心ここにあらず
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「ユア!」
訓練場にバカスカ入ってくる趙雲がユアを呼び付ける。
「どうしたの?」
護衛兵と共に訓練に励んでいたユアが、返事をする。
彼はすごい形相でこう言うのだ。
「馬超が結婚するらしいぞ!!」
「えっ!?」
ダン!!
「私に何の報告もなく結婚を決めるってどういうこと!?馬超!」
馬超の執務室に駆けこんだユアは、
彼の作業をする机に勢い良く手をたたき付けた。
「報告も何も、俺はお前とは戦友なだけで
特にこれといってなにかある関係でもないだろう」
そうなのだ。実はこの二人、
蜀に仕官する前からの戦友同士であった。
「そっそれはそうだけどさ。
でも、私たち蜀に仕官する前からの仲なんだし、それくらい報告してくれたっていいじゃない。」
そう言って落ち込みがちに言う。
「ここ数日お互い忙しかっただろう。
話すタイミングがなかったのだ。しかたがなかろう。」
「趙雲には言った癖に。」
膨れっ面でユアは言う。
「あれはたまたまだ。初めはお前に言うつもりだったのだ。」
そう言いながら、馬超は思いの外お気らくに仕事をこなしている。
彼に見向きもされない彼女は馬超の前で棒立ちになりながら
(そんなこと言われたって嬉しくないよ。私は馬超が好きなのに。)
と、切ない顔をする。
-結婚か...
「もう、行くのか?」
入って来た方に向かうユアに声をかける。
「だっていつまでもこんな所にいたら誤解されるでしょ?」
「誤解って今更変に誤解する奴もいまい。
俺達の関係は皆承知の上だぞ。」
あっさりそう答える。
「結婚する人に変に誤解されたくなかったら
そういうコメント控えた方がいいよ馬超。」
悔しくて嫌味を言ってやる。
馬超は苦笑いをしていた。
ユアはそのまま部屋を出て行った。
「結婚…か…俺はお前しか見てないのにな…」
太陽も落ちて、今日のあまりにもショックな事を趙雲と姜維を連れて街の酒屋でヤケ酒をする。
「ユア。それくらいにしておけ。明日に響くぞ」
「そうですよユア殿!それにそんなに飲んだら体に悪いです。」
ヒヤヒヤしながら趙雲と姜維が言う。
彼女はコップにガポガポと酒を注ぎながら
「はっ!なーにが体に悪いよ!大きなお世話だっての!別にあたしが体調崩したって心配する奴なんかだーれもいないわよ!へへんだ!」
「そんなことありませんよ!殿や私達が
あなたにもしものことがあったら心配しますよ」
「ふん!それも戦友だから、部下だからって事でしょう!」
「それでは不服なのか?」
趙雲や姜維は彼女を戦仲間として見ていた。好きとか嫌いとか例えられたら勿論好きだが
それは幾多の戦を共に乗り越えてきた戦友だから…
2人は彼女に『愛』と言う特別な感情は持ち合わせてはいなかった。
「…ほら。やっぱりあたしは…結局一人じゃん…」
馬超が結婚すると報告を受けた後、
彼女が彼の元に訪れたときの会話の内容を趙雲はまったく知らない。
だからこんなにあっさり言葉を返してしまう。
ユアは否定して欲しいのにと思いながらも寂しげに微笑む。
今にも泣き出しそうな表情をしている。
そんな彼女の顔を見て、姜維はハッと気が付く。
(…まさか)
少しすると、ユアは立ち上がりフラフラの体で店の外へと向かおうとする。
「おい。ユア…何処へ行くんだ。」
「…帰る。一人でまた飲むよ。今日は皆と飲む気がしない。」
「これだけ飲んどいて何を言うか」
あきれて物も言えないような顔をしながら、そう答える。
「まぁまぁ…。送るよユア。
代金は趙雲殿が支払ってくださるそうだから」
「なっ!私はまだ!」
「いいじゃないですか。たまには...」
黒いオーラを漂わしながら姜維が言う。
趙雲は短くうめき声を上げると、そのまま会計をしに向かった。
夜道を歩く。
酒を先程まで飲んで、体が照っているためか
外の風が気持ち良い。
一瞬そんな開放感に見舞われる。
「はっなんでかな~こんなに気持ちの良い夜なのに、とってもブルーな気分だよ。」
夜道を照らす、丸い月に向かって
ユアは一人寂しく微笑んだ。
いつから俺を孟起と呼ばなくなった?
