私はヒーロー
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27
「私は、爆豪くん達を守れるようなヒーローになりたい。皆を守れるようなヒーローに」
そう宣言してから暫くたった。
リカバリーガールのお陰で怪我も良くなり、あれから上鳴くんや瀬呂くんともよく話すようになった。
悪いことがあれば良いこともある。うん、これぞ人生って感じ。
今日は天気も良いし、気分も良い。
そうだ!こんな日は美味しいものでも食べよう!
お寿司とか、焼肉とか、あー、ピザ頼むのもありだなぁ
「悩むなぁ」
家でゴロゴロしながら、ピザとコーラを取るか
一人焼肉で、好きなお肉を好きな焼き加減でゆっくり楽しむか
お寿司屋さんで好きな物を好きなだけ取るのもあり。
どれも捨てがたい…。
とりあえず急いで家に帰ってから考えよう。
誰も私を止められない
さぁ待っててね、私のご馳走たちよ!
「龍は終礼終わり次第前に来い。話しがある。」
「…はい」
さて、予定をもう一度立て直そうか
***
「先生、どうされましたか?」
「あー要件は2つある。まず確認だが、龍は弟がいるか?」
「えっと、はい。」
母さん譲りのクリーム色の髪に長いまつげ、そして私の好きな空のように青く澄んだ瞳
私の太陽だった、大切な弟。
なんでそんな事を聞かれるのだろう?
「先程、自分は龍の弟だと名乗る中学生がいると、普通科の生徒から連絡があってだな」
「せ、先生!!今どこに?」
「おい。話を聞け、今は門の前で待つように伝えているが…」
足が勝手に動いた。
先生の話しが途中だとか、荷物を持っていないだとか
そんな事よりもあの子に…
この世界で初めてできた、大切な弟に、
風火(ふうか)に会いたい…!
ただでさえ広い構内が、余計に広く感じる
門までの1番近いルートは?
窓から門が見えた。
動き出した体は止まらない
***
門の側に、見覚えのある髪の毛が見えた
街中で見かけるクリーム色
試験の時に見つけたクリーム色
どの色とも違った
私が探していた色
「風火…」
大きく見開かれた瞳は、思い出よりも深い青色だけど
「姉さん!」
個性を使って走ってきた勢いのまま
私は、大切な弟を抱きしめた。
3歳の頃より背が伸びたとか
中学は学ランなんだねとか
できればランドセルをからってる風火も見たかったとか
今までどこにいたのとか
母さんはどうしてるのかとか
聞きたいこと、話したいことは沢山あるけど
「会いたかった、姉さん」
「うん…」
私も会いたかった
そう伝えるのでいっぱいいっぱいだった。
「りんか」
爆豪くんの声がして
風火を抱きしめる手を解いた。
「爆豪くん」
「ん。荷物、忘れてたぞ」
なにしとんだ。
しぶしぶと言った顔をする爆豪くんから鞄を受け取ると同時に
急に現実が帰ってきた気がした。
うん。
ドラマとか、漫画ならいいと思うよ
次の瞬間にはコマも変わるし、時間も一瞬ですぎるし
でも、現実はそんな甘いもんじゃない…
これからどういう顔してこの門をくぐれば良いの…!
爆豪くんに見られてたって事はクラスの人に見られてたって事であって
普段大人しく過ごしてるから、余計に恥ずかしい!!
「姉さん、帰りながら話そ?」
母さん達も会いたがってるし、今日は家に来てくれるよね?
眉を下げながら子犬みたいな顔で言われて断れるわけ無いよね!
私が頷くと風火は目を細めた。
くぅ!風火の優しい笑顔が、これからの学校生活を思い、砕け散った私の心に沁みるよ!
