軍団長とエルフ①中編-エルフの章
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「ユアっ!!ユアっ!!」
エオウィンの搬送が終わり、治療が落ち着いたエオメルは未だに片付いていない戦場で彼女の名前をよんだ。
「ユアっ!」
声を上げても返事は無い。
戦いが終結して、数時間経っていた。
最後に会ったのはムマキル掃討の為に兵を派遣すると言った時だ。あれ以来、彼女の姿は見ていない。生き残った兵に聞いても、各個隊の指示を出したあと、単騎で向かっていったと聞いた。無謀にも程がある。いつ死んでもおかしくない状況だった。なのに、死体は出てこない。エオメルは僅かな希望にかけて懸命に声を上げた。
「…ユアが、居るのか?」
それに反応したのは生存者確認のため、同じく城の外にいたあのエルフだった。
いつも彼女のそばに居、そして彼女を置いて行った男だ。
「何故だ、ユアは裂け谷へ向かった筈だ。」
詰め寄ってそう言うが、エオメルは淡々と口にする。
「彼女が自ら決断して選んだ事だ。我々にはどうしょうもなかった」
「それでもだ!君なら止められた筈だ!」
「止められなかったんだ!!」
言い合う2人。悔しげに叫ぶエオメルに、レゴラスは目を見開く。
「自分は戦士で、レンジャーで、戦う為に生きて来たと。女扱いなんてしてくれるなと。そこまで言われて、彼女の想いに不満はあっても無理に戦に出さないやつがあるか!!」
真剣な眼差しだった。初めて見る思い詰めた様な。それでいて覚悟をするような。
「私が探す」
腕を振り払って能面のように無表情で、レゴラスが言って先を歩き出す。
「ユアは、私の全てなんだ…」
あの日、もうついて来るなと言った。彼女と、エオメルが二人で寄り添うのが見たくなくて。
ユアが顔を赤らめる姿をみたくなくて。何故だ。どうして。
自分はいつも、何もできない。いつも選択を間違う。好きな人ひとり守れなかった。
自分の知らない所で、彼女を死なせてしまったら…もう…
「私はもう、君を憎んでしまうかも知れない」
不意にチカリと、足元に目が行く。
彼女と交換した筈のあのブローチだ。
メリーもピピンもミナス・ティリスにいる。メリーが見つかった場所はここから少し離れた場所だ。それに、汚れてはいるが少し前にブローチが外れたような感じであった。誰かに踏まれた形跡がないからだ。
レゴラスは、エルフの目で先を見る。
もし生きているなら、ここにはいないかもしれない。彼女の性格なら、傷を負っていても自分に気づかれる前に此処から離れるとふんだからだ。馬に乗って酷い戦場を後にする。
広い平地でぐるりと辺りを見回した。
…見つけた
グラグラしながら馬がゆっくり何かを乗せて歩いていた。
馬を全力で走らせて、そこめがけて駆けてゆく。
ユア!
ユア!!
ユア!!!
