強引な貴方
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「それでは、行ってきます。」
太刀を差して、武装する私は局長、副長と丁度見送りにきた原田さんを前にして険しい顔一つ。
「おう。行ってこい。」
土方さんの声を聞き終えると、私は一礼をして永倉組長の後を追う。
「…おっせーよ。ユア。」
ポンと思いの外強く背を叩かれて、私はケホリと咳き込んだ。
「永倉組長…痛いです。」
「…何言ってやがる。緊張をほぐしてやってるんだろう。ほれっ」
バシンと今度は先程よりも強めに叩かれて、再び咳き込む私に永倉組長はニヤニヤと笑った。
「…けほっ…けほっ…な…永倉組長、もう少し緊張感を持ってください!今日私達は死番なんですよ?」
「おう。だからあまり肩に力入れるなって!屯所を出る前から焦って緊張して…そんなだと、本当に必要な時に普段の半分しか力が出ないぞ。」
「う…それはそうですが…」
「だろ?」
ニカッといつもの笑顔を向けてくる永倉組長に私は静かに笑った。
「んじゃ…お前ら!行くぜ!今日もこの京の治安の為、死ぬ気でいけよ!」
かけ声が返ってくるのを確認すると、私達はそのまま屯所を後にした。
「チッ…!ユア!ここはいい!一人、そっちへ行ったぞ!追え!」
「…はい!」
太刀を引き抜いて、先行く浪士を追っていく相手は手負いで走る速度も徐々に遅くなっている。
私は好機だと思い、一気に暗い路地を駆け抜ける。
(マズい…この先は確か広い路地のはずっ)
何とか、この狭い道の間に決着を付けたかった私は、更に走る速度を速めた。
ここでこの浪士を逃がせば、永倉組長の顔が立たない。むしろ泥を塗ることになる。そう思ったからだ。
「くそっ!」
「…ぎゃああああ!!!!」
不意に目の前の男が無機質な音を立てて倒れ込む。私は慌ててその男に近寄った。
「くっ!誰がっ」
喉元に手をあてて脈を確認すれば、浪士は既に息絶えていた。
―ビュン
何者かの気配と刀の迷いのない音が背後から聞こえたのはほぼ同時だった。
「チッ…惜しいな。もう少しで殺れると思ったんだがっ」
「くっ…新選組を…なめるなっ」
とっさに刀で防いで、私は新たな浪士の攻撃の体重を必死で受け止めた。
互いの刀からギリギリと力のこもった音が聞こえて、それに耐えた。
「華奢な身体でよく今の一太刀を受け止められたな。だが、次はそうはいかない。お前らっ!」
ゆらりと数人の男達が姿を表す。
小脇から太刀をゆっくり引き抜いて、奴らは今にも一斉に襲いかかってきそうだった。
「新選組には死番つーのがあるんだろう?人数が少なくて助かるぜ。おかげで俺達は身動きの取れないお前を始末して、さっきの残りの連中もやれるってこった。仲間一人犠牲にしてこれほどの大手柄はねぇな!」
「…新選組をっ…我等を愚弄するなっ!我等は京の治安の為にあるのだ!これ以上の無礼な発言をしてみろ!貴様達生きては帰さないっ」
口だけは去勢を張って言う私に男はあざ笑うような視線を向けた。
「はっ!口だけは大したもんだ。死ね!」
かけ声と同時に、仲間達が一斉に私に斬りかかる。
(―くそっ、ここまでかっ)
「…だから、言ったろ。焦って緊張してるとこうなるんだよ。」
突然断末魔が聞こえて、私は目を見開く。
「な、永倉組長…っ」
「ユア…目の前にいるそいつ任せた!」
「はい!」
呆気にとらわれていた目の前の浪士に向けて素早く刀を振り落とし、私は永倉組長の背に自分の背中を向ける。
「おうユア。その調子だ。」
「はい!永倉組長!」
いつもの笑みでそう返事をして目の前の敵に斬りかかる。
新選組がこの場を片付けるのにそう時間はかからなかった。
「いやー大手柄、大手柄!スカッとしたぜ」
永倉組長は、原田さん、平助さんと酒屋で先の戦いを面白おかしく話していた。隊務が終わった後、三人が丁度出掛け行く所だったらしく、私もお酒をおごってもらうということで現在に至る。
「そこで俺はコイツに言ったわけだ!…一人逃げた!!!行け!俺も後からすぐに行くぜ!!!」
「ほぅ…お前にしては偉く気の効いた台詞だな。」
「ないない!新八っつあんがそんな事言うわけないじゃん!なぁユア!」
