｢こら！ビーム！いつも綺麗に食べろって言ってるだろ！｣

｢あう…ご、ごめんなさい…｣

私に怒られてしゅん…としているのは、最近マキマさんに面倒を見ろと言われて私に預けられたサメの魔人のビームだ。
頭がサメになっていて、パッと見で魔人だと分かる。魔人と言うだけあって、思考回路は人間とは違うし力は強いが、他の魔人共に比べたらだいぶ扱いやすい。
日に3度は小さな子供を相手にしているような気持ちになることがある。が、子供と違って悪いことをしたら思い切りぶん殴れるし、ぶん殴る時にうっかり力加減が出来ずに首の骨が折れたとしても血を与えれば復活するので気持ちが楽だ。まあ、そのおかげでここ数日貧血気味なんだが。

｢う… ゆめこ、怒った？｣

口元を私が殺した悪魔の血でベタベタにしながら、悲しそうな目でこっちを見てくる。いやまあサメだから目とかわかんないけど。
けど私は昔から、この子犬みたいな雰囲気の子に弱いんだ。後輩にも子犬みたいなやつがいて、みんなにそいつにだけは甘いな…なんて笑われたりもしたものだ。まあ後輩死んだけど。

｢ビーム…もうちょっと綺麗に食べような？これのあと片付けするの私なんだぞ？｣

そう、私なのだ。既に悪魔の肉塊が四方八方に飛び散り、床は血で染まって元の色がわからないレベル。ここを綺麗にしないといけない…そう考えただけで気が遠くなる。

｢ゆめこ、ビーム、嫌いになった？嫌？｣

｢…はぁ…そんなわけないだろ、お前が特務課の役に立ってるあいだは嫌いにはならないよ｣

ちょっと優しい事を言っただけで、チョロくておつむの弱いビームはとても喜んだ。いや待て、優しい事言ってるか？私。ま、いいか。本人、いや本魔？が喜んでるんだし。