いつから私に何も話さなくなった?
いつから俺を馬超と呼ぶようになった?
いつから私の知らないあなたになった?
大事な何かを手に入れるには、
それだけ大きな犠牲も必要で。
大事な何かを捨てるには、
それだけ大きな決心も必要になる。
けれど私は…ただ気がついて欲しかっただけ…
考えてみれば当たり前だった。
馬超からしてみれば、私はただの戦友。
好きになるなんてわけない。
だって私はあの人の背を守ってきただけの
戦うことしか知らない、一人の将だもの…
もの心つく前からこの槍を握って人を斬っていた。
そんな私を五虎将のあの人が好きになるわけもなく…
気持ちを伝えられるわけもなく。
時は過ぎるばかりだった。
「ユア殿…申し訳ありません。あなたの屋敷より私の家の方が近かったもので…」
酒場でベロベロに酔っぱらっていたユアはフラフラの足で帰る所を、同僚の姜維が無事に帰れるのか心配だと言われ彼の屋敷へに向かっていた。
「へへっ…いいよー。趙雲はともかくとして、姜維なら色々相談出来そうだし…」
くらくらする頭でなんとかまともに言うユア。
趙雲には、自分が独占欲の固まりだと言う事を知られたくない…
そう思っていた。なぜならそれは彼女が唯一彼を尊敬しているからである。
醜い自分の心の中など趙雲に見てほしくない。そう思っていた。
「趙雲殿もついて行きたいけれど、明日早いらしいからすまないって言っていましたよ…」
「あ、そうなの?」
「うん」
そうとそっけない返事をする。
内心ホッとした。
「ユア殿は…馬超殿が好きなんですよね。」
しばらくの沈黙の後、それを破ったのは姜維だった。
「…もう知ってるくせに…色恋の相談は姜維にしかしたことないよ。」
姜維が彼女を支えているとはいえ、ユアはかなりフラフラで千鳥足。
酔っているのか恥かしいのか、彼女は姜維に返答する。
「…結婚の話…どうするんですか??」
聞かれたくない事を聞かれる。
答えたくない事を言わなくちゃいけない。
「……どうするもこうするも私は元々あの人の―」
「お辛いなら私が慰めましょうか…」
「え?」
ふわりと姜維の胸に自分自信が放り込まれるのを感じる。
訳もわからず酔った頭で整理しようと、目をパチパチさせる。
「あなたがこれ以上…馬超殿のことで悩んでいるのが痛々しい…」
「きょ…姜維??」
彼の名前を呼んだとたんに、聞き覚えのある声が響いた。
「お前ら!!!何をしてるんだ!!」
「ば…馬超…何でここ…」
「姜維!ユアに手を出すな!こいつは俺の物だ!」
彼女の言葉など聞いてはおらず、馬超は姜維に怒鳴り散らす。
「馬超殿…あなたは婚儀をなさる方でしょう他の女性と…私がユアに何をしようと関係ないはずです。何故ユアがあなたの物なのですか?」
突然姜維が自分を呼び捨てにするので、彼女はびっくりする。
「うるさい!お前には関係ないことだ。ユア行くぞ!!」
そう言って強引にユアを引っ張っていこうとする。
「待って!何でここにいるの!?何で!?答えてよ!」
引っ張られる自分の足を懸命に地につけて、問いかけるユア。
その問いかけに姜維が返答する。
「後をずっとついて来てたんですよ。酒場にいたときから。」
「え?」
「…。」
図星をつかれ、俯いてしまう馬超。
「他の女性がいるのにも関らず良い御身分ですね。馬超殿。ユアを手に入れようと必死になって…そんなに彼女が欲しいのですか?」
「!!」
「お前に俺の気持ちなどっ!!」
「分かりませんよ。あなたの気持ちなんて。
分かるのは傷ついて酒をあおって、弱々しくなるユアの気持ちだけです。」
「きょっ姜維!!」
「黙れ!とにかくユア。こっちに来るんだ!!」
そう言って半ば強引に引きずられながら2人はその場を後にした。
―ドサッ
「あっ!」
自分の屋敷に馬超共々帰ってきたユアは、
自室に入ったとたんに強引に投げ飛ばされる。
「なっ何するの!?馬超!」
「何故そう俺を呼ぶ!?」
いきなり叫ばれ何がなんだか分からないユア。
「え?」
「いつから俺を孟起と呼ばなくなった!?
