残す者。残される者。
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戦に行く者と残る者。
相反する男女の心情。
残された者の気持ち。
残して逝く者の気持ち。
女は戦場に出るべきではない…
そんなこと…
分かりきっている…
残す者。残される者。
「行くの?趙雲…」
「えぇ…」
戦前の前日。
貴女はいつも、私にそう問いかける。
「残ることは出来ない?」
部屋の扉の柱に体を預けて、腕組みをする。
いつもの事ながら、私がそんなことなどするはずもないのは
分かっているくせに貴女は私に聞くのだ。
「残ることはで来ません。戦に私情は持ち込みません。」
「私情か…」
寂しげに、そう言う。
「私も、こんな怪我さえなければ一緒に行けたのに…」
「ユア殿…。」
彼女は、馬超と共に蜀に仕官した方である。
数年前に突然暴れ出した馬によって左足を負傷して以来、諸葛亮殿や殿に戦に出る事を禁止されていた。
「前のようには動かないこの足が、憎らしいな…」
ポツリと呟きながら、痛めた己の左足をなでる貴女。
私は、そんなユア殿をいつも見ていられなかった。
「戦になど、出ない方がいいのですよ。ユア殿…」
口元を少しやわらかく上げて、私は言った。
「それは、女など戦になど出る幕ではないのだと言いたいの?」
少しばかり、不機嫌そうに答える。
いいえと短く返答すると、じゃあなんなの?という視線を私に向ける。
「守りたい者が、守れなくなりますから…」
ハッとした、見開いた目で戦の用意をする者の顔を見る。
そして、冗談が過ぎるわねと言うと貴女は私の部屋から去って行った。
苦笑いをする私の顔など、貴女は見てはいなかったでしょうね…
暗く、夜もふける通路を歩く。
「何も知らず残される者の苦しみを、貴方は分かっているの?趙雲。」
優しい光が当たる月をぼんやり眺めながら、
ユアはポツリと囁く。
その頬には、たしかに透明な水滴がゆっくりと流れていた。
相反する男女の心情。
残された者の気持ち。
残して逝く者の気持ち。
女は戦場に出るべきではない…
そんなこと…
分かりきっている…
残す者。残される者。
「行くの?趙雲…」
「えぇ…」
戦前の前日。
貴女はいつも、私にそう問いかける。
「残ることは出来ない?」
部屋の扉の柱に体を預けて、腕組みをする。
いつもの事ながら、私がそんなことなどするはずもないのは
分かっているくせに貴女は私に聞くのだ。
「残ることはで来ません。戦に私情は持ち込みません。」
「私情か…」
寂しげに、そう言う。
「私も、こんな怪我さえなければ一緒に行けたのに…」
「ユア殿…。」
彼女は、馬超と共に蜀に仕官した方である。
数年前に突然暴れ出した馬によって左足を負傷して以来、諸葛亮殿や殿に戦に出る事を禁止されていた。
「前のようには動かないこの足が、憎らしいな…」
ポツリと呟きながら、痛めた己の左足をなでる貴女。
私は、そんなユア殿をいつも見ていられなかった。
「戦になど、出ない方がいいのですよ。ユア殿…」
口元を少しやわらかく上げて、私は言った。
「それは、女など戦になど出る幕ではないのだと言いたいの?」
少しばかり、不機嫌そうに答える。
いいえと短く返答すると、じゃあなんなの?という視線を私に向ける。
「守りたい者が、守れなくなりますから…」
ハッとした、見開いた目で戦の用意をする者の顔を見る。
そして、冗談が過ぎるわねと言うと貴女は私の部屋から去って行った。
苦笑いをする私の顔など、貴女は見てはいなかったでしょうね…
暗く、夜もふける通路を歩く。
「何も知らず残される者の苦しみを、貴方は分かっているの?趙雲。」
優しい光が当たる月をぼんやり眺めながら、
ユアはポツリと囁く。
その頬には、たしかに透明な水滴がゆっくりと流れていた。