涙が出ることはなかった。

悲しすぎて…






　あの日から、半月。カカシさんのおかげで、あまり人との拒絶をせず生活ができている。アスマは相変わらずあんまりやる気ない。紅さんやアンコさんとも必要以上によく話すようになった。なんだかそれがうれしくて、たまらなかった。



　任務の帰りに慰霊碑に向かう。一族最後の生き残り。無事に帰還した報告だ。

「ユア？」

　なに？と答えると、またここにいたと笑顔で言われる。私はニコッと笑うと、彼に言った。

「見細の生き残りは私だけ。殉職した祖先に一応…」

　英雄達にただいま。というと私は体をくるりと反対側へ…彼に行きましょうと言う。

「そういえば、あの呪印…のことですが…」

「ん？あぁ…」


　隣を歩く自分の言葉に返答されて、話を続けた。


「見細は元々、イビキさんのような拷問・尋問部隊の特別上忍を多く出してました。そして、あの術は元は尋問用に密かに何代目かの当主がつくられたものだったんです。」

「なーんでまた？」

「私たち一族には、目立ったものがなかったから…」

　そう言いかけると、しばらく沈黙が続いた。目立ったものがない。そんな理由であの人は自分自身にあの禁術を掛けた。一族の期待にこたえすぎた当主。けれど、そんな期待にこたえたとしても結局はあの術のおかげで
力を恐れられ封印をされて、己の力でその一族を滅ぼしてしまった。


―悲しすぎる。


「あは…なんだか実感…本当の一人になっちゃいましたね。私…」


　俯いてうずくまりながら、私は言う。


泣きたい。


けど、泣けなかった。


なにがそうさせているのかなんてわからない。


「君は一人じゃないよ。みんながいるじゃない。」


―守るべき里、守るべき人達が…

言われて何かがこみ上げてきた。嬉しかったのかもしれない。


―私という存在を確かに認めてくれた事が…



「うっひっ…くっ…」



　嗚咽が聞こえた。誰のものかなんて明白だった。自分のもの…ふと、何か温もりを感じた。

「カ…カカシさん？」

　抱きしめられている。ひさしぶりの…あの人以外のぬくもりを…

「大ー丈夫！どんな時でも君には俺がいるでしょ！」



「私、いつの間にこんなに弱くなったんでしょう…」






「で？お前らまだくっついてねーの?」

　任務が終わって一息ついていたところで、
アスマがカカシにそう聞いた。

「くっつくね…当分無理っぽいけどね。何せユアってば奥手過ぎるんだもん。」

　そう言ってため息をつく。


「お前がすぐに手を出さないほうが俺にとって見れば気色が悪い。」


　げんなりした表情で、アスマはカカシを見ながら言う。


「あ、何それ。俺がいつも盛ってるみたいに言わないでよ。」


「本当の事だ。」


「酷いなーもー…」


「何々？何の話ー？」


「あぁ。実はだなー…」

　しばらくの日常は平和。孤独だった彼女が俺たちに慣れてくれるまで、待ってみるのもいいかもしれない。けどね。忘れないで…
俺が君を好きだってこと。だって、あの時から…俺は君を見ていたんだ。

ずっと…