第5章 死の秘宝
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第25話 心の叫び
ポロポロと涙を流しながら、イリスは廊下に座り込んでいた。
指先が震え、冷たい涙の跡が頬を伝う。
心の奥で燃えていた光が、今にも消えそうになっている。
静かな足音が近づいた。
規則的な靴音が廊下を渡り、やがてイリスの前で止まる。
黒い布が視界を覆い、あの低い声が降ってきた。
「……そんな姿でなにをしている。」
聞き慣れた声。
その声を聞いた瞬間イリスは体を強ばらせた。
会いたくてたまらなかったはずなのに、今は胸が締め付けられる。
スネイプは何も言わず、イリスを抱き上げた。
黒い外套に包まれた腕の中で、彼女の呼吸が震える。
歩くたびに布が擦れる音がして、
その一歩ごとに、彼の体温が胸の奥まで染みていく。
イリスは顔を上げ、彼を見た。
スネイプの顔には感情の色がなかった。
いや――抑え込んでいるのだと、すぐに分かった。
その瞳の奥には、波のような痛みが揺れていた。
───
連れてこられたのは、イリスの部屋だった。
扉が閉まり、静寂が戻る。
スネイプは何も言わずにイリスをベッドに降ろすと、
クローゼットを開けて適当な服を手に取り、投げるように渡した。
「何をしている? さっさとつけろ。
裸をそう易々と人に晒すのは──」
「穢らわしい?」
スネイプの言葉が途切れる。
その瞬間、彼の肩が僅かに揺れた。
イリスの声は乾いていた。
まるで自分を嘲るように、冷たく静かに響く。
スネイプは視線を逸らした。
その仕草が、彼女の胸をさらに締め付けた。
「……あなたは、私を見ないようにしている。」
返事はない。
沈黙が、部屋を満たす。
「あなたは、ヴォルデモートとも、ベラトリックスとも違う。
誰かを支配したり、傷つけたりはしない。
でも、どうして私には触れないの?」
スネイプのまつ毛が微かに震えた。
彼は目を伏せ、長く息を吐く。
「ヴォルデモートもベラトリックスも、奪うことでしか自分を保てぬ者たちだ。
我輩も、かつてはその側にいた。
闇の魔法で他者を支配し、痛みを正義と呼んだ。
……そんな我輩の手が、今さらお前に触れる資格などあると思うか。」
言葉の最後に滲んだのは、苦しげな笑みだった。
「だから、触れないのだ。
守りたいからこそ、触れられぬ。」
声が僅かに震え、低く掠れる。
その響きに、長く抑え込んだ感情の波が見えた。
イリスは唇を噛む。
彼の言葉が真実であると、頭では分かっている。
けれど、心は拒んでいた。
「守りたいって言うけど、あなたはいつも私から離れようとする……。
今もそう。そうやって私から離れる。
それは私が穢れているから?」
スネイプの瞳が大きく揺れた。
だが、何も言わない。
その沈黙が、イリスには拒絶のように思えた。
胸の奥に押し込めていた言葉が溢れ出す。
「闇の帝王の言う通りなの?
私は穢れていて、そんな女を心から求める者はいないの?
私の存在はありのまま受け入れられないの?
人間にとっての、あなたにとっての私は、一体何なの?」
「……やめろ。」
掠れた低音。
怒りと悲しみが混じるその声が、空気を震わせる。
スネイプが近づく。
足音が床を打ち、距離が詰まる。
目の前で立ち止まった彼は、震える手でイリスの肩を掴んだ。
その力は痛いほど強く、しかし決して乱暴ではなかった。
指先が熱い。感情が溢れているのが分かった。
「二度と、そんなことを言うな……!!」
声が張り裂けるように響いた。
「闇の帝王の言葉など、真実ではない!」
スネイプの瞳が燃えるように光る。
「お前が穢れているだと?
そんなもの、奴の呪いに過ぎん!
