
あなたがいてくれるから、私は戦えるの。
あなたの温もりが……私を生かしてくれるの。
それに、私は今、壊れてなんかいないよ。」
スネイプはゆっくりと息を吐いた。
苦しげに眉を寄せ、言葉を探すようにして口を開く。
「……イリス。
我輩は、お前を守ると誓った。
だが、今の行為は……その誓いを裏切ったものかもしれん。
それでも……」
言葉が喉に詰まる。
イリスは彼の胸に顔を埋め、腕を回した。
その胸の奥で鳴る鼓動が、まるで返事のように響く。
「裏切りなんかじゃない。
あなたは私を救ってくれたの。
闇の帝王に奪われても……
あなたの愛が、私を取り戻してくれる。
これからも、何度でも。
だから……一緒に生き抜こう、セブルス。
この暗黒の時代を……二人で。」
再びスネイプの喉が鳴る音がした。
そして静かに、強くイリスを抱き締めた。
その力強さが、イリスの心を満たしていく。
この人の中には、確かに恐れがある。
けれど、その恐れは愛の形をしている。
だからこそ、優しい。
彼が抱きしめるたび、自分の欠けた場所がひとつずつ埋まっていく気がした。
スネイプが瞼を上げ、髪を撫でながら囁いた。
「……あぁ。
ならば誓おう、イリス。
我輩はこの命に代えても、お前を守り抜く。
闇に飲まれそうな時も……お前を繋ぎ止める。
お前が我輩の光だ。……永遠に。」
その声を聞いた瞬間、イリスの胸の奥で何かが溶けた。
あの闇に閉ざされていた心が、ようやく息を吹き返す。
涙が頬を伝う。
だがそれは悲しみではなく、生まれたばかりの希望の色をしていた。
窓の外の空が、ゆっくりと明るくなる。
白金色の光が部屋を満たし、二人の影を淡く照らす。
イリスはその光の中で、静かに微笑んだ。
「……ありがとう、セブルス。」
それは、自分の体も心も赦した者の言葉だった。
夜が終わり、朝が来る。
闇はもう、彼女の中を支配していない。
その朝、イリスはようやく気づいた。
愛されることが救いではなく、生きることそのもだった。
イリスはスネイプの腕の中で静かに目を閉じていた。
耳を澄ますと、彼の胸の奥から穏やかな鼓動が響いている。
その音は、夜の名残を溶かすように、静かで、確かなリズムを刻んでいた。
スネイプの指が白い髪を梳く。
指先が触れるたび、イリスの心は小さく揺れ、確かにここに在ると告げていた。
その手の動きが、まるで「まだ壊れていない」と確かめてくれているようで、涙が込み上げた。
闇の帝王に奪われた夜のことを、イリスは今も鮮明に覚えている。
その指は冷たく、命を奪うように肌をなぞり、
その声は支配を囁く呪文のようだった。
触れられるたびに、心が削がれていく感覚。
自分の体が誰のものでもなくなっていく恐怖。
それが終わったあと、自分の中に残ったのは「生」ではなく「空洞」だけだった。
あの時、イリスは理解した。
「奪われる」という行為は、決して生きていることを証明するものではない。
それは死に続けることだったのだ。
それに対してスネイプの手は奪わなかった。
求めるのではなく、確かめるように触れた。
一つひとつの指先が「ここにいていい」と教えてくれるようだった。
触れるたび、体の奥に残っていた冷たさが、じわりと溶けていく。
涙が零れた。
けれど、それは痛みではなかった。
スネイプの声が、息が、体温が、
自分の存在を認めてくれているの証のように全身を満たしていく。
これが、奪われることと、与えられることの違い。
イリスはその瞬間、ようやく理解した。
人間が肉体を求めるのは、ただ欲望のためではない。
心の奥で、必要もされているのかと確かめたいからだ。
彼と触れ合うたびに、それが痛いほど分かった。
───
スネイプの喉が小さく鳴る音がした。
イリスは顔を上げ、その横顔を見つめる。
白み始めた空が、彼の頬を淡く照らしている。
その表情は安堵と苦悩のあわいに揺れていて、
それが彼らしいと、少し笑みが零れた。
けれど、もし彼が後悔しているなら。
もしこれを間違いだと感じているなら。
それが怖かった。
だから、イリスはかすれた声で囁いた。
「……ねぇ、セブルス。
あなたがいてくれるから、私は戦えるの。
あなたの温もりが……私を生かしてくれるの。
それに、私は今、壊れてなんかいないよ。」
スネイプはゆっくりと息を吐いた。
苦しげに眉を寄せ、言葉を探すようにして口を開く。
「……イリス。
我輩は、お前を守ると誓った。
だが、今の行為は……その誓いを裏切ったものかもしれん。
それでも……」
言葉が喉に詰まる。
イリスは彼の胸に顔を埋め、腕を回した。
その胸の奥で鳴る鼓動が、まるで返事のように響く。
「裏切りなんかじゃない。
あなたは私を救ってくれたの。
闇の帝王に奪われても……
あなたの愛が、私を取り戻してくれる。
これからも、何度でも。
だから……一緒に生き抜こう、セブルス。
この暗黒の時代を……二人で。」
再びスネイプの喉が鳴る音がした。
そして静かに、強くイリスを抱き締めた。
その力強さが、イリスの心を満たしていく。
この人の中には、確かに恐れがある。
けれど、その恐れは愛の形をしている。
だからこそ、優しい。
彼が抱きしめるたび、自分の欠けた場所がひとつずつ埋まっていく気がした。
スネイプが瞼を上げ、髪を撫でながら囁いた。
「……あぁ。
ならば誓おう、イリス。
我輩はこの命に代えても、お前を守り抜く。
闇に飲まれそうな時も……お前を繋ぎ止める。
お前が我輩の光だ。……永遠に。」
その声を聞いた瞬間、イリスの胸の奥で何かが溶けた。
あの闇に閉ざされていた心が、ようやく息を吹き返す。
涙が頬を伝う。
だがそれは悲しみではなく、生まれたばかりの希望の色をしていた。
窓の外の空が、ゆっくりと明るくなる。
白金色の光が部屋を満たし、二人の影を淡く照らす。
イリスはその光の中で、静かに微笑んだ。
「……ありがとう、セブルス。」
それは、自分の体も心も赦した者の言葉だった。
夜が終わり、朝が来る。
闇はもう、彼女の中を支配していない。
その朝、イリスはようやく気づいた。
愛されることが救いではなく、生きることそのもだった。
