【長編/佐野万次郎】オレンジの片割れ
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空に、ぼんやりと月が浮かぶ。
万次郎も三ツ谷も去り一人になった武道は、その月を見つめながら物思いに耽っていた。
東卍のメンバーですらなかったにも関わらず、東卍のトップになると宣言していた事に気恥ずかしさを覚えたが、場地を芭流覇羅から連れ戻すという目的を得られた。
これを成し遂げれば、稀咲を東卍から追い出す事も出来るかもしれない。
まずは場地を連れ戻す方法を考えなければならないが、そこで武道の脳裏に一つの疑問が浮かんだ。
場地は何故、東卍を辞めて芭流覇羅に入ったのか。
武道はふと立ち上がり境内を歩き回りながら、浮かんできた疑問について考えていた。
「ん?」
その時、地面に何かが落ちているのが目に映った。
武道はそれが落ちている場所に近付き、しゃがみ込んで見てみると、その正体はお守りだった。
「お守り…落とし物か?」
武道がそのお守りを拾い上げた時、その傍らにもう一つ、四つ折りにされた紙のようなものが落ちている事に気付いた。
それも手に取ってみると、その独特な手触りからすぐに写真だと分かった。
開いてみると、そこには今よりも幼さの残る万次郎や龍宮寺が映っていた。
他にも三ツ谷や林田、場地もいる。
もしかしたらこれは、東卍の創設メンバーで撮影した写真なのかもしれない。
けれどその写真にはもう一人、首にタトゥーが入った見覚えのない人物が映っていた。
「あれ?創設メンバーは5人じゃなかったっけ?」
万次郎から聞いた話では、東卍の創設メンバーは5人のはずだ。
にも関わらず、この写真には確かに6人の人物が映っている。
けれど今、武道がそれを考えたところで、答えは出ない。
きっとこのお守りも写真も誰かが落としたのだろうと思った武道は、持ち主が分かった時にすぐ返せるよう、その二つをポケットにしまった。
▼
翌日、武道は教室の自席に座り、頭を悩ませていた。
原因は言わずもがな、昨夜の万次郎とのやり取りだ。
「タケミチ!」
教室のドアが勢い良く開き、溝中五人衆の面々たちが武道の元へやってきた。
「聞いたよ、お前東卍のメンバーになったんだって!?」
嬉々としてその経緯を知りたがる4人に武道は、そんな良い話ではないのだと、昨夜の万次郎との事をぽつぽつと話した。
その話を聞いた途端、4人の表情は一変する。
「その元壱番隊隊長の場地くんを芭流覇羅から連れ戻さないと、マイキーくんに殺されるってわけだ」
「うん、しかも芭流覇羅とモメるまでの期限付き」
「そんなん、いつモメるか分かんねぇじゃん」
「今日だったら……」
「でも俺、正直東卍の内部事情とか全然知らないし、芭流覇羅とかも何?ってレベルなんだよなー」
武道がそう言うと、不良辞典と呼ばれる山岸が得意気な顔で立ち上がった。
山岸は黒板に東卍の組織図を書きながら、武道へ説明をしていく。
山岸の解説のおかげで東卍の内部事情や芭流覇羅の事はなんとなく知る事が出来たが、それが場地を連れ戻す為の手掛かりになるかはまた別の話だ。
場地を連れ戻すにはやはり本人に直接会うしかなさそうだと、武道は尚も話し続けている山岸の声に耳を傾けながら考えていた。
そこへ突然、教室の後ろ側のドアがガラッと音を立てて開いた。
「あれ?」
中にいた5人がそちらへ視線をやると、そこには見覚えのない男子生徒が立っていた。
その首元には、虎のタトゥーが入っている。
男子生徒は遠慮もなしにズカズカと教室の中へ入り込むと、開口一番に武道の名前を口にした。
「ねぇねぇ、花垣武道って知ってる?」
「タ…タ…タケミチ!出た!」
「は?」
山岸はその人物を見た途端、あからさまに狼狽え始めた。
それもそのはず、首に虎のタトゥーが入ったその人物は、今まさに山岸が話していた芭流覇羅のNo.3である羽宮一虎だったのだ。
「わー!うれしー!お前タケミチだろ!?」
羽宮は無邪気な笑いながら、武道に抱き着いた。
「同中の一個下に東卍の奴がいるなんて!よし、タケミチ!」
「え?」
「芭流覇羅のアジト行くぞ!」
「へ?芭流覇羅?」
羽宮は武道の腕を掴むと、そのまま強引に教室から連れ出した。
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