ローハン第三軍団長 エオメル
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ヘルム峡谷での戦いの後、勝利をおさめたローハンの騎士や、アラゴルン達は、エドラスで宴をはじめていた。
共に戦場を生き抜いた彼らは、和気あいあいと酒を飲み交わしている。旅の仲間であるユアやレゴラス達も例外なく、この夜を楽しんでいるようだ。
「アラゴルンお酒ー!きゃはははは!」
ぷはっと注がれたビールを一気に飲み干すと、ユアは殻になった容器をアラゴルンに差し出した。
「酒って…お前は…、今何杯目だと思ってるんだ。」
呆れた声で言うアラゴルンに、ユアはチッチッと口を鳴らすと、自慢げに言う。
「フッ。甘いな。これは一度はじめた勝負だ。やめられねーのよ。」
「誇らしげに言ってるがそれは只の飲み比べだ。」
「いいじゃん飲み比べ!!楽しいよ!」
「そうだ!楽しいぞ!」
「………楽しいのはお前とギムリだけだ。」
真横をみると、ギムリが手にしたビールを飲み干してニヤニヤしている。
ユアも彼と目が合うと、ニヤニヤして笑った。
「そんなことないよね~エオメルさんも、レゴラスが潰れるところ見たいよね~」
「えっ…あ…あぁ」
突然話を振られてしどろもどろするエオメルに、ユアはニコリと笑うと彼女は注がれたビールを再び飲み干した。
「…レゴラス顔にでなすぎ。何涼しい顔して飲んでんのさ!もっと飲め!」
「そうでもないよ。何だか指が痺れてきた感じがするよ。効いてきたと思う…まだいけそうだけど。」
「キー!!何それ腹立つわー!エオメルさんおかわり!」
「こら、ユア。」
慌ててアラゴルンが止めにはいるが、エオメルは特に気にしてはいないようで、ビールを容器に注いだ。
「すまないエオメル殿。普段はもう少し大人しい奴なのだが、羽目を外しすぎているようだ。」
申し訳なさそうに言うアラゴルンに、エオメルは首を振る。
「いや、何。あの勇ましい彼女のこんな一面を見れて、楽しんでいるところだ。気にしないでくれ。」
「…そうだぞ!アラゴルンめ!シラフは嫌われるんだぞ!飲め!飲んでしまえ!」
またまた注がれたビールを飲み干そうとした瞬間、隣でどさりと音がする。
ビール片手に音のした方を見れば、ギムリが倒れていた。
「えー…何?もうグロッキー?レゴラスまだ潰れてないよー…?」
つまらなそうに一口ビールを口に入れると、ユアは悪態をついた。
「ギムリが脱落したなら、私もこの辺にしておこうかな。体がフラフラするんだ。」
そう言ってアラゴルンと一緒に彼はいなくなってしまった。突然棄権したレゴラスに、ユアはまだ飲み足りないのにっとつまらなそうな顔をするが、思い出したかのように目の前の男に手招きをすると。
「エオメルさん飲もう!」
といってフラフラの足取りで、自分が飲み散らかした容器の一つを取ると、ビールを注ぎ出す。
酒のこぼれまくった床に転びそうになりながら、ユアはエオメルに手にしていたそれを渡した。
「はい。どうぞ!」
「あぁ。すまないユア殿。」
手渡された容器を持ちながら、間接キスではないのかと、戸惑っていると、横から視線を感じた。
「…どうかしたのか?」聞けば、ユアは難しい顔をして言った。
「堅いわ…。」
「…は?」
と聞き返すエオメル。
ユアは突然彼の顔をガッとつかむと、訳の分からないことを聞いてきた。
「私のぉー名前は何ですかぁ~~~?」
「あ…えっ…ユア殿…?」
わざとらしく聞かれて、エオメルは彼女の近すぎる顔にドキドキしながら答える。
「かぁ~~~~~~~~~!惜しい!惜しいわ!エオメルさん!」
残念でしたと言わんばかりの顔をするユアにエオメルは不思議そうな顔をする。
「私の名前はユア!ユア殿なんて堅い呼び方しないでよ!呼び捨てでいいから!」
「あ、…あぁ。分かったユア」