姿がきちんと確認できた。やはり彼女だ。
痛ましい姿。君は頑張ったんだね。
大丈夫だよ。私が居るよ。
ズルズルと、ゆっくり落馬する彼女は近くに到着するとへへっと笑って言った。
「ごめ、ん、ちょ…と…休憩…」
目が見えないのか、うつろな瞳でそう言った。
私は予想以上の彼女の怪我に、驚いた。
「ユア」
「レゴラス?」
声に反応したのか、ユアは私の名前を呼んだ。ぐっと体を起こそうとするユアが痛々しくて
「駄目だ、そのままで。私が運ぶから!動くなっ!!!」
制止をかけるも、私の服を握って苦しげに息をして聞くのだ。
「まだ、タウリエルさんの事、好き?まだ、忘れられない?」
意識が混濁しているのか、ユアは不安げな顔で私の言葉を待っている。
そんなわけ無い。君と出会った数年は、タウリエルといたときよりずっと濃密で、幸せで…私は何よりも充実していた。ユアがいたからだ。ユアが笑ってくれていたから。私を頼ってくれたから。好きで居させてくれたからだ。見ていてくれていた。忘れさせてくれたからだ。
「違うよ…好きなんかじゃないよ」
「本当…?」
「あぁ、私が好きなのはユアだから…」
「嬉しいなぁ…」
そう、消え入りそうな声で言う声が、余りにも切なげで初めて見る彼女の顔だった。
頬に手を当ててユアはその顔のまま言った。
「ホントは、私もずっと好きだったんだ…ごめんね…」
事切れる。
そんなの駄目だ。君が居なくなったら私は今度こそ立ち直れない。こんな最期は駄目だ。
やめてくれ。また私から奪うのか。
こんな事、また立ち直れない。駄目だ。
「死ぬな…駄目だ、死ぬなユア!!駄目だっ!!」
急いで馬に乗せて、私はミナス・ティリスへ彼女を運んだ。
☆☆☆
人間はいつか死ぬし。
エルフは長生きだから、人間の私がレゴラスの事を好きになっても仕方ない。
レゴラスのそばにいるのが当たり前だった私の初恋は、やっぱりレゴラスだったのだと思う。
落ち着いた声で、誰にでも優しくて。それでいて気品があって、いざ戦いとなるととてもレゴラスは強かった。
「私もあんなふうになりたいなぁ…」
「戦い方を教わればいいだろう?」
父親代わりのアラゴルンはそう言った。
「アラゴルンに言われるまでもなく、弓の先生だもん。レゴラスは!」
「いつの間にそんな仲良くなったんだ?」
「え、結構最初の方から」
戦い方を教えてやってくれと、何気なく言ったアラゴルンの言葉をちゃんと律儀に実行してくれたレゴラスは、私に色んなことを教えてくれた。基礎的な事、エルフの事。薬草や生きる術。アラゴルン以上に沢山教えてもらった。最初は憧れだったんだ。強くて優しいレゴラスが好きだった。それをずっと見ていくうちに、彼は女性に優しくした後にとても苦しそうな顔をする。私はそれがたまらなく気になっていた。タウリエルさんとの事を知って、私だけが知るその顔が…私だけが気づく事ができるあの顔が嫌いになった。
きっと、そうだ。レゴラスは私と彼女を重ねているに違いない。王子様が、闇の森の近衛と恋仲になるなんてスランドゥイル様が許さなかったんだ。だから、きっと…彼女に伝えたかった想いを私に重ねているんだと…
強引な解釈だった事は今更。
その気持ちに応える勇気が、実際私に無かっただけだ。抱きしめられて嫉妬されて、そうなる事が嬉しくもあり、苦しかった。あの日以来、きっと私はレゴラスに対する純粋な思いを何処かに閉じ込めたんだろう…
好きだった。
だったと過去にしておけば、きっと自分でケジメがつけられるから…
だから、あの日…ついてくるなと言われた時…レゴラスの中で、私が要らないものになったんだと思った時は、自分勝手だけどとてもショックだった。ようやく、彼が私とタウリエルさんを重ねなくなったのに…喜んでいいはずなのに…なのに、なのに…
私はきっと、彼女に長い事嫉妬していて見なかったことにしていたのだ。エオメルさんにキスされた時も、あぁ、ようやく自分だけを見てくれる人が出来たんだと…そう感じたからだ。
でもね、駄目だった。
いなくなって初めて気がついた。
死の間際にレゴラスに会えたことは、どんなに幸せだったろう。彼はちゃんと私を好きだと言ってくれた。他に、望むものは何もない。
ねぇ、私…ずっと見てるから…だから、レゴラス…また…
会いたい
☆☆☆
「おはよう」
無意識に開いた自分の目。
わけもわからず、知らない天井と懐かしい声に顔だけ向けた。
「おはようユア。僕よりお寝坊さんだね」
「フ、ロド?」
「そうだよ…?」
久しぶりに見る澄んだ青い瞳が嬉しそうに細くなる。
「私、生きてる」
「生きてるのが不思議なくらいの状態だったって…」
「旅は…指輪は…」
「うん、全部終わったんだ…」
そう言って抱きしめる。
「あっ、つぅ!!」
痛みに顔を歪ませると、フロドは苦笑いした。
