傍にいろ
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戦いが第一で
隊長が第一で
私なんか二の次で…
それでも、決して貴方の私に対する愛がないわけではないことは分かってる。
だから、ずっと傍にいる。
貴方が私をいらないというまで…
でも…
「おう、ユア。お前、明日の非番ずらせねぇか?」
「は…明日ですか…?」
もう少しで終わる書類の山を片づけながら、嫌そうな顔して私は言った。
「嫌そうだな。」
「えー、だって隊長がそう言ってくる時大体ろくなことがないんだもの。」
ぶーぶー言う私の頭を掴んでぐりぐりまわされる。思いの外力が強くてぎゃあと叫び声をあげた。
「俺だって明日の招集がなければこんなこといわねぇよ。明日は一角と、弓親が現世任務でいないのに加えて、流魂街への虚討伐の隊務が入ってやがる。お前、明日非番ずらしてこっちの虚討伐の任務全部出てこい。」
「はぁ!?」
隊長のでかい腕を掴んで大声で聞き返す。
「明日、五席以上が総出でいないって…はぁ?訳分からないんですけどっ!隊長おっかしいんじゃないですか!?」
「だからお前に…」
「しかも虚討伐!?いくつあると思ってるんですか!?私が確認する限りで10件は軽く入ってるんですよ!?それを私一人で指揮しろと!?」
うがー!っと頭の中で急ピッチで朝からの予定表を立てる。早出したって10件の討伐はどうやっても定時には終わらない件数だ。
「仕方ねぇだろ。お前、四席だろ?」
「そう言う問題じゃないです!てゆーか今、何時だと思ってるんですか!!!定時前に言わないでください!!!」
もう!と、机の予定表に明日の討伐メンバーの予定表を立て始める。四席しかいないのなら、私自身が特に大変にならない様に組み立てなければいけない。編成だって楽ではないのに、こんな時間に言う隊長を呪った。
「おう、頼んだぜ。」
「あとで、たっかいお酒貰いますよ!?」
「しらねぇな。」
「隊長!!!!!」
叫び声を上げて、大きくため息をつく。
「くっそー…明日の非番は絶対休みたかったのにっ!」
明日が、恋人である一角の誕生日なのでこっそり現世に行って何かプレゼントでも買おうかと思っていたのだ。
毎年、隊務で予定が狂わされて彼の誕生日など一度もまともに祝った事もなければプレゼントもしたことがなく、自分に無頓着な一角がそのことで責めることはなかったとしても、何となく悔しくて今年こそはお互い一日オフは作れなかったとしてもプレゼントを贈ろうと思っていたのに…
「もうっ!虚なんか爆発しろ!!」
各討伐隊務のリーダーと出撃できる席官を確認しながら、私は愚痴愚痴と筆を滑らせる。
こうなったらやけで、明日の虚にストレス発散してやる!とイライラしながらそう考えた。
「これ!明日の討伐予定表!!!」
定時を過ぎて一時間半ほどたってようやく出来た紙を独り言で叫びながら張り付ける。
隣の現世行きの予定には、一角と弓親と数名の隊士の名前が載っていた。
「明日、朝早いんだ。」
早出出勤の一角はすでに隊舎には居なく、いつも通り乱菊達と酒飲みに行ってしまっている。毎度の事なので彼の行動に呆れはするも、楽しそうに笑ってお酒を飲む一角が好きな私である。それも許せる範囲だ。
でも、ちょっぴり明日の事を考えて私は少し切なくなって自分の机の椅子に腰かけて温くなったお茶を飲んだ。
「まず…っ」
立ち上がって、給湯室に向かう。冷めたお茶を捨てて暖かいお湯を急須に注いで湯呑に注いだ。
「はぁ…もう…」
グダグダ言ったってどうにもならないのに、私はむーっとずっと唸りながら再び自分の机に向かった。予定表を立てる前の書類がまだ数枚残っているのでこれを片づけないことには帰れない。
「仕方ない…か…」
今年も何もできないんだろう、仕方ないなと自分に言い聞かせて残りの書類に手を掛けた。
「ん…んーーーーっ!」
それから数時間後、ようやく処理を終えた私は大きく伸びをした。
「やっと終わったぁ…」
うえい!と机に突っ伏すと誰もいないのをいいことにバタバタ暴れる。
「あー!もう帰る!もう今日絶対帰る!よし帰る!」
ガバリと起き上がってそのまま帰る準備をする。散らかった書類を整頓して、飲みかけの湯呑を片づけていると、珍しく隊長の霊圧を感じた。
「おう、まだいたか。」
「何してんですか隊長。」
「あ?おめぇが高い酒よこせっていうから持って来てやったんだろうが。」
ほらと、手渡されて何気に銘柄を見てびっくりする。
