第5章 死の秘宝
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第28話 赦しと愛
夜は既に色を失い、窓の外では白んだ空がゆっくりと夜をおしのけていた。
ベッドには乱れた痕跡が残っていた。
皺の寄ったシーツ、散らばる衣の影。
互いの熱が確かにそこにあったことを、静かに物語っている。
スネイプはイリスの白い髪を指で梳いた。
その細く滑る感触を確かめるたび、
壊れていない、そう確信したかった。
彼の腕の中に閉じ込められるように横たわるイリスは、スネイプの胸に耳を当て、鼓動を聴いていた。
頬には淡い紅が差し、呼吸はまだ乱れている。
その姿に、スネイプの喉が小さく鳴った。
抱き尽くしたばかりだというのに、
胸の奥に残る熱は、いまだ鎮まることを知らない。
彼は目を閉じる。
強く、静かに。
これ以上を望んではならない。
愛おしさと後悔の狭間で、理性の糸を掴み直す。
それでも、イリスの指が彼の胸に添えられたまま離れないのを感じると、
わずかに呼吸が楽になる気がした。
───
イリスはその横顔を見上げた。
スネイプは安堵と苦悩が交錯する表情をしていた。
その奥で、まだ何かを迷っているように見えた。
彼の心の硬直に気づき、イリスはかすれた声で囁く。
「……ねぇ、セブルス。
あなたがいてくれるから、私は戦えるの。
あなたの温もりが……私を生かしてくれるの。
それに、私は今、壊れてなんかいないよ。」
スネイプの喉が震えた。
その言葉が、夜よりも深く胸に沈んでいく。
彼はゆっくりと息を吐いた。
目の奥に苦悩と愛情の光が混じる。
けれど、その瞳はもう彼女を突き放そうとはしていなかった。
「……イリス。
我輩は、お前を守ると誓った。
だが、今の行為は……その誓いを裏切ったものかもしれん。
それでも……」
言葉が途切れる。
喉の奥が詰まり、続きが出てこない。
その胸に、イリスが顔を埋める。
小さく震えながらも、確かな強さで彼を抱き返した。
「裏切りなんかじゃない。
あなたは私を救ってくれたの。
闇の帝王に奪われても……
あなたの愛が、私を取り戻してくれる。
これからも、何度でも。
だから……一緒に生き抜こう、セブルス。
この暗黒の時代を……二人で。」
スネイプの喉が鳴る音がした。
痛みと共に、熱が込み上げる。
彼は苦しげに目を閉じ、
そして静かに、強くイリスを抱き締めた。
細い体が腕の中にすっぽりと収まり、
そのぬくもりが、凍りついた胸を溶かしていく。
あの闇の主によって奪われ、遠くへ引き裂かれていった彼女の声。
その声が今、我輩の名を呼んでいる。
それだけで胸の奥に溜まっていた幾年もの渇きが、
静かに満たされていくのを感じた。
独占したい、奪い返したいという欲は、
決して正しいものではないと分かっている。
それでも──
彼女がこの手の中で息をしているという事実が、
どんな正義よりも我輩を救っていた。
これまで愛される自分を許せなかった。
必要とされず、孤独の中で生きるべきだと思っていた。
愛する者へ欲を向けることは、罪だと信じていた。
だが今、イリスが自分の胸に眠っている。
その存在が、自分を赦している。
愛されていいという赦し。
ひとりでいなければならないと思い込んでいた心に、
初めて居場所というものが与えられた。
欲望を向けても壊れない関係。
それが、愛なのだと教えてくれたのは彼女だった。
これまで愛の言葉を恐れていた。口にしてしまえば誰かを失うと思っていた。
スネイプは瞼を上げ、イリスの髪を撫でながら囁く。
「……あぁ。
ならば誓おう、イリス。
我輩はこの命に代えても、お前を守り抜く。
闇に飲まれそうな時も……お前を繋ぎ止める。
お前が我輩の光だ。……永遠に。」
その声に、イリスは涙をこぼした。
その涙は悲しみではなく、温かい光を宿していた。
二人はただ、互いの鼓動を感じながら静かに息を合わせた。
闇の夜は過ぎ、光の兆しが窓辺をかすめる。
愛と誓いが交わる静かな夜明けだった。
罪と孤独を溶かし合い、光と闇を抱き合うような、
魂の契約だった。
やがて、部屋を満たす静けさが深まり、
世界のすべてが一瞬だけ止まったように感じられた。
その静寂の中で、イリスの呼吸だけが、確かな生として響いていた。
その日、彼らはようやく気づいた。
互いが互いにとって、
なくてはならぬ唯一の存在になっていたのだと。
────
スネイプはまだ眠っていなかった。
瞼の裏に、淡い光の気配がにじんでいる。
彼の腕の中で眠るイリスの呼吸が、規則正しく胸を上下させていた。
その音を聞いているうちに、いつの間にか、自分も眠りへ落ちていた。