「無理しないで、まだ治ってないんだ。皆を呼んでくるよ!」
ゆっくり出ていく、フロドの後ろ姿を見送った。
「結局、生き残っちゃったかぁ…」
独りごちて、ため息をつく。
傷のあちこちを見る限り自分がかなり重症だったんだなぁと。ぼんやりおもった。
「なかなか死ねないもんだなぁ…さてどうしよう」
生きてるって事はレゴラスと気まずいままあわなきゃいけない。裂け谷へ帰らなかった事を怒られるだろうかと、思考を巡らす。そして、今後の自分の身の振り方も考えなきゃいけない。
妹としか思われてない自分だ。今更好きと自覚しても意味がない。
「何処かに旅に出ようかなぁ…」
「もう、次の旅の話?」
独り言に、返事が返ってきて思わず振り返った。
「レゴラス…」
「私を置いて行くつもり?」
「レゴラスは、私が嫌いでしょう?」
そう返すと、ベッドの脇にギシリと座って口づけをされた。
「好きだよ…私はタウリエルより、君が好きで堪らないんだ」
「な、んで…」
「ずっと、引っかかって居たのはそれだろ?君は事恋愛においてはそうやって何でも悪い方に解釈する」
「ちが…」
言いかけて抱きしめられた。ちがわないだろうとレゴラスは今までのように私の頭を撫でて言った。
「我慢しないでいいよ。無事でよかった。私は…君が居なくなったら生きていけないんだ…だから…側にいて?ゴメンね。沢山傷つけた。生きて欲しい。隣にいて欲しい。あんな思い、二度と御免だ…」
腕に力が入って、私は涙を堪えるので精一杯だった。
「重ねてない?タウリエルさんの事、もう好きじゃない?私の事ちゃんと見てる?」
「見てるよ。ずっと、私は君だけ見てた。あの闇の森に君と立ち寄った時からずっと。好きだよ?ユアは?」
「うん、私も…好きだよ。レゴラス…ありがとう…」
あの闇の森で過ごした出来事から、私はすれ違い出した。私は引いて、彼は出て。
きっと、レゴラスなりのケジメをあの時つけたのに、私はそれを自分と重ねたと勘違いしたのだろう。
もう間違わないよ。
優しい貴方が心から笑えるよう。
私、ずっと側にいるから…
最期に、幸せだったと言えるときまで…
エオウィンの搬送が終わり、治療が落ち着いたエオメルは未だに片付いていない戦場で彼女の名前をよんだ。
「ユアっ!」
声を上げても返事は無い。
戦いが終結して、数時間経っていた。
最後に会ったのはムマキル掃討の為に兵を派遣すると言った時だ。あれ以来、彼女の姿は見ていない。生き残った兵に聞いても、各個隊の指示を出したあと、単騎で向かっていったと聞いた。無謀にも程がある。いつ死んでもおかしくない状況だった。なのに、死体は出てこない。エオメルは僅かな希望にかけて懸命に声を上げた。
「…ユアが、居るのか?」
それに反応したのは生存者確認のため、同じく城の外にいたあのエルフだった。
いつも彼女のそばに居、そして彼女を置いて行った男だ。
「何故だ、ユアは裂け谷へ向かった筈だ。」
詰め寄ってそう言うが、エオメルは淡々と口にする。
「彼女が自ら決断して選んだ事だ。我々にはどうしょうもなかった」
「それでもだ!君なら止められた筈だ!」
「止められなかったんだ!!」
言い合う2人。悔しげに叫ぶエオメルに、レゴラスは目を見開く。
「自分は戦士で、レンジャーで、戦う為に生きて来たと。女扱いなんてしてくれるなと。そこまで言われて、彼女の想いに不満はあっても無理に戦に出さないやつがあるか!!」
真剣な眼差しだった。初めて見る思い詰めた様な。それでいて覚悟をするような。
「私が探す」
腕を振り払って能面のように無表情で、レゴラスが言って先を歩き出す。
「ユアは、私の全てなんだ…」
あの日、もうついて来るなと言った。彼女と、エオメルが二人で寄り添うのが見たくなくて。
ユアが顔を赤らめる姿をみたくなくて。何故だ。どうして。
自分はいつも、何もできない。いつも選択を間違う。好きな人ひとり守れなかった。
自分の知らない所で、彼女を死なせてしまったら…もう…
「私はもう、君を憎んでしまうかも知れない」
不意にチカリと、足元に目が行く。
彼女と交換した筈のあのブローチだ。
メリーもピピンもミナス・ティリスにいる。メリーが見つかった場所はここから少し離れた場所だ。それに、汚れてはいるが少し前にブローチが外れたような感じであった。誰かに踏まれた形跡がないからだ。
レゴラスは、エルフの目で先を見る。
もし生きているなら、ここにはいないかもしれない。彼女の性格なら、傷を負っていても自分に気づかれる前に此処から離れるとふんだからだ。馬に乗って酷い戦場を後にする。
広い平地でぐるりと辺りを見回した。
…見つけた
グラグラしながら馬がゆっくり何かを乗せて歩いていた。
馬を全力で走らせて、そこめがけて駆けてゆく。
ユア!