呆気にとられながら、言った言葉にユアは満足したのか、ニコニコと笑って、飲みかけのビールを口に入れる。エオメルも彼女にならって、差し出されたビールを口に入れた。
「そういえば…エオメルさんって、ローハンの軍団長なんだよね。」
「あぁ。第三軍団を任されている。」
「アラゴルンとエオメルさんてどっちが強いのかな?」
「さぁ…。彼とは一度手合わせしてみたいものだな。」
「エオウィン姫って綺麗だよね~」
「そう言ってくれると、私もうれしい。」
「でも、アラゴルンとエオメルさん…「ちょっ…ユア、ちょっと待った!!!」
「んー?」
「話が飛んだり戻ったり、会話が成り立っていない。」
どこか様子のおかしい彼女にそう言うと、エオメルは苦笑いをした。が、反応のないユアに、エオメルは不安になり、声をかけた。
「ユア?」
「うっ…!」
酔っ払いお決まりの行動に、彼は青ざめながら聞いた。
「も、もしかして…」
「…吐く。」
「!!!!!!おい!お前達!道開けろ~~~~~~~~!」
「すみませんでした。」
気持ち悪そうに口元を抑えながら、ユアは慌てて様子を見にきたアラゴルンに言った。
「だから、あれほど飲むなと言ったんだ。馬鹿者。」
「だから、ゴメンてば。許して。」
すまなそうにしているユアにアラゴルンはため息をつきながら、
「水でも飲むか?」
「う~…うん。」
返事を確認すると、持ってくると言ってまだ賑やかな宴の方へ歩いていくアラゴルン。ユアはそんなアラゴルンの背中を見つめていた。
「…やってしまった…」
頭を抱えて息をもらす。お酒を飲んで失敗するのは今回ばかりじゃない。いつも飲み過ぎて羽目を外してアラゴルンに迷惑をかけてしまう。情けない事だが、好きなのだからしょうがない。酔った頭をなんとかクリアにしようと努力するが、頭がボーっとしてうまく働かない。
「…もう、平気なのか?」
聞き覚えのある声に後ろを振り向くと、エオメルが水の入った容器を持って立っていた。手にしたそれを手渡すと、エオメルはユアの隣に腰掛ける。
「…大分よくなりました。ご迷惑おかけしまして…。すみません。エオメル殿」
先程とは打って変わって丁寧に話すユアにエオメルは少しばかり眉間に皺を寄せる。
「無礼な話し方をしてしまい、申し訳ありません。
「いや、気にしないでくれ。俺も気にしていない。」
「そうですか?良かった…」
安心したのか、嬉しそうに笑うユア。エオメルは彼女の柔らかな表情に目を奪われる。
「…エオメル殿?」
きょとんととした顔を自分に向けるユア。先の戦いぶりを見ているので、ギャップがありすぎて愛しささえ芽生えてしまう。エオウィンに似た、あの勇ましさだけを見ただけでは、こうは気持ちが揺れたりはしないだろう。
最初に会ったのは、アラゴルンやギムリに疑念をぶつけた時だ。あの時の彼女は特に状況に驚く素振りもなく、槍を自らに向けられた時、静かに剣に手をかけるだけだった。
次に会ったのはヘルム峡谷。民のいる扉の前で一人でウルク=ハイと戦っていた姿に目を奪われた。
ローハン男の…いや、自分の妻になる理想の女性。剣を持つことこそ、最大の防御という女性像。長年探していたヒトが見つかった事を、エオメルは少なからず喜んでいた。
「エオメル殿っ」
「…えっ…あっ…」
我に返ってユアの声に耳を傾ける。
「どうしたのですか?なんだか、心ここにあらずみたいな…様子がおかしいですよ。」
先程手渡された水をコクリと飲むと、彼女は心配そうにエオメルに話しかける。
「いや、対したことではないんだ。私も酔ってしまったのかもしれないな。」
「…エオメル殿はあまり飲んでいないように見えましたが…」
「雰囲気に酔う事もあるからな。」
あぁ。と納得した表情をする。ユアは思い付いたように手に持っていた水を、
「良ければどうぞ。」
と言ってエオメルに差し出した。
無意識に行っているであろう彼女の行為に、受け取って良いものか迷うエオメル。結果、好意に甘えて受け取ってしまう。