いつから俺を馬超と呼ぶようになった!?」
弱々しく自分の肩に手を置く馬超。
かすかだが震えているのが分かる。
「何故、嫌だと言ってくれない?
何故、俺ではなく違う男と…」
「ばっ…孟起…?」
「お前が、嫌だと言ってくれさえすれば俺は…それでようやく断る事ができるのに…ユア…」
そう言って、優しくユアを抱きしめる馬超。
ユアはようやく、彼も自分と長いこと同じ気持ちだったことに気がつく。
「孟起…私は…自分があなたにふさわしくない人間だと思っていた。
殿に仕え、殿からあなたは五虎将という地位を授けて頂いた。
それに引き換え、私はあなた背中を守ることくらいしか出来ない、
一武将…引け目を感じていた。」
そう彼に告白をする。
「俺はお前さえいてくれればそんなものどうでもいい!!
お前がいたから今の俺がいる!引け目なんてそんなもの!!
……愛してるんだ…ずっと…」
「結局、結婚相手はユア殿に決まったのですか?」
「えーあーうん。」
数日後、鍛錬所に姜維と並びながら兵の訓練をしているのを見ながら、
姜維はユアにそう言った。
噂になっていた馬超の結婚相手は、劉備が選んだ旅商人の娘であった。
「よかったですね~。ユア殿。これも多かれ少なかれ私のおかげですねvv」
「うん。ありがとう姜維。なんかあの時は迫真の演技だったよ。」
「いつもお世話になってるんです。そのくらいなんてことないですよ。」
ニッコリと微笑む姜維。
つられてユアも笑ってしまった。
「きょーいー!!お前…またそいつにちょっかいを出してるのかー!?」
遠くから、怒りをあらわにして叫ぶ馬超の姿があった。
「まずは結婚する前に私達が何でもないという事を、説明しておいた方が良いですね。」
苦笑いをしながら、姜維はユアに言った。
「あはは。そうだね。」
「姜維ーーー!!ユアから放れろ!!!」
大事な何かを手に入れるには、
それだけ大きな犠牲も必要で。
大事な何かを捨てるには、
それだけ大きな決心も必要になる。
心はここにあらず。
私もあなたしか見えていないのもまたしかり…
訓練場にバカスカ入ってくる趙雲がユアを呼び付ける。
「どうしたの?」
護衛兵と共に訓練に励んでいたユアが、返事をする。
彼はすごい形相でこう言うのだ。
「馬超が結婚するらしいぞ!!」
「えっ!?」
ダン!!
「私に何の報告もなく結婚を決めるってどういうこと!?馬超!」
馬超の執務室に駆けこんだユアは、
彼の作業をする机に勢い良く手をたたき付けた。
「報告も何も、俺はお前とは戦友なだけで
特にこれといってなにかある関係でもないだろう」
そうなのだ。実はこの二人、
蜀に仕官する前からの戦友同士であった。
「そっそれはそうだけどさ。
でも、私たち蜀に仕官する前からの仲なんだし、それくらい報告してくれたっていいじゃない。」
そう言って落ち込みがちに言う。
「ここ数日お互い忙しかっただろう。
話すタイミングがなかったのだ。しかたがなかろう。」
「趙雲には言った癖に。」
膨れっ面でユアは言う。
「あれはたまたまだ。初めはお前に言うつもりだったのだ。」
そう言いながら、馬超は思いの外お気らくに仕事をこなしている。
彼に見向きもされない彼女は馬超の前で棒立ちになりながら
(そんなこと言われたって嬉しくないよ。私は馬超が好きなのに。)
と、切ない顔をする。
-結婚か...