「た、隊長…これ高いってもんじゃないっす…」
「あぁ?文句言うんじゃねぇよ。おめぇが高い酒よこせっていうから、爺から貰った酒持って来てやったんだろ。」
「こ、このお酒に見合った仕事を押し付けられてません。…私こんなの恐れ多くて飲めないっす!」
ぶんぶんと顔を左右に振ると、めんどくせぇなと一人ごちる隊長。渡されたお酒をそのまま隊長に返すと、眉間にしわを寄せられてしまった。
「なら、これ飲ませてやっから今から一杯付き合え。」
「は…あ、はい?」
「オラ、来い」
コップを持ってそのまま執務室に引きずられるように入って行った。
「どうだ、うめぇか?」
「え、と…よ、よくわかりません…」
「あ?」
「ヒィ!」
ひと睨みされて両手に持つコップが震える。それもそのはずで、隊長と一対一でお酒なんて飲んだことないし、2人きりと言うのは何とも気恥ずかしいやら緊張するやらで、若干一角に申し訳なさがあるというかなんというか…
「明日の件で予定狂わせちまったからな…せめてもの礼だ。」
「き、気持ちだけでいいんですよ。隊長…私なんかのためにここまでしなくても…」
「何言ってやがる。うちではお前は必要不可欠なんだ。自分を下に見るんじゃねぇ…」
「え、いやぁ…ははは…」
執務室にある大きめのソファに横並びで並んでお酒を飲む私達。隊長は、なんだかいつも宴会の時と比べて高いお酒のピッチが速いようで、さっきから手酌をしようとするたびに、私が酒瓶を奪い取って注ぐという行為が繰り返される。
「悪かったな…今日…」
「い、え…そんな、謝らないでください。隊長…。隊務ですから仕方ないですよ。」
「あぁ…」
強いお酒だから、酔いが早いのか隊長は気分よさそうに大きな腕を私の肩に回して片腕で抱く。宴会の時でも、お酒の席ではいつもの事だった。
「飲みすぎですよ。隊長…」
「うるせぇ…もう少し付き合え。」
「はいはい…。」
すっぽり収まる私は隊長の胸に頭を預ける形になる。さすがにこれだけの光景を見る限りだと、恋人同士に見えるだろう私達。それでも、一角という恋人がいる私には上司である隊長のこの行為を無下にすることはできない。
「あぁ、やっぱり…お前は抱き心地がいいな…。」
「隊長?」
「黙ってろ。もう少しこのまま…」
「はい…。お付き合いしますよ。」
眠たそうに私を抱く隊長に、私はにっこり微笑むと彼はそのまま目を瞑った。
恐らく三十分ほどそこにいたと思う。
すっかり気分よさそうに寝息を立てる隊長に毛布を掛けて私はそのまま執務室を出た。
「遅くなってしまった…。」
はぁとため息をついて隊舎の明かりを最低限にしてそこから出ようとする。
「待てよ。」
不意に、取られた手に私はびっくりしてそちらへ視線を向けた。
「あれ、一角…どうしたのこんな時間に…」
えらく不機嫌そうに私の手を取る一角は、質問には答えることはなく黙ったままで…
「お前、さっき隊長と何してやがった…」
「さっき?…あぁ、お酒飲んでただけだけど…え!?一角!?」
そこまで言いかけて、強引に隊舎を出た。強く握られた手に少しばかり痛みが走る。どんどん先に行く一角は、背中しか見えなくて表情はうかがえない。
「ど、どうしたの?一角…ちょっと?」
質問にも答えず、着いた先は一角の部屋で私は何が何だか分からずそのまま部屋の中に敷きっ放しの彼の布団に投げ飛ばされる。
「お前…俺の目の前で何浮気してやがる。」
「は…?誰が誰とよ」
「お前が、隊長と!さっき抱き合ってたじゃねーか!!!」
覆いかぶさって悔しげな声で言う一角に、何が何だか分からず彼を見上げることしかできずとにかく誤解を解こうと口を開いた。
「あ、あれは…宴会の時とか、いつも隊長はああやってるから、その…別に浮気なんてしてないよ!!」
「俺以外の男の匂い付けても説得力ねぇんだよ!」
「んっ…あふっ…んっ…い、…か、く…」
むしゃぶりつく様に唇を重ねられて、舌を絡められる。誤解を解きたいのに、誤解したまま先に行為を進めようとする一角の態度が悔しくて私は思わず彼が唇を離したすきに咄嗟に彼の唇に手を当てた。
「いいわけ…も、聞いてくれないの?あんた…私が、今の時間まで何してたのか…何のためにあんな時間まで残ってたのか…」
「うるせぇ…他の男咥えこもうとする女のいうことなんか…」
そう言って、再び行為を進めようとする男に、さすがの私もカチンと来た。
「…っ!ふざ、っけんじゃ、ねーわよ!!!!ハゲぇ!!!!!!」
―ガイン!!!!!