学ランを着た天使
マイすうぃーとえんじぇる
***
「…なんでついてくるんだ?」
「あ"?家がこっちなんだよ文句あんのか?」
同じ方向だからと3人で歩き出して暫く
風火と話してる私の隣を爆豪くんは静かに歩いていて
一人だけテンション上がっていることが恥ずかしくて、二人に話しをさせたのがいけなかったのか
あっという間に風火と爆豪くんがバチバチし始めてしまった。
「爆豪さんより俺の方がヒーローに向いてるんじゃねぇかな?」
「ひょろいガキがヒーローになれるわけねぇだろ」
「…体育祭でも思ったけど、なんで姉さんはこんなクソ野郎と仲良くしてるんだ?」
「誰がクソだクソガキ、この猫かぶり野郎が」
ニコニコ笑顔を浮かべながら毒を吐く風火と
挑発するように笑いながら毒を吐く爆豪くん
うん。逃げたい
***
風火が立ち止まった家の表札には龍と書いてある。
間違いなくここに母さんがいて
今まで風火が過ごして来た家なのだとわかる
口の中が乾いて
大丈夫かと聞いてくる風火に、歪な笑顔を見せるしかなかった。
「入ろうか」
うんと頷いて玄関に一歩近づこうとすると、後ろから手を引かれた
「あ、爆豪くん。私ここらしいから、またね?」
「…」
いや、爆豪くんの存在忘れるとか、私どんだけ緊張してるんだろ
爆豪くん、存在忘れてたの怒ってる…?
反応ないんだけど…
「スマホかせや」
「え?」
爆豪くんの口から出てきた言葉は予想外のもので、思わず聞き返したけど
無言で手首を掴んでない方の手を差し出される
とりあえず言われるがままにスマホを渡すと、爆豪くんは何か操作をしてすぐにスマホを返してくれた
画面を見ると、電話発信画面に知らない番号
「ポケットに入れて、ボタン押せるようにしとけ」
少しでも危ねぇと思ったら押せ。
爆豪くんはそう言って、ポケットに手を突っ込んで行ってしまった。
「姉さん?」
「あ、今行くよ。またね爆豪くん!」
玄関に入ると、お帰りと風火が笑ってくれて
いや本当に、風火は可愛いけど
心配してついてきてくれてたのかなとか
私がこれを押したら助けに来てくれるのかなとか
真剣な表情がかっこよかったとか
なんだか、胸を内側から擽られてるみたいだ
もどかしいような気持ちを胸に携帯を握りしめる
「りんかちゃん…?」
靴を脱いでいると、名前を呼ばれた
「…母さん」
思い出よりシワが増えた気がする
だけど相変わらず綺麗な人
会えて嬉しい…気がする
強く抱きしめられ、肩口が湿っていく
「久しぶりだね」
なんでだろ?
風火に会えた時はあんなにも嬉しかったのに
うーん。嬉しい、とは言えないもどかしい感じ
そこまで仲が良くなかったクラスメイトに、久しぶりに会った感じ?
この人は、私をこの世界に産んでくれた人なんだけどな
育ててくれた人なんだけどな
***
「父さんが?」
もどかしい再会が終わって、ようやく腰を据えて話す事になった
積もる思い出話しもあるけど、それ以上に私は聞きたいことがある
なぜ、私をこの家に連れてきたのか
風火が思いつきで連れてきたのではない事は、母さんの反応で察する事ができた。
それではなぜ、今更私に会おうと思ったのか
そう問うと母さんは、最近あったことをまとめて話してくれた
海外でヒーロー活動をしていた父さんが帰ってきたこと
帰国して初めて家族の現状を知り、母さん達を探して会いにきたこと
祖父を説得して、家族4人で暮らせるようになったこと
「父さんが帰ってきてくれて良かったわ」
なぜ今更父さんは帰ってきた?
今まで何も連絡がなかった理由は?
あの祖父が簡単に説得されるか?
