天秤~ヒダリザラ~-班目の章
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これ以上
泣かせたくないのに
どうして泣くんだよ。
やっと思いを告げたのに、どうして逃げるんだ。
「待て!行くな!!」
「やめて!放してよ!!!」
部屋から出かかった彼女の手を引いて再び強引に引き戻す。
叫び声が尋常じゃなくて、俺の知ってるいつも冷静なあいつでもなくて…
「今更やめてよ!触らないで!!」
「ふざけんなっ…誰がっ!!」
「っ!」
無意識に一気に上げた霊圧に、動きを止めて目を見開く。
「檜佐木の、弓親処に行くつもりなら行かせねぇ!お前は一生、俺のもんだ!!」
「何言ってっ…!」
「分らなくなるってなんだ!?お前が俺に向けていた視線が過去になるなんて絶対許さねぇ!」
「勝手なこと言わないでよ!気づいてもいなかったくせに!!!」
「っ!気づいてないわけねぇだろ!?俺はずっとお前を見てたんだ!!!!」
「嘘!どうせっ!!っ!」
―ガス!!!!!
こいつの顔スレスレで壁を殴る。
黙らせるように威圧を放った。聞く耳持たないユアにイライラして、どう知ればいいのかわからなくて…
自分でも、何言ってんのか、わからねぇ…
でも、この機会を逃したら一生俺はお前を手に入れられない。だから…
「嘘なんかじゃねぇ…ずっと、怖くて言えなかったのは俺だ。信じてくれ。ユア…」
弱音を吐くのもいつもこいつの前だけだった。俺は、お前がいなきゃ駄目なんだ…。
「きょ、今日から十一番隊第八席になりました。元四番隊第十席見細ユアです。」
俺はユアが最初は嫌いだった。
女のくせに、更木隊の八席になって最初こそオドオドしていたものの俺や隊長との手合わせに泣きもせず向かってきていたからだ。
―ガキ!!ガキ!ドン!
「うっ!ぐっ!!!」
「なんだぁ?もう終わりか?」
木刀片手に、膝をつくこいつに俺はいつもそう言った。いつかはやめたくなるだろう。
四番隊にいたような奴だ。根を吐くに決まっていると思っていたからだ。
「いえ、もう一度お願いします。斑目三席っ!」
泣くそぶりもしなければ、根を上げるようなことも言わない。それが解せなくて、当時の俺は徹底的にユアと仕合を重ねていた。
「そろそろ、いいんじゃねーのか?お前、十分やっただろ。それ以上は四番隊では通用しても十一番隊では通用しねぇぜ?」
―ガン!!
重い一撃を浴びせる度、こいつの苦痛の顔を見てどうしてこんなにこいつが気になるのか不思議でならなかった。
―バシ!!
「うっ!」
手首を叩いて思い切り薙いだ。
同時に体勢を保てなくてバタンと再び床に転がる。
「あっ…くっ…」
利き腕の手首を握りしめて、痛みに耐えるその顔にむしろ俺の方が罪悪感を抱く。
「馬鹿かお前、痛いならそう言え。」
「い、いえ…大丈夫です。まだいけます。」
「…チッ…」
「えっ、あの斑目三席っ?わっ!!」
水場に運ぼうとユアを抱えた。想像以上に軽かったこいつを運ぶのには時間はかからなかった。
「オラ、手痛てーんだろうが冷やせ。」
「あ、はい…」
紅潮する顔に違和感を覚えたのはそのときからだ。興味がわいた。特に男勝りでもなく一見普通の女。何に惹かれたのかは分からない。けれど、照れたような顔をしながら赤くなった手を水にあてるこいつが気になって仕方がなかったのは事実で…
「お前、辛くねぇのか…毎日毎日ボロボロになってよ。」
「え…?」
キョトンとしながら、ユアは顔をそちらに向けると苦笑いをする。
「あー…いや…、ボロボロにしてる俺がきくことじゃないんだけどよ…」
「…辛くないですよ。…ずっと、長期任務に出ていたのでこの位の傷昔から日常茶飯事でしたから。」
「あ?」
「私、入隊してからずっと長期任務で実践ばっかりだったんです。一番隊から四番隊になっても、派遣されたチームは一緒のくせに自分の役回りが変わっただけで毎日討伐討伐だったんですよね…」
「…。」
「だから、隊舎で稽古をつけてくれるってすごく憧れでした。実践ばっかりだった私には本当にありがたくって…嬉しくて…」
ニコニコ言うユアの意外な経歴を知ってこいつの弱音の吐かない理由を知った気がした。
「隊長にも、斑目三席にも、皆さんとも手合いができるっていいなぁって思ってるんです。」
「お前…」
その時、弱音も吐かず、女のくせに自分に挑んでは毎日毎日ぼろぼろになるこいつを自然と強くしてやりたい。傍に置きたいと思ってしまった。そして、ユアが四席になるのにはあまり時間はかからなかった。
―でも…
「もう、どうして弓親はいつも私の髪の毛触るのー!集中できないでしょー!」