「アラゴルンも昔は良く飲み過ぎてたんですよ。」
「アラゴルンが?」
「えぇ。幼いときにあの人に拾われてから、アラゴルンの介抱はいつも私の仕事でした。」
昔を懐かしむように話しだすユア。アラゴルンとの関係にエオメルは何ともいえない感情を抱く。今のこの時に、親代わりだったとは言え、アラゴルンの名前を聞きたくなかった。同時に、楽しそうに話すユアの横顔が目に入る。
綺麗な顔立ちに、所々傷はあるが白い肌。一つに結われた髪。その髪に、肌に触れてみたいと思った。吸い込まれるように彼女に手を伸ばして頬をなでた。後ろで束ねている彼女の髪を触ろうと、エオメルは自分の手をさらに奥へ進めた。
「それで…!エ…エオメル殿…?…っ…あっ…
戸惑うユアの言葉を無視して行為を進める。不意に、首筋に武骨な彼の指が這うように流れる。
「首が…弱いのか?」
色気のある男のヒトの声に、ユアは訳も分からずギュッと目を瞑り何度も頷く。
「と…突然、どう…されたのです…かっ?」
「どう…?どうとは?」
「質問をしているのは私なのですが…エオメル殿っ」
そう言うと、彼は突然行為をやめた。
「エオメル殿。ユアはこういう事に馴れていない。遊びが過ぎるのでは?」
「これが?遊びに見えるか?」
「少なくとも私にはそう見えるが?」
嫉妬で、思わずアラゴルンに強い口調であたってしまう。どうやっても、2人の時間は埋まらない事はわかっているのに、当たらずにはいられなかった。
「私は…彼女を妻にと、思っている。遊びではない。」
「は…!?」
突然のエオメルの言葉に、驚いたのは、ユアだった。
「えっ!だって、私達会ってそんなにっ」
慌てふためくユアに、アラゴルンは落ち着けと頭を豪快に撫でる。
その行為に、エオメルは面白くなさそうな顔をして、彼女の腕を引っ張ると自分の胸に抱いた。
「ユア…私が嫌いか?」
「えっ…っ…」
寂しげな表情で見下ろされて、ユアは顔を真っ赤にさせる。
「…き、嫌いじゃ、ない…です。」
そう言うとエオメルは嬉しそうに笑うと、ユアに触れるだけのキスを落とす。アラゴルンはため息をつくと、やれやれといった表情をして宴の方へ再び歩いて行ってしまう。
「直ぐにとは言わない…サウロンを倒し、この世界が平和になったら、私と一緒になってほしい。」
「わ、私でいいのですか?…エオメル殿っ…ん…」
遮るようにキスが降る。
エオメルは、愛おしい彼女の唇を味わうと、先程の表情とは打って変わって、とても優しい顔をして
「エオメルと…私の事も、そう呼んで貰えないか?」
「あっ…でも…」
「それと…他人行儀の話し方も好きじゃないな。」
「うっ…」
「好きだよ。誰にも渡したくはない。」
抱き締めてくるエオメルの背中に、ユアは恐る恐る手を回すと、彼女は少し緊張した面もちで口を開く。
「わ、私も好きです。…だから、絶対死なないで。私も、死なないから…」
「あぁ、約束だ。」
「エオメル?あれ、服脱いじゃったの?」
「あぁ、ユア。忙しくてな。皺になるから脱いだよ。」
「今日くらいは休んだら?」
セオデン陛下が先のペレンノール野での戦いで亡くなって、エオメルはローハンの王となった。
即位式までは慌ただしい日々が続いていたが、時間に余裕が出来るのはまだ先になりそうだ。
それでも、ユアはエオメルが働き過ぎないようにセーブをかけたり、率先して彼の仕事を手伝いオークの残党狩りや書類のチェックを行ったりしていた。
「そうは言ってられない。私は早く、お前との時間が欲しいからな。」
「私も欲しい。…でも最近、抱き締めてもキスも貰ってないよ。今日くらいは…」
そういいかけると、エオメルは手にしていたペンを置くと
「歯止めが効かなくなりそうなんだ…明日体が使いものにならなくても…?」
艶っぽい目線を向けると、ユアは背筋をぶるりと振るわせると、視線を泳がせた。
「後でもいいかなっ?」
