小林ワンドロライ 「地下一階でねむる時間」
8月某日、茹だるような熱帯夜の中で、オレは寝苦しくて寝苦しくて堪らなかった。
「今日あちー…」
と、オレの片割れである双子の弟が零しながら、エアコンの設定温度を思ったよりガッツリ下げようとするものだから、どんどん上がっていく電気代のバロメーターと同時に俺の恐怖心のバロメーターもジェットコースターもかくやと思われる速度で急上昇したことは想像に難くないだろう。….難くないよな?
胃が痛い。寒すぎるのか。それとも愚弟の愚行のせいか。
オレが指摘をしても全く聞く耳を持たず、更に設定温度を下げようとするものだから、怒りを通り越して溜め息を吐いた。そんなオレなんて気にも止めず、オレと同じく眠れないアイツは目を輝かせながら何やらパソコンをカタカタやっている。こんな遅くに何を見ているのか、煌々と溢れるブルーライトの海原を彷徨うアイツを見ながら、気になるのと眩しいのと半々で、眠れたかもしれないものも眠れなくなってしまった。
横目でパソコンを覗く。
「肝試し行きたい!暑いし!」「は???」
思わず素っ頓狂な声を上げた。コイツ今なんて言った?
数秒フリーズした後、やっと目に飛び込んできた液晶画面には、5ちゃんねるのスレッドが並んでいた。よく目を通すと怪談のようだった。なるほどコイツはこれで涼んでいたわけだ。
だからといって実際に行こうとする者は世界中探しても物好きかYouTuberかコイツくらいなものだろう。当然オレは面倒で断固として拒否した。だが、オレの弟はここで食い下がるような器ではない。
「帰りにアイス買おーぜ!だから・・・な?」
目を輝かせながらこちらへにじり寄ってくる。オレに何を言ったらこの重い腰が上がるのかを弁えているあたりが非常にいけ好かなくもあり、気持ち悪くもある。だが、やはりアイスの魅力には抗うことができなかった。オレもまた、愚兄であった。
連れて行かれた先は酷く寂れたトンネルであった。いかにも何かが出そうな感じの。そこは熱帯夜だというのに、嫌に涼しさを感じる温度だった。鬱蒼と生い茂る植物から、何か濁った、悪いものを吸ったような凛とした空気感を感じる。おおよそ心霊スポットとは思えなかった。そのお陰か、あまり恐怖感を感じることはなかった。隣の言い出しっぺも初めこそ虚勢を張った様子だったが、恐怖を感じていないようで態度が若干大きくなった。鬱陶しい。さっさとアイスを買って帰ろう。
トンネルの内部は想像していた通りだった。懐中電灯に頼るくらいの真っ暗闇、錆びて剥き出しになった配線、ポイ捨てごみが散乱する道路。進んで引き返す。トンネルを出る。何もなかった。あまりに静かだったからか、隣でアイツがこのトンネルはーやら、アイス何買うーやら、色々話していたが、全てを聞いてやれるのは多分天野くらいだと思う。オレは話半分だった。
何事もなく待ちに待ったコンビニへ向かう。オレが爽のバニラアイスをカゴに入れると、アイツも同じものをカゴへ放り込んだ。アイスが三つカゴに入っている。会計を済ませて帰路へ着く。袋の中にはキンキンに冷えたアイスが三つ。
オレたちは双子だ。じゃあなぜアイスが三つある?アイツが勝手に入れたのか。小賢しいやつめ。
「おい。アイスは一個っつっただろ?」「オレ、ダーリンと同じのしか入れてないよ?」
帰宅。ドアを開けると冷気がブワッと押し寄せてきた。寒い。エアコンを消し忘れて出かけたらしかった。だがオレたちはこれがどっちの寒さなのか判別できるほどの思考を持ち合わせていなかった。
「…エアコン要らずだな。寒。」深夜は人をダメにする。そっとエアコンを消した。
「今日あちー…」
と、オレの片割れである双子の弟が零しながら、エアコンの設定温度を思ったよりガッツリ下げようとするものだから、どんどん上がっていく電気代のバロメーターと同時に俺の恐怖心のバロメーターもジェットコースターもかくやと思われる速度で急上昇したことは想像に難くないだろう。….難くないよな?
胃が痛い。寒すぎるのか。それとも愚弟の愚行のせいか。
オレが指摘をしても全く聞く耳を持たず、更に設定温度を下げようとするものだから、怒りを通り越して溜め息を吐いた。そんなオレなんて気にも止めず、オレと同じく眠れないアイツは目を輝かせながら何やらパソコンをカタカタやっている。こんな遅くに何を見ているのか、煌々と溢れるブルーライトの海原を彷徨うアイツを見ながら、気になるのと眩しいのと半々で、眠れたかもしれないものも眠れなくなってしまった。
横目でパソコンを覗く。
「肝試し行きたい!暑いし!」「は???」
思わず素っ頓狂な声を上げた。コイツ今なんて言った?
数秒フリーズした後、やっと目に飛び込んできた液晶画面には、5ちゃんねるのスレッドが並んでいた。よく目を通すと怪談のようだった。なるほどコイツはこれで涼んでいたわけだ。
だからといって実際に行こうとする者は世界中探しても物好きかYouTuberかコイツくらいなものだろう。当然オレは面倒で断固として拒否した。だが、オレの弟はここで食い下がるような器ではない。
「帰りにアイス買おーぜ!だから・・・な?」
目を輝かせながらこちらへにじり寄ってくる。オレに何を言ったらこの重い腰が上がるのかを弁えているあたりが非常にいけ好かなくもあり、気持ち悪くもある。だが、やはりアイスの魅力には抗うことができなかった。オレもまた、愚兄であった。
連れて行かれた先は酷く寂れたトンネルであった。いかにも何かが出そうな感じの。そこは熱帯夜だというのに、嫌に涼しさを感じる温度だった。鬱蒼と生い茂る植物から、何か濁った、悪いものを吸ったような凛とした空気感を感じる。おおよそ心霊スポットとは思えなかった。そのお陰か、あまり恐怖感を感じることはなかった。隣の言い出しっぺも初めこそ虚勢を張った様子だったが、恐怖を感じていないようで態度が若干大きくなった。鬱陶しい。さっさとアイスを買って帰ろう。
トンネルの内部は想像していた通りだった。懐中電灯に頼るくらいの真っ暗闇、錆びて剥き出しになった配線、ポイ捨てごみが散乱する道路。進んで引き返す。トンネルを出る。何もなかった。あまりに静かだったからか、隣でアイツがこのトンネルはーやら、アイス何買うーやら、色々話していたが、全てを聞いてやれるのは多分天野くらいだと思う。オレは話半分だった。
何事もなく待ちに待ったコンビニへ向かう。オレが爽のバニラアイスをカゴに入れると、アイツも同じものをカゴへ放り込んだ。アイスが三つカゴに入っている。会計を済ませて帰路へ着く。袋の中にはキンキンに冷えたアイスが三つ。
オレたちは双子だ。じゃあなぜアイスが三つある?アイツが勝手に入れたのか。小賢しいやつめ。
「おい。アイスは一個っつっただろ?」「オレ、ダーリンと同じのしか入れてないよ?」
帰宅。ドアを開けると冷気がブワッと押し寄せてきた。寒い。エアコンを消し忘れて出かけたらしかった。だがオレたちはこれがどっちの寒さなのか判別できるほどの思考を持ち合わせていなかった。
「…エアコン要らずだな。寒。」深夜は人をダメにする。そっとエアコンを消した。
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