「いいじゃないか、減るもんじゃないし。僕はユアの髪の毛を一日10回は触らないと落ち着かないんだ。」
「書類に集中できないからやめて!」
「触られる度に気持ちよさそうにしているのは誰かなー?」
「あーもう、うっさい!!」
いつの間にか、俺より弓親との距離の方が縮まっていた。それが…
「やぁ、一角おはよう。」
「おはようございます、斑目三席!」
「っ!…一角でいい…敬語とかも…気持ちがわりぃんだよ。そういうの。」
悪態をついて言う俺に、たぶん…弓親は気づいてて口元がほころんでいた。
「上司を呼び捨てとかため口とかにはできないよね~?ユアー?」
「弓親~…テメェ…」
あいつの肩を抱いて言う弓親に少し怒りを覚えて言うと、意外な返答が来た。
「えー、えと許可を頂けるのであればそう呼ばせていただきますが…」
「お、おう!」
嬉しかったのは、たぶんこいつが本当に可愛くて隊員として…いや、女として好きでそう呼んでもらえることを望んでいたからだった。
「信じられるわけ…ないじゃない…。新しい四席とあんなに楽しそうにしてる一角…見たことなかった。私は、いつもそうやって…いつだって見せつけられてきたのよ?」
「ユア…」
「十一番隊に来てから、私はずっとあんたばかり見てた。手合いも隊長よりあんたの方がいつの間にか回数は多くなってた。頑張ったよ?私…でも、あんたは何一つ変わらなかったじゃない!!」
それは、気づこうとしなかった自分への言葉なのか、彼に対する不満なのか…
「それでも…それでも俺はお前との関係を…、この気持ちをなかったことにはできねぇ。」
「だからっ!…ん、っ!!」
再び塞がれた唇が、なんだか…
「どうすれば、信じられるんだ。どうすればいいんだよ!答えろよ!ユア!!」
「あっ…っく!!」
勢いで床に押し倒される。
覆いかぶさる一角の表情が今までにないくらいさびしげに見えた。
「信じて、いい、の?」
見開く目、頬に両手を添えると彼の体温を感じる。
「あたし、あんたを信じていい?…好きでいさせてくれるの?」
「当たり前だろ、馬鹿っ」
再び触れた唇。
最初のキスとは違って、とても優しくて不器用なキスだった。
「降格!?何それ!」
「え、えー…と…」
十一番隊四席の席で苦笑いをしながら、私は乱菊の質問にどう答えようか悩んでいた。
「せっかく三席になったのに、どうして四席に戻るわけ?訳からないんだけど!しかも、あんた、十一番隊って大丈夫なわけ?」
「えー…、うん…一応…その…」
「うるせーぞ、松本。俺の女に気安く近づくんじゃねーよ!」
問い詰められる私を横から抱き締めると、一角は鼻息を荒くしてどうだとばかりの顔をする。
「はぁ!?」
「やー…うん、はぁ?だと思うよー。私もはぁ!?っていうと思う。てゆーか、一角…乱菊に自慢げに言っても…しょうがないというかね…うん。」
「同意なんかいいのよ!説明しなさい!!どういうことなの!?」
私の肩に手をかけようとする乱菊の動作をひょいと避ける一角。
「どうもこうも、俺たちはそういう関係になったわけだ。これからは、気安くこいつを飲みに誘うんじゃねぇぞ!」
「あー…いや、だからね…一角…乱菊は女性で…」
「あんた、苦労するわね。こんな男でいいの?」
「…っ…言わないで、頭痛くなってきた。」
結局、書類整理係の生活を再び送ることになって
一角とも皆とも、また変わらない生活をすることになった。
降格はしたけど、後悔はない。
私には、どんな時でも傍にいてくれる人がいるから…
「いいか!お前ら!こいつに触ったら、ブチ殺す!!!!」
「いい加減にしろ!こんのハゲがぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
この想いを
ずっと…―
泣かせたくないのに
どうして泣くんだよ。
やっと思いを告げたのに、どうして逃げるんだ。
「待て!行くな!!」
「やめて!放してよ!!!」
部屋から出かかった彼女の手を引いて再び強引に引き戻す。
叫び声が尋常じゃなくて、俺の知ってるいつも冷静なあいつでもなくて…
「今更やめてよ!触らないで!!」
「ふざけんなっ…誰がっ!!」
「っ!」
無意識に一気に上げた霊圧に、動きを止めて目を見開く。
「檜佐木の、弓親処に行くつもりなら行かせねぇ!お前は一生、俺のもんだ!!」
「何言ってっ…!」
「分らなくなるってなんだ!?お前が俺に向けていた視線が過去になるなんて絶対許さねぇ!」
「勝手なこと言わないでよ!気づいてもいなかったくせに!!!」
「っ!気づいてないわけねぇだろ!?俺はずっとお前を見てたんだ!!!!」
「嘘!どうせっ!!っ!」
―ガス!!!!!
