第1章 アズカバンの囚人
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薄暗く、汚い言葉が飛び交い、秩序もない通りを歩く黒い人。
彼は煤と血の匂い、人々の体臭が混りあい、むせかえるほど澱んだ空気に顔をゆがめている。
こんな闇市の中で、一際人が集まり下品な会話が繰り広げられているとある場所・・・。
見世物小屋があった。彼はここが目的地だった。
そう、偉大なる魔法使い、ダンブルドアに命じられて・・・。
彼、セブルス・スネイプが命じられたのは
ーとらわれた存在を連れ出して連れてくることー
この任務の裏にこれほどの惨状が潜んでいようとは。
見世物小屋でいろんな見世物がいる中、最奥にそれはいた。しかし、目の前に薄汚い男が出てきて指を擦る動作を見せる。
金か。ここにはそういった汚い連中の巣窟だ。
彼は円滑な業務遂行のため迷わず金を出した。
そうして男はニタニタと笑い道を譲る。彼は男に一瞥し、奥へと進む。
それは手足、首を鎖に繋がれて脱力しきっている。
長く垂れた髪は本来、月光を糸にしたような白銀であったろうに、今は血と泥に汚れ、重たく垂れ下がっている。
肌は陶磁器のように白くい。しかしその白さは無数の傷跡とあざに塗りつぶされていた。骨ばった肩、細ずぎる手足、そして鉄の枷が四肢に食い込んでいる。
髪の隙間から覗く耳は、繊細に尖っている。血の気のない白に微かに浮かぶ青い静脈。それは彼女がエルフである証であり、同時に異質さを際立たせている。
そんな彼女は観客に弄ばれ笑い物にされた形跡が生々しく、見せ物として消費尽くされたボロ人形のようだった。
だが、その瞳だけは違った。
光を失いかけながらもなお、こちらを冷たく鋭く射抜いた。
真紅ーーー血をそのまま溶かしたかのような赤い瞳。その瞳は異様なほど鮮烈で、深い闇に差し込む焔のように揺らめいていた。
「っ!これがエルフの末裔だと?」
低いつぶやきが漏れる。
彼の内側に不快とも哀れともつかぬ衝動が渦巻く。
任務以上のものを見てしまったと。
薄汚い男は鎖を外し、扉に鍵をかけて出ていってしまった・・・。

ーー
私はまた人間が来たのだと思った。
鞭を振るい、笑いながら覗き込む顔と同じだろうと・・・。
だから視線を返すことも拒んだ。
しかし違った。
その男の瞳は、嘲りでも好奇でもない、黒曜石のように冷たい色の奥に、ヤイバのような冷徹さと、微かに揺らぐ迷いがあった。
「立てるか」
短く投げかけられた言葉。
私は返さなかった。立つ気力も応える気力も残っていない。
どうせまた弄ばれるだけだ、そう思えば動く理由などどこにもない。
沈黙のままの私を男はしばらく見下ろしていた。次の瞬間、冷たい布の感触と共に体が強引に持ち上げられる。
「ちっ。」
低く舌打ちする音。
やがて、外の喧騒を打ち切るように空気がひんやりと揺らいだ。
視界を包むのは灰色の布の霧。
私は抵抗しなかった。いや、できなかったのだ。
腕も脚も、もはや力を失いただ彼の肩にもたれかかるしかなかった。
そしてこれがまた新しい牢獄へ続くのだと諦めていた。
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