「ぐが!!!!!!!あ!!!!」
思い切り股間を蹴ると、私はそのまま荒い息のまま乱れた死覇装を治しながら立ち上がった。
「何のために、私があんな時間まで書類整理して隊長の我儘に付き合ってたと思ってんのよ!!!それもこれもあんたの為でしょうが!!!!!」
「ぐ…くく…」
悶絶している彼などお構いなしに、私はそのまま怒りがおさまらずさらに声を荒げた。
「あんたが、明日誕生日だから…あんたにとって特別な日だから非番ずらせって言われても我慢したし、虚討伐の異常な多さのローテーション考えたり、書類まとめたり明日に備えて残業しない様に、一生懸命やってた人に対する言葉なわけ!?あの場面見ただけで私のあんたに対する気持ち自体否定するわけ!?ふざけんじゃないわよ!バカ!あんたが楽しく酒飲んでる間に、私は隊の書類整理して仕事してたっていうのに、なんなのよこの仕打ちは!!!」
見開いた眼をして私を見つめる一角の頭を勢いよく叩く。それでも怒りが収まらなくて顔も見たくなくて腹が立って仕方無くて私はそのまま乱暴に部屋の外へあるいていく。
「もう、いい!一角なんて大嫌い!勝手にすれば!?別れる!嫌い!!!」
「ま、待てよ!ユアっ!!待て!!」
「っ!!」
身体全体で抱きしめられて、後ろから一角の匂いがする。後ろから倒れるところを、彼がクッションとなって大した衝撃はなかった。
「嫌いなんて言うな…別れるなんて言うな…俺が悪かったから…。」
「煩いっ!放してっ!」
「悪かった、悪かったから…っだから…俺の横に…傍にいろ。好きだ…好きだから。もう疑ったりしねぇからっ」
腕の力が一層強くなって耳元で切なげに聞こえる声。
私を挟んで、足まで逃がすまいと拘束する一角に私は一息つく。
「大事にしないと、傍にいてやんないから…」
「分かってる…悪かった!」
「ふん!」
そう言ってプイッとそっぽを向くと、抱かれていた腕で彼の顔の方へ顔を向かせられる。
「キス…してもいいだろ…」
「ん…」
ついばむ様な口づけをする私達はいつの間にか向き合ったまま布団の上に倒れ込む。
―ピルルルル…
不意に鳴る自分の伝令神機に私達は目を向ける。
「ちっ…なんだよ…こんな時間に…」
伝令神機が知らせた音は日付を知らせるアラーム音。
「一角…。」
「あん?」
不貞腐れた様にそちらに顔を向けると、私は彼に手を添えて触れるだけのキスをする。
「誕生日おめでとう。さっきはごめんね。それから、嫌いなんて嘘、大好きだから…」
「あぁ、分かってる。…ありがとな。ユア」
指を絡めて押し倒されて、一角のシルシを残されて…
こんなことしかできなくてごめんね。
一角、私はあんたが大好きだよ。
あんたが望むならいつだって傍にいる。
いつだってあんたの帰る場所になる
「好きだ。ユア…」
おまけ⇒
隊長が第一で
私なんか二の次で…
それでも、決して貴方の私に対する愛がないわけではないことは分かってる。
だから、ずっと傍にいる。
貴方が私をいらないというまで…
でも…
「おう、ユア。お前、明日の非番ずらせねぇか?」
「は…明日ですか…?」
もう少しで終わる書類の山を片づけながら、嫌そうな顔して私は言った。
「嫌そうだな。」
「えー、だって隊長がそう言ってくる時大体ろくなことがないんだもの。」
ぶーぶー言う私の頭を掴んでぐりぐりまわされる。思いの外力が強くてぎゃあと叫び声をあげた。
「俺だって明日の招集がなければこんなこといわねぇよ。明日は一角と、弓親が現世任務でいないのに加えて、流魂街への虚討伐の隊務が入ってやがる。お前、明日非番ずらしてこっちの虚討伐の任務全部出てこい。」
「はぁ!?」
隊長のでかい腕を掴んで大声で聞き返す。
「明日、五席以上が総出でいないって…はぁ?訳分からないんですけどっ!隊長おっかしいんじゃないですか!?」
「だからお前に…」