お前は奪われたのではない。耐えて、立ち続けている。
その強さを、奴は恐れているのだ。
だから穢れという言葉で、お前を縛ろうとする!」
怒りの熱が部屋を満たした。
だがその奥には、別の痛みが滲んでいる。
まるで、自分自身を責めているような声音だった。
息が触れ合うほど近い距離。
互いの心臓の音が、静寂の中で響く。
「……お前が、自分をそんな風に見ることだけは……
我輩が許さぬ。決してだ!」
その瞳は切実で、張り詰めた糸のように震えていた。
スネイプの中で何かが壊れかけているのが、イリスにも分かった。
「我輩にとってお前は……」
言葉が途中で途切れる。
喉の奥で音が溶け、次の言葉が出てこない。
それでも、ようやく搾り出すように言葉が落ちた。
「……お前は、この闇の中で我輩が唯一。
……息をしていられる理由なのだ。」
イリスの瞳が揺れる。
スネイプはそっと肩から手を放した。
けれど、まだその手には、触れた温もりが残っている。
「だから二度と、自分を穢れているなどと口にするな。」
真剣な眼差しが、イリスの心を射抜く。
「私が穢れてないというなら、証明して。」
スネイプの息が止まる。
その声は震え、どこか泣きそうに響いていた。
「私を……私のすべてを貪ってよ。
愛を求め、確認するために人間は肉体の繋がりを求めるんでしょう?」
沈黙が落ちる。
スネイプの表情に、深い絶望が走る。
その瞳は、悲しみと怒りと、どうしようもない愛に満ちていた。
彼を追い詰めたかったわけじゃない。
ただ、確かめたかっただけ。
自分がまだ人として、彼の傍にいてもいいのだと。
けれど口をついて出たのは、彼の心を裂くような言葉ばかりだった。息が詰まる。
何もかもが崩れていく音が、胸の奥で響いていた。
「我輩にそんなことを望むな。
イリス、お前は何も分かっていない。」
「わからない。あなたのことも、私自身のことも。
何も分からない!
あなただって私がどんな気持ちであなたに言ったか分かる?」
声が震え、涙が溢れる。
イリスの叫びが、夜を裂いた。
もう後には引けない。
この想いはもう戻れない場所に踏み込んでしまった。
それでも、彼を求めずにはいられなかった。
ポロポロと涙を流しながら、イリスは廊下に座り込んでいた。
指先が震え、冷たい涙の跡が頬を伝う。
心の奥で燃えていた光が、今にも消えそうになっている。
静かな足音が近づいた。
規則的な靴音が廊下を渡り、やがてイリスの前で止まる。
黒い布が視界を覆い、あの低い声が降ってきた。
「……そんな姿でなにをしている。」
聞き慣れた声。
その声を聞いた瞬間イリスは体を強ばらせた。
会いたくてたまらなかったはずなのに、今は胸が締め付けられる。
スネイプは何も言わず、イリスを抱き上げた。
黒い外套に包まれた腕の中で、彼女の呼吸が震える。
歩くたびに布が擦れる音がして、
その一歩ごとに、彼の体温が胸の奥まで染みていく。
イリスは顔を上げ、彼を見た。
スネイプの顔には感情の色がなかった。
いや――抑え込んでいるのだと、すぐに分かった。
その瞳の奥には、波のような痛みが揺れていた。
───
連れてこられたのは、イリスの部屋だった。
扉が閉まり、静寂が戻る。
スネイプは何も言わずにイリスをベッドに降ろすと、
クローゼットを開けて適当な服を手に取り、投げるように渡した。
「何をしている? さっさとつけろ。
裸をそう易々と人に晒すのは──」
「穢らわしい?」
スネイプの言葉が途切れる。
その瞬間、彼の肩が僅かに揺れた。
イリスの声は乾いていた。
まるで自分を嘲るように、冷たく静かに響く。
スネイプは視線を逸らした。
その仕草が、彼女の胸をさらに締め付けた。
「……あなたは、私を見ないようにしている。」
返事はない。
沈黙が、部屋を満たす。
「あなたは、ヴォルデモートとも、ベラトリックスとも違う。
誰かを支配したり、傷つけたりはしない。
でも、どうして私には触れないの?」
スネイプのまつ毛が微かに震えた。
彼は目を伏せ、長く息を吐く。
「ヴォルデモートもベラトリックスも、奪うことでしか自分を保てぬ者たちだ。
我輩も、かつてはその側にいた。
闇の魔法で他者を支配し、痛みを正義と呼んだ。
……そんな我輩の手が、今さらお前に触れる資格などあると思うか。」
言葉の最後に滲んだのは、苦しげな笑みだった。
「だから、触れないのだ。
守りたいからこそ、触れられぬ。」
声が僅かに震え、低く掠れる。
その響きに、長く抑え込んだ感情の波が見えた。
イリスは唇を噛む。
彼の言葉が真実であると、頭では分かっている。
けれど、心は拒んでいた。
「守りたいって言うけど、あなたはいつも私から離れようとする……。
今もそう。そうやって私から離れる。
それは私が穢れているから?」
スネイプの瞳が大きく揺れた。
だが、何も言わない。
その沈黙が、イリスには拒絶のように思えた。
胸の奥に押し込めていた言葉が溢れ出す。
「闇の帝王の言う通りなの?
