第5章 死の秘宝
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第24話 沈む声
夢の中で、イリスはまたヴォルデモートの前にいた。
闇に沈む部屋。
肌に触れる空気は冷たく、それでも体の奥から熱が滲み出していた。
蛇のような指が髪を掬い、唇が首筋を這う。
冷たくて、熱い。
何が正しい感覚なのか分からない。
痛みと共に、ふわりとした感覚が体の奥で弾ける。
浮かぶように、頭の中が白く染まっていく。
知らない音が喉から漏れた。
その声に自分で驚く。
──これは、私の声?
息が荒くなる。
胸が熱い。
指先が痺れる。
ふわふわと浮かんだ世界が、突然どこかへ引き込まれるように落ちていく。
──怖い。
──嫌。やめて。
暗闇の中で何かが崩れた。
イリスは跳ね起きた。
喉が焼けるように熱く、胸が激しく波打っていた。
夢だと分かっていても、体は震えて止まらない。
シーツが肌に張り付き、冷たい汗が背を伝う。
そして、下腹の奥にまだ、あの夢の感覚が残っていた。
ゆらゆらと、波のように、淡く疼く熱。
イリスは目を見開いたまま、両手で自分の体を抱きしめた。
「……いや……夢なのに……」
声が掠れた。
夢の中で感じたものが、現実に染み込んでいる。
頭では拒んでいるのに、体が覚えている。
その事実に、吐き気に似た恐怖がこみ上げた。
体の奥が知らない自分を生んでいる。
知らない声、知らない熱、知らない反応。
何もかもが怖い。
イリスは腕を強く握りしめた。
爪が肌に食い込む痛みで、ようやく息が整っていく。
けれど、耳の奥でベラトリックスの声が蘇る。
「穢らわしい女」
「汚れた体」
何度も繰り返す声が、頭の中を巡る。
その度に心がざらりと削れていく。
イリスは両手で耳を塞ぎ、スネイプの言葉を思い出す。
──穢れてなどいない。
それでも、気づいてしまった。
彼は“気持ち悪いか”という問いにだけ、答えなかった。
その沈黙が、刃のように胸を刺す。
「……私……やっぱり……」
掠れた声が夜に溶ける。
涙が頬を伝い、ぽつりと落ちた。
止めようとしても止まらない。
息が苦しく、胸が痛い。
心が空っぽのまま震えていた。
───
その日から、イリスは目に見えて弱っていった。
まるで、体の奥から光が消えていくようだった。
部屋の窓辺で過ごす時間が増え、視線は遠くの雪を追うだけになった。
そして数日後、再び呼ばれる。
闇の主の声に。
足取りは重く、身体の芯まで冷えていた。
スネイプの姿が視界の端に映ったが、
もう彼を見ようという気さえ起きなかった。
どうして目を合わせられる?
彼の前に立つ資格など、もうない。
そしてイリスはヴォルデモートの前に立つ。
彼の瞳は相変わらず赤く光り、
そこに映るイリスはただの“器”だった。
再び、肌に触れる冷たい手。
無理やり引き寄せられる感触。
何度も、何度も、同じ痛み。
抵抗しても意味がない。
目を閉じても逃れられない。
時間の感覚が消えた。
痛みの隙間に、熱が入り込む。
体が震える。
息が上がる。
嫌だ。なのに、体が勝手に反応する。
「……あぁっ……」
自分の喉から漏れた音に、心が裂ける。
やめて。こんな声、出したくない。
けれど止まらない。
熱が広がる。
視界が白く染まる。
思考が途切れ、世界が遠のく。
──違う。私は、違うのに。
何度も波が押し寄せ、心が空洞になる。
ヴォルデモートの笑い声が遠く響いた。
その笑みが、侮辱よりも痛かった。
まるで「お前も同じだ」と言われているようだった。
イリスは涙を流しながら、
声もなく嗚咽した。
──もう何も感じたくない。
全てが静まり返った時、
足が震え、立ち上がることさえできなかった。
ヴォルデモートが指を鳴らし、スネイプを呼ぼうとする。
イリスはその声を聞いて、慌てて首を振った。
「……いりません……自分で……帰れます……」
その声は、かすれ、弱かった。
スネイプにこの姿を見せたくなかった。
どんな顔で彼を見ればいい?
自分の身体が壊され、汚されたままのこの姿で。
イリスは壁に手をつき、ゆっくりと立ち上がる。
足が震え、腰が抜けそうになる。
それでも立ち止まらなかった。
背後から、愉快そうな笑いが響く。
もう振り返らなかった。
───
屋敷の廊下は、夜の底のように静まり返っていた。
誰もいない。
涙がひとつ、床に落ちる。
続けてもうひとつ。
止められなかった。
歩くたびに視界が滲む。
喉が痛く、息が乱れる。
胸が苦しい。
考えれば考えるほど、答えが遠のく。
ヴォルデモートやかつての男たち、人間は愛を求めて肉体を求める。そして自身の心を救うためにも……。
それなのにスネイプが自分を抱かない理由。
それはきっと、穢れていると思っているから。
もう、触れたくないから。
そんな考えが、喉を締めつける。
呼吸が乱れ、肺が焼ける。
「……っ……は……ぁ……」
しゃくりあげても、空気が足りない。
体の力が抜け、静かに座り込んだ。
石の床が冷たく、体温を奪っていく。
イリスは膝を抱え、震えながら小さく息を吐いた。
「……セブルス……」
その名前が零れた瞬間、
涙がまた溢れた。
ごめんなさい。
私、もう分からない。
イリスの声はか細く、
静かな屋敷の中で、すぐに闇に溶けていった。
夢の中で、イリスはまたヴォルデモートの前にいた。
闇に沈む部屋。
肌に触れる空気は冷たく、それでも体の奥から熱が滲み出していた。
蛇のような指が髪を掬い、唇が首筋を這う。
冷たくて、熱い。
何が正しい感覚なのか分からない。
痛みと共に、ふわりとした感覚が体の奥で弾ける。
浮かぶように、頭の中が白く染まっていく。
知らない音が喉から漏れた。
その声に自分で驚く。
──これは、私の声?