「いや…あはは。私、必死でよく覚えてないです。」
―似くさい台詞は言ったような気はするけどそこまで言ってなかった気はする。
「なんだぁ?随分つれない台詞を吐くじゃねーか!」
「えっ!いえ、そんな事はっ」
詰め寄ってくる永倉組長に後ずさるが、彼はジリジリと私との距離を縮める。
「え…いや、組長っ永倉組長!近いっ近い!!!!」
息のかかるくらい顔を近くに寄せられ、私はしどろもどろする。
「おぉ!新八っつあんが珍しく強気だっ」
関心したような口振り平助さんが言うと私は慌てて目の前の人に声を掛ける。
「…平助さんっ!ニヤニヤしてないでたすけてくださいよ!原田さんも芸妓さんはべらせて優雅にお酒のんでないでなんとかしてくださ…あぎゃ!」
横から顔を出して言うと、永倉組長に思いきり顔を向かされて、再び息のかかる程の距離になる。
(近い。近すぎるっ顔がっ息がかかるっ)
「くっ組長!ほら、今日も組長のお気に入りの芸妓さんがきてますよ!あっち、あっちに!」
「…うるせぇな。…ちょっと黙れ。おい平助!こいつ少し借りるぜ!」
引きずるように部屋を出ていく私達に、平助さんは相変わらずニヤニヤしながら私達を見送る。
「…へいへい。行ってらっさーい!」
「ちょっ…えっ!まっ…」
パタンと音を一つ。
残された彼等は顔を見合わせてると、原田が呆れた声で言う。
「アイツも、酒の力借りねぇと駄目なんて、まだまだだなっ…」
「くくく…でもこれで、ユアも、なんでいつも死番の割り振りが新八っつあんと一緒なのか気づくんじゃねーの?」
「だな…こうも男所帯だと困るよな。普段気にしてない事に片足突っ込む訳だしよ。色恋でユアが鈍いのは当然というか何というか…」
「だよなぁ…二人が上手くいけばいいなぁ…」
「永倉…永倉組長っ!お店出ちゃってますけど大丈夫なんですかっ」
「問題ねぇよ…左之達がいるからな。」
私の手を引っ張ってずいずい先へ行く永倉組長。その内、人通りの多かった通りから人気のない路地に出ると、永倉組長はようやく後ろを振り返った。
「な…永倉組長?」
沈黙の後、うっと声をもらす。が、すぐに私の目を見つめながら言った。
「あのよ…お前、誰か好きな奴とかいるのか?」
「…は?」
「あー…いや、ほら、新選組にいるとはいえお前も女なわけだしよ。誰か好きな奴でもいるのかなと思ってよ。」
照れくさいのか頭を乱暴にガシガシとかきつつ話す永倉組長。
「あの…それは、心からお慕いしている方の事を聞いているのですか?」
そう聞き返すと、彼はこくりと頷いてバツの悪そうな顔をする。
「居ますよ。そうですね、もうずいぶんと前から…」
「なっ!あ、あーそ、そうか…そ、そいつは新選組の奴なのか?」
「…はい。」
すかさず返事をすると、永倉組長はがっくりとうなだれてしまう。
私はそんな事気にはとめず話を続けた。
「優しくて、かっこよくて、強くて…。それでいて飾らなくて、皆に慕われていて明るくて素敵な人です。」
柔らかく、目の前の人間に想いをのせるように言う私に永倉組長は他の誰かと勘違いをしているのか、余計凹んでいく。
「でも、私その人に意識されていないのか、よく飲みに誘われるんですよね。芸妓さんも毎回お気に入りの人呼ばれちゃうし私ってそんなに魅力ないですか?やっぱり男装してるのがマズいんでしょうか?」
「そ、そんな事ねぇよ!お前十分可愛いし、いつも悪い虫がつかねぇか見張ってるの大変なんだぞ!今だって…!!」
言いかけてはっとしたのか、永倉組長は自らの口を慌てて塞ぐと視線を逸らした。
「あ…あの…えーと…」
どう言えばいいのかわからず、私は永倉組長に近寄る。
「や…やめろ。お前が左之の事を好きなのはわかったから、気なんか使うなっ」
「気なんか…今更使いませんよ。私が好きなのは永倉組ちょ…ん」
突然降ってきたデタラメな口づけ。
角度を変えて何度も繰り返されて、いつの間にか、永倉組長の手が私の頭に回っていて…
「俺も、お前が好きだっ!」
紡がれた言葉に私は思わず涙する。
「永倉組長…じゅ、順序逆ですっ」
「わ、わりぃ!つい焦って!」
「好きです。永倉組長っ」
「おう!俺も好きだっ」
例え
この先
荊の
道でも
貴方
と
歩む事を
誓います。