そんな穏やかな朝を、彼はこれまで一度も知らなかった。
夜は既に色を失い、窓の外では白んだ空がゆっくりと夜をおしのけていた。
ベッドには乱れた痕跡が残っていた。
皺の寄ったシーツ、散らばる衣の影。
互いの熱が確かにそこにあったことを、静かに物語っている。
スネイプはイリスの白い髪を指で梳いた。
その細く滑る感触を確かめるたび、
壊れていない、そう確信したかった。
彼の腕の中に閉じ込められるように横たわるイリスは、スネイプの胸に耳を当て、鼓動を聴いていた。
頬には淡い紅が差し、呼吸はまだ乱れている。
その姿に、スネイプの喉が小さく鳴った。
抱き尽くしたばかりだというのに、
胸の奥に残る熱は、いまだ鎮まることを知らない。
彼は目を閉じる。
強く、静かに。
これ以上を望んではならない。
愛おしさと後悔の狭間で、理性の糸を掴み直す。
それでも、イリスの指が彼の胸に添えられたまま離れないのを感じると、
わずかに呼吸が楽になる気がした。
───
イリスはその横顔を見上げた。
スネイプは安堵と苦悩が交錯する表情をしていた。
その奥で、まだ何かを迷っているように見えた。
彼の心の硬直に気づき、イリスはかすれた声で囁く。
「……ねぇ、セブルス。
あなたがいてくれるから、私は戦えるの。
あなたの温もりが……私を生かしてくれるの。
それに、私は今、壊れてなんかいないよ。」
スネイプの喉が震えた。
その言葉が、夜よりも深く胸に沈んでいく。
彼はゆっくりと息を吐いた。
目の奥に苦悩と愛情の光が混じる。
けれど、その瞳はもう彼女を突き放そうとはしていなかった。
「……イリス。
我輩は、お前を守ると誓った。
だが、今の行為は……その誓いを裏切ったものかもしれん。
それでも……」
言葉が途切れる。
喉の奥が詰まり、続きが出てこない。
その胸に、イリスが顔を埋める。
小さく震えながらも、確かな強さで彼を抱き返した。
「裏切りなんかじゃない。
あなたは私を救ってくれたの。
闇の帝王に奪われても……
あなたの愛が、私を取り戻してくれる。
これからも、何度でも。
だから……一緒に生き抜こう、セブルス。
この暗黒の時代を……二人で。」
スネイプの喉が鳴る音がした。
痛みと共に、熱が込み上げる。
彼は苦しげに目を閉じ、
そして静かに、強くイリスを抱き締めた。
細い体が腕の中にすっぽりと収まり、
そのぬくもりが、凍りついた胸を溶かしていく。
あの闇の主によって奪われ、遠くへ引き裂かれていった彼女の声。
その声が今、我輩の名を呼んでいる。
それだけで胸の奥に溜まっていた幾年もの渇きが、
静かに満たされていくのを感じた。
独占したい、奪い返したいという欲は、
決して正しいものではないと分かっている。
それでも──
彼女がこの手の中で息をしているという事実が、
どんな正義よりも我輩を救っていた。
これまで愛される自分を許せなかった。
必要とされず、孤独の中で生きるべきだと思っていた。
愛する者へ欲を向けることは、罪だと信じていた。
だが今、イリスが自分の胸に眠っている。
その存在が、自分を赦している。
愛されていいという赦し。
ひとりでいなければならないと思い込んでいた心に、
初めて居場所というものが与えられた。
欲望を向けても壊れない関係。
それが、愛なのだと教えてくれたのは彼女だった。
これまで愛の言葉を恐れていた。口にしてしまえば誰かを失うと思っていた。
スネイプは瞼を上げ、イリスの髪を撫でながら囁く。
「……あぁ。
ならば誓おう、イリス。
我輩はこの命に代えても、お前を守り抜く。
闇に飲まれそうな時も……お前を繋ぎ止める。
お前が我輩の光だ。……永遠に。」
その声に、イリスは涙をこぼした。
その涙は悲しみではなく、温かい光を宿していた。
二人はただ、互いの鼓動を感じながら静かに息を合わせた。
闇の夜は過ぎ、光の兆しが窓辺をかすめる。
愛と誓いが交わる静かな夜明けだった。
罪と孤独を溶かし合い、光と闇を抱き合うような、
魂の契約だった。
やがて、部屋を満たす静けさが深まり、
世界のすべてが一瞬だけ止まったように感じられた。
その静寂の中で、イリスの呼吸だけが、確かな生として響いていた。
その日、彼らはようやく気づいた。
互いが互いにとって、
なくてはならぬ唯一の存在になっていたのだと。
────
スネイプはまだ眠っていなかった。
瞼の裏に、淡い光の気配がにじんでいる。
彼の腕の中で眠るイリスの呼吸が、規則正しく胸を上下させていた。
その音を聞いているうちに、いつの間にか、自分も眠りへ落ちていた。
そんな穏やかな朝を、彼はこれまで一度も知らなかった。