息が荒くなる。
胸が熱い。
指先が痺れる。
ふわふわと浮かんだ世界が、突然どこかへ引き込まれるように落ちていく。
──怖い。
──嫌。やめて。
暗闇の中で何かが崩れた。
イリスは跳ね起きた。
喉が焼けるように熱く、胸が激しく波打っていた。
夢だと分かっていても、体は震えて止まらない。
シーツが肌に張り付き、冷たい汗が背を伝う。
そして、下腹の奥にまだ、あの夢の感覚が残っていた。
ゆらゆらと、波のように、淡く疼く熱。
イリスは目を見開いたまま、両手で自分の体を抱きしめた。
「……いや……夢なのに……」
声が掠れた。
夢の中で感じたものが、現実に染み込んでいる。
頭では拒んでいるのに、体が覚えている。
その事実に、吐き気に似た恐怖がこみ上げた。
体の奥が知らない自分を生んでいる。
知らない声、知らない熱、知らない反応。
何もかもが怖い。
イリスは腕を強く握りしめた。
爪が肌に食い込む痛みで、ようやく息が整っていく。
けれど、耳の奥でベラトリックスの声が蘇る。
「穢らわしい女」
「汚れた体」
何度も繰り返す声が、頭の中を巡る。
その度に心がざらりと削れていく。
イリスは両手で耳を塞ぎ、スネイプの言葉を思い出す。
──穢れてなどいない。
それでも、気づいてしまった。
彼は“気持ち悪いか”という問いにだけ、答えなかった。
その沈黙が、刃のように胸を刺す。
「……私……やっぱり……」
掠れた声が夜に溶ける。
涙が頬を伝い、ぽつりと落ちた。
止めようとしても止まらない。
息が苦しく、胸が痛い。
心が空っぽのまま震えていた。
───
その日から、イリスは目に見えて弱っていった。
まるで、体の奥から光が消えていくようだった。
部屋の窓辺で過ごす時間が増え、視線は遠くの雪を追うだけになった。
そして数日後、再び呼ばれる。
闇の主の声に。
足取りは重く、身体の芯まで冷えていた。
スネイプの姿が視界の端に映ったが、
もう彼を見ようという気さえ起きなかった。
どうして目を合わせられる?
彼の前に立つ資格など、もうない。
そしてイリスはヴォルデモートの前に立つ。
彼の瞳は相変わらず赤く光り、
そこに映るイリスはただの“器”だった。
再び、肌に触れる冷たい手。
無理やり引き寄せられる感触。
何度も、何度も、同じ痛み。
抵抗しても意味がない。
目を閉じても逃れられない。
時間の感覚が消えた。
痛みの隙間に、熱が入り込む。
体が震える。
息が上がる。
嫌だ。なのに、体が勝手に反応する。
「……あぁっ……」
自分の喉から漏れた音に、心が裂ける。
やめて。こんな声、出したくない。
けれど止まらない。
熱が広がる。
視界が白く染まる。
思考が途切れ、世界が遠のく。
──違う。私は、違うのに。
何度も波が押し寄せ、心が空洞になる。
ヴォルデモートの笑い声が遠く響いた。
その笑みが、侮辱よりも痛かった。
まるで「お前も同じだ」と言われているようだった。
イリスは涙を流しながら、
声もなく嗚咽した。
──もう何も感じたくない。
全てが静まり返った時、
足が震え、立ち上がることさえできなかった。
ヴォルデモートが指を鳴らし、スネイプを呼ぼうとする。
イリスはその声を聞いて、慌てて首を振った。
「……いりません……自分で……帰れます……」
その声は、かすれ、弱かった。
スネイプにこの姿を見せたくなかった。
どんな顔で彼を見ればいい?
自分の身体が壊され、汚されたままのこの姿で。
イリスは壁に手をつき、ゆっくりと立ち上がる。
足が震え、腰が抜けそうになる。
それでも立ち止まらなかった。
背後から、愉快そうな笑いが響く。
もう振り返らなかった。
───
屋敷の廊下は、夜の底のように静まり返っていた。
誰もいない。
涙がひとつ、床に落ちる。
続けてもうひとつ。
止められなかった。
歩くたびに視界が滲む。
喉が痛く、息が乱れる。
胸が苦しい。
考えれば考えるほど、答えが遠のく。
ヴォルデモートやかつての男たち、人間は愛を求めて肉体を求める。そして自身の心を救うためにも……。
それなのにスネイプが自分を抱かない理由。
それはきっと、穢れていると思っているから。
もう、触れたくないから。
そんな考えが、喉を締めつける。
呼吸が乱れ、肺が焼ける。
「……っ……は……ぁ……」
しゃくりあげても、空気が足りない。
体の力が抜け、静かに座り込んだ。
石の床が冷たく、体温を奪っていく。
イリスは膝を抱え、震えながら小さく息を吐いた。
「……セブルス……」
その名前が零れた瞬間、
涙がまた溢れた。
ごめんなさい。
私、もう分からない。
イリスの声はか細く、
静かな屋敷の中で、すぐに闇に溶けていった。