「しかも虚討伐!?いくつあると思ってるんですか!?私が確認する限りで10件は軽く入ってるんですよ!?それを私一人で指揮しろと!?」
うがー!っと頭の中で急ピッチで朝からの予定表を立てる。早出したって10件の討伐はどうやっても定時には終わらない件数だ。
「仕方ねぇだろ。お前、四席だろ?」
「そう言う問題じゃないです!てゆーか今、何時だと思ってるんですか!!!定時前に言わないでください!!!」
もう!と、机の予定表に明日の討伐メンバーの予定表を立て始める。四席しかいないのなら、私自身が特に大変にならない様に組み立てなければいけない。編成だって楽ではないのに、こんな時間に言う隊長を呪った。
「おう、頼んだぜ。」
「あとで、たっかいお酒貰いますよ!?」
「しらねぇな。」
「隊長!!!!!」
叫び声を上げて、大きくため息をつく。
「くっそー…明日の非番は絶対休みたかったのにっ!」
明日が、恋人である一角の誕生日なのでこっそり現世に行って何かプレゼントでも買おうかと思っていたのだ。
毎年、隊務で予定が狂わされて彼の誕生日など一度もまともに祝った事もなければプレゼントもしたことがなく、自分に無頓着な一角がそのことで責めることはなかったとしても、何となく悔しくて今年こそはお互い一日オフは作れなかったとしてもプレゼントを贈ろうと思っていたのに…
「もうっ!虚なんか爆発しろ!!」
各討伐隊務のリーダーと出撃できる席官を確認しながら、私は愚痴愚痴と筆を滑らせる。
こうなったらやけで、明日の虚にストレス発散してやる!とイライラしながらそう考えた。
「これ!明日の討伐予定表!!!」
定時を過ぎて一時間半ほどたってようやく出来た紙を独り言で叫びながら張り付ける。
隣の現世行きの予定には、一角と弓親と数名の隊士の名前が載っていた。
「明日、朝早いんだ。」
早出出勤の一角はすでに隊舎には居なく、いつも通り乱菊達と酒飲みに行ってしまっている。毎度の事なので彼の行動に呆れはするも、楽しそうに笑ってお酒を飲む一角が好きな私である。それも許せる範囲だ。
でも、ちょっぴり明日の事を考えて私は少し切なくなって自分の机の椅子に腰かけて温くなったお茶を飲んだ。
「まず…っ」
立ち上がって、給湯室に向かう。冷めたお茶を捨てて暖かいお湯を急須に注いで湯呑に注いだ。
「はぁ…もう…」
グダグダ言ったってどうにもならないのに、私はむーっとずっと唸りながら再び自分の机に向かった。予定表を立てる前の書類がまだ数枚残っているのでこれを片づけないことには帰れない。
「仕方ない…か…」
今年も何もできないんだろう、仕方ないなと自分に言い聞かせて残りの書類に手を掛けた。
「ん…んーーーーっ!」
それから数時間後、ようやく処理を終えた私は大きく伸びをした。
「やっと終わったぁ…」
うえい!と机に突っ伏すと誰もいないのをいいことにバタバタ暴れる。
「あー!もう帰る!もう今日絶対帰る!よし帰る!」
ガバリと起き上がってそのまま帰る準備をする。散らかった書類を整頓して、飲みかけの湯呑を片づけていると、珍しく隊長の霊圧を感じた。
「おう、まだいたか。」
「何してんですか隊長。」
「あ?おめぇが高い酒よこせっていうから持って来てやったんだろうが。」
ほらと、手渡されて何気に銘柄を見てびっくりする。
「た、隊長…これ高いってもんじゃないっす…」
「あぁ?文句言うんじゃねぇよ。おめぇが高い酒よこせっていうから、爺から貰った酒持って来てやったんだろ。」
「こ、このお酒に見合った仕事を押し付けられてません。…私こんなの恐れ多くて飲めないっす!」
ぶんぶんと顔を左右に振ると、めんどくせぇなと一人ごちる隊長。渡されたお酒をそのまま隊長に返すと、眉間にしわを寄せられてしまった。
「なら、これ飲ませてやっから今から一杯付き合え。」
「は…あ、はい?」
「オラ、来い」
コップを持ってそのまま執務室に引きずられるように入って行った。