私は穢れていて、そんな女を心から求める者はいないの?
私の存在はありのまま受け入れられないの?
人間にとっての、あなたにとっての私は、一体何なの?」
「……やめろ。」
掠れた低音。
怒りと悲しみが混じるその声が、空気を震わせる。
スネイプが近づく。
足音が床を打ち、距離が詰まる。
目の前で立ち止まった彼は、震える手でイリスの肩を掴んだ。
その力は痛いほど強く、しかし決して乱暴ではなかった。
指先が熱い。感情が溢れているのが分かった。
「二度と、そんなことを言うな……!!」
声が張り裂けるように響いた。
「闇の帝王の言葉など、真実ではない!」
スネイプの瞳が燃えるように光る。
「お前が穢れているだと?
そんなもの、奴の呪いに過ぎん!
お前は奪われたのではない。耐えて、立ち続けている。
その強さを、奴は恐れているのだ。
だから穢れという言葉で、お前を縛ろうとする!」
怒りの熱が部屋を満たした。
だがその奥には、別の痛みが滲んでいる。
まるで、自分自身を責めているような声音だった。
息が触れ合うほど近い距離。
互いの心臓の音が、静寂の中で響く。
「……お前が、自分をそんな風に見ることだけは……
我輩が許さぬ。決してだ!」
その瞳は切実で、張り詰めた糸のように震えていた。
スネイプの中で何かが壊れかけているのが、イリスにも分かった。
「我輩にとってお前は……」
言葉が途中で途切れる。
喉の奥で音が溶け、次の言葉が出てこない。
それでも、ようやく搾り出すように言葉が落ちた。
「……お前は、この闇の中で我輩が唯一。
……息をしていられる理由なのだ。」
イリスの瞳が揺れる。
スネイプはそっと肩から手を放した。
けれど、まだその手には、触れた温もりが残っている。
「だから二度と、自分を穢れているなどと口にするな。」
真剣な眼差しが、イリスの心を射抜く。
「私が穢れてないというなら、証明して。」
スネイプの息が止まる。
その声は震え、どこか泣きそうに響いていた。
「私を……私のすべてを貪ってよ。
愛を求め、確認するために人間は肉体の繋がりを求めるんでしょう?」
沈黙が落ちる。
スネイプの表情に、深い絶望が走る。
その瞳は、悲しみと怒りと、どうしようもない愛に満ちていた。
彼を追い詰めたかったわけじゃない。
ただ、確かめたかっただけ。
自分がまだ人として、彼の傍にいてもいいのだと。
けれど口をついて出たのは、彼の心を裂くような言葉ばかりだった。息が詰まる。
何もかもが崩れていく音が、胸の奥で響いていた。
「我輩にそんなことを望むな。
イリス、お前は何も分かっていない。」
「わからない。あなたのことも、私自身のことも。
何も分からない!
あなただって私がどんな気持ちであなたに言ったか分かる?」
声が震え、涙が溢れる。
イリスの叫びが、夜を裂いた。
もう後には引けない。
この想いはもう戻れない場所に踏み込んでしまった。
それでも、彼を求めずにはいられなかった。
