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久しぶりに恋人の家に泊まった日は、安心感からかいつもよりもよく眠れたようだ。
翌朝、窓の外から聞こえる鳥のさえずりに誘われて、私は自然と目を覚ました。
隣には安らかな顔で眠る愛しい人の姿があって、私はつい口元を緩ませる。
昨夜、妖艶な表情を浮かばせながら全身で愛情を注いでくれた彼と同一人物とは思えないくらいに、その寝顔はあどけなさや幼さを帯びていた。
眠る彼の頬にそっと指を滑らせても彼は目を開ける様子もなく、ただひたすらに規則的な寝息を立てる。
私は彼に布団をかけ直すと、朝食を作る為に寝室を出てリビングに向かった。
冷蔵庫を開けて中身を確認しながら、朝食の献立を考えていく。
昨日の残りのコーンスープに加え目玉焼きとサラダ、それからホットサンドを作る事に決めた私は冷蔵庫から材料を取り出し調理を始めた。
パンに具材を挟みトーストに入れ、コーンスープを温めながら目玉焼きを作っているとリビングのドアが開き、寝ていたはずの彼がひょっこりと顔を出した。
「万次郎起きたの?おはよう」
「おはよ。朝飯作ってくれてんの?」
「うん。もうすぐ出来るよ」
「ありがと」
彼はそう言いながらこちらへやって来て、私を後ろからぎゅっと抱き締めた。
お腹の辺りに回された腕に力が込められると、背中で感じる彼の体温がより鮮明に感じられて心地良い。
「万次郎?」
「ん?」
「ちょっと料理しにくいんだけど」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど」
「じゃあこうさせてて。片付けは全部俺がやるから」
「仕方ないなあ」
そんな風に言いつつも、朝からこんな風に甘えてくれる事が内心嬉しかった。
きっと私の表情は、ひどく綻んでしまっていたと思う。
「お皿取りまーす」
「はーい」
「コンロの前に戻りまーす」
「はーい」
私の声に素直に返事をして抱き着いたまま後を着いてくる彼が、可愛らしくて仕方なかった。
こういう甘えん坊なところも、もうどうしようもなく好きになってしまっている事は実感せざるを得ないな、と頭の隅で考える。
「ふふ」
「ん?なんで笑ってんの?」
「何でもない。ねえ万次郎」
「ん?」
私は後ろを振り向くと、自身の唇を人差し指でぽんぽんと叩いて見せる。
すると彼は一つ笑いを溢した後、形の良い唇を私のそれに優しく押し付けた。
何度か啄むようなキスを交わした後、少し名残惜しそうに唇が離れていった。
「志織、可愛い」
「万次郎も可愛いよ」
「男に可愛いとかやめろよ」
「甘えん坊な万次郎は可愛いの」
「えー」
「ほら朝ごはんもう出来るよ。これ持っていって」
私は湯気を立てるコーンスープが入ったスープカップを二つ彼に渡した。
それに続いて完成した朝食たちを次々に運び、私たちは椅子に座って手を合わせ、出来立ての朝食を食べ始めた。
「美味い」
「良かった」
「俺、志織の作る飯好き」
「何それ嬉しい」
「今日のおやつにパンケーキ作ってよ」
「いいけど、お店で食べる方が美味しいんじゃない?」
「やだ。志織が作ったのがいい」
「分かった。じゃあ今日は出掛けないで家にいる?」
「うん。この間やったゲーム続きからやろう」
「あ、いいねあれ進めたい」
そんな緩やかな会話を交わしているうちに私たちはぺろりと朝食を平らげた。
その後軽く身支度を整え食器を片付けると、二人でソファに並んで座り、ゲームを進めながら二人きりの時間をたっぷりと楽しんだ。
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