疑問は溢れるほどあるけど
私は、雰囲気を合わせるように笑うしかなかった。
***
27.5
風火視点
学校から帰ると、母さんしかいないはずなのに大きな下駄が玄関にあって
写真で見たことのある大男と母さんが話していたのが、昨日の話し
大男こと父親から、これまで何もできなかったことへの謝罪をされ
現状の説明をされ
今日、姉さんを交えてこれからの話し合いがされる事になった
龍りんか。
龍に守られた宝玉
澄み切った水のような美しさを持つ彼女は
数年前から離れて暮らす俺の姉さんだ。
駅の広告やCMで姉さんの事を見ていたが、姉さんは雄英高校に入学したらしく、体育祭では『龍の宝玉に密着』と言う名のほぼ隠し撮りに近い放送がされていた。
障害物競走で舞うように走る姿
騎馬戦で同級生と楽しそうに戦う姿
チアの衣装を着て恥ずかしそうに笑う姿
トーナメント前の集中力を高める横顔
決意を決めステージに進む後ろ姿
龍の宝玉の様々な姿が映されたその放送は、体育祭から暫くたった今も再生され続けている
まぁ、俺もかなり再生しているうちの1人なんだけど…。
「風火…」
画面越しに何度も効いた声が俺の名を呼んで
金色の髪をなびかせ、天使のように舞い降りて来る
「姉さん!」
会いたかった
母さんに連れられ家を出たあの日から
ずっと姉さんを探し続けて着た
全てを包み込む強さ
安心感を与える笑顔
全てを魅了する美しさ
あの頃から変わっていない
久しぶりの再会に喜びを噛み締めていたのに
体育祭でみっともない姿を晒していた一位の男によって姉さんとの抱擁は解かれてしまった。
***
「…なんでついてくるんだ?」
「あ"?家がこっちなんだよ文句あんのか?」
同じ方向だからと3人で歩き出して暫く
せっかく姉さんと再会できたのに、体育祭でみっともない姿を晒していた男が、ずっとついてくる
体育祭で姉さんとコイツが戦っている動画も何度も見た。
姉さんの視線を受ける、爆豪勝己
圧倒的な戦闘センス
反応速度
あの個性に耐えられる肉体
純粋にすげぇと思った
けど、ヒーローっていうよりヴィランっぽい
「爆豪さんより俺の方がヒーローに向いてるんじゃねぇかな?」
「ひょろいガキがヒーローになれるわけねぇだろ」
人が気にしてる事を、的確に言い当てやがった
本当に嫌なやつ…!
「…体育祭でも思ったけど、なんで姉さんはこんなクソ野郎と仲良くしてるんだ?」
「誰がクソだクソガキ、この猫かぶり野郎が」
本当…
本当に!!!
何で俺はこんなやつに憧れなんかしたんだよ!!!
「私は、爆豪くん達を守れるようなヒーローになりたい。皆を守れるようなヒーローに」
そう宣言してから暫くたった。
リカバリーガールのお陰で怪我も良くなり、あれから上鳴くんや瀬呂くんともよく話すようになった。
悪いことがあれば良いこともある。うん、これぞ人生って感じ。
今日は天気も良いし、気分も良い。
そうだ!こんな日は美味しいものでも食べよう!
お寿司とか、焼肉とか、あー、ピザ頼むのもありだなぁ
「悩むなぁ」
家でゴロゴロしながら、ピザとコーラを取るか
一人焼肉で、好きなお肉を好きな焼き加減でゆっくり楽しむか
お寿司屋さんで好きな物を好きなだけ取るのもあり。
どれも捨てがたい…。
とりあえず急いで家に帰ってから考えよう。
誰も私を止められない
さぁ待っててね、私のご馳走たちよ!
「龍は終礼終わり次第前に来い。話しがある。」
「…はい」
さて、予定をもう一度立て直そうか
***
「先生、どうされましたか?」
「あー要件は2つある。まず確認だが、龍は弟がいるか?」
「えっと、はい。」
母さん譲りのクリーム色の髪に長いまつげ、そして私の好きな空のように青く澄んだ瞳
私の太陽だった、大切な弟。
なんでそんな事を聞かれるのだろう?
「先程、自分は龍の弟だと名乗る中学生がいると、普通科の生徒から連絡があってだな」
「せ、先生!!今どこに?」
「おい。話を聞け、今は門の前で待つように伝えているが…」
足が勝手に動いた。
先生の話しが途中だとか、荷物を持っていないだとか
そんな事よりもあの子に…
この世界で初めてできた、大切な弟に、
風火(ふうか)に会いたい…!
ただでさえ広い構内が、余計に広く感じる
門までの1番近いルートは?