太刀を差して、武装する私は局長、副長と丁度見送りにきた原田さんを前にして険しい顔一つ。
「おう。行ってこい。」
土方さんの声を聞き終えると、私は一礼をして永倉組長の後を追う。
「…おっせーよ。ユア。」
ポンと思いの外強く背を叩かれて、私はケホリと咳き込んだ。
「永倉組長…痛いです。」
「…何言ってやがる。緊張をほぐしてやってるんだろう。ほれっ」
バシンと今度は先程よりも強めに叩かれて、再び咳き込む私に永倉組長はニヤニヤと笑った。
「…けほっ…けほっ…な…永倉組長、もう少し緊張感を持ってください!今日私達は死番なんですよ?」
「おう。だからあまり肩に力入れるなって!屯所を出る前から焦って緊張して…そんなだと、本当に必要な時に普段の半分しか力が出ないぞ。」
「う…それはそうですが…」
「だろ?」
ニカッといつもの笑顔を向けてくる永倉組長に私は静かに笑った。
「んじゃ…お前ら!行くぜ!今日もこの京の治安の為、死ぬ気でいけよ!」
かけ声が返ってくるのを確認すると、私達はそのまま屯所を後にした。
「チッ…!ユア!ここはいい!一人、そっちへ行ったぞ!追え!」
「…はい!」
太刀を引き抜いて、先行く浪士を追っていく相手は手負いで走る速度も徐々に遅くなっている。
私は好機だと思い、一気に暗い路地を駆け抜ける。
(マズい…この先は確か広い路地のはずっ)
何とか、この狭い道の間に決着を付けたかった私は、更に走る速度を速めた。
ここでこの浪士を逃がせば、永倉組長の顔が立たない。むしろ泥を塗ることになる。そう思ったからだ。
「くそっ!」
「…ぎゃああああ!!!!」
不意に目の前の男が無機質な音を立てて倒れ込む。私は慌ててその男に近寄った。
「くっ!誰がっ」
喉元に手をあてて脈を確認すれば、浪士は既に息絶えていた。
―ビュン
何者かの気配と刀の迷いのない音が背後から聞こえたのはほぼ同時だった。
「チッ…惜しいな。もう少しで殺れると思ったんだがっ」
「くっ…新選組を…なめるなっ」
とっさに刀で防いで、私は新たな浪士の攻撃の体重を必死で受け止めた。
互いの刀からギリギリと力のこもった音が聞こえて、それに耐えた。
「華奢な身体でよく今の一太刀を受け止められたな。だが、次はそうはいかない。お前らっ!」
ゆらりと数人の男達が姿を表す。
小脇から太刀をゆっくり引き抜いて、奴らは今にも一斉に襲いかかってきそうだった。
「新選組には死番つーのがあるんだろう?人数が少なくて助かるぜ。おかげで俺達は身動きの取れないお前を始末して、さっきの残りの連中もやれるってこった。仲間一人犠牲にしてこれほどの大手柄はねぇな!」
「…新選組をっ…我等を愚弄するなっ!我等は京の治安の為にあるのだ!これ以上の無礼な発言をしてみろ!貴様達生きては帰さないっ」
口だけは去勢を張って言う私に男はあざ笑うような視線を向けた。
「はっ!口だけは大したもんだ。死ね!」
かけ声と同時に、仲間達が一斉に私に斬りかかる。
(―くそっ、ここまでかっ)
「…だから、言ったろ。焦って緊張してるとこうなるんだよ。」
突然断末魔が聞こえて、私は目を見開く。
「な、永倉組長…っ」
「ユア…目の前にいるそいつ任せた!」
「はい!」
呆気にとらわれていた目の前の浪士に向けて素早く刀を振り落とし、私は永倉組長の背に自分の背中を向ける。
「おうユア。その調子だ。」
「はい!永倉組長!」
いつもの笑みでそう返事をして目の前の敵に斬りかかる。
新選組がこの場を片付けるのにそう時間はかからなかった。
「いやー大手柄、大手柄!スカッとしたぜ」
永倉組長は、原田さん、平助さんと酒屋で先の戦いを面白おかしく話していた。隊務が終わった後、三人が丁度出掛け行く所だったらしく、私もお酒をおごってもらうということで現在に至る。
「そこで俺はコイツに言ったわけだ!…一人逃げた!!!行け!俺も後からすぐに行くぜ!!!」
「ほぅ…お前にしては偉く気の効いた台詞だな。」
「ないない!新八っつあんがそんな事言うわけないじゃん!なぁユア!」
「いや…あはは。私、必死でよく覚えてないです。」
―似くさい台詞は言ったような気はするけどそこまで言ってなかった気はする。
「なんだぁ?随分つれない台詞を吐くじゃねーか!」
「えっ!いえ、そんな事はっ」