「もう、行くのか?」
入って来た方に向かうユアに声をかける。
「だっていつまでもこんな所にいたら誤解されるでしょ?」
「誤解って今更変に誤解する奴もいまい。
俺達の関係は皆承知の上だぞ。」
あっさりそう答える。
「結婚する人に変に誤解されたくなかったら
そういうコメント控えた方がいいよ馬超。」
悔しくて嫌味を言ってやる。
馬超は苦笑いをしていた。
ユアはそのまま部屋を出て行った。
「結婚…か…俺はお前しか見てないのにな…」
太陽も落ちて、今日のあまりにもショックな事を趙雲と姜維を連れて街の酒屋でヤケ酒をする。
「ユア。それくらいにしておけ。明日に響くぞ」
「そうですよユア殿!それにそんなに飲んだら体に悪いです。」
ヒヤヒヤしながら趙雲と姜維が言う。
彼女はコップにガポガポと酒を注ぎながら
「はっ!なーにが体に悪いよ!大きなお世話だっての!別にあたしが体調崩したって心配する奴なんかだーれもいないわよ!へへんだ!」
「そんなことありませんよ!殿や私達が
あなたにもしものことがあったら心配しますよ」
「ふん!それも戦友だから、部下だからって事でしょう!」
「それでは不服なのか?」
趙雲や姜維は彼女を戦仲間として見ていた。好きとか嫌いとか例えられたら勿論好きだが
それは幾多の戦を共に乗り越えてきた戦友だから…
2人は彼女に『愛』と言う特別な感情は持ち合わせてはいなかった。
「…ほら。やっぱりあたしは…結局一人じゃん…」
馬超が結婚すると報告を受けた後、
彼女が彼の元に訪れたときの会話の内容を趙雲はまったく知らない。
だからこんなにあっさり言葉を返してしまう。
ユアは否定して欲しいのにと思いながらも寂しげに微笑む。
今にも泣き出しそうな表情をしている。
そんな彼女の顔を見て、姜維はハッと気が付く。
(…まさか)
少しすると、ユアは立ち上がりフラフラの体で店の外へと向かおうとする。
「おい。ユア…何処へ行くんだ。」
「…帰る。一人でまた飲むよ。今日は皆と飲む気がしない。」
「これだけ飲んどいて何を言うか」
あきれて物も言えないような顔をしながら、そう答える。
「まぁまぁ…。送るよユア。
代金は趙雲殿が支払ってくださるそうだから」
「なっ!私はまだ!」
「いいじゃないですか。たまには...」
黒いオーラを漂わしながら姜維が言う。
趙雲は短くうめき声を上げると、そのまま会計をしに向かった。
夜道を歩く。
酒を先程まで飲んで、体が照っているためか
外の風が気持ち良い。
一瞬そんな開放感に見舞われる。
「はっなんでかな~こんなに気持ちの良い夜なのに、とってもブルーな気分だよ。」
夜道を照らす、丸い月に向かって
ユアは一人寂しく微笑んだ。
いつから俺を孟起と呼ばなくなった?
いつから私に何も話さなくなった?
いつから俺を馬超と呼ぶようになった?
いつから私の知らないあなたになった?
大事な何かを手に入れるには、
それだけ大きな犠牲も必要で。
大事な何かを捨てるには、
それだけ大きな決心も必要になる。
けれど私は…ただ気がついて欲しかっただけ…
考えてみれば当たり前だった。
馬超からしてみれば、私はただの戦友。
好きになるなんてわけない。
だって私はあの人の背を守ってきただけの
戦うことしか知らない、一人の将だもの…
もの心つく前からこの槍を握って人を斬っていた。
そんな私を五虎将のあの人が好きになるわけもなく…
気持ちを伝えられるわけもなく。
時は過ぎるばかりだった。
「ユア殿…申し訳ありません。あなたの屋敷より私の家の方が近かったもので…」
酒場でベロベロに酔っぱらっていたユアはフラフラの足で帰る所を、同僚の姜維が無事に帰れるのか心配だと言われ彼の屋敷へに向かっていた。
「へへっ…いいよー。趙雲はともかくとして、姜維なら色々相談出来そうだし…」
くらくらする頭でなんとかまともに言うユア。
趙雲には、自分が独占欲の固まりだと言う事を知られたくない…
そう思っていた。なぜならそれは彼女が唯一彼を尊敬しているからである。
醜い自分の心の中など趙雲に見てほしくない。そう思っていた。
「趙雲殿もついて行きたいけれど、明日早いらしいからすまないって言っていましたよ…」
「あ、そうなの?」
「うん」
そうとそっけない返事をする。
内心ホッとした。
「ユア殿は…馬超殿が好きなんですよね。」
しばらくの沈黙の後、それを破ったのは姜維だった。