窓から門が見えた。
動き出した体は止まらない
***
門の側に、見覚えのある髪の毛が見えた
街中で見かけるクリーム色
試験の時に見つけたクリーム色
どの色とも違った
私が探していた色
「風火…」
大きく見開かれた瞳は、思い出よりも深い青色だけど
「姉さん!」
個性を使って走ってきた勢いのまま
私は、大切な弟を抱きしめた。
3歳の頃より背が伸びたとか
中学は学ランなんだねとか
できればランドセルをからってる風火も見たかったとか
今までどこにいたのとか
母さんはどうしてるのかとか
聞きたいこと、話したいことは沢山あるけど
「会いたかった、姉さん」
「うん…」
私も会いたかった
そう伝えるのでいっぱいいっぱいだった。
「りんか」
爆豪くんの声がして
風火を抱きしめる手を解いた。
「爆豪くん」
「ん。荷物、忘れてたぞ」
なにしとんだ。
しぶしぶと言った顔をする爆豪くんから鞄を受け取ると同時に
急に現実が帰ってきた気がした。
うん。
ドラマとか、漫画ならいいと思うよ
次の瞬間にはコマも変わるし、時間も一瞬ですぎるし
でも、現実はそんな甘いもんじゃない…
これからどういう顔してこの門をくぐれば良いの…!
爆豪くんに見られてたって事はクラスの人に見られてたって事であって
普段大人しく過ごしてるから、余計に恥ずかしい!!
「姉さん、帰りながら話そ?」
母さん達も会いたがってるし、今日は家に来てくれるよね?
眉を下げながら子犬みたいな顔で言われて断れるわけ無いよね!
私が頷くと風火は目を細めた。
くぅ!風火の優しい笑顔が、これからの学校生活を思い、砕け散った私の心に沁みるよ!
学ランを着た天使
マイすうぃーとえんじぇる
***
「…なんでついてくるんだ?」
「あ"?家がこっちなんだよ文句あんのか?」
同じ方向だからと3人で歩き出して暫く
風火と話してる私の隣を爆豪くんは静かに歩いていて
一人だけテンション上がっていることが恥ずかしくて、二人に話しをさせたのがいけなかったのか
あっという間に風火と爆豪くんがバチバチし始めてしまった。
「爆豪さんより俺の方がヒーローに向いてるんじゃねぇかな?」
「ひょろいガキがヒーローになれるわけねぇだろ」
「…体育祭でも思ったけど、なんで姉さんはこんなクソ野郎と仲良くしてるんだ?」
「誰がクソだクソガキ、この猫かぶり野郎が」
ニコニコ笑顔を浮かべながら毒を吐く風火と
挑発するように笑いながら毒を吐く爆豪くん
うん。逃げたい
***
風火が立ち止まった家の表札には龍と書いてある。
間違いなくここに母さんがいて
今まで風火が過ごして来た家なのだとわかる
口の中が乾いて
大丈夫かと聞いてくる風火に、歪な笑顔を見せるしかなかった。
「入ろうか」
うんと頷いて玄関に一歩近づこうとすると、後ろから手を引かれた
「あ、爆豪くん。私ここらしいから、またね?」
「…」
いや、爆豪くんの存在忘れるとか、私どんだけ緊張してるんだろ
爆豪くん、存在忘れてたの怒ってる…?
反応ないんだけど…
「スマホかせや」
「え?」
爆豪くんの口から出てきた言葉は予想外のもので、思わず聞き返したけど
無言で手首を掴んでない方の手を差し出される
とりあえず言われるがままにスマホを渡すと、爆豪くんは何か操作をしてすぐにスマホを返してくれた
画面を見ると、電話発信画面に知らない番号
「ポケットに入れて、ボタン押せるようにしとけ」
少しでも危ねぇと思ったら押せ。
爆豪くんはそう言って、ポケットに手を突っ込んで行ってしまった。
「姉さん?」
「あ、今行くよ。またね爆豪くん!」
玄関に入ると、お帰りと風火が笑ってくれて
いや本当に、風火は可愛いけど
心配してついてきてくれてたのかなとか
私がこれを押したら助けに来てくれるのかなとか
真剣な表情がかっこよかったとか
なんだか、胸を内側から擽られてるみたいだ
もどかしいような気持ちを胸に携帯を握りしめる
「りんかちゃん…?」
靴を脱いでいると、名前を呼ばれた
「…母さん」
思い出よりシワが増えた気がする
だけど相変わらず綺麗な人
会えて嬉しい…気がする
強く抱きしめられ、肩口が湿っていく
「久しぶりだね」
なんでだろ?
