【長編/佐野万次郎】オレンジの片割れ
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万次郎は自室のソファに寝転びながら、くわっと一つ欠伸を漏らした。
微かに重たさを感じる瞼を擦りながら時計に視線をやると、時刻は23時半を過ぎたところだった。
いつもより早い時間ではあるが、眠さを実感した事で瞼が重さを増していくのを感じた万次郎は、たまには早く寝るかとのそのそ起き上がった。
そして万次郎はソファに座って読書をしている志織に近付いていく。
真剣な表情で羅列する活字に目を走らせている志織の横に、ぴったりと身体を寄せて座ると、志織の髪からシャンプーの香りが漂ってくる。
万次郎はその香りを感じながら、甘えた声で志織に声をかけた。
「志織〜、俺眠い…。もう寝よ?」
「うん……先寝てていいよ」
「なんで?一緒に寝よーよ」
眠さからか、それとも志織に甘えたい気持ちからなのか、万次郎はいつもよりもゆったりとした話し方で志織に声を掛ける。
頬を志織の柔らかな頬へ寄せてすりすりと頬擦りをしながら、万次郎はねぇねぇと何度も志織の気を引こうとしていた。
けれど志織の視線は、ずっと手に持った本に注がれたまま動かない。
志織が自分を見てくれないのが面白くない万次郎は、口をへの字に曲げてむすっとした表情を浮かべる。
だがそれすらも、志織の視界には映っていない。
何とか自分を見て貰おうと、万次郎はねー!と先程よりも大きな声で呼びかけながら志織の肩を揺さぶった。
「ちょっとやめて、万次郎」
「じゃあ一緒に寝よ?」
「もうちょっと読みたいから、先寝てていいよ」
「やだ。俺が志織と一緒じゃないと眠れないの、知ってるでしょ」
「じゃあもう少し待って」
「もう眠ぃし待てない。ねえ志織こっち見てよ」
「何?」
「こっち見て!」
「今良いとこだから、後でね」
「え~~~~~~」
「先ベッド行ってていいよ。キリの良いところまで読んだら私も寝るから」
志織はそれだけ言うと、再び物語の世界へ入り込んでいった。
あの手この手で志織の気を引こうとした万次郎だったが、結局全て志織に躱されてしまう。
そんな志織を見て、万次郎はとうとうその頬をぷくりと膨らませた。
その姿はまるで、癇癪を起こした子供のようだ。
すっかり機嫌を損ねてしまった万次郎を止める事は、きっと誰にも出来ないだろう。
万次郎は読書に夢中になっている志織の耳元で、何度も名前を呼んだ。
「志織、ねぇ志織」
その声は少し掠れていて、先程とは打って変わって微かな色っぽさを含んでいるようだった。
どうやら万次郎は、違う路線で攻め込む事にしたらしい。
万次郎は志織の名前を呼び続けながら、今度は目の前にある志織の頬にそっと口付けをし始めた。
そして更には頬に押し当てたその唇で、志織の頬を優しく食む。
柔らかくて弾力のある志織の頬はとても心地よく、万次郎は名前を呼びながら何度も何度も志織の頬に唇を押し付け、その肌を優しく啄んだ。
「ん……志織……」
万次郎の声は、次第に熱を帯びたようなものに変わっていった。
志織の艶のある髪を優しい手付きで耳へかけると、志織の小さな耳が露になる。
万次郎は志織の耳へ唇を寄せると、ふー…とゆっくり吐息を吹き掛けた。
すると万次郎の吐息に反応した志織の身体がピクリと跳ね、小さく漏れた声が万次郎の鼓膜に届いた。
志織のその可愛らしい反応に気を良くした万次郎は、ニヤリと笑みを浮かべ、今度は志織の耳朶を唇で食んだ。
はむはむと柔らかな耳朶の感触を愉しみながら、時折ペロリと舌を這わせる。
だんだんと志織の反応が大きくなっているのが、万次郎は嬉しくて堪らない様子だった。
遂に堪えきれなくなった志織は、目に涙を浮かべながら口を開く。
「ちょ……万次郎やめて……っ」
けれど万次郎は飄々とした態度で「やだ」と言って、志織の制止を跳ね除ける。
「ねえ……!万次郎ってば…!」
「やめないよ。だって志織、俺の事ほっとくもん」
「ほっといてない……っ」
「じゃあ、ちゃんと俺の事見て?」
志織はとうとう万次郎の思惑通りに、万次郎の方へ顔を向けてしまった。
万次郎は待ってましたと言わんばかりに志織の頬に両手を添え、志織の唇に噛み付くように自身のそれを合わせた。
「ん…っ」
頬を撫でていた万次郎の大きな手が志織の後頭部に回され、キスがより深いものになると、本を持つ志織の手がぷるぷると震え始めた。
万次郎はその事に微かに気付きつつも、##NAMEの唇をまだまだ堪能していたくて気付かない振りをする。
万次郎は何度も何度も角度を変えながら、息をつく暇もない程に濃厚なキスを余す事なく味わった。
志織が目尻に涙を溜めながら、本を持っていない方の手で万次郎の胸を力なく叩くと、万次郎はやっと唇を離した。
志織は酸素を取り込む為に肩で大きく呼吸をしながら、涙目で万次郎を見つめている。
「まんじろ……」
けれど万次郎はもう一度志織の身体を抱き寄せると、再び目の前の唇にぱくりと噛み付いた。
瞳を涙で潤ませ耳まで真っ赤に染めた志織の姿を見て、万次郎は自身の衝動を止める事が出来なかった。
今度は熱くなった舌を絡めながら、より深い口付けに興じる。
志織の手からバサッと本が落ち、縋り付くように万次郎の服をきゅっと掴んだ。
「志織…志織…」
唇を合わせながら、愛しそうに志織の名前を呼ぶ。
万次郎に名前を呼ばれる度に、脳が蕩けていくようだった。
だんだんと身体に力が入らなくなって万次郎に寄り掛かると、万次郎は志織の身体をそっとソファに押し倒した。
覆い被さって唇を合わせたまま、万次郎は志織の手に指を絡ませる。
すると志織は、ぎゅっと強く万次郎の手を握り返した。
万次郎が満足して唇を離した頃には、志織の呼吸は大きく乱れ、目尻から幾筋もの涙が溢れていた。
「まんじろ……も……びっくりするでしょ……」
「だって一緒に寝たいのに、志織ずっと本に夢中なんだもん」
「ごめん……じゃあ一緒に寝よ?」
志織のその言葉に、万次郎は首を横に振って答えた。
「え……?」
「まだ寝ない」
「なんで……?」
そう問いかける志織の頬を撫でながら、万次郎は楽しそうに言った。
「元気になっちゃった」
「え」
「志織が可愛いから、俺、元気になっちゃった」
万次郎は触れるだけのキスをすると、身体を起こして立ち上がった。
そして志織の身体を抱き上げると、そのままベッドへと直行した。
「え、え、万次郎……!?」
「電気、つけっぱと消すのどっちがいい?」
「け、消す!」
「ん、りょーかい」
柔らかな笑いを零しながら、万次郎は応えた。
万次郎は部屋の電気を消すと、ベッドに仰向けに寝かされた志織の上に跨り、着ていた服を脱ぎ捨てる。
「万次郎、ちょっと待って…!」
「だめ。今日は寝かせて貰えると思わないでね」
「ほんとに待って…!」
万次郎は不敵な笑みを浮かべながらそう言うと、全身で志織に覆い被さって、再びその唇を奪った。
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