「どうだ、うめぇか?」
「え、と…よ、よくわかりません…」
「あ?」
「ヒィ!」
ひと睨みされて両手に持つコップが震える。それもそのはずで、隊長と一対一でお酒なんて飲んだことないし、2人きりと言うのは何とも気恥ずかしいやら緊張するやらで、若干一角に申し訳なさがあるというかなんというか…
「明日の件で予定狂わせちまったからな…せめてもの礼だ。」
「き、気持ちだけでいいんですよ。隊長…私なんかのためにここまでしなくても…」
「何言ってやがる。うちではお前は必要不可欠なんだ。自分を下に見るんじゃねぇ…」
「え、いやぁ…ははは…」
執務室にある大きめのソファに横並びで並んでお酒を飲む私達。隊長は、なんだかいつも宴会の時と比べて高いお酒のピッチが速いようで、さっきから手酌をしようとするたびに、私が酒瓶を奪い取って注ぐという行為が繰り返される。
「悪かったな…今日…」
「い、え…そんな、謝らないでください。隊長…。隊務ですから仕方ないですよ。」
「あぁ…」
強いお酒だから、酔いが早いのか隊長は気分よさそうに大きな腕を私の肩に回して片腕で抱く。宴会の時でも、お酒の席ではいつもの事だった。
「飲みすぎですよ。隊長…」
「うるせぇ…もう少し付き合え。」
「はいはい…。」
すっぽり収まる私は隊長の胸に頭を預ける形になる。さすがにこれだけの光景を見る限りだと、恋人同士に見えるだろう私達。それでも、一角という恋人がいる私には上司である隊長のこの行為を無下にすることはできない。
「あぁ、やっぱり…お前は抱き心地がいいな…。」
「隊長?」
「黙ってろ。もう少しこのまま…」
「はい…。お付き合いしますよ。」
眠たそうに私を抱く隊長に、私はにっこり微笑むと彼はそのまま目を瞑った。
恐らく三十分ほどそこにいたと思う。
すっかり気分よさそうに寝息を立てる隊長に毛布を掛けて私はそのまま執務室を出た。
「遅くなってしまった…。」
はぁとため息をついて隊舎の明かりを最低限にしてそこから出ようとする。
「待てよ。」
不意に、取られた手に私はびっくりしてそちらへ視線を向けた。
「あれ、一角…どうしたのこんな時間に…」
えらく不機嫌そうに私の手を取る一角は、質問には答えることはなく黙ったままで…
「お前、さっき隊長と何してやがった…」
「さっき?…あぁ、お酒飲んでただけだけど…え!?一角!?」
そこまで言いかけて、強引に隊舎を出た。強く握られた手に少しばかり痛みが走る。どんどん先に行く一角は、背中しか見えなくて表情はうかがえない。
「ど、どうしたの?一角…ちょっと?」
質問にも答えず、着いた先は一角の部屋で私は何が何だか分からずそのまま部屋の中に敷きっ放しの彼の布団に投げ飛ばされる。
「お前…俺の目の前で何浮気してやがる。」
「は…?誰が誰とよ」
「お前が、隊長と!さっき抱き合ってたじゃねーか!!!」
覆いかぶさって悔しげな声で言う一角に、何が何だか分からず彼を見上げることしかできずとにかく誤解を解こうと口を開いた。
「あ、あれは…宴会の時とか、いつも隊長はああやってるから、その…別に浮気なんてしてないよ!!」
「俺以外の男の匂い付けても説得力ねぇんだよ!」
「んっ…あふっ…んっ…い、…か、く…」
むしゃぶりつく様に唇を重ねられて、舌を絡められる。誤解を解きたいのに、誤解したまま先に行為を進めようとする一角の態度が悔しくて私は思わず彼が唇を離したすきに咄嗟に彼の唇に手を当てた。
「いいわけ…も、聞いてくれないの?あんた…私が、今の時間まで何してたのか…何のためにあんな時間まで残ってたのか…」
「うるせぇ…他の男咥えこもうとする女のいうことなんか…」
そう言って、再び行為を進めようとする男に、さすがの私もカチンと来た。
「…っ!ふざ、っけんじゃ、ねーわよ!!!!ハゲぇ!!!!!!」
―ガイン!!!!!