ユア!!
ユア!!!
姿がきちんと確認できた。やはり彼女だ。
痛ましい姿。君は頑張ったんだね。
大丈夫だよ。私が居るよ。
ズルズルと、ゆっくり落馬する彼女は近くに到着するとへへっと笑って言った。
「ごめ、ん、ちょ…と…休憩…」
目が見えないのか、うつろな瞳でそう言った。
私は予想以上の彼女の怪我に、驚いた。
「ユア」
「レゴラス?」
声に反応したのか、ユアは私の名前を呼んだ。ぐっと体を起こそうとするユアが痛々しくて
「駄目だ、そのままで。私が運ぶから!動くなっ!!!」
制止をかけるも、私の服を握って苦しげに息をして聞くのだ。
「まだ、タウリエルさんの事、好き?まだ、忘れられない?」
意識が混濁しているのか、ユアは不安げな顔で私の言葉を待っている。
そんなわけ無い。君と出会った数年は、タウリエルといたときよりずっと濃密で、幸せで…私は何よりも充実していた。ユアがいたからだ。ユアが笑ってくれていたから。私を頼ってくれたから。好きで居させてくれたからだ。見ていてくれていた。忘れさせてくれたからだ。
「違うよ…好きなんかじゃないよ」
「本当…?」
「あぁ、私が好きなのはユアだから…」
「嬉しいなぁ…」
そう、消え入りそうな声で言う声が、余りにも切なげで初めて見る彼女の顔だった。
頬に手を当ててユアはその顔のまま言った。
「ホントは、私もずっと好きだったんだ…ごめんね…」
事切れる。
そんなの駄目だ。君が居なくなったら私は今度こそ立ち直れない。こんな最期は駄目だ。
やめてくれ。また私から奪うのか。
こんな事、また立ち直れない。駄目だ。
「死ぬな…駄目だ、死ぬなユア!!駄目だっ!!」
急いで馬に乗せて、私はミナス・ティリスへ彼女を運んだ。
☆☆☆
人間はいつか死ぬし。
エルフは長生きだから、人間の私がレゴラスの事を好きになっても仕方ない。
レゴラスのそばにいるのが当たり前だった私の初恋は、やっぱりレゴラスだったのだと思う。
落ち着いた声で、誰にでも優しくて。それでいて気品があって、いざ戦いとなるととてもレゴラスは強かった。
「私もあんなふうになりたいなぁ…」
「戦い方を教わればいいだろう?」
父親代わりのアラゴルンはそう言った。
「アラゴルンに言われるまでもなく、弓の先生だもん。レゴラスは!」
「いつの間にそんな仲良くなったんだ?」
「え、結構最初の方から」
戦い方を教えてやってくれと、何気なく言ったアラゴルンの言葉をちゃんと律儀に実行してくれたレゴラスは、私に色んなことを教えてくれた。基礎的な事、エルフの事。薬草や生きる術。アラゴルン以上に沢山教えてもらった。最初は憧れだったんだ。強くて優しいレゴラスが好きだった。それをずっと見ていくうちに、彼は女性に優しくした後にとても苦しそうな顔をする。私はそれがたまらなく気になっていた。タウリエルさんとの事を知って、私だけが知るその顔が…私だけが気づく事ができるあの顔が嫌いになった。
きっと、そうだ。レゴラスは私と彼女を重ねているに違いない。王子様が、闇の森の近衛と恋仲になるなんてスランドゥイル様が許さなかったんだ。だから、きっと…彼女に伝えたかった想いを私に重ねているんだと…
強引な解釈だった事は今更。
その気持ちに応える勇気が、実際私に無かっただけだ。抱きしめられて嫉妬されて、そうなる事が嬉しくもあり、苦しかった。あの日以来、きっと私はレゴラスに対する純粋な思いを何処かに閉じ込めたんだろう…
好きだった。
だったと過去にしておけば、きっと自分でケジメがつけられるから…