その後、落ち着いた2人は婚儀を行いローハンを平和に統治したという。
王であるエオメルの隣には、いつもユアの姿があったという。
共に戦場を生き抜いた彼らは、和気あいあいと酒を飲み交わしている。旅の仲間であるユアやレゴラス達も例外なく、この夜を楽しんでいるようだ。
「アラゴルンお酒ー!きゃはははは!」
ぷはっと注がれたビールを一気に飲み干すと、ユアは殻になった容器をアラゴルンに差し出した。
「酒って…お前は…、今何杯目だと思ってるんだ。」
呆れた声で言うアラゴルンに、ユアはチッチッと口を鳴らすと、自慢げに言う。
「フッ。甘いな。これは一度はじめた勝負だ。やめられねーのよ。」
「誇らしげに言ってるがそれは只の飲み比べだ。」
「いいじゃん飲み比べ!!楽しいよ!」
「そうだ!楽しいぞ!」
「………楽しいのはお前とギムリだけだ。」
真横をみると、ギムリが手にしたビールを飲み干してニヤニヤしている。
ユアも彼と目が合うと、ニヤニヤして笑った。
「そんなことないよね~エオメルさんも、レゴラスが潰れるところ見たいよね~」
「えっ…あ…あぁ」
突然話を振られてしどろもどろするエオメルに、ユアはニコリと笑うと彼女は注がれたビールを再び飲み干した。
「…レゴラス顔にでなすぎ。何涼しい顔して飲んでんのさ!もっと飲め!」
「そうでもないよ。何だか指が痺れてきた感じがするよ。効いてきたと思う…まだいけそうだけど。」
「キー!!何それ腹立つわー!エオメルさんおかわり!」
「こら、ユア。」
慌ててアラゴルンが止めにはいるが、エオメルは特に気にしてはいないようで、ビールを容器に注いだ。
「すまないエオメル殿。普段はもう少し大人しい奴なのだが、羽目を外しすぎているようだ。」
申し訳なさそうに言うアラゴルンに、エオメルは首を振る。
「いや、何。あの勇ましい彼女のこんな一面を見れて、楽しんでいるところだ。気にしないでくれ。」
「…そうだぞ!アラゴルンめ!シラフは嫌われるんだぞ!飲め!飲んでしまえ!」
またまた注がれたビールを飲み干そうとした瞬間、隣でどさりと音がする。
ビール片手に音のした方を見れば、ギムリが倒れていた。
「えー…何?もうグロッキー?レゴラスまだ潰れてないよー…?」
つまらなそうに一口ビールを口に入れると、ユアは悪態をついた。
「ギムリが脱落したなら、私もこの辺にしておこうかな。体がフラフラするんだ。」
そう言ってアラゴルンと一緒に彼はいなくなってしまった。突然棄権したレゴラスに、ユアはまだ飲み足りないのにっとつまらなそうな顔をするが、思い出したかのように目の前の男に手招きをすると。
「エオメルさん飲もう!」
といってフラフラの足取りで、自分が飲み散らかした容器の一つを取ると、ビールを注ぎ出す。
酒のこぼれまくった床に転びそうになりながら、ユアはエオメルに手にしていたそれを渡した。
「はい。どうぞ!」
「あぁ。すまないユア殿。」
手渡された容器を持ちながら、間接キスではないのかと、戸惑っていると、横から視線を感じた。
「…どうかしたのか?」聞けば、ユアは難しい顔をして言った。
「堅いわ…。」
「…は?」
と聞き返すエオメル。
ユアは突然彼の顔をガッとつかむと、訳の分からないことを聞いてきた。
「私のぉー名前は何ですかぁ~~~?」
「あ…えっ…ユア殿…?」
わざとらしく聞かれて、エオメルは彼女の近すぎる顔にドキドキしながら答える。
「かぁ~~~~~~~~~!惜しい!惜しいわ!エオメルさん!」
残念でしたと言わんばかりの顔をするユアにエオメルは不思議そうな顔をする。
「私の名前はユア!ユア殿なんて堅い呼び方しないでよ!呼び捨てでいいから!」
「あ、…あぁ。分かったユア」
呆気にとられながら、言った言葉にユアは満足したのか、ニコニコと笑って、飲みかけのビールを口に入れる。エオメルも彼女にならって、差し出されたビールを口に入れた。
