【長編/佐野万次郎】オレンジの片割れ
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万次郎は愛機から降り、辺りを見渡した。
その場にいる全員の視線が、万次郎に向いている。
「マイキー…!」
「マイキーくん!」
あらゆる感情が渦巻く中、万次郎は口を開いた。
「なるほどね。俺を別のとこ呼び出したのは、ケンチンを襲う為ね」
「え?」
万次郎のその言葉を聞いた武道は、思わず目を見開いた。
自分の知らないところにそんな策略があったとは、思いもしなかったのだ。
「で、俺のせいにして東卍真っ二つに割っちまおう…と」
「俺はただパーちんを!」
「これはお前のやり方じゃねぇ!誰に、そそのかされた?」
林は地面に視線を落としたまま、口を閉ざした。
それはまるで、万次郎が問いかけた言葉を否定出来ないようにも思えて、武道は思わず唾をゴクリと飲み込んだ。
──全部、アイツの策略だったんだ。
──誰かが、東卍の内部抗争を企んでいる。
未来で聞いたその言葉たちが、武道の脳裏に過る。
それが真実だった場合、林や清水を裏で操る黒幕がいるという事だ。
「へー、意外。マイキーって頭もキレるんだね。だりぃ」
そこへ突然現れたのは、両手の甲にそれぞれ"罪""罰"という文字の入れ墨をした、長身の男だった。
「誰?」
「俺が誰とかどーでもいいけど、一応、今仮で愛美愛主仕切ってる半間だ」
突然現れたその男は、現在の愛美愛主で仮総長を務める半間修二だった。
万次郎は半間を見上げ、そして煽るように言った。
「お前が裏でネチネチしてるキモ男?」
「めんどくせぇなあマイキーちゃ…」
その瞬間、万次郎の鋭い蹴りが半間を襲った。
凄まじい音が、辺りに鳴り響く。
けれど半間は、万次郎の強烈な蹴りを素手で受け止めていた。
「マイキーの蹴りを止めた!?」
龍宮寺も三ツ谷も、そして武道も、万次郎の蹴りを止められた事に驚きを隠せなかった。
万次郎の蹴りを受け止めた左腕は赤く腫れているが、半間は気味の悪い笑みを浮かべながら、再び万次郎を見た。
「そんなに急ぐなよ、マイキー。俺の目的は"東卍潰し"。かったりぃから内部抗争っしょ。でも結果オーライかな」
万次郎たちは、いつの間にか囲まれていた。
右からも左からも、愛美愛主の特効服を身に纏った者たちが、ゾロゾロとこちらへやって来る。
「これで"無敵のマイキー"をこの手で……ぶっ殺せるからな!」
半間の異様な雰囲気に、武道は思わず、ゾクリと身を震わせる。
こいつが黒幕なのかもしれないと思うと、目が離せなかった。
半間は楽しそうに笑いながら、その両手を広げ、叫んだ。
「愛美愛主総勢100人!東卍4人相手だ!前みたいにヒヨんじゃねぇぞテメェら!!俺は長内みたいに甘くねぇからよぉ!」
「ウッス!」
「逃げたら追い込みかけて歯全部なくなるまでボコるかんな!?」
「……ッ!ウッス!」
「マイキーもドラケンも、まとめて皆殺しだぁ」
目の前で起こる展開に、武道は混乱していた。
内部抗争は止めたはずなのに、いつの間にか今違う抗争が始まっているなんて、未来で直人に聞いた話と違う部分が多すぎる。
もしかしたらタイムリープの影響で、歴史が変わってしまっているのかもしれない。
もはや清水を止めれば良いという話ではなくなり、武道は呆然と立ち尽くした。
けれどその時武道の耳に聞こえて来たのは、何十台ものバイクの排気音だった。
「ふー、間に合ったか」
「え?」
何十台ものバイクの排気音の正体は、黒い特効服を身に纏った東卍メンバーたちだった。
「内輪揉めは気乗りしなかったけどよぉ」
「愛美愛主相手なら、思いっきり暴れられんじゃねーかよ!」
「結果、今日が決戦になっただけの話」
「お前ら……」
駆けつけた仲間たちを見て、万次郎の口元が心なしか綻んでいた。
「東京卍會、勢揃いだバカヤロー」
「どいつから死にてぇ!?」
「ペー!!テメーはまず殺す!」
東卍メンバーの登場に、林は思わず後退りをする。
半間は林の頭を後ろから掴み、怪しげに笑みを溢した。
「楽しくなってきたじゃんかよ」
もはやこの場には、何人いるかも分からない。
それを見た龍宮寺もふらつく体で立ち上がり、万次郎の横に並んだ。
「祭りの日に大乱闘…。血が踊るじゃねぇかよ。なあ?マイキー!」
「ハハ」
万次郎を先頭に、東卍は目の前の敵に向かって走り出した。
「行くぞオラぁあ!」
「やっちまえ!」
愛美愛主もそれを迎え撃つように走り出し、ついに祭りの日の大乱闘が始まった。
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