第5章 死の秘宝
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第15話 支配の印
闇は息をひそめ、壁も床も凍りついていた。
イリスの足裏から冷たさが骨へと染み上がる。
そこには熱も季節もなく、ただ支配の匂いだけが満ちていた。
ヴォルデモートは音もなく歩み寄る。
薄汚れた外套の裾が床を擦る音が、空気の静寂を切り裂いた。
「俺様がいなくて寂しかっただろう?イリス」
その声とともに、イリスの腕を掴みあげるヴォルデモート。
掴まれた腕はか細く、青白く月明かりを反射する。
ヴォルデモートはその腕に杖先を押し付ける。
そして杖の先から閃光が漏れる。
同時に肌を貫く鋭い痛みがイリスを襲う。
火で焼かれるような熱が腕から脇腹、そして背に走り、
思わず身体が反り返った。
呼吸ができない。
全身の血液が沸騰したのかと思うほど体が熱く、心臓が打つたび、痛みが全身を巡る。
──苦しい。
──痛い。
──今すぐ逃げ出したい。
そんな気持ちが溢れる。
それでも声を上げなかった。
涙も見せなかった。
弱さを見せてしまえば奪われてしまうから。
痛みに飲み込まれる瞬間、意識が遠のく。
その闇の中で浮かぶのは彼の姿だった。
あの人がいる。
冷たく見えて、いつも確かな手を差し出してくれた人。
名を呼べば、あの深い声が返ってくる気がする。
──セブルス。
いつもその背中に守られていた自分。
スネイプを守ると覚悟したはずなのに、こんなにも簡単にあなたに助けを求めてしまう。
そんな自身の弱さに胸が強く締め付けられる。
焼けつく痛みが皮膚を突き抜けた瞬間、
世界の輪郭が歪んだ。
光も闇も遠のき、代わりに懐かしい声と匂いが蘇る。
あの檻の中。
鉄の棒の隙間から覗く冷たい月。
見せ物として晒され、泣くことすら許されなかった夜。
全てを奪われることが日常だった。
恐怖は呼吸であり、屈辱が眠りだった。
誰かの笑い声。
誰かの指先が、自分の髪を掴む感触。
恐怖が、皮膚の下に染み込んでくる。
あぁ、まただ。
取り戻したはずの自分が、過去に飲み込まれていく。
「いや……戻りたくない……!」
声にならない叫びが喉で燃えた。
そのとき、
彼の声が、遠い場所から確かに響いた。
「……イリス。」
求めていたその声が闇を裂く。
一瞬で現実に引き戻される。
同時に杖が離れ激しい痛みが静かに引いていく。
イリスは杖が当てられた腕に視線を移す。
そこには頭蓋骨と蛇の印……。
肌の上で黒が蠢き、冷たい蛇が皮膚の内に潜り込む。
それはただの印ではなかった。
彼女の存在を飲み込もうとする“闇そのもの”だった。
熱が引かないまま、ヴォルデモートの影がさらに近づく。
冷たい指が頬をなぞり、顎を上げさせる。
その距離の近さに、空気が肌に張りつく。
呼吸ができないほどの圧迫。
「美しい。恐れの中に宿る光ほど、輝くものはない。
イリス、怯えているのか?俺様はこの日をずっと待ちわびていたぞ?」
吐息がかかるほど近い。
その近さが痛みよりも恐ろしく、胸の奥を凍らせた。
身体が拒絶するのに、逃げ場はない。
──嫌だ。
心まで触れられたくない。
私の中には、あなたの届かないものがある。
彼女のまつげが震え、
その瞬間、再び脳裏にスネイプの姿が浮かんだ。
冷たい夜に触れた、あの掌の温もり。
2人で過ごした日々、触れ合った唇。
痛みの中でも確かに強く抱き合い感じた体温。
「我輩はイリス、お前が好きだ。」
あの夜の声が、記憶から鼓動の中に響く。
焼かれた肌の痛みよりも、
その記憶の方が、ずっと強かった。
イリスは静かに息を吸った。
恐怖と痛みで震えながらも、決して心を乱さず静かに瞳を閉じ、ヴォルデモートの熱を受け入れる。
──私は、あの人に触れられた。
あの人に、見つけられた。
あの人に、受け入れられた。
だからこの闇の中でも、自分を失わない。
ヴォルデモートの影がイリスの影に重なりゆらめく。