「そういえば…エオメルさんって、ローハンの軍団長なんだよね。」
「あぁ。第三軍団を任されている。」
「アラゴルンとエオメルさんてどっちが強いのかな?」
「さぁ…。彼とは一度手合わせしてみたいものだな。」
「エオウィン姫って綺麗だよね~」
「そう言ってくれると、私もうれしい。」
「でも、アラゴルンとエオメルさん…「ちょっ…ユア、ちょっと待った!!!」
「んー?」
「話が飛んだり戻ったり、会話が成り立っていない。」
どこか様子のおかしい彼女にそう言うと、エオメルは苦笑いをした。が、反応のないユアに、エオメルは不安になり、声をかけた。
「ユア?」
「うっ…!」
酔っ払いお決まりの行動に、彼は青ざめながら聞いた。
「も、もしかして…」
「…吐く。」
「!!!!!!おい!お前達!道開けろ~~~~~~~~!」
「すみませんでした。」
気持ち悪そうに口元を抑えながら、ユアは慌てて様子を見にきたアラゴルンに言った。
「だから、あれほど飲むなと言ったんだ。馬鹿者。」
「だから、ゴメンてば。許して。」
すまなそうにしているユアにアラゴルンはため息をつきながら、
「水でも飲むか?」
「う~…うん。」
返事を確認すると、持ってくると言ってまだ賑やかな宴の方へ歩いていくアラゴルン。ユアはそんなアラゴルンの背中を見つめていた。
「…やってしまった…」
頭を抱えて息をもらす。お酒を飲んで失敗するのは今回ばかりじゃない。いつも飲み過ぎて羽目を外してアラゴルンに迷惑をかけてしまう。情けない事だが、好きなのだからしょうがない。酔った頭をなんとかクリアにしようと努力するが、頭がボーっとしてうまく働かない。
「…もう、平気なのか?」
聞き覚えのある声に後ろを振り向くと、エオメルが水の入った容器を持って立っていた。手にしたそれを手渡すと、エオメルはユアの隣に腰掛ける。
「…大分よくなりました。ご迷惑おかけしまして…。すみません。エオメル殿」
先程とは打って変わって丁寧に話すユアにエオメルは少しばかり眉間に皺を寄せる。
「無礼な話し方をしてしまい、申し訳ありません。
「いや、気にしないでくれ。俺も気にしていない。」
「そうですか?良かった…」
安心したのか、嬉しそうに笑うユア。エオメルは彼女の柔らかな表情に目を奪われる。
「…エオメル殿?」
きょとんととした顔を自分に向けるユア。先の戦いぶりを見ているので、ギャップがありすぎて愛しささえ芽生えてしまう。エオウィンに似た、あの勇ましさだけを見ただけでは、こうは気持ちが揺れたりはしないだろう。
最初に会ったのは、アラゴルンやギムリに疑念をぶつけた時だ。あの時の彼女は特に状況に驚く素振りもなく、槍を自らに向けられた時、静かに剣に手をかけるだけだった。
次に会ったのはヘルム峡谷。民のいる扉の前で一人でウルク=ハイと戦っていた姿に目を奪われた。
ローハン男の…いや、自分の妻になる理想の女性。剣を持つことこそ、最大の防御という女性像。長年探していたヒトが見つかった事を、エオメルは少なからず喜んでいた。
「エオメル殿っ」
「…えっ…あっ…」
我に返ってユアの声に耳を傾ける。
「どうしたのですか?なんだか、心ここにあらずみたいな…様子がおかしいですよ。」
先程手渡された水をコクリと飲むと、彼女は心配そうにエオメルに話しかける。
「いや、対したことではないんだ。私も酔ってしまったのかもしれないな。」
「…エオメル殿はあまり飲んでいないように見えましたが…」
「雰囲気に酔う事もあるからな。」
あぁ。と納得した表情をする。ユアは思い付いたように手に持っていた水を、
「良ければどうぞ。」
と言ってエオメルに差し出した。
無意識に行っているであろう彼女の行為に、受け取って良いものか迷うエオメル。結果、好意に甘えて受け取ってしまう。
「アラゴルンも昔は良く飲み過ぎてたんですよ。」
「アラゴルンが?」