「ぐが!!!!!!!あ!!!!」
思い切り股間を蹴ると、私はそのまま荒い息のまま乱れた死覇装を治しながら立ち上がった。
「何のために、私があんな時間まで書類整理して隊長の我儘に付き合ってたと思ってんのよ!!!それもこれもあんたの為でしょうが!!!!!」
「ぐ…くく…」
悶絶している彼などお構いなしに、私はそのまま怒りがおさまらずさらに声を荒げた。
「あんたが、明日誕生日だから…あんたにとって特別な日だから非番ずらせって言われても我慢したし、虚討伐の異常な多さのローテーション考えたり、書類まとめたり明日に備えて残業しない様に、一生懸命やってた人に対する言葉なわけ!?あの場面見ただけで私のあんたに対する気持ち自体否定するわけ!?ふざけんじゃないわよ!バカ!あんたが楽しく酒飲んでる間に、私は隊の書類整理して仕事してたっていうのに、なんなのよこの仕打ちは!!!」
見開いた眼をして私を見つめる一角の頭を勢いよく叩く。それでも怒りが収まらなくて顔も見たくなくて腹が立って仕方無くて私はそのまま乱暴に部屋の外へあるいていく。
「もう、いい!一角なんて大嫌い!勝手にすれば!?別れる!嫌い!!!」
「ま、待てよ!ユアっ!!待て!!」
「っ!!」
身体全体で抱きしめられて、後ろから一角の匂いがする。後ろから倒れるところを、彼がクッションとなって大した衝撃はなかった。
「嫌いなんて言うな…別れるなんて言うな…俺が悪かったから…。」
「煩いっ!放してっ!」
「悪かった、悪かったから…っだから…俺の横に…傍にいろ。好きだ…好きだから。もう疑ったりしねぇからっ」
腕の力が一層強くなって耳元で切なげに聞こえる声。
私を挟んで、足まで逃がすまいと拘束する一角に私は一息つく。
「大事にしないと、傍にいてやんないから…」
「分かってる…悪かった!」
「ふん!」
そう言ってプイッとそっぽを向くと、抱かれていた腕で彼の顔の方へ顔を向かせられる。
「キス…してもいいだろ…」
「ん…」
ついばむ様な口づけをする私達はいつの間にか向き合ったまま布団の上に倒れ込む。
―ピルルルル…
不意に鳴る自分の伝令神機に私達は目を向ける。
「ちっ…なんだよ…こんな時間に…」
伝令神機が知らせた音は日付を知らせるアラーム音。
「一角…。」
「あん?」
不貞腐れた様にそちらに顔を向けると、私は彼に手を添えて触れるだけのキスをする。
「誕生日おめでとう。さっきはごめんね。それから、嫌いなんて嘘、大好きだから…」
「あぁ、分かってる。…ありがとな。ユア」
指を絡めて押し倒されて、一角のシルシを残されて…
こんなことしかできなくてごめんね。
一角、私はあんたが大好きだよ。
あんたが望むならいつだって傍にいる。
いつだってあんたの帰る場所になる
「好きだ。ユア…」
おまけ⇒