時々、お前が俺から離れていってしまわないかどうか不安で不安でたまらないんだ。
だってお前は、俺のことをどう思っているのかわからないか…
ずっと、一緒にいたい。
ずっと、そばにいて守ってやりたい。
そう思うのは、俺の我侭か？




欲望の前触れ




「ユア…」

「んー？何？」


　鍛錬が一通り終わって、
誰もいない訓練場で俺はお前に話しかける。
なにくわぬ表情で茶を飲もうと上目遣いに見つめてくるお前の顔が、可愛すぎてすこしばかりくらっときそうになったが、耐えて話を続けた。


「お前…誰か気になるやついるか？」




ブーーーーーーーーーー！！！




「きたねっ！！何いきなり吐き出してるんだ！」

「だっ…馬超…あんたねぇ…質問がいつも唐突なのよ！」


　口元を手でごしごしと拭きながら、ユアはそういった。


「何でいきなり、気になる奴なわけ？」


　吐き出した茶をもったいないと言いつつ、
彼女は足元においてあった茶をふたたび注いだ。


「俺が…」

「俺が？」


　反復するように聞き返すお前。
自分の顔が熱くなっているのを感じた。


「俺が…」


　その先が恥ずかしくて、言いにくかった。
けれど…


「俺が、お前を好きだから…」



ブーーーーーーーーーーー！！！！



「わっきったね！またやりやがった！！！」


　よけるような格好をしながら、俺はこいつの真っ赤になる顔を見た。
だってそれは俺の言葉にだけ反応して、
俺に言葉に対してのリアクションだったから…


「だから、あんたはムードもへったくれもなく…あぁ！お茶がもったいない！あたしは水分がほしいのよ！水分が！！」

「……なら、俺がやる。」

　自分の器に入っている茶を口に含むと、俺はお前の唇にそれを注ぎ込む。
いきなりの行為にびっくりしたのだろう短い声が漏れた。
息苦しそうなお前の声に少しばかり優越感に浸っていた。
唇から、のど元にもれた茶が滴り落ちていた。
するりと重なったそれを離せば、息苦しそうな声がもれた。


「お前は、もう俺のものだからな。」

　にやりと笑ってそういった。
ユアは、真っ赤になりつつ馬鹿と一言。
そして、俺の胸に軽くパンチした。