「えぇ。幼いときにあの人に拾われてから、アラゴルンの介抱はいつも私の仕事でした。」
昔を懐かしむように話しだすユア。アラゴルンとの関係にエオメルは何ともいえない感情を抱く。今のこの時に、親代わりだったとは言え、アラゴルンの名前を聞きたくなかった。同時に、楽しそうに話すユアの横顔が目に入る。
綺麗な顔立ちに、所々傷はあるが白い肌。一つに結われた髪。その髪に、肌に触れてみたいと思った。吸い込まれるように彼女に手を伸ばして頬をなでた。後ろで束ねている彼女の髪を触ろうと、エオメルは自分の手をさらに奥へ進めた。
「それで…!エ…エオメル殿…?…っ…あっ…
戸惑うユアの言葉を無視して行為を進める。不意に、首筋に武骨な彼の指が這うように流れる。
「首が…弱いのか?」
色気のある男のヒトの声に、ユアは訳も分からずギュッと目を瞑り何度も頷く。
「と…突然、どう…されたのです…かっ?」
「どう…?どうとは?」
「質問をしているのは私なのですが…エオメル殿っ」
そう言うと、彼は突然行為をやめた。
「エオメル殿。ユアはこういう事に馴れていない。遊びが過ぎるのでは?」
「これが?遊びに見えるか?」
「少なくとも私にはそう見えるが?」
嫉妬で、思わずアラゴルンに強い口調であたってしまう。どうやっても、2人の時間は埋まらない事はわかっているのに、当たらずにはいられなかった。
「私は…彼女を妻にと、思っている。遊びではない。」
「は…!?」
突然のエオメルの言葉に、驚いたのは、ユアだった。
「えっ!だって、私達会ってそんなにっ」
慌てふためくユアに、アラゴルンは落ち着けと頭を豪快に撫でる。
その行為に、エオメルは面白くなさそうな顔をして、彼女の腕を引っ張ると自分の胸に抱いた。
「ユア…私が嫌いか?」
「えっ…っ…」
寂しげな表情で見下ろされて、ユアは顔を真っ赤にさせる。
「…き、嫌いじゃ、ない…です。」
そう言うとエオメルは嬉しそうに笑うと、ユアに触れるだけのキスを落とす。アラゴルンはため息をつくと、やれやれといった表情をして宴の方へ再び歩いて行ってしまう。
「直ぐにとは言わない…サウロンを倒し、この世界が平和になったら、私と一緒になってほしい。」
「わ、私でいいのですか?…エオメル殿っ…ん…」
遮るようにキスが降る。
エオメルは、愛おしい彼女の唇を味わうと、先程の表情とは打って変わって、とても優しい顔をして
「エオメルと…私の事も、そう呼んで貰えないか?」
「あっ…でも…」
「それと…他人行儀の話し方も好きじゃないな。」
「うっ…」
「好きだよ。誰にも渡したくはない。」
抱き締めてくるエオメルの背中に、ユアは恐る恐る手を回すと、彼女は少し緊張した面もちで口を開く。
「わ、私も好きです。…だから、絶対死なないで。私も、死なないから…」
「あぁ、約束だ。」
「エオメル?あれ、服脱いじゃったの?」
「あぁ、ユア。忙しくてな。皺になるから脱いだよ。」
「今日くらいは休んだら?」
セオデン陛下が先のペレンノール野での戦いで亡くなって、エオメルはローハンの王となった。
即位式までは慌ただしい日々が続いていたが、時間に余裕が出来るのはまだ先になりそうだ。
それでも、ユアはエオメルが働き過ぎないようにセーブをかけたり、率先して彼の仕事を手伝いオークの残党狩りや書類のチェックを行ったりしていた。
「そうは言ってられない。私は早く、お前との時間が欲しいからな。」
「私も欲しい。…でも最近、抱き締めてもキスも貰ってないよ。今日くらいは…」
そういいかけると、エオメルは手にしていたペンを置くと
「歯止めが効かなくなりそうなんだ…明日体が使いものにならなくても…?」
艶っぽい目線を向けると、ユアは背筋をぶるりと振るわせると、視線を泳がせた。
「後でもいいかなっ?」
その後、落ち着いた2人は婚儀を行いローハンを平和に統治したという。
王であるエオメルの隣には、いつもユアの姿があったという。