天秤
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四番隊から戻ってきた私は、部屋で着替えるとそのまま一角の部屋へ向かった。
会わなくちゃいけないと思ったのだ。
そして謝らなきゃいけないと…
私があそこに飛び出さなければ、彼は私を殴ることはなかったし罪悪感に苛まれることもなかったはずだ。
霊圧を探りながら部屋に向かう。
わざとらしく自分の存在も彼に諭させる為に、自ら自分の霊圧も出してみせる。
―バン!!!
「ユア!」
部屋の前まで来て、突然開く扉。
私はびっくりして、焦った表情をする一角を見つめた。
「おい、傷は?顔は平気か?頭は、怪我は大丈夫か?」
珍しくまくし立てる様に言う一角に、私は内心嬉しくもあったが、話を進めようと思った。
「大丈夫だよ。…それより一角…話があるんだけど…」
何時になく真剣な表情をする私を悟ったかのように、彼は私の手を引いて自室へ招き入れた。
久々に入った一角の部屋は相変わらずで、敷きっぱなしの布団に置きっ放しの酒瓶やお猪口が転がっていた。
「飲んでたの?」
瞬間ビクリと体を震わせる一角には目線だけ彼に向けた。机に、慌てて立ちあがってこぼしたであろう酒がぽたりぽたりと畳に落ちている。
「飲んでなきゃ、やってられるかよ。お前を殴っちまったんだ。」
「不可抗力じゃない…」
「それでも、自分が許せねぇ…」
こちらに体を向けることなく、私の手をぎゅっと握ったままの一角をただ見つめることしかできなかった。
数分の沈黙後、動くことのない一角に声をかける。
「あのさ…あたしは、怒っていないし怒る理由もない。あの場面で飛び出したのは私の責任だし、一角が責任感じることもない。だから、そんなことで落ち込まないでよ。あんたがそんなに思い込むことなんて何もないじゃない。」
「っ…俺は…!」
「んっ…ふっ…ん!!」
突然、唇を強引に塞ぐそれに一瞬理解できなかった。
「…ぁ…ん…や、んぁ…一、角…ぁぅっ!」
めちゃくちゃに舌を絡められて吸われて、壁際に押し付けられて逃げられないようにされて行われる行為に私は訳がわからず声を上げる。
「馬鹿、野郎…好きな女殴っちまって平気な顔してられる男が何処にいるんだっ!」
「んっ…はぁ、はぁ…い、一角…?」
「思い込むに決まってんだろ!?ずっと、お前が好きだったのに…弓親や、檜佐木なんかに…お前を奪われてたまるかっ!責任感じるに決まってんだろ!?理由なんかもう、ずっと前から…ずっと俺の傍に置いてたお前を、俺以外の男に奪われてたまるかよっ!!!」
それは、自分に願ってもない言葉だったはずだ。
―でも、
なんで
今更…
言うの―
「なんで…今更言うのよ。」
この感情が何なのか…
わからない。
「ずっと、好きだった…でも、どうして今更言うの?」
「ユア…?」
「あたしは、貴方への気持ちを整理して全部終わらせるつもりだった。それなのに、どうして今更そんなこと言うのよ!!」
勢いで、彼の手を振りほどいて部屋を出た。
「一角の、馬鹿!!!!!」
怒りなのか
悔しさなのか
それとも悲しみなのか
―もう、分からない。
分からない。
分からないよ。
どうすればいいのか
どうすれば楽になるのか
唇の感触が消えない。
思い描いていた人との初めてのキス。
でも、そんなロマンチックなものなんかじゃなくて獣のような理性の箍が外れたようなそんな口づけ。
「好きなのに、なんで分からなくなってるの?私…」
頭に思い浮かんだのは檜佐木副隊長で、罪悪感がこの胸を締め付けてる。
「違う。こんなの私じゃない。」
頭を振る。否定する。
でも―
天秤にかけているのだ私は…
傷つくのが怖くて
傷つけられるのが怖くて
それでも優しさを求めたあの人に甘えた。
「ごめんなさい…」
いらない。
こんな私。
最低な女。
一部完
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