風火に会えた時はあんなにも嬉しかったのに
うーん。嬉しい、とは言えないもどかしい感じ
そこまで仲が良くなかったクラスメイトに、久しぶりに会った感じ?
この人は、私をこの世界に産んでくれた人なんだけどな
育ててくれた人なんだけどな
***
「父さんが?」
もどかしい再会が終わって、ようやく腰を据えて話す事になった
積もる思い出話しもあるけど、それ以上に私は聞きたいことがある
なぜ、私をこの家に連れてきたのか
風火が思いつきで連れてきたのではない事は、母さんの反応で察する事ができた。
それではなぜ、今更私に会おうと思ったのか
そう問うと母さんは、最近あったことをまとめて話してくれた
海外でヒーロー活動をしていた父さんが帰ってきたこと
帰国して初めて家族の現状を知り、母さん達を探して会いにきたこと
祖父を説得して、家族4人で暮らせるようになったこと
「父さんが帰ってきてくれて良かったわ」
なぜ今更父さんは帰ってきた?
今まで何も連絡がなかった理由は?
あの祖父が簡単に説得されるか?
疑問は溢れるほどあるけど
私は、雰囲気を合わせるように笑うしかなかった。
***
27.5
風火視点
学校から帰ると、母さんしかいないはずなのに大きな下駄が玄関にあって
写真で見たことのある大男と母さんが話していたのが、昨日の話し
大男こと父親から、これまで何もできなかったことへの謝罪をされ
現状の説明をされ
今日、姉さんを交えてこれからの話し合いがされる事になった
龍りんか。
龍に守られた宝玉
澄み切った水のような美しさを持つ彼女は
数年前から離れて暮らす俺の姉さんだ。
駅の広告やCMで姉さんの事を見ていたが、姉さんは雄英高校に入学したらしく、体育祭では『龍の宝玉に密着』と言う名のほぼ隠し撮りに近い放送がされていた。
障害物競走で舞うように走る姿
騎馬戦で同級生と楽しそうに戦う姿
チアの衣装を着て恥ずかしそうに笑う姿
トーナメント前の集中力を高める横顔
決意を決めステージに進む後ろ姿
龍の宝玉の様々な姿が映されたその放送は、体育祭から暫くたった今も再生され続けている
まぁ、俺もかなり再生しているうちの1人なんだけど…。
「風火…」
画面越しに何度も効いた声が俺の名を呼んで
金色の髪をなびかせ、天使のように舞い降りて来る
「姉さん!」
会いたかった
母さんに連れられ家を出たあの日から
ずっと姉さんを探し続けて着た
全てを包み込む強さ
安心感を与える笑顔
全てを魅了する美しさ
あの頃から変わっていない
久しぶりの再会に喜びを噛み締めていたのに
体育祭でみっともない姿を晒していた一位の男によって姉さんとの抱擁は解かれてしまった。
***
「…なんでついてくるんだ?」
「あ"?家がこっちなんだよ文句あんのか?」
同じ方向だからと3人で歩き出して暫く
せっかく姉さんと再会できたのに、体育祭でみっともない姿を晒していた男が、ずっとついてくる
体育祭で姉さんとコイツが戦っている動画も何度も見た。
姉さんの視線を受ける、爆豪勝己
圧倒的な戦闘センス
反応速度
あの個性に耐えられる肉体
純粋にすげぇと思った
けど、ヒーローっていうよりヴィランっぽい
「爆豪さんより俺の方がヒーローに向いてるんじゃねぇかな?」
「ひょろいガキがヒーローになれるわけねぇだろ」
人が気にしてる事を、的確に言い当てやがった
本当に嫌なやつ…!
「…体育祭でも思ったけど、なんで姉さんはこんなクソ野郎と仲良くしてるんだ?」
「誰がクソだクソガキ、この猫かぶり野郎が」
本当…
本当に!!!
何で俺はこんなやつに憧れなんかしたんだよ!!!
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