「…もう知ってるくせに…色恋の相談は姜維にしかしたことないよ。」
姜維が彼女を支えているとはいえ、ユアはかなりフラフラで千鳥足。
酔っているのか恥かしいのか、彼女は姜維に返答する。
「…結婚の話…どうするんですか??」
聞かれたくない事を聞かれる。
答えたくない事を言わなくちゃいけない。
「……どうするもこうするも私は元々あの人の―」
「お辛いなら私が慰めましょうか…」
「え?」
ふわりと姜維の胸に自分自信が放り込まれるのを感じる。
訳もわからず酔った頭で整理しようと、目をパチパチさせる。
「あなたがこれ以上…馬超殿のことで悩んでいるのが痛々しい…」
「きょ…姜維??」
彼の名前を呼んだとたんに、聞き覚えのある声が響いた。
「お前ら!!!何をしてるんだ!!」
「ば…馬超…何でここ…」
「姜維!ユアに手を出すな!こいつは俺の物だ!」
彼女の言葉など聞いてはおらず、馬超は姜維に怒鳴り散らす。
「馬超殿…あなたは婚儀をなさる方でしょう他の女性と…私がユアに何をしようと関係ないはずです。何故ユアがあなたの物なのですか?」
突然姜維が自分を呼び捨てにするので、彼女はびっくりする。
「うるさい!お前には関係ないことだ。ユア行くぞ!!」
そう言って強引にユアを引っ張っていこうとする。
「待って!何でここにいるの!?何で!?答えてよ!」
引っ張られる自分の足を懸命に地につけて、問いかけるユア。
その問いかけに姜維が返答する。
「後をずっとついて来てたんですよ。酒場にいたときから。」
「え?」
「…。」
図星をつかれ、俯いてしまう馬超。
「他の女性がいるのにも関らず良い御身分ですね。馬超殿。ユアを手に入れようと必死になって…そんなに彼女が欲しいのですか?」
「!!」
「お前に俺の気持ちなどっ!!」
「分かりませんよ。あなたの気持ちなんて。
分かるのは傷ついて酒をあおって、弱々しくなるユアの気持ちだけです。」
「きょっ姜維!!」
「黙れ!とにかくユア。こっちに来るんだ!!」
そう言って半ば強引に引きずられながら2人はその場を後にした。
―ドサッ
「あっ!」
自分の屋敷に馬超共々帰ってきたユアは、
自室に入ったとたんに強引に投げ飛ばされる。
「なっ何するの!?馬超!」
「何故そう俺を呼ぶ!?」
いきなり叫ばれ何がなんだか分からないユア。
「え?」
「いつから俺を孟起と呼ばなくなった!?
いつから俺を馬超と呼ぶようになった!?」
弱々しく自分の肩に手を置く馬超。
かすかだが震えているのが分かる。
「何故、嫌だと言ってくれない?
何故、俺ではなく違う男と…」
「ばっ…孟起…?」
「お前が、嫌だと言ってくれさえすれば俺は…それでようやく断る事ができるのに…ユア…」
そう言って、優しくユアを抱きしめる馬超。
ユアはようやく、彼も自分と長いこと同じ気持ちだったことに気がつく。
「孟起…私は…自分があなたにふさわしくない人間だと思っていた。
殿に仕え、殿からあなたは五虎将という地位を授けて頂いた。
それに引き換え、私はあなた背中を守ることくらいしか出来ない、
一武将…引け目を感じていた。」
そう彼に告白をする。
「俺はお前さえいてくれればそんなものどうでもいい!!
お前がいたから今の俺がいる!引け目なんてそんなもの!!
……愛してるんだ…ずっと…」
「結局、結婚相手はユア殿に決まったのですか?」
「えーあーうん。」
数日後、鍛錬所に姜維と並びながら兵の訓練をしているのを見ながら、
姜維はユアにそう言った。
噂になっていた馬超の結婚相手は、劉備が選んだ旅商人の娘であった。
「よかったですね~。ユア殿。これも多かれ少なかれ私のおかげですねvv」
「うん。ありがとう姜維。なんかあの時は迫真の演技だったよ。」
「いつもお世話になってるんです。そのくらいなんてことないですよ。」
ニッコリと微笑む姜維。
つられてユアも笑ってしまった。
「きょーいー!!お前…またそいつにちょっかいを出してるのかー!?」
遠くから、怒りをあらわにして叫ぶ馬超の姿があった。
「まずは結婚する前に私達が何でもないという事を、説明しておいた方が良いですね。」
苦笑いをしながら、姜維はユアに言った。
「あはは。そうだね。」
「姜維ーーー!!ユアから放れろ!!!」
大事な何かを手に入れるには、
それだけ大きな犠牲も必要で。
大事な何かを捨てるには、
それだけ大きな決心も必要になる。
心はここにあらず。
私もあなたしか見えていないのもまたしかり…