体は奪われても心は奪われまいと…、闇には染まらないとイリスは静かに誓う。
闇は息をひそめ、壁も床も凍りついていた。
イリスの足裏から冷たさが骨へと染み上がる。
そこには熱も季節もなく、ただ支配の匂いだけが満ちていた。
ヴォルデモートは音もなく歩み寄る。
薄汚れた外套の裾が床を擦る音が、空気の静寂を切り裂いた。
「俺様がいなくて寂しかっただろう?イリス」
その声とともに、イリスの腕を掴みあげるヴォルデモート。
掴まれた腕はか細く、青白く月明かりを反射する。
ヴォルデモートはその腕に杖先を押し付ける。
そして杖の先から閃光が漏れる。
同時に肌を貫く鋭い痛みがイリスを襲う。
火で焼かれるような熱が腕から脇腹、そして背に走り、
思わず身体が反り返った。
呼吸ができない。
全身の血液が沸騰したのかと思うほど体が熱く、心臓が打つたび、痛みが全身を巡る。
──苦しい。
──痛い。
──今すぐ逃げ出したい。
そんな気持ちが溢れる。
それでも声を上げなかった。
涙も見せなかった。
弱さを見せてしまえば奪われてしまうから。
痛みに飲み込まれる瞬間、意識が遠のく。
その闇の中で浮かぶのは彼の姿だった。
あの人がいる。
冷たく見えて、いつも確かな手を差し出してくれた人。
名を呼べば、あの深い声が返ってくる気がする。
──セブルス。
いつもその背中に守られていた自分。
スネイプを守ると覚悟したはずなのに、こんなにも簡単にあなたに助けを求めてしまう。
そんな自身の弱さに胸が強く締め付けられる。
焼けつく痛みが皮膚を突き抜けた瞬間、
世界の輪郭が歪んだ。
光も闇も遠のき、代わりに懐かしい声と匂いが蘇る。
あの檻の中。
鉄の棒の隙間から覗く冷たい月。
見せ物として晒され、泣くことすら許されなかった夜。
全てを奪われることが日常だった。
恐怖は呼吸であり、屈辱が眠りだった。
誰かの笑い声。
誰かの指先が、自分の髪を掴む感触。
恐怖が、皮膚の下に染み込んでくる。
あぁ、まただ。
取り戻したはずの自分が、過去に飲み込まれていく。
「いや……戻りたくない……!」
声にならない叫びが喉で燃えた。
そのとき、
彼の声が、遠い場所から確かに響いた。
「……イリス。」
求めていたその声が闇を裂く。
一瞬で現実に引き戻される。
同時に杖が離れ激しい痛みが静かに引いていく。
イリスは杖が当てられた腕に視線を移す。
そこには頭蓋骨と蛇の印……。
肌の上で黒が蠢き、冷たい蛇が皮膚の内に潜り込む。
それはただの印ではなかった。
彼女の存在を飲み込もうとする“闇そのもの”だった。
熱が引かないまま、ヴォルデモートの影がさらに近づく。
冷たい指が頬をなぞり、顎を上げさせる。
その距離の近さに、空気が肌に張りつく。
呼吸ができないほどの圧迫。
「美しい。恐れの中に宿る光ほど、輝くものはない。
イリス、怯えているのか?俺様はこの日をずっと待ちわびていたぞ?」
吐息がかかるほど近い。
その近さが痛みよりも恐ろしく、胸の奥を凍らせた。
身体が拒絶するのに、逃げ場はない。
──嫌だ。
心まで触れられたくない。
私の中には、あなたの届かないものがある。
彼女のまつげが震え、
その瞬間、再び脳裏にスネイプの姿が浮かんだ。
冷たい夜に触れた、あの掌の温もり。
2人で過ごした日々、触れ合った唇。
痛みの中でも確かに強く抱き合い感じた体温。
「我輩はイリス、お前が好きだ。」
あの夜の声が、記憶から鼓動の中に響く。
焼かれた肌の痛みよりも、
その記憶の方が、ずっと強かった。
イリスは静かに息を吸った。
恐怖と痛みで震えながらも、決して心を乱さず静かに瞳を閉じ、ヴォルデモートの熱を受け入れる。
──私は、あの人に触れられた。
あの人に、見つけられた。
あの人に、受け入れられた。
だからこの闇の中でも、自分を失わない。
ヴォルデモートの影がイリスの影に重なりゆらめく。
体は奪われても心は奪われまいと…、闇には染まらないとイリスは静かに誓う。
