寝てない。

眠い。

眠いんだ。

だから寝かせてよ。






お疲れ中


「あーしんどい。」

　ぶつぶつ何かを言いながら、ユアはけだるそうな表情で部屋のあたりを見回していた。数日前から任務任務でほとんど寝ていないのである。いくら忍といえど、ここまでやることが多いとさすがにいやになる。イスにもたれながら伸びをし、あくびをする。連日の深夜任務はやはりきつい。



「大きなあくびだね。」



「え？…えぁっ！？あぎゃ！！」



―ゴン！！


「だっ大ー丈夫？」



「あたたた…うーんとりあえず平気。」



　頭から着地して、思い切り打った部分をさすりながらユアは目の前の人に無事を伝える。それにしても、疲れているとはいえ彼の気配に気づかず背後を簡単に取られるだなんて上忍として失格ではないか。

「ずいぶん派手に倒れたね。」

「うっ疲れてるのよあたしは！」

　ぶーたれながら、あたしは彼に言った。

「だいたいあんたも任務しなくていいの？はたけカカシ！」



「俺？俺の任務は終わったよ」

あっけらかんとそう答えるカカシ。あたしはため息をついた。

「何、ため息つくことないデショ」

　向かい側のイスに座りながらカカシは言う。それを聞いてあたしは再び短くため息をついた。

「つきたくもなるわ…そんな満天の笑みで答えられれば…」

「そんな…俺がなんも苦労してなさそうな言い方しなくても…」

　そう言いながら、手をあたしの肩に置こうとする。

「日々やる気なさげにしてるのは何処の誰ですかー？」

　置かれた手をスルリと振り払う。

「あっなんか今日冷たいなユア！」

「疲れてるんだってば！」

　何度も言わせないでとあたしはげんなりして言った。

「もしかして俺のこと嫌い？ユア…」

　子猫が主にすがりつくような目で彼はいきなりあたしを見ながら言った。

「は？いきなり何言ってんの？んなわけないでしょ？」

　嫌いなら付き合ったりしないよといいたそうな顔をしながら、上目遣いに見るこの男に冷たくいい放つ。

「だって、いつもならすごく俺の事構ってくれんのに…」

　そう言って、いつの間に背後にいたのかあたしの肩に顔を乗せてくる。こうも何度も背後を取られるなんて、やっぱり自分は疲れてるんだと思うと、なんだかこいつの態度と共に段々むかついて来た。


「だーかーらーー！！疲れてるんだってば！もーーーーー！」


　うがーと叫びながら、両腕を上に上げる。
そして同時に…また倒れた。
本日二回目！



―ゴン！




「・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」

　倒れたまま、沈黙が続く。カカシはただ飽きれた目をしてあたしを眺めた。

「ユア・・・・。」

　はぁとため息をつきながら、彼はあたしの名前を呼ぶ。そして、あたしに手を差し伸べた。



「やっぱ疲れてるんだわあたし…」



　いかんだろこれはと一人突っ込みを入れながらあたしは彼の手をとった。

「ユアさぁ…」

「何よ。」

「疲れてるなら、少しここで寝てていいよ。俺いるし。」

　さらっといいながら、ニッコリ微笑んだ。

「馬鹿言うんじゃないわよ。あたしはこれから夜の任務が…」

　言いかけて、手を無理矢理ひかれる。突然のことで一瞬目をつぶって、再び開けた時。
そこにはカカシがやさしそうな顔をして私を見下ろしていた。

「俺に何回も背後取られるようじゃ任務もろくにこなせないデショ？」

「なっ…！！」

　カカシの言葉に反論をしようとした瞬間。
突然唇に何かがあたった。触れるだけの、キスだ…

「任務中にぶっ倒れられちゃ、俺も何かと心配だし。」

　ニコッと微笑むと、カカシはあたしの目元に自分の手のひらを置いた。

「時間になったら起こしてあげるからぐっすり寝てね。」




―…いきなりキスされた上にこんな格好で寝られるかボケーーー！！！




　とつっこみを入れたかったが、こいつ言い出したら聞かないので仕方なく、自分の顔が熱くなるのを感じながら寝ることにした。



「カカシ」


「んー？」


「あたしの上でイチャパラ見ないでよね。」


　おかれた手がびくっと震えるのを感じて、
私はくすりと笑った。




集合には２時間ほどあった。その間。カカシの膝で寝かせてもらって任務は無事終了。


家に帰ったらあいつ。
たぶんいるんだろうな…
苦笑いをしながら、私は自宅へ帰っていった。