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ONE PIECE






彼のキスはしばらく続いた。
顔から首にかけて何度も何度もキスをしては私の反応を楽しんで、を繰り返していた。
そして限界の来た私は顔を真っ赤にして彼を静止した。




『ちょ、もう…限界……。』



「まだ始まったばかりや」



繋いだ手を引っ張って私を起き上がらせる。
キス自体は初めてではなかった。だが、こんな相手と状況について行けなかった。それと、抵抗できなかった私自身にも。
身体の力が抜けきった私を笑って、彼は頭を撫でた。




『よく撫でてくれるよね』



「ぁあ、姪っ子の世話よくしてるからそれの癖」



『め、姪っ子…』




いくつ、とは聞けなかった。まだ小さい子なのは彼の年齢からわかるような気がするから。
時刻は夜の10時を回ろうとしていた。
そろそろ帰ろうかな、と考えていると席を立った彼がタオルと下着を持っていた。





『え?今からお風呂入るの…?』



「そらそうや。俺の家やしいつ入ろうと俺次第や」



当たり前、と言わんばかりの竜節に言葉が出なくなった。
帰ろうと思ったけど、勝手に帰っていいものだろうか。ここは待つべきなのだろうか。とお風呂場へ行く彼の背中を見つめる。
お風呂場へ入ったことを確認してはぁ、とため息を吐いた。
ここ数時間で彼のことは少しわかった気がする。
優しくて面白いところはある、よく喋る人だから会話はよく成り立つし、自分の意見を言える人だと思う。
その反面、少し自分勝手と言うか強引なところがあり、自分が良ければそれでいい、ってところがある。
良いところは良いけど悪いところは悪い、と言ったところだろうか。
私はこの人と上手くやっていけるだろうか、と内心不安しかない。




『でも、私が合わせていけば…うまいこと、成り立つかしら…』




ぼそっと声に出た。
人と合わせて生きていくことは学生時代に嫌というほど学ばされた。
でも自分で何もかも決断したり選択するよりかは一緒にいる人たちに決めてもらうほうが気が楽だった。
そのおかげで自分で決断できない指示待ち人間にはなってしまったが。
その自分が役に立つときが来たような気がする。そう考えだしたらなんだかできる気がしてくる。人間って不思議なものだ。



「りーーーーん」



お風呂場の扉が開かれシャワーの流れる音と共に名前を呼ばれる。
考えていた思考を止めて、パタパタと廊下へ出た。



『な、なに?』


「悪い、そこの冷蔵庫の上にあるカミソリの替刃くれ」


『え?…ぁあこれね、はい』



彼に言われた通り後ろにある冷蔵庫の乱雑に置かれた物の中にカミソリの替刃があった。
それを1つ手に取り、お風呂場を覗かない程度に手を伸ばす。
「サンキュー」と言って私の手から受け取った彼はもう一度「ありがとう」と言ってお風呂場の扉を閉めた。
家族にも男なんて父親しか居なかった女家族育ちには他の男の人との同居はハードルが高いかもしれない…と改めて頭を抱えたのであった。








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