だから、あの日…ついてくるなと言われた時…レゴラスの中で、私が要らないものになったんだと思った時は、自分勝手だけどとてもショックだった。ようやく、彼が私とタウリエルさんを重ねなくなったのに…喜んでいいはずなのに…なのに、なのに…
私はきっと、彼女に長い事嫉妬していて見なかったことにしていたのだ。エオメルさんにキスされた時も、あぁ、ようやく自分だけを見てくれる人が出来たんだと…そう感じたからだ。
でもね、駄目だった。
いなくなって初めて気がついた。
死の間際にレゴラスに会えたことは、どんなに幸せだったろう。彼はちゃんと私を好きだと言ってくれた。他に、望むものは何もない。
ねぇ、私…ずっと見てるから…だから、レゴラス…また…
会いたい
☆☆☆
「おはよう」
無意識に開いた自分の目。
わけもわからず、知らない天井と懐かしい声に顔だけ向けた。
「おはようユア。僕よりお寝坊さんだね」
「フ、ロド?」
「そうだよ…?」
久しぶりに見る澄んだ青い瞳が嬉しそうに細くなる。
「私、生きてる」
「生きてるのが不思議なくらいの状態だったって…」
「旅は…指輪は…」
「うん、全部終わったんだ…」
そう言って抱きしめる。
「あっ、つぅ!!」
痛みに顔を歪ませると、フロドは苦笑いした。
「無理しないで、まだ治ってないんだ。皆を呼んでくるよ!」
ゆっくり出ていく、フロドの後ろ姿を見送った。
「結局、生き残っちゃったかぁ…」
独りごちて、ため息をつく。
傷のあちこちを見る限り自分がかなり重症だったんだなぁと。ぼんやりおもった。
「なかなか死ねないもんだなぁ…さてどうしよう」
生きてるって事はレゴラスと気まずいままあわなきゃいけない。裂け谷へ帰らなかった事を怒られるだろうかと、思考を巡らす。そして、今後の自分の身の振り方も考えなきゃいけない。
妹としか思われてない自分だ。今更好きと自覚しても意味がない。
「何処かに旅に出ようかなぁ…」
「もう、次の旅の話?」
独り言に、返事が返ってきて思わず振り返った。
「レゴラス…」
「私を置いて行くつもり?」
「レゴラスは、私が嫌いでしょう?」
そう返すと、ベッドの脇にギシリと座って口づけをされた。
「好きだよ…私はタウリエルより、君が好きで堪らないんだ」
「な、んで…」
「ずっと、引っかかって居たのはそれだろ?君は事恋愛においてはそうやって何でも悪い方に解釈する」
「ちが…」
言いかけて抱きしめられた。ちがわないだろうとレゴラスは今までのように私の頭を撫でて言った。
「我慢しないでいいよ。無事でよかった。私は…君が居なくなったら生きていけないんだ…だから…側にいて?ゴメンね。沢山傷つけた。生きて欲しい。隣にいて欲しい。あんな思い、二度と御免だ…」
腕に力が入って、私は涙を堪えるので精一杯だった。
「重ねてない?タウリエルさんの事、もう好きじゃない?私の事ちゃんと見てる?」
「見てるよ。ずっと、私は君だけ見てた。あの闇の森に君と立ち寄った時からずっと。好きだよ?ユアは?」
「うん、私も…好きだよ。レゴラス…ありがとう…」
あの闇の森で過ごした出来事から、私はすれ違い出した。私は引いて、彼は出て。
きっと、レゴラスなりのケジメをあの時つけたのに、私はそれを自分と重ねたと勘違いしたのだろう。
もう間違わないよ。
優しい貴方が心から笑えるよう。
私、ずっと側にいるから…
最期に、幸せだったと言えるときまで…
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