詰め寄ってくる永倉組長に後ずさるが、彼はジリジリと私との距離を縮める。
「え…いや、組長っ永倉組長!近いっ近い!!!!」
息のかかるくらい顔を近くに寄せられ、私はしどろもどろする。
「おぉ!新八っつあんが珍しく強気だっ」
関心したような口振り平助さんが言うと私は慌てて目の前の人に声を掛ける。
「…平助さんっ!ニヤニヤしてないでたすけてくださいよ!原田さんも芸妓さんはべらせて優雅にお酒のんでないでなんとかしてくださ…あぎゃ!」
横から顔を出して言うと、永倉組長に思いきり顔を向かされて、再び息のかかる程の距離になる。
(近い。近すぎるっ顔がっ息がかかるっ)
「くっ組長!ほら、今日も組長のお気に入りの芸妓さんがきてますよ!あっち、あっちに!」
「…うるせぇな。…ちょっと黙れ。おい平助!こいつ少し借りるぜ!」
引きずるように部屋を出ていく私達に、平助さんは相変わらずニヤニヤしながら私達を見送る。
「…へいへい。行ってらっさーい!」
「ちょっ…えっ!まっ…」
パタンと音を一つ。
残された彼等は顔を見合わせてると、原田が呆れた声で言う。
「アイツも、酒の力借りねぇと駄目なんて、まだまだだなっ…」
「くくく…でもこれで、ユアも、なんでいつも死番の割り振りが新八っつあんと一緒なのか気づくんじゃねーの?」
「だな…こうも男所帯だと困るよな。普段気にしてない事に片足突っ込む訳だしよ。色恋でユアが鈍いのは当然というか何というか…」
「だよなぁ…二人が上手くいけばいいなぁ…」
「永倉…永倉組長っ!お店出ちゃってますけど大丈夫なんですかっ」
「問題ねぇよ…左之達がいるからな。」
私の手を引っ張ってずいずい先へ行く永倉組長。その内、人通りの多かった通りから人気のない路地に出ると、永倉組長はようやく後ろを振り返った。
「な…永倉組長?」
沈黙の後、うっと声をもらす。が、すぐに私の目を見つめながら言った。
「あのよ…お前、誰か好きな奴とかいるのか?」
「…は?」
「あー…いや、ほら、新選組にいるとはいえお前も女なわけだしよ。誰か好きな奴でもいるのかなと思ってよ。」
照れくさいのか頭を乱暴にガシガシとかきつつ話す永倉組長。
「あの…それは、心からお慕いしている方の事を聞いているのですか?」
そう聞き返すと、彼はこくりと頷いてバツの悪そうな顔をする。
「居ますよ。そうですね、もうずいぶんと前から…」
「なっ!あ、あーそ、そうか…そ、そいつは新選組の奴なのか?」
「…はい。」
すかさず返事をすると、永倉組長はがっくりとうなだれてしまう。
私はそんな事気にはとめず話を続けた。
「優しくて、かっこよくて、強くて…。それでいて飾らなくて、皆に慕われていて明るくて素敵な人です。」
柔らかく、目の前の人間に想いをのせるように言う私に永倉組長は他の誰かと勘違いをしているのか、余計凹んでいく。
「でも、私その人に意識されていないのか、よく飲みに誘われるんですよね。芸妓さんも毎回お気に入りの人呼ばれちゃうし私ってそんなに魅力ないですか?やっぱり男装してるのがマズいんでしょうか?」
「そ、そんな事ねぇよ!お前十分可愛いし、いつも悪い虫がつかねぇか見張ってるの大変なんだぞ!今だって…!!」
言いかけてはっとしたのか、永倉組長は自らの口を慌てて塞ぐと視線を逸らした。
「あ…あの…えーと…」
どう言えばいいのかわからず、私は永倉組長に近寄る。
「や…やめろ。お前が左之の事を好きなのはわかったから、気なんか使うなっ」
「気なんか…今更使いませんよ。私が好きなのは永倉組ちょ…ん」
突然降ってきたデタラメな口づけ。
角度を変えて何度も繰り返されて、いつの間にか、永倉組長の手が私の頭に回っていて…
「俺も、お前が好きだっ!」
紡がれた言葉に私は思わず涙する。
「永倉組長…じゅ、順序逆ですっ」
「わ、わりぃ!つい焦って!」
「好きです。永倉組長っ」
「おう!俺も好きだっ」
例え
この先
荊の
道でも
貴方
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歩む事を
誓います。
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