こいつの顔スレスレで壁を殴る。
黙らせるように威圧を放った。聞く耳持たないユアにイライラして、どう知ればいいのかわからなくて…
自分でも、何言ってんのか、わからねぇ…
でも、この機会を逃したら一生俺はお前を手に入れられない。だから…
「嘘なんかじゃねぇ…ずっと、怖くて言えなかったのは俺だ。信じてくれ。ユア…」
弱音を吐くのもいつもこいつの前だけだった。俺は、お前がいなきゃ駄目なんだ…。
「きょ、今日から十一番隊第八席になりました。元四番隊第十席見細ユアです。」
俺はユアが最初は嫌いだった。
女のくせに、更木隊の八席になって最初こそオドオドしていたものの俺や隊長との手合わせに泣きもせず向かってきていたからだ。
―ガキ!!ガキ!ドン!
「うっ!ぐっ!!!」
「なんだぁ?もう終わりか?」
木刀片手に、膝をつくこいつに俺はいつもそう言った。いつかはやめたくなるだろう。
四番隊にいたような奴だ。根を吐くに決まっていると思っていたからだ。
「いえ、もう一度お願いします。斑目三席っ!」
泣くそぶりもしなければ、根を上げるようなことも言わない。それが解せなくて、当時の俺は徹底的にユアと仕合を重ねていた。
「そろそろ、いいんじゃねーのか?お前、十分やっただろ。それ以上は四番隊では通用しても十一番隊では通用しねぇぜ?」
―ガン!!
重い一撃を浴びせる度、こいつの苦痛の顔を見てどうしてこんなにこいつが気になるのか不思議でならなかった。
―バシ!!
「うっ!」
手首を叩いて思い切り薙いだ。
同時に体勢を保てなくてバタンと再び床に転がる。
「あっ…くっ…」
利き腕の手首を握りしめて、痛みに耐えるその顔にむしろ俺の方が罪悪感を抱く。
「馬鹿かお前、痛いならそう言え。」
「い、いえ…大丈夫です。まだいけます。」
「…チッ…」
「えっ、あの斑目三席っ?わっ!!」
水場に運ぼうとユアを抱えた。想像以上に軽かったこいつを運ぶのには時間はかからなかった。
「オラ、手痛てーんだろうが冷やせ。」
「あ、はい…」
紅潮する顔に違和感を覚えたのはそのときからだ。興味がわいた。特に男勝りでもなく一見普通の女。何に惹かれたのかは分からない。けれど、照れたような顔をしながら赤くなった手を水にあてるこいつが気になって仕方がなかったのは事実で…
「お前、辛くねぇのか…毎日毎日ボロボロになってよ。」
「え…?」
キョトンとしながら、ユアは顔をそちらに向けると苦笑いをする。
「あー…いや…、ボロボロにしてる俺がきくことじゃないんだけどよ…」
「…辛くないですよ。…ずっと、長期任務に出ていたのでこの位の傷昔から日常茶飯事でしたから。」
「あ?」
「私、入隊してからずっと長期任務で実践ばっかりだったんです。一番隊から四番隊になっても、派遣されたチームは一緒のくせに自分の役回りが変わっただけで毎日討伐討伐だったんですよね…」
「…。」
「だから、隊舎で稽古をつけてくれるってすごく憧れでした。実践ばっかりだった私には本当にありがたくって…嬉しくて…」
ニコニコ言うユアの意外な経歴を知ってこいつの弱音の吐かない理由を知った気がした。
「隊長にも、斑目三席にも、皆さんとも手合いができるっていいなぁって思ってるんです。」
「お前…」
その時、弱音も吐かず、女のくせに自分に挑んでは毎日毎日ぼろぼろになるこいつを自然と強くしてやりたい。傍に置きたいと思ってしまった。そして、ユアが四席になるのにはあまり時間はかからなかった。
―でも…
「もう、どうして弓親はいつも私の髪の毛触るのー!集中できないでしょー!」
「いいじゃないか、減るもんじゃないし。僕はユアの髪の毛を一日10回は触らないと落ち着かないんだ。」
「書類に集中できないからやめて!」
「触られる度に気持ちよさそうにしているのは誰かなー?」
「あーもう、うっさい!!」
いつの間にか、俺より弓親との距離の方が縮まっていた。それが…
「やぁ、一角おはよう。」
「おはようございます、斑目三席!」
「っ!…一角でいい…敬語とかも…気持ちがわりぃんだよ。そういうの。」
悪態をついて言う俺に、たぶん…弓親は気づいてて口元がほころんでいた。
「上司を呼び捨てとかため口とかにはできないよね~?ユアー?」
「弓親~…テメェ…」
あいつの肩を抱いて言う弓親に少し怒りを覚えて言うと、意外な返答が来た。
「えー、えと許可を頂けるのであればそう呼ばせていただきますが…」
「お、おう!」
嬉しかったのは、たぶんこいつが本当に可愛くて隊員として…いや、女として好きでそう呼んでもらえることを望んでいたからだった。
「信じられるわけ…ないじゃない…。新しい四席とあんなに楽しそうにしてる一角…見たことなかった。私は、いつもそうやって…いつだって見せつけられてきたのよ?」
「ユア…」
「十一番隊に来てから、私はずっとあんたばかり見てた。手合いも隊長よりあんたの方がいつの間にか回数は多くなってた。頑張ったよ?私…でも、あんたは何一つ変わらなかったじゃない!!」
それは、気づこうとしなかった自分への言葉なのか、彼に対する不満なのか…
「それでも…それでも俺はお前との関係を…、この気持ちをなかったことにはできねぇ。」
「だからっ!…ん、っ!!」
再び塞がれた唇が、なんだか…
「どうすれば、信じられるんだ。どうすればいいんだよ!答えろよ!ユア!!」
「あっ…っく!!」
勢いで床に押し倒される。
覆いかぶさる一角の表情が今までにないくらいさびしげに見えた。
「信じて、いい、の?」
見開く目、頬に両手を添えると彼の体温を感じる。
「あたし、あんたを信じていい?…好きでいさせてくれるの?」
「当たり前だろ、馬鹿っ」
再び触れた唇。
最初のキスとは違って、とても優しくて不器用なキスだった。
「降格!?何それ!」
「え、えー…と…」
十一番隊四席の席で苦笑いをしながら、私は乱菊の質問にどう答えようか悩んでいた。
「せっかく三席になったのに、どうして四席に戻るわけ?訳からないんだけど!しかも、あんた、十一番隊って大丈夫なわけ?」
「えー…、うん…一応…その…」
「うるせーぞ、松本。俺の女に気安く近づくんじゃねーよ!」
問い詰められる私を横から抱き締めると、一角は鼻息を荒くしてどうだとばかりの顔をする。
「はぁ!?」
「やー…うん、はぁ?だと思うよー。私もはぁ!?っていうと思う。てゆーか、一角…乱菊に自慢げに言っても…しょうがないというかね…うん。」
「同意なんかいいのよ!説明しなさい!!どういうことなの!?」
私の肩に手をかけようとする乱菊の動作をひょいと避ける一角。
「どうもこうも、俺たちはそういう関係になったわけだ。これからは、気安くこいつを飲みに誘うんじゃねぇぞ!」
「あー…いや、だからね…一角…乱菊は女性で…」
「あんた、苦労するわね。こんな男でいいの?」
「…っ…言わないで、頭痛くなってきた。」
結局、書類整理係の生活を再び送ることになって
一角とも皆とも、また変わらない生活をすることになった。
降格はしたけど、後悔はない。
私には、どんな時でも傍にいてくれる人がいるから…
「いいか!お前ら!こいつに触ったら、ブチ殺す!!!!」
「いい加減にしろ!こんのハゲがぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
この想いを
ずっと…―