【中編/松野千冬】シークレット・ナイト
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注文したきゅうりの浅漬けとポテトサラダはとても美味しくて、二人で絶賛しながらあっという間に平らげた。
追加で同じきゅうりの浅漬けとポテトサラダ、そして生ビールを一杯ずつ注文した。
注文したものが届くのを待つ間、何となくメニューを手に取って見てみると、先程ここに来る道中に話していた生搾りサワーの文字があった。
「松野くん…!見て!生搾りサワーありました!」
「マジすか!」
「ほら!」
メニューの生搾りサワーの部分を指差して見せると、松野くんは嬉しそうな表情を浮かべてメニューを見ていた。
「グレープフルーツもレモンもある!どっちにしようかなあ~!」
「どっちも美味しそう、私も迷う…」
「そうなんすよ!とりあえずこのビール終わるまでにどっちにするか決めます!」
「私も!」
私たちは運ばれて来たばかりのジョッキを手に取り、もう一度軽く乾杯をしてから、ビールを一口飲んだ。
「そういえば、今日のバイトで場地さんが……」
松野くんはきゅうりの浅漬けをつまみながら、もはや私たちの恒例となったバジさんの話を始めた。
松野くんと話すようになってから今日まで、バジさんの名前が出てこなかった日はない。
最初は何者なのかと思っていたはずなのに、今となっては松野くんのバジさん話を聞くのを楽しみにしている自分がいる。
松野くんが本当に大事に思っている人の話を私にしてくれるなんて、なんだかとても嬉しくて。
「本当に仲良いんだね、松野くんとバジさんは」
「光栄す!」
パァと効果音が聞こえそうなくらい、今日一番の笑顔が出た。
それはさながら飼い主の事がとても大好きな犬のような、そんなものを彷彿とさせるくらい屈託のない笑みだった。
「今度場地さんとツーリング行くんです!」
「ツーリング?」
「はい、バイクで海まで!」
「松野くん、バイク乗るんだ」
「はい!」
「へえ、かっこいい…!」
私がそう言うと、松野くんは少し照れ臭そうに笑っていた。
「志織さんは最近どうですか?バイトとか学校の課題とか」
「課題はだいぶ形になってきたけど、バイトはもうしばらくは忙しそうかな」
「大変ですね」
「うん。でも普段学生が入れない昼間とかいっぱいシフト入ってくれてる人なので、夏休み中くらいは頑張らないとなって」
私がそう言うと、松野くんは優しい笑顔を浮かべて、そうですね!と言った。
その顔があまりにも優しい表情だったから、思わずドキッとしてしまって顔が熱くなるのを感じた。
心臓も、大袈裟なくらいドキドキと音を立てる。
それを誤魔化すように、私は残り少なくなったビールを一気に飲み干した。
ほぼ同時に松野くんもビールを飲み終えたようで、お互い空になったジョッキを下げやすいように通路側へまとめて置いた。
「三杯目は生搾りサワーにしますか?」
「そうしようかな。松野くんはグレープフルーツとレモン、どっちにするか決めた?」
「グレープフルーツにします!」
「あ、私もグレープフルーツにしようかと思ってた」
「じゃあお揃いッスね!」
松野くんはそう言って笑うと、店員呼び出しのボタンを押して、私の分も注文をしてくれた。
少しして運ばれて来たお揃いのグレープフルーツサワーに口をつけながら、私たちはまたお